人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

2018年 ホセ・クーラ 母国を去った理由、写真について、サッカーについて・・ クロアチア・ザグレブでインタビュー

2018-07-22 | 芸術・人生・社会について①




ホセ・クーラは、クロアチアの首都ザグレブの夏の音楽フェスティバル、ザグレブ・クラシック2018に出演しました。その様子は、前回の記事で、他の7月のコンサートと一緒に紹介しています。

その時のインタビュー記事が掲載されましたので、今回はそこから抜粋して紹介したいと思います。
比較的短い記事で、回答も簡潔なものです。これまでインタビューで語ってきた内容と共通する内容が多いですが、現在の若手歌手の育成をめぐる問題、欧州移住の選択、多面的な活動について、写真についてなど、クーラのこれまでの歩みや考え方がよくわかります。

またちょうど、サッカーのワールドカップでクロアチアが大活躍していた時期で、サッカーとクロアチアチームについて、ホットな話題もあります。

クロアチア語からなので、例によって誤訳直訳、あるかと思いますが、ご容赦ください。

→ 元の記事をご覧ください。








≪クロアチアのチームには世界最高のサッカー選手がいる。幸運を!≫



1970年、ホセ・クーラが8歳の時、ピアノ教授は両親にメッセージを送った。「リトル・ホセは音楽に興味がなく、彼には他の趣味を見つけるほうがよい」と伝えている。その教師の判断とは対照的に、アルゼンチン人であるホセ・クーラは、世界で最も有名なテノールのひとりとなっている。それだけでなく、彼は指揮者、作曲家、演出家、シナリオ作家でもあり、趣味としての写真も見いだした。
彼は1991年に故郷のアルゼンチンを去り、ヨーロッパでプロフェッショナルとしての運を求めて成功した。1993年にヴェローナでデビューし、1997年にはミラノ・スカラ座に出演した。
ザグレブ・クラシック2018で今夜はクロアチアのEvelin Novakと一緒にコンサートを行う。同時に、アートパビリオンで写真展が開かれた。
"ホセ・クーラ――著名なテノールがレンズを通して見た人生"
7月15日まで開催。



Q、これは初めてのクロアチア訪問ではなく、あなたはザグレブ、ドゥブロヴニク、リエカに?

A(クーラ)、クロアチアは、私がこれまで見たなかで、最も美しい海辺の景色を持つ楽園のような国。そしてとりわけ、トップアスリートとミュージシャンの国だ。
私は最近、非常に才能のあるクロアチアのソプラノ、クリスティーナ・コラーと仕事をする栄誉ももっていた(プラハでのクーラ演出のナブッコ)。
リエカでは特別な記念すべき作品として、11年前のオペラ "La commedia e finita"(オペラ道化師からクーラが再構成した作品)がある。それは私の最も素晴らしいキャリア上の経験の1つだった。


――若手歌手に過酷な時代、真のアーティストになるためには

Q、あなたの背後には30年のキャリアがある。今日オペラ歌手への要求は、あなたが始めたときよりも大きい?

多くの才能のある歌手がいるが、現在のシステムでは彼らを成長させることができない。彼らはこのハードワークの要件に対処するために成熟する前に、「収穫」されてしまう。その結果、彼らの多くは、優秀になる機会を得る前に「翼を燃やしてしまう」ということだ。非常に若い歌手は、瞬間的に名声を得てしまうことで、その負荷に対処する方法を知らない。過酷なインターネットがもたらした現象でもある。
優れたシステムにおいては、本当のアーティストになるために十分な長さの時間が準備されるようでなければならない。


Q、デジタル時代では、短いビデオ、YouTubeで、たった2分でストーリーを伝える。3時間続くオペラが、若い一般の視聴者を魅了し、生き残るためには、オペラにどういう挑戦が必要か?

