人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

(告知編)ホセ・クーラ、2019プッチーニ・フェスティバルのトスカに出演

2019-04-27 | 2019年プッチーニ音楽祭

 

 

                                                               *トップの画像は2014年ドイツ・ハノーファーでのトスカの舞台(コンサート形式)より

 

まだホセ・クーラの公式カレンダーは記入されていませんが、新しい出演予定のニュースが入ってきました。*公式発表ありました!

この夏開催される2019年プッチーニ・フェスティバル(プッチーニ音楽祭)です。作曲家ジャコモ・プッチーニが生前に住み、仕事場を構えていたイタリアのトッレ・デル・ラーゴという町で、プッチーニのオペラ上演のために開催されています。プッチーニの故郷で生家があるルッカも近くです。1930年に始まり、その後、中断もありつつ、1966年からは毎年開催されているそうです。

演目はトスカで、クーラは、主人公トスカの恋人のマリオ・カヴァラドッシ役です。クーラがこれまで演じたオペラのキャラクターのなかでも、このトスカのカヴァラドッシは、出演回数も非常に多く、またクーラ自身が、共感できる役柄だと語っています。共和主義者で、逃げてきた政治犯をかくまい、拷問にも黙秘を貫いて、最後には銃殺されてしまう理想主義者です。信念のある人物、いかなる圧力、攻撃にも、死を賭しても、自分らしい生き方を手放さないというカヴァラドッシの姿は、クーラ自身の生い立ち、生き方とも共通する要素があり、ぴったりの役柄です。

 → クーラの「トスカ」についての解釈、カヴァラドッシについて紹介した記事

実はクーラがトスカのカヴァラドッシにデビューしたのは、1995年のこのプッチーニ・フェスティバルだったそうです。91年にアルゼンチンからイタリアに移住したクーラ。数年後のその当時は、テノールとしての国際的なキャリアが急速に開けつつあった時期です。その後1999年にもカルメンで出演しているようです。

初出演から24年、四半世紀近くたち、56歳となって、プッチーニフェスティバルに登場です。

現在わかっている情報についてまとめてみました。 


 

 

 ≪公演の概要≫

今年の第65回プッチーニ・フェスティバルは、2019年7月6日から8月24日までの間、開催されます。

 → プッチーニ・フェスティバル公式HP

上演されるプッチーニのオペラは、「西部の娘」、「トゥーランドット」、「ラ・ボエーム」、「蝶々夫人」、「トスカ」、「妖精ヴィッリ」の6演目。いずれも美しいメロディにあふれ、ドラマティックな物語で人気のオペラです。このほかにも、イタリアのソプラノ歌手カーティア・リッチャレッリのキャリアへのオマージュのコンサートや、バレエ公演などもあるようです。

クーラが出演するのは、8月2日、11日、18日のトスカ。8月24日はダブルキャストの別の出演者になります。

 *クーラの公式カレンダーに、8月2日の公演も追加されました。

トスカは、ロシアのソプラノ、マリア・グレギーナ。クーラとグレギーナは、2006年にボローニャ歌劇場公演のアンドレア・シェニエで一緒に来日したこともあります。ともに長いキャリアをもち、共演回数も多いです。


この写真は、日時は不明ですが、グレギーナとクーラのトスカのようです。若いです。

 

 

 ●「トスカ」

 

Tosca
2 11 18 and 24 August
On the podium Dmitrij Jurowsky and Hirofumi Yoshida / Directed by Dieter Kaegi

 ≪Cast≫ 

  • Tosca=  Maria Guleghina and Lacrimioara Cristescu
  • Cavaradossi= José Cura and Hovhannes Ayvazyan
  • Scarpia= Carlos Almaguer and Stefan Ignat

 

トスカの初演(1900年1月14日、ローマ)のためにつくられたポスターを紹介するフェスティバルのFB記事 

 

 

 

≪フェスティバル会場≫

会場は、 イタリア・トスカーナ地方の町トッレ・デル・ラーゴのマサチュッコリ湖畔に建つ野外劇場。2008年にオープンし、3200席もあるそうです。クーラが1995年に出演した当時は、まだこの豪華な野外大劇場は造られておらず、プッチーニの家の近くの広場におかれた特設ステージが会場だったとのことです。それにしても素晴らしいロケーション。写真を見ただけでも行ってみたくなります。


 

 

野外劇場と湖、その周辺を上空から撮影した動画です。この美しい風景、湖畔の水の音に囲まれて、プッチーニはあの多くの名作を作曲したのですね。

Gran Teatro all'aperto G.Puccini TORRE DEL LAGO

 

 

≪出演者紹介≫

●公式FBに掲載されたクーラの紹介

1995年にこのフェスティバルでカヴァラドッシにデビューしたことなどが書かれています。コメント欄には、「必ず行く」「私も一緒に!」などや、95年の公演に「私はそこにいた」「私も!」などのコメントが書き込まれています。クーラは1991年にアルゼンチンからイタリアに移住して、5年ほど住み、そのイタリアでテノールとして本格的なキャリアを開始していますから、初期の頃からクーラを知って応援してくれていたファンがたくさんいるのだと思います。

 

●マリア・グレギーナ

グレギーナは今年のフェスティバルには、トスカと西部の娘の2演目に出演するようです。

 

 

≪その他の演目≫

クーラが出演するトスカ以外のプッチーニのオペラは、以下の5つです。 

 

●「西部の娘」

La fanciulla del West

12 and 26 July

Conductor   Alberto Veronesi and Gianna Fratta
Direction, scenes and costumes by Renzo Giacchieri
Maria Guleghina and Tamar Iveri
Hovhannes Ayvazyan and Alberto Mastromarino

 

●「トゥーランドット」

Turandot

13 and 19 July, 17 August

Conductor Marcello Mottadelli
Directed by Giandomenico Vaccari
Veronika Dzhioeva and Lubov Stuchevskaya Valeria Sepe and Claire Coolen
Zoran Todorovich

 

 ●「ラ・ボエーム」

La bohème

20 July, 3 and 10 August

Conductor Mārtiņš Ozoliņš
Directed by Alfonso Signorini
Hui He and Angela Gheorghiou = Mimì
Jean François Borras and Angelo Fiore = Rodolfo
Ivana Canovic and Micaela Sarah D'Alessandro = Musetta
Nikola Mijailovic and Pierluigi Dilengite = Marcello

なんと、ミミの役に、ホイ・ヘーとアンジェラ・ゲオルギュー!

ゲオルギューを紹介したFBの記事

 

●「蝶々夫人」

Madama Butterfly

27 July, 12 and 23 August

Conductor Alberto Veronesi and Nir Kabaretti
A new production by Stefano Mazzonis di Pralafera
Hiromi Omura and Karine Babajavyan = Cio Cio San
Stefan Pop and Angelo Fiore = Pinkerton Bruno De Simone and Stefan Ignat = Sharpless

蝶々夫人には、日本のソプラノ、大村博美さんが出演されます。クーラは大村さんとは、2011年、仏ナンシーでの東日本大震災復興支援のコンサートで共演したことがあります。

 → 大村さんとクーラが出演した東日本大震災復興支援チャリティーコンサートの記事

 

●「妖精ヴィッリ」

Le Villi

August 16th

Conductor Keri-Lynn Wilson
Directed by Csaba Kàel
Dafne Tian Hui, Carlo Ventre and Raffaele Raffio

 

 

≪ホセ・クーラのマリオ・カヴァラドッシ≫

最後に、クーラのカヴァラドッシの舞台から、「星は光りぬ」など、関連動画をいくつか。(追加あり)

 

●1995年プッチーニ・フェスティバルでのロールデビュー

95年の動画はないものと思い込んでいましたが、以前見たことのあるこの動画が、どうやら95年のプッチーニ・フェスティバルの時のようです。画質も音質もよくないし、クーラのアリアの部分ではなく、逮捕されたカヴァラドッシがスカルピアに尋問されているシーンだけです。とはいえクーラの声の強さ、豪胆な面構え(笑)がなかなかです。 

Franco Giovine Scarpia Duetto "Tal Violenza" Tenore J.Cura

 

●1996年ウィーン「妙なる調和」

プッチーニ・フェスティバルでのロールデビューの翌年、ウィーン国立歌劇場に初出演した時のトスカから。若々しく強靭な歌声です。音声のみ。

Jose Cura "Recondita armonia" 1996 Tosca

 

●2000年バーリ「ヴィットリア!」

DVDになっている2000年のイタリア・バーリでの舞台から、血まみれ、渾身の叫び「勝利だ!」

 

 

●2000年ブダペストでのコンサートより「星は光りぬ」

コンサートですが、年齢的にも、容姿、声、カヴァラドッシそのもののように思えます。

José Cura E lucevan le stelle Cavaradossi Tosca Budapest

 

●2014年ハノーファー「星は光りぬ」

比較的最近のクーラの動画。ドイツ・ハノーファーの野外オペラ「トスカ」から。円熟の表現力です。

Jose Cura "E lucevan le stelle"

 

 


 

夏休みの時期なので、もう少し早くわかっていれば行きたかった・・と思います。カヴァラドッシは、私にとって、クーラの生の舞台をぜひ鑑賞したい演目のひとつ。ただ野外ということでリスクもあります。とはいえ、あの美しいロケーションの野外劇場。天候にさえ恵まれれば、本当に素晴らしい舞台になることでしょう。夏のご旅行でイタリアをご検討中の方、行かれるご予定の方がいらしたら、ぜひご感想などお聞かせいただければありがたいです。

 

*画像はフェスティバルFB,HPなどからお借りしました。トップとラストはハノーファーのトスカから。

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2019年 ホセ・クーラ、オペラアリア・コンサート in モスクワ

2019-04-21 | コンサート ②

 

 