A、生き残りの問題は常に存在していた。私たちが、ファースト・フードか、それともきちんと調理された食事を選択するのか、どうか。それは私たち次第だ。







――母国から去った理由、ひろがる多面的な活動と充実

Q、なぜあなたは1991年に母国のアルゼンチンを去った?

A、どんな移民とも同じように、私は、母国が好きでないから去ったわけではない。アルゼンチンでは、私にとって指揮者または作曲家としての未来がなかったからだ。
当時は我々の歴史の中で画期的な瞬間だったが、軍事政権と戦争の恐怖から回復していた若い民主主義の時代だった...こうしたすべては、バルカン半島においてあなたたちもよく知っているだろう。
私はヨーロッパで幸福を試すために、文字通り世界の半分を旅した。 そして実現した。


Q、あなたはオペラ歌手、指揮者、作曲家、演出家、写真家...。どうやってこれらのバランスをとる?

A、私のルール上では稀だが、より多くの楽しみのために、指揮し、同時に歌うことはある。
すべての私の芸術的な取り組みは補完的なものであり、良い指揮者になることで、私はより良い歌手になったことに気づく。良い歌手の本来のあり方を知ることで、私は良い指揮者になる。
私は歌手のニーズを理解しているので、うまくやれる。そして指揮者と歌手としての長いキャリアをもっているので、よりよい作曲家にも...。すべて一緒にやることは大変なハードワークだが、結果は非常に充実している。


――写真について

Q、いつから写真を?

A、写真は10代からの私の趣味。
私は専門家ではなく、自分の作品を公開するつもりはなかった。
しかし、私の写真を見たスイスの出版社が、私の聴衆は「私は毎日見ているもの」を知ることに興味をもつだろうと考え、それらを出版するように提案した。2008年に、写真集「Espontáneas」が公開され、高く評価を受けた。


――クロアチアチームには最高の選手がいる、才能、ライフスタイルと姿勢

Q、あなたには少年時代、指揮者とサッカー選手になるという2つの夢があったと読んだが、その後、何が起きた?

A、誤解があるが、私はサッカーをやったことはない。私は非常に良いラグビー選手であり、スポーツでキャリアを実現するチャンスがあったことは事実だ。しかし私は、スポーツよりも、音楽教育を優先させた。私の教授が「指や手をつかって(スポーツの)練習をしているなら、あなたの音楽キャリアは終わる」と言ったとき、私の判断は簡単だった。

サッカーに関しては、クロアチアのチームには世界でも最高の選手がいる。才能の点だけでなく、モドリッチ(クロアチア主将)のような選手たちは、完全なプレーヤーの真の実例だからだ。彼らはスポーツを素晴らしいものにするすべてを持っている。それは、お金の面だけでなく、彼らのライフスタイルと姿勢だ。クロアチアに、世界チャンピオンになるにふさわしい幸運を願う。

(「www.vecernji.hr」)






*画像はザグレブフィルハーモニー管弦楽団FBなどからお借りしました。
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ホセ・クーラ 2018 夏のコンサート――ヴィンタートゥール、ザグレブ、ヴェスプレーム

2018-07-16 | コンサート




毎年夏のシーズンには、ヨーロッパ各地でサマーフェスティバルが開かれ、多彩なコンサートが行われています。ホセ・クーラも、この7月前半に、3か所の野外コンサートに出演しました。

それぞれ、とても楽しそうな写真や、非公式のものですが動画もアップされていますので紹介したいと思います。
こうしたコンサートは、クーラのエンターテイナーぶり、多彩さ、人間的な豊かさ、フランクさが発揮されて、とても魅力的です。私もぜひ一度は、欧州のサマーフェスティバルでクーラのコンサートを体験したいと願っています。

今回紹介するのは、7月7日スイス・ヴィンタートゥール、7月10日クロアチア・ザグレブ、7月13日ハンガリー・ヴェスプレームです。

先月6月、クーラは、プラハで演出したナブッコの初演の準備と、プラハ交響楽団でのレジデントアーティストとしての最後のコンサートがあり、ほとんどマドリードの自宅から離れたままの忙しさだったと思います。しかもその後、すぐにコンサートツアーに出発しました。なので、この3公演が終わり、次の7月28日ハンガリー・トカイでのコンサートまでの間、いま、ようやく一息、というところでしょうか。

また9月には、演出・指揮もする西部の娘の新プロジェクト(これまでのブログ記事 告知編、 インタビュー編)が始まるのに加えて、クーラの2012年制作のカヴァレリア・ルスティカーナと道化師のプロダクションがアメリカ・サンフランシスコ歌劇場で上演されます。9月に向けて、この暑い夏も、ますますクーラはパワフルに活動することとと思います。




≪ 7/7 スイス・ヴィンタートゥールでのクラシック・オープンエア、オペラガラコンサート ≫




Jose Cura =Tenor, conductor
Ana Maria Labin
Eva Vogel

スイスのチューリッヒ郊外の街、ヴィンタートゥールでの野外コンサートです。
当日はコンサート開始前に、会場である広い公園で、ピクニック・ディナーの予約販売があったり、いろんな売店が出たりして、テーブルやシートを敷いて食事を楽しんだようです。
また開始後も、前の方のイス席の他に、後方や側方では、芝生の上で好きなスタイルで鑑賞できたようです。






主催者のフェイスブックに投稿されたコンサートの動画のリンクを2つ。この他にも、公式FBには、遠くからのカメラではありますが、コンサート前半部分が収録された録画もアップされています。クーラの歌やトーク、指揮するところもあります。クーラ指揮のサムソンとデリラの間奏曲はなかなかの迫力でした。興味がおありの方はどうぞ。

●クーラは指揮者も兼ねていたようで、共演の女性歌手2人の歌を指揮しています。



●クーラの「誰も寝てはならぬ」。野外フェス・ヴァージョン(笑)で、最後のVincerò!は思いっきりのロングトーンです。

 
≪ 7/10 クロアチアのザグレブ・クラシック2018、フィナーレ ≫




TUESDAY, 10 July 2018 at 21:00
King Tomislav Square

Zagreb Classic Festival Orchestra
José Cura, tenor
Evelin Novak, soprano
Dian Tchobanov, conductor


クロアチアの首都ザグレブでのサマーフェスティバル、最終日のコンサートです。
公式FBにたくさんの写真がアップされています。大勢の観客がコンサートを楽しむ様子や舞台上のクーラや共演者の写真など、たっぷりと70枚。
今回のトップの画像も、ここからお借りしています。右上のFマークをクリックするとすべての写真をFB上で見ることができます。




同じザグレブのコンサートから、共演したオーケストラのFB掲載の写真。




こちらは非公式ですが聴衆が録画してYoutubeにアップされたものです。

●西部の娘、ジョンソンの「やがて来る自由の日(Ch'ella mi creda libero e lontano)」

気の毒なことに、野外コンサートならではのアクシデントに襲われるクーラ。顔のまわりを飛び回る蚊を追い払いながらのジョンソンのアリア・・。
別な動画のなかでこれについてのクーラのコメントも。20年前、やはり野外コンサートでアリア中に蚊を吸い込んでしまったことがあり、5分中断を余儀なくされたとか。ユーモラスに語っていましたが、その時はさぞかし大変だったことでしょう。ということで、蚊を追う手の動きも、どことなくジョンソンの動作らしくみせるあたりが、クーラらしい(笑)

Jose Cura koncert part1 of 2 Zagreb classic koncert 10.7.2018



●トスカのカヴァラドッシのアリア「星は光りぬ(E lucevan le stelle)」

Jose Cura koncert part2 of 2 Zagreb classic koncert 10.7.2018



●プッチーニの蝶々夫人とラ・ボエームから、それぞれ美しい二重唱を。

クーラはこの2つのオペラに出演することはもうありませんが、こうしてコンサートでは歌ってくれるのでうれしいです。
実は私は、クーラが歌うこの2つの二重唱が大好きで、非公式ながら動画をアップした見知らぬクロアチアの方のFBに、お礼を書き込んでしまったほどです。
前半の蝶々夫人と後半のボエームの間、2人が拍手に応える時間があり、しばらく間隔があります。