ホセ・クーラは、2019年3月14日、モスクワでオペラ・アリアとデュエットのコンサートに出演しました。1日だけの公演でしたが、チケットは完売、当日も満席、観客は大喝采、大興奮の一夜だったようです。レビュー、SNSなどに画像や動画がアップされていますので、いくつか紹介したいと思います。

このコンサートは、ロシアのソプラノ、ヒブラ・ゲルズマーワさんが、毎回ゲストを招待して行う一連のコンサートのひとつだったようです。場所は、ロシアのチャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院大ホール。

クーラ出演のきっかけは、2018年3月3日に、ドレスデン歌劇場のオテロに病気のテノールに代わってクーラが急きょ出演したことにありました。この時、ヒブラさんがデズデモーナでロールデビューした公演で、クーラのオテロと共演し、突然の交代にも関わらず素晴らしい舞台になったことから、コンサートにクーラを招いてオテロの場面を歌いたいと考えたようです。

 → 2018年ドレスデンのオテロについてはこちらの記事で紹介しています。

 

  

 

 



 

≪プログラム≫

 

このプログラムを見ると、クーラは、コンサートの冒頭、道化師のプロローグを歌い、その後、前半にカニオのアリア、ヴェルディの運命の力の二重唱などを歌ったようです。後半は、オテロの第3幕、4幕、デズデモーナとの場面を歌いました。

指揮は、同じくドレスデンのオテロで共演したダニエレ・カッレガーリさんです。

 

 


 

≪コンサートの様子からーー写真と動画≫


終了後、大興奮、大満足の観客から、たくさんの画像、動画がSNSにアップされていました。"何という情熱、愛、ドラマティック!"、"コンサートなのに、これほど刺激的なオテロを見たことがない!素晴らしい!"などの感想が添えられていました。

レビューでも、"ヒブラ・ゲルズマーワとホセ・クーラがセンセーションを巻き起こした""このコンサートは、ステージ上の素晴らしいアーティスト、完璧なパフォーマンス、素晴らしいオーケストラ、そしてファイナルでの拍手の嵐など、一連の歴史的なものだった"と書いたものなど、会場内の熱狂を伝えていました。

ヒブラさんとクーラは、演技や歌唱のスタイルでとても相性が良いように思われます。キャラクターのドラマを伝えることを大切にし、コンサートであっても役柄に入り込んで演技し、歌う、自然な演技、役柄にふさわしい自然な体の動きと表情、という点で共通していて、ドレスデンのオテロや今回のコンサートでも素晴らしいケミストリーを生み出したようです。イタリアオペラの情熱を熟知したベテランのカッレガーリさんとともに、素晴らしいトリオで、観客を一体にしたコンサートになったことが、SNSなどからもよく伝わってきました。

ネットにアップされている写真と、クーラが歌ったものを中心に動画を紹介します。動画は劇場内で撮影されたもので画質も音質もあまりよくないですが、雰囲気を伝えてくれています。

  

●ヒブラさんがFBにアップした写真

 

●こちらはロシアのメディアのFBより

 

●クーラが歌う「道化師」のカニオのアリア「衣装をつけろ」

Leoncavallo "Pagliacci"

 

●前半のハイライト、ヴェルディの「運命の力」から第1幕の二重唱

第1幕、父に結婚を反対され悩むレオノーラと、屋敷に忍び込み駆け落ちしようと説得するアルヴァ―ロの二重唱。クーラは1999年にスカラで、ムーティ指揮でこの役を歌っていますが、それ以来、オペラでは歌っていません。コンサートでも珍しいのでは?

Verdi "La Forza del Destino"  Leonora and Alvaro 

 

●後半、ヴェルディの「オテロ」より、第3幕のオテロとデズデモーナ

イアーゴに誘導され、妻デズデモーナへの疑いをもつオテロ。ただ純粋にカッシオの許しを願うデズデモーナ、一方のオテロは自分が贈ったハンカチはどこにいったかと執拗に問い詰める。話は噛み合わず、オテロだけが疑念を深めていく。コンサートであるが、2人の演技と歌唱はオペラの舞台さながら。とりわけクーラの表情には厳しく深い苦悩と怒りが。大迫力の二重唱。

Verdi "Otello" Act3

 

写真からも、迫力の顔つきや体、すっかり役に入り込んでいる様子がわかります。 

 

ヴェルディの「オテロ」第4幕、デズデモーナの柳の歌」~「アヴェマリア」、オテロの登場~オテロの死「私を恐れることはない」(“Niun mi tema”)

ヒブラさん自身がアップしてくれたもので、画質も音質も良く、約30分の動画です。コンサート用に、オテロとデズデモーナ以外の部分をカットして編曲してありますが、ほとんど4幕全体です。オテロの登場は後半16分頃から。見ているうちに、コンサートとは思えないほどドラマに引き込まれます。

Hibla Gerzmava and Jose Cura. Final scene from the Opera G.Verdi "Otello"

 

●アンコール プッチーニ「 ラ・ボエーム」より、ロドルフォとミミの二重唱「愛らしい乙女よ」(”O suave fanciulla”)