Madama Butterfly duet , La boheme duet












≪ 7/13 ハンガリー・ヴェスプレームフェスティバル 2018 OPERAEST ≫






José Cura
Miklósa Erika Kossuth
Ramón Vargas
Rost Andrea
Conductor: Balázs Kocsár

ハンガリーの美しい古い街、ヴェスプレームでの夏のフェスティバル。第15回目の記念として、今回は4人のオペラスターが出演しました。
チケットは早々にソールドアウトしていました。
クーラは第1回に出演して以来、今回が3回目の出演です。

2人のテノール、2人のソプラノによって、美しい二重唱やオペラアリアがたくさん歌われたようです。 → 告知編
写真がたくさんアップされています。動画はあまり出回っていませんが、フェス事務局に問い合わせたところ、終了後に動画も公開する予定だと回答してくれました。
DVDなどまとまった形で公式動画がリリースされることを願っています。楽しみに待ちたいと思います。


●フェス公式FBにアップされた写真。60枚近くあります。
二重唱の写真がたくさんです。
特に今回、クーラは初めて、モーツアルトのドンジョバンニに挑戦(!)、ドン・ジョヴァンニがツェルリーナを誘惑するシーンの「お手をどうぞ」を歌いました。
そのため写真も、なかなかセクシーな表情です。





●同じくヴェスプレームフェスの舞台の様子。カメラマンのFBより。




●ヴェスプレームフェスの後に、クーラがインスタに投稿したラモン・ヴァルガスの珍しいツーショット。

With my colleague Ramón Vargas today in Veszprém!

José Curaさん(@josecuragram)がシェアした投稿 - <time style=" font-size:14px; line-height:17px;" datetime="2018-07-14T00:21:59+00:00">2018年 7月月13日午後5時21分PDT</time>



●ヴェスプレームフェスのコンサートの前に、クーラとアンドレア・ロスト、エリカ・ミクローザ

A VeszprémFestet sem hagytuk ki... #rostandrea #josecura #miklosaerika #veszpremfest

Kultúrpartさん(@kulturpart)がシェアした投稿 - <time style=" font-size:14px; line-height:17px;" datetime="2018-07-13T17:05:07+00:00">2018年 7月月13日午前10時05分PDT</time>










*画像はフェスティバルやクーラ、出演者のFBからお借りしました。
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(レビュー編)2018年 ホセ・クーラ、ヴェルディのナブッコをプラハで演出 / Jose Cura directs Verdi's Nabucco

2018-07-08 | 演出―プラハのナブッコ




6月28日に初日を迎えた、ホセ・クーラ演出のプラハのナブッコ。プルミエ公演は観客から喝采を受け、大成功したようです。
劇場や出演者、クーラのSNSで、喜びの報告があがっていますので紹介します。

また、いくつかレビューがでています。レビューの方は、高く評価しているものもある一方で、「美しい、しかし活気が不足」など、舞台上の動きが静的すぎることなどへ批判的な意見もみられました。現地の観客の反応も、出演者の手ごたえもとても良いようですので、今後、上演を重ねていくなかで、さらに良い舞台になるのではないかと思います。

今回、演出家としてのクーラの姿に焦点をあてた記事もいくつかありました。
主演のナブッコを歌っているバリトンのマルティン・バルタさんがクーラの演出について語っているインタビューと、インターネットのオペラ情報サイトの記事などから抜粋して紹介したいと思います。

(*舞台の写真は、ニュース動画より)