ヴェルディづくしのコンサートでしたが、アンコール曲には、プッチーニから「ラ・ボエーム」の美しい二重唱が歌われました。大喝采のうちにプログラムを終了し、とてもリラックスした雰囲気でアンコールに応えています。ユーモラスで、2人の親密さ、息がぴったり合った様子が伝わります。

Hibla Gerzmava, Jose Cura and conductor Daniele Callegari

 

●ロシアのメディアのFBより、カーテンコールの動画や画像

 

 


 

 ≪取材を受けるクーラ≫

モスクワ滞在中に、マスコミの取材もいくつか受けたようです。 

 

●テレビインタビューの取材風景 

 

●インターネットにアップされたスペイン語のインタビュー

こちらもロシアのメディアでスペイン語版。とてもおもしろそうなインタビューですが、スペイン語のため、内容は理解できず・・。

"En los tiempos de la inmediatez es difícil que el arte clásico entre en la sociedad"

 

 


 

 

コンサートは大成功、モスクワ滞在は、なかなか盛りだくさんだったようです。

昨年ロシアのマリインスキー劇場でハウスデビューしたクーラですが、今後また、ボリショイ劇場など、モスクワでもオペラ出演が実現してほしいです。ヒブラさんとのオテロの舞台をぜひ見てみたいものです。

今年は上海で、クーラのオペラアリアコンサートが予定されています。いまだに日程、場所が不明なのが心配ですが、このモスクワのコンサートのような盛り上がりが期待されます。楽しみに待ちたいと思います。

 

観客の大喝采に応えて笑顔の3人

 

終了後、リラックスして記念撮影のようです。

  

*画像はヒブラさんのFB、報道などからお借りしました。

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(告知編)2019年 ホセ・クーラ指揮、プッチーニのオペラ「修道女アンジェリカ」

2019-04-18 | オペラの指揮

 

 

 

ホセ・クーラの次の公演は、指揮者としてのコンサート。2019年4月27日、ポーランドでプッチーニのオペラ「修道女アンジェリカ」と、ポーランドの作曲家ルドミル・ルジツキの交響詩「アンヘリ」を指揮します。

このコンサートは、ポーランドのソプラノ、アーダ・サーリの名を冠した国際声楽フェスティバルの開幕を飾る特別コンサートで、翌日から14か国、81人がエントリーする声楽コンクールが開始されます。2年に1回開催されるこのフェスティバル、クーラは2015年にも同じ開幕公演に出演して、グスタフ・マーラーの交響曲第2番「復活」を指揮しています。

 →2015年 クーラによるマーラー「復活」の指揮を紹介した記事

「修道女アンジェルカ」はプッチーニの3部作(「外套」、「修道女アンジェリカ」、「ジャンニ・スキッキ」)のひとつですが、今回は「アンジェリカ」単独で、コンサート形式の上演のようです。出演者は、前回のコンクールで最終選考に残った若い歌手ということです。

会場は、ポーランドのルスワビツェにあるペンデレツキ音楽センター。ペンデレツキとクーラの関係については少し前の記事で紹介しましたのでご覧いただければ幸いです。

今回は、公演の概要とあわせて、事前の報道記事にクーラの短いインタビューが掲載されていましたので、そこから抜粋して紹介したいと思います。

 

 


 

●フェスティバルのポスター

  

●クーラの公演概要

April 27, 2019  Saturday hours 19:00

The European Center for Music Krzysztof Penderecki

Sister Angelica - Adriana Ferfecka (soprano) 
Aunt Księżna - Małgorzata Walewska (mezzo-soprano) 
Priors - Anna Lubańska (mezzo-soprano) 
Sitter Novice - Kinga Borowska (mezzo-soprano) 
Superior Novice - Agata Schmidt (mezzo-soprano) 
Sister Genowefa - Sylwia Olszyńska (soprano) 
sister Osmina - Monika Buczkowska (soprano) 
Sister Dolcin - Hanna Okońska (soprano) 
Sister Nurse - Jadwiga Postrożna (mezzo-soprano) 
Sisters Żebracze - Magdalena Czarnecka ,Barbara Grzybek (sopranos) 
Sisters Novice - Magdalena Pikuła , Dobromiła Lebiecka (soprano, mezzo-soprano) 
Sisters Świecie - Aleksandra Krzywdzińska , Ewa Kalwasińska (soprano, mezzo-soprano) 

Beethoven Academy Orchestra 
Polish Radio Choir 
Katowice Singers' Ensemble CAMERATA SILESIA 
Maria Piotrowska-Bogalecka  - choir preparation 
Anna Szostak  - band preparation 
JOSÉ CURA  - conductor

 

 

  


 

 

 ≪ホセ・クーラ、再びアーダ・サーリ・フェスティバルに≫

 

彼のキャリアの中で初めて、ホセ・クーラは、アーダ・サーリ・フェスティバルでオペラ「修道女アンジェリカ」のコンサートバージョンを指揮する。イベントはアーダ・サーリ国際声楽アートフェスティバルを開幕する。インタビューのなかで有名なテノールは、プッチーニの作品の官能性、親密さと血について話す。

 

Q、まもなく国際声楽アートフェスティバルで2度目の指揮をとる。ポーランドについて、どんな思い出が?