Musical preparation: Andreas Sebastian Weiser
Direction, set and light design: José Cura
Costumes and co-stage designer: Silvia Collazuol
Co-lighting designer: Pavel Dautovský
Chorus master: Adolf Melichar
Dramaturgy: Jitka Slavíková
The State Opera Chorus and Orchestra

Nabucco: Martin Bárta , Miguelangelo Cavalcanti
Abigaille: Anda-Louise Bogza , Kristina Kolar
Fenena: Veronika Hajnová , Ester Pavlů , Jana Sýkorová
Ismaele: Jaroslav Březina , Josef Moravec , Martin Šrejma
Zaccaria: Oleg Korotkov , Jiří Sulženko , Roman Vocel

≪公演予定≫
2018年――6月28、29日、7月1、3日、9月13、15日、10月30日、11月20日
2019年――3月4、18日、4月15日、5月14日、6月11、22、25、29日





*追加 劇場がYouTube公式チャンネルに予告編を掲載していました。美しい舞台と衣装、印象的な照明、最後にカーテンコールの様子もあります。

Nabucco v režii Josého Cury



≪初演成功の喜びを報告――SNSより≫


●プラハ国民劇場のFBにアップされたカーテンコールの画像。晴れやかな出演者の笑顔、喝さいを受けるクーラの写真も。
右上のFマークをクリックすると、直接、劇場のFBページで多くの写真を見ることができます。




●初日の舞台終了後に、祝賀レセプションがもたれたようです。その時の写真も、劇場のFBにたくさんアップされました。




●初日後にクーラがFBにアップした写真です。
――クーラのメッセージ
「ナブッコは終わった。 大成功!!! 国民劇場のすべての人たちの努力と献身に感謝!また近いうちに会いしましょう!
(何人かのエキストラと一緒に写真:素晴らしいプロフェッショナルで素敵なみんな)」




●こちらもクーラのFBから。
――クーラのメッセージ
「舞台を清掃する女性と。私が彼女に、舞台セットをきれいに保ってくれていることへの感謝を伝えた時、彼女には信じられなかった。
 すべての人たちが公演の成功に貢献している!」



この他にも、出演者、コーラス、劇場スタッフ、関係者やエージェントなど、いろんな人たちが初演の成功を喜び、インスタにクーラとのツーショットを投稿していました。










≪レビューより≫


●表現力豊かなビジュアル、独像的な作品

全体的としては、ホセ・クーラのナブッコに感謝しなければならない。
彼は非常に具体的かつ独創的な作品を制作しており、想像力豊かな快適なビジュアルと従来の一切を含めたコンセプトを非常にうまく組み合わさせている。
 
一方で、クーラはナブッコに敬意を表し、それを阻害する演出を行わなかった。かなり断片的に構築された静的な物語で、刺激的なシーンはなく、クーラがあまり指示していないことは事実だった。
(「casopisharmonie.cz」)








●美しいナブッコ、しかし活気が不足

カラフルな歌、衣装、セットによる壮大なキャンバス。しかしステージを越えた言及やインパクトには欠ける。

その点で、それは壮観だった。クーラがこのセットを設計した。遠近法による台形のセットで、アクションをフレーム化し、観客の視点を引き込む。
それを回転させ、屋外の設定を示すために表面をあらわにし、大胆なテーマにもとづくバックライトによって強化される。

衣装担当のCollazuolはロシアの画家ワシリー・カンディンスキーを衣装のインスピレーションとして引用した。また、ストーリーやキャラクターを強調する明るい原色が使われた。それらは、アビガイッレが緋色の魔女のように見える彼女の最初の登場の際のように、息を呑むかもしれない。または、控えめな青/善良な男、赤人/悪者、マゼンタ/軍事構成のように・・。
それらはすべて一緒になり、セット、照明、衣装の思慮深く統合された融合として、華麗である。

しかしそれでは、静的なプレゼンテーションはなぜだろうか?時には歌手には全く指示が与えられていないように見えた。
(「bachtrack.com」)








≪出演者からみた演出家クーラ――ナブッコ役マルティン・バルタ氏インタビューより≫

Q、ホセ・クーラとのコラボレーションは?ほとんどの音楽愛好家が彼を著名なテノールとして知っているが、彼はここで演出家とステージデザイナーだ。

A、(バルタ氏)もちろん、彼は歌手、作曲家、指揮者であるだけでなく、あらゆる分野におけるアーティストだ。彼は音楽から舞台・劇場に関してまで、あらゆることができる。クーラは経験豊かな人で、あらゆる面で私たちをサポートすることができた。彼は私たちにとってロール・モデルであり、私たちにアドバイスを与えてくれた。

演出家として、彼は非常に良い。彼は個々にそれぞれのところに来て、私はそれが本当にスマートだと思う。
このことは彼への信頼を強め、私たちは彼に最高のものを与えることができると感じている。彼は私たちをすべて自然に連れていく。

アンサンブルは共通の目的に取り組んでおり、彼の提案やアイデアは論理的であるため、彼の考えを行動に移したいと考えている。ホセ・クーラは、まさにアーティストとして私たちを引っ張って行く。ミュージシャン、歌手、指揮者のいずれであろうと。

コラボレーションは素晴らしかった。私は言わなければならない――本当に残念だ、私のキャリアの中で初めて、リハーサルが終わったことが悲しかった、と。

(「radio.cz」)








≪演出家クーラが得てきた高い評価――オペラ情報サイトの記事より≫

――今週のアーティスト:ホセ・クーラ、プラハで「ナブッコ」をマークする

長年にわたり、ホセ・クーラは、 "オテロ=Otello"、 "タンホイザー=Tannhauser"、 "ピーター・グライムズ=Peter Grimes"、 "サムソンとデリラ=Samson et Dalila"のサムソンのタイトルロールのような役柄を歌う、彼の世代のドラマティックなテノールの1人として際立った存在だ。演技と一体となった彼の優れた歌唱能力は、いくつかの忘れられないパフォーマンスを作りあげた。

しかし、クーラは著名なパフォーマーになっただけでなく、 "オテロ"、 "道化師 / カヴァレリア・ルスティカーナ=Pagliacci / Cavalleria Rusticana"、 "ラ・ボエーム=La Rondine"、 "つばめ=La Rondine" "トゥーランドット=Turandot"など、レパートリーで最も愛されている作品のいくつかを手がけ、世界でトップのオペラ演出家にもなった。

今週、彼はプラハ国立歌劇場で初めての "ナブッコ"を演出し、彼の履歴書にもうひとつの作品を加える。
この何年もの間に、クーラの舞台芸術は、批評家に注目され称賛されてきた。彼らは、「クーラは、パフォーマンスを構成するさまざまな機能のすべてを独力でコントロールしている」、「クーラは演出家の技能を習得した」、また「統合された総合的な芸術作品を創作し手がけるアーティスト」と指摘した。
このような高い評価を得て、彼の今後のプロダクションが聴衆と批評家を喜ばせるのは間違いないことだろう。
 
そして、プラハに行けない人々のために、クーラはタリン・オペラで演出と指揮を行い(9月、エストニア)、サンフランシスコ・オペラで「Cavalleria Rusticana」と「Pagliacci」のプロダクションを復活させる。
また、夏の間、ヨーロッパを回ってコンサートツアーを続ける。

(「operawire.com」)






●初演の舞台を鑑賞した方がインスタに投稿したもの。
これによると、開幕前の舞台には、緞帳がない代わりに、薄い幕がかかっているようです。
そしてそこに、バビロニアの楔形文字の石板が投影されていたようですね。

Kultuuura ❤❤❤ #culture #opera #verdi #nabucco #giuseppeverdi #hudebnidivadlokarlin #statniopera #classicalmusic #kultura #klasickahudba #vaznahudba #nightlife #vecernizivot #nekdoparinekdosekukturnevzdelava