A(クーラ)、 前回、2015年12月にベートーヴェン・アカデミー・オーケストラを指揮した。
私は風邪をひいていて発熱のまま公演を行ったため、苦しかった記憶があるが、それは素晴らしいパフォーマンスだった。幸い、ミュージシャンは素晴らしく、病気の指揮者でさえもサポートする用意ができていた。
しかし、この優れたオーケストラとの最初のコラボレーション、マーラーの「交響曲第2番」の演奏は、私の指揮者のキャリアの中でも、今でも、最も満足できた瞬間のままだ。

 

Q、あなたの人生は歌うことと指揮に分けられる。 あなたをより喜ばせるものは?

A、私は自分の人生を分野で分けることについて話すのではなくて、その継続的な充実について話したいと思う。
今、30年以上たった後に再び作曲を始めたが、私は今、自分のルーツに戻ったと感じている。
オペラスターの生活は、特に素晴しい場合、おそらく非常にエキサイティングだが、同時に知的な意味では貧弱になることもありうる...他の分野に興味を持って、それらに対しても積極的でなければ。

 

Q、あなたはプッチーニのオペラを指揮した経験があるが、オペラ「修道女アンジェリカ」は初めて?

A、「蝶々夫人」( "Madama Buttefly")、「トスカ」( "Tosca")、「西部の娘」( "Fanciulla del West")のオペラを指揮し、「ラ・ボエーム」("La Bohème")、「トゥーランドット」( "Turandot")、「西部の娘」を演出した。しかし「修道女アンジェリカ」("Suor Angelica")は今回が最初だ。

 

Q、この作曲家(プッチーニ)との出会い、どう感じるのかを指揮者として説明すると?

A、プッチーニをうまく指揮することを許さないのは、主に官能性を強調することによって、彼の音楽の内部にある哀愁を伝えることに集中できないということだ。
指揮者は、親密で個人的な状況を示すことを恐れてはならない。強い感情に対処する能力がなければ、プッチーニを指揮するのは不可能だ。血、汗、恐怖、ヒロイズム、感受性、エロチシズム、泥くささ・・関連する、これらすべての感情は、基本的な意味においてだけでなく、心理的に深い言葉で表現されている。

 

Q、今後2019/2020シーズンでは、あなたはウィーン国立歌劇場の舞台で 「サムソンとデリラ」でサムソンの役に戻る。それはあなたの最大の創造物だと信じられている。再びこの役に直面することを嬉しく思う?

A、私はいつもサムソンの皮膚の中に入りこむ準備ができている。時の経過と、若い頃には理解していなかった人生のさまざまな側面の理解によって、私はサムソン、オテロ(ヴェルディ「オテロ」)、カニオ(レオンカヴァッロ「道化師」)、グライムズ(ブリテン「ピーター・グライムズ」)などのキャラクターの本質を捉えることができた。それが非常に深くなったので、それらを演奏することは、もはや単なる喜びではなくなり、真の努力を要することにもなっている。

「operalovers.pl」

 


 

「修道女アンジェリカ」は登場人物がすべて女声のオペラ。もちろんクーラはこれまで出演したことはなく(テノールの出番はないので当然)、指揮も今回が初めての挑戦だそうです。出演者は前回のコンクールの最終選考に残った人ということですから、若くて実力のある歌手がそろっていることでしょう。クーラは、オペラのドラマを大切にし、コンサート形式でも常に演技をつけて歌い演じています。なので、今回、指揮をするにあたっても、音楽面とともにドラマと感情をいかに表現するかを重視して行うのではないでしょうか。そういう面では、若手歌手にとって、とても重要で貴重な成長の機会になるのではなかいと思います。

会場となるペンデレツキ音楽センターは、単なる音楽ホールではなく、総合的な音楽教育のための機関のようです。CDなどの録音でも使われるようで、素晴らしい環境、素晴らしい設備が整っています。そのなかにある大ホールがコンサート会場です。

前回のマーラーの指揮の時には、全編の動画をクーラがホセ・クーラTVにアップしてくれました。その後、クーラはそのサイトを閉鎖してしまい、とても残念です。勝手にコピーしてアップするなどの行為が横行したためのようです。現在、クーラはiTunesなどを通じた音楽配信事業を始めていますが、今後、何らかの形で(CDや有料配信など含め)こうしたコンサートの様子も視聴できるようにしてほしいと思います。前回の記事でも紹介しましたが、音楽配信、とりわけストリーミングは、ほとんどアーティストの収入にはならないとクーラが指摘していました。何らかの形でアーティストの苦労に報いるシステム、遠くてコンサートには行けないけれど、視聴して応援できる仕組みが欲しいと切に思います。