Johanka Odstrčilíkováさん(@johankaod)がシェアした投稿 - <time style=" font-size:14px; line-height:17px;" datetime="2018-06-28T17:01:13+00:00">2018年 6月月28日午前10時01分PDT</time>












プラハのTVニュースで紹介されたナブッコのプロダクション。
主なシーンの様子、クーラのインタビューなどがあります。画像をクリックすると動画のページにリンクしています。





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クーラが初めて手がけたナブッコの演出。初期のヴェルディの作品、クーラも以前のインタビューで、このナブッコは難しい作品だと語っていました。
私がインタビューや記者会見などの報道を読んで理解したのは、今回、クーラは、台本を忠実に解釈し、あえて、大胆な読み替えや観客を驚かせる舞台演出などをおこなわず、ヴェルディが新たな挑戦を始めた人間ドラマに焦点をあて、それを浮き彫りにすることをめざしたのだということです。そのためセットや衣装は、特定の歴史や地域を示さず、抽象的で、ストーリーやドラマに直接的に介入したり説明するものではなく、色彩によって感性に訴えるという手段をとったのだと思います。これは、これまでのクーラのアプローチとは違った新しい挑戦でもあったのではないでしょうか。

独創的で想像力豊か、特別な美意識に貫かれている・・など、どのレビューも舞台の美しさについては高く評価していました。一方で、ドラマの迫力、インパクトなどについては、いくつかのレビューが弱点を指摘していたのも事実です。

クーラ自身は、セットのないコンサート形式であろうと、どのような演出、セットであっても、演技と歌唱の力で、キャラクターの存在感とドラマを描き出す圧倒的な力量をもつパフォーマーです。もしこのナブッコにも、クーラ自身が出演していたら、レビューの評価も大きく変わっていたのかもしれません。また演出家クーラは今回、脚本と音楽に内在するドラマを描くために、あえて「静的」で動きの少ない演出方法を選択し、歌手の歌と歌詞そのものをストレートに伝えたいと願ったとも考えられます。

これが好きか、嫌いか、説得力をもって成功したか、否かは、実際に生の舞台を見て、観客それぞれが感じとり、判断する以外にありません。

紹介したナブッコ役のバルタ氏が語っている中身はとても大事だと思いました。クーラはまさにアーティストとして、論理的な指示、アドバイス、リーダーシップによって、出演者、スタッフたちから信頼を得て、素晴らしいコラボレーションをつくり、リハーサルが終わるのが悲しいと思わせるほどの、芸術的に実り豊かな時間をともに作り出していました。

今回紹介したSNSの写真も、クーラを中心とした、出演者、プラハの劇場関係者、スタッフの団結、パートナーシップのつよさを示しています。劇場の出演者だけでなく、オケ、合唱、エキストラ、スタッフ、さらには舞台清掃の係の人にまで、クーラは目を配り、みんなで舞台を作りあげるリーダーシップを発揮していたことがうかがわれます。こういう人間関係、連帯関係をつくり、それぞれが力を発揮できる場をつくるというのは、クーラの多面的な能力のうちでも、抜群にユニークなものの1つではないでしょうか。これからもクーラがどんな挑戦をしていくのか、楽しみです。




*写真は劇場や関係者などのSNSよりお借りしました。
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(告知編)2019年 ホセ・クーラ、ケルンでトスカに出演 / Tosca in Köln (Cologne)

2018-07-05 | オペラの舞台ートスカ




ホセ・クーラは、演出・舞台デザイン、照明を手がけたプラハでのナブッコの初日(6/28)を成功させ、現在は、7月7日から始まる夏のコンサート・ツアーに向けた準備中だと思われます。
→ プラハのナブッコについては、いくつかの記事にまとめています。