 

*ペンデレツキ音楽センターのHPより


 

 

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ホセ・クーラ 再び、ラフマニノフ交響曲第2番のデジタル配信について

2019-04-13 | CD・DVD・iTunes

 

  

ホセ・クーラは、すでに以前の記事で紹介したように、今年(2019年)2月に、iTunesなどでラフマニノフ「交響曲第2番」をデジタル配信しました。

そしてこの間は、今後も新たな録音の配信を計画、準備しているとのことで、それにむけてFBで、購入・ダウンロードがうまくいっているのかどうか、世界各地のフォロワーに情報提供をよびかけていました。それに対するフォロワーのコメントから、ダウンロードするのではなく、定額聞き放題の「音楽配信」、ストリーミングサービスの利用者が一定数いて、そこで利用できないという声、利用を希望する声もあったようです。

こうしたことをふまえ、これらに関する回答と、この音楽配信の事業をめぐる現状と問題点などについて、クーラは昨日(2/11)に長文の記事をFBに掲載しました。クーラだけでない、業界全体としても、とても深刻で重要な課題だと思いますので、クーラの記事全文(英語)を紹介するとともに、概略を訳してみたいと思います。いつものように不十分さはご容赦ください。

  

 

クーラのFB投稿。画像にクーラのFB記事のリンクがはってあります。

 

 

「ラフマニノフの録音についてのお知らせ」(FB記事和訳)

すべての親愛なる皆さん。

私は一部の地域で録音を「聴く」ことができないという苦情を受け続けている。明確にしなければならないことがある。問題が別のことでない限り、この録音はストリーミングでは利用できない、という事実だ。購入し、ダウンロードすることだけが可能だ。あなたが購入し、永遠に持つことができるようにするためであり、このような低価格にしたのも、そのためだ。そしてまた、あなたが購入しない限り、その使用料はアーティストのものにはならない。

ストリーミングは多くの場合、無料、または他の場合、「すべてを含む」低い月額料金で利用できる。このような場合、唯一、利益を得るのはプラットフォームだけで、あなたが支払うお金は、そのようなプラットフォームなどで何千人ものアーティストの間で分けられるため、もし月に少なくとも1ドルが入れば、ラッキーということになる...。

それはお金の問題ではない、しかし正義(公正とか公平の意)の問題だ。なぜプラットフォームだけが、アーティストの仕事から恩恵を享受するのだろうか?このシステムを発明したとき、スティーブ・ジョブズは非常に頭が良かったーー今では誰もが音楽にアクセスすることができる。ここまではいい。しかし彼の天才は、多くのレーベルの失敗を招き、結果としてアーティストに悪影響を及ぼす。そして最後、アーティストが仕事をすると、その報酬として、システムによって罰せられる。

1つの例としてーー私が以前リリースしたドヴォルザークの歌曲は、聴衆のなかで大きな成功を収めた。しかし、2年以上が経ったが、私のレーベルはたった100ドルしか受け取っていない...。これは、購入数が少なく、ストリーミングが非常に大きいためだ。そのため、私はラフマニノフの配信方法を変えた。それはiTunesでフル解像度で、あるいはAmazonでmp3(良いリスナーにはお勧めできない)で購入することができる。

このことがあなたの音楽を聴く方法を混乱させるなら、私は非常に申しわけないと思う。結局、私は、あなたたちが楽しめるように、録音をする。しかし、私はこうした結果に対処する準備ができている。なぜなら、私自身のような強いアーティストが間に合うように対応しない限り、そして聴衆がこの対応を支持しなかれば、何も変わらないからだ。そしてそのつけは新しい世代のアーティストに課税されるだろう。

もちろん、私は世間知らずではないし、あと戻りする方法はないことを非常によく知っている。そして今日の業界がそうだ。しかし、無料でそれを聴くのではなく、曲を買うために1ドルを使うというごくわずかな行為で、私たちは多くのことを助ける。チューインガム1パックはもっと高くて、10分後にはゴミ箱に吐き出すのだから...!

私はシニアのプロフェッショナルであり、もし録音が収入を生み出さなくても、同じように生き残ることができる。しかし、私たちが手を貸さなければ、私たちは、すぐに若い才能を使い果たしてしまうだろう。

とはいえ、私はあなたたちのサポートに深く感謝している。録音を購入してくれた人たちに感謝するとともに、悪気なくオンラインでそれを聞いた人たちにも感謝する。もし今日の時点で、私の新しい録音が届かない人たちがいたとしたら、私はこれらの最後のグループにお詫びしたい。

Peace and Love

 


 

 

このブログでも、2つの録音がリリースされた時のクーラのコメントや経過などについて紹介してきました。

 → 「ホセ・クーラ iTunesで楽曲配信を開始!まずドヴォルザークの愛の歌(ラブ・ソングス)」

 → 「ホセ・クーラが歌う、ドヴォルザークの歌曲『愛の歌』」

 → 「2019年 ホセ・クーラ、ラフマニノフの交響曲第2番をiTunes、Amazonでデジタル配信」

 → 「ホセ・クーラ、ラフマニノフの交響曲第2番を語る」

 

それぞれの曲へのクーラの思いや背景があるので、お読みいただけるとありがたいです。また、クーラのメッセージをお読みになって、録音に興味をお持ちいただけた方がいらしたら、この下のiTunesの画像にリンクを張ってありますのでご覧いただければと思います。とても安価で、音質も良好です。

iTunesを利用しない方には、アマゾンでも大丈夫です。アマゾンのデジタルミュージックのコーナーから購入できます。クーラとしては音質の面ではお勧めしないと言っていましたが、私はこちらで購入しました。音質の面で不満はまったくありませんでした。

 

 ●ラフマニノフの交響曲第2番

 

 

 

●ドヴォルザーク「愛の歌」 
 

 

 


 

クーラは1990年代末、世界的に大ブレークした時期に、商業主義的なエージェントや広告会社のやり方、売り出し方に耐えられず、独立し、大手のレコード会社とも契約せずに、自分自身のレーベルを立ち上げて独立独歩でやってきました。ある意味では業界の異端、一貫して自立したアーティストとして、「自分のボスは自分だけ」と信念をもって、芸術的な探求と挑戦を続けてきました。

 → クーラの苦悩と選択について、以前の記事で紹介しています。「ホセ・クーラ スターダム、人生と芸術の探求

そしてまた、今度は、レコード会社自体が、ストリーミングサービスなど、インターネットの発達による新しい状況によって、大きな岐路に直面しているもとで、クーラは、新たにデジタル配信の事業に挑戦し、その問題点を明らかにして、新しい世代のアーティストのために問題提起を行っています。

それにしても、クーラがドヴォルザーク「愛の歌」を配信して2年で、わずか100ドル、1万円ちょっとしか収入にならない、というのには驚きました。元の音源をデジタルリマスターして配信するためだけでも、相応の費用がかかっているはずです。まったくの赤字ということでしょうか。ストリーミングで聞くのと、ダウンロードで購入するのとで、アーティスト側にとって大きな差があるということは、あまり知られていないのではないでしょうか。私は知りませんでした。いずれにしてもこれでは、新しい録音の配信を続けることは不可能になってしまいます。

一方、社会的格差が広がり、若い世代の経済的困難が深刻化しているなかで、安価に手軽に聞けるストリーミングサービスが歓迎され、広がるのは理解できます。しかしその背後で、芸術の担い手であるアーティストが、その作品が、正当な利益を得られないのだとしたら、深刻な構造的な問題です。

もちろんクーラが言うように、現在の流れはそう簡単に変えられるものではないかもしれません。でも音楽ファンが、こういう事情を知って、ささやかでも何らかの行動をとることで、本来アーティストが得るべき対価の一部でも回収可能になるのであれば、意味があるのではないかと思います。

少なくとも、好きなアーティストの作品は、正当な対価を支払って楽しむ、可能な限りコンサートや公演に行く、それによって財政的にもアーティストを応援し支える、そういうことを意識的に行っていくことがとても大事な時代になっているということなのですね。遅ればせながらかもしれませんが、とても考えさせられたクーラの投稿でした。

 

 

 

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ホセ・クーラ 影響を受けた作曲家、最も強烈な音楽的体験についてーー2017年アルゼンチンでのインタビュー

2019-04-06 | 指揮者・作曲家として

 

 

ホセ・クーラは、この4月27日(2019年)、 プッチーニのオペラ「修道女アンジェリカ」(コンサート形式)を指揮する予定になっています。場所はポーランドのルスワビツェという町にあるペンデレツキ音楽センターです。このコンサートの様子は、また後ほど紹介したいと思います。

今回の話題の1つは、この施設に名前を冠しているペンデレツキに関することです。ペンデレツキは、ポーランドの指揮者、作曲家で、現在85歳(2019年4月時点)。クーラが2001年からの3年間、首席客員指揮者を務めたシンフォニア・ヴァルソヴィアの音楽監督、そして現在は芸術監督だそうです。「広島の犠牲者に捧げる哀歌」という作品も発表していて、来日して日本のオケと協力関係にあったこともあるとか。

このペンデレツキは、実はクーラが感銘を受け、影響を受けた作曲家の1人なのだそうです。その後、その作曲家が音楽監督を務めるオーケストラの客員指揮者となれたわけですから、非常にうれしい出会いであり体験だっただろうと思います。

ということで、今回は、このペンデレツキをはじめ、影響を受けた作曲家、重要な音楽的体験、演技と歌唱の関係などについてクーラが語った、2017年アルゼンチンでのインタビューから抜粋して紹介したいと思います。

これまで何回か紹介してきたインタビュー等の内容と、もちろん重なる部分はありますが、ここまで詳しく、自分の音楽体験について触れた話は、私は初めて読みました。例によって、誤訳、直訳、ご容赦ください。


  

 クシシュトフ・ペンデレツキ(ポーランド1933~) 世界文化賞HP

 


 

 

 テアトロ・コロンでシェニエを歌うクーラ

 

≪テアトロ・コロンのアンドレア・シェニエ出演にあたってのインタビューより――2017年12月≫

 

Q、確かに、ホセ・クーラは非常に優れたテノールだ。舞台演出をするだけでなく、オーケストラの指揮(1996年以来、彼は定期的にオペラ、そしてシンフォニー作品も指揮している)と作曲を行っている。後者は実際に、故郷のロサリオでアーティストになった最初のものだった?