現在、公表されているクーラの公式カレンダーによれば、夏以降、年内の公演はコンサートだけで、オペラの日程は入っていません。また、来年2019年の予定はまだ掲載されていません。 → 掲載されました 2019カレンダー

しかしケルン歌劇場の2018/19シーズンプログラムに嬉しい発表がありました。
2019年6~7月に、プッチーニのトスカのカヴァラドッシ役で、クーラが5ステージ出演するということです。今回はこのトスカの公演について、劇場HPから日程などを紹介したいと思います。

クーラは近年、歌手以外の分野の活動が大きく発展し、今年は現在プラハで上演中のナブッコに加えて、9月にはバルト三国のエストニアのタリンでプッチーニの西部の娘の演出・舞台デザイン、そして指揮も行います。また同じ9月には、クーラのカヴァレリア・ルスティカーナと道化師のプロダクション(2012年リエージュで初演)がサンフランシスコオペラでシーズンの開幕を飾ります。このように演出家として、また指揮者や作曲家としての活動の比重が、近年とても高まり、オペラ出演は以前に比べるとかなり少なくなっています。

クーラの数少ないオペラ公演、しかも似合いのカヴァラドッシ役・・おすすめです。興味と条件のおありの方は、来年の初夏のケルン、ぜひご検討されてみてはいかがでしょうか。
*なお、ケルン歌劇場の建物は長期に改修工事中で、まだ仮会場で上演されているようです。上演会場については確認が必要です。














●クーラもガラ出演した2012年初演のプロダクション

このケルンのトスカのプロダクションは、2012年5月が初演です。実はこの初演の際、5月31日の1公演だけにクーラがカヴァラドッシで出演していたのでした。なのでクーラにとっては縁のあるプロダクションです。
舞台の様子は、劇場がアップした紹介動画で見ることができます。この動画ではクーラは登場していません。

Oper Köln - Tosca




●クーラとケルン

ケルンは現在ドイツ第4の都市であり、長い歴史、文化と産業の中心地のひとつとして繁栄してきた街だそうです。このケルンの街、そしてケルン歌劇場には、クーラはこれまでも何度か出演してきています。

1997年にクーラが初めて、ドイツで5か所のコンサートツアーを行った際にも、ケルンで公演しています。またその後も、2001年、2005年とコンサートで訪れているようです。
2005年のコンサートは、アンナ・ネトレプコとの共演だったようです。




オペラ出演では、2007年10、11月の、カヴァレリア・ルスティカーナと道化師のダブルビルでケルン歌劇場に出演したのが初めてのようです。






2008年には、クーラの初の本格的なオペラ演出となるヴェルディの仮面舞踏会を、このケルンで行っています。




2012年には、今回出演するプロダクションの初演にガラ出演。
そして一番最近の出演は、2015年5~6月のヴェルディのオテロのタイトルロールでの出演です。







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こうしてみると、ケルンでは、クーラの魅力が発揮されるとても興味深い公演が行われてきたように思います。
ケルン歌劇場のスタッフとの連携もとても良いのではないかと期待されます。公演が大きな成功を収めることを願っています。


最近クーラは、自分の歌手としてのキャリアがいずれ終わるということについて、たびたび言及しています。実際、徐々に、指揮や演出、作曲に比重を移しつつありますし、オペラも出演する演目をかなり限定しているように思われます。

クーラも55歳、確かにテノールとしてはキャリアの後半にいるのはあきらかです。しかし最近のライブ放送などを聞いた範囲では、声、歌唱、存在感と演技力、表現力の総合的なレベルにおいて、黄金期といえるのではないかと思います。
ファンとして私が、クーラの生の公演で、これだけはどうしても見ておきたいと願っているのが、このトスカのカヴァラドッシであり、オテロであり、アンドレア・シェニエ・・です。このケルンは時期的に難しそうですが、ぜひその機会が近いうちに得られることをつよく願っています。



こちらは改修中の本来の歌劇場のようです。


*写真は劇場HP、報道などからお借りしました。
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