A、私は作曲とオーケストラの指揮に専念していたが、70年代からの軍事独裁政権の時期、そしてその後の80年代の10年間は、指揮者として成功することは非常に困難で、作曲家として成功するなど考えられない時代だった。そのため、私はオペラに行った。


Q、音楽家の家族の出身?

A、そうではない。音楽好きの家族だったが、音楽家ではなかった。私の母はいつも私たちに、偏見を持たずに、非常に良い音楽を聴かせてくれた。それはシナトラであり、ビング・クロスビーであり、ベートーヴェン、ラフマニノフだった

私は12歳の時にギターを始めた。そしてある時、私の教師が言った。ーー “いいかい、ホセ。君は、この楽器にはあまりに情熱的すぎる。ギターは、ごくまれな場合を除いて、もっと内向的な人々のためのものだ。そして、いつか君は、それを手放すだけでは十分でなく、それをバラバラにしてしまう時が来るだろう”―― 結局、私は、Juan Carlos Zorziとともにオーケストラの指揮を、そしてCarlos CastroとLuis Machadoについて作曲と分析を勉強した。全員がとても優秀な教師だった。

 

Q、あなたの作曲に主に影響を与えたのは?

A、主として新ロマン主義音楽。1984年に、クシシュトフ・ペンデレツキがテアトロ・コロンで彼の「テ・デウム (Te Deum)」を指揮したのを見て、非常に感銘を受けた。私はコロンの付属高等研究所の合唱団にいた。それは非常に素晴らしい経験だった。

その頃、私はフォークランド戦争の犠牲者のためにレクイエムを書いた。私の世代はマルビナスで戦ったが、私は番号が後の方だったので救われた。「093」、私はそれを昨日のことのように覚えている。

(*注 当時のアルゼンチンは徴兵制があり、1982年に軍事独裁政権がイギリスとの間で始めたフォークランド戦争・マルビナス戦争には、クーラの世代の若者が送り出されたそうです。その頃19歳の学生だったクーラも予備役にいて、番号順に出兵させられることになっていたのですが、幸いクーラの順番が来る前に戦争が終結したということのようです。)

それは平和のためのレクイエムで、2つのコーラスのためのものだ。 私の夢は、和解の象徴として、アルゼンチンとイギリスの2つの合唱団によって演奏されることだった。そのレクイエムは発表されることはなかったが、明らかに80年代のペンデレッキの影響を受けている。そのポーランドの音楽家が原点に回帰していった頃だ。

数年後、私の最初の子どもが生まれた1988年に、昨年初演した「マニフィカト(Magnificat)」を書き、1989年に、キリストの最後の7つの言葉についての「この人を見よ(Ecce Homo)」を書いた。それは今年、初演された。現在、30年間のステージ活動を経て、そしてこれまで多くの音楽を演奏してきた経験をもって、私の音楽は、より演劇的、より即興的、よりドラマティックになっている。 言葉との関係によって。私は、シンフォニックやインストゥルメンタルの音楽を書くことより、言葉にリンクされた音楽の方に夢中になっている。

 

Q、興味がある作曲家は?

A、私はカタロニアのサルバドール・ブロトンスがとても好きだ。

しかし、最も強烈な音楽的経験の1つは、ベンジャミン・ブリテンのオペラ「ピーター・グライムズ」でのデビューだった。それはショックだった。なぜなら、 私が無意識のうちに自分の音楽の中でやっていた多くのことを発見したからーーそれは言葉に奉仕するための音楽の使い方を裏付けるようだった。

グライムズは私にとって、様々な理由から長い間やれなかった作品だ。それをやりたくて、コヴェント・ガーデン(英ロイヤルオペラハウスのこと)に私が提案した時、彼らは言った――「ああ、でもあなたのアクセントでは・・」。そして私は言った――「ほら、私はスペイン語のアクセントで完璧に英語を話す。あなたが英語のアクセントでイタリア語を話すように」。ラ・ボエームのアリア「冷たい手を」の「che gelida manina」を、「Che gelida maninou」と歌っても、誰も何も言うことはなかった。

結局、ボン・オペラが私にそれを申し出てくれて、そこでの初演は大成功だった。私たちは10回の公演(2017年5月初演)を行い、それらはすべて完売したが、演出も私がやった。そして今度はそれをモンテカルロオペラに持っていく(2018年2月)。

 

 

 ブリテンのピーター・グライムズの舞台より

 

Q、舞台演出に進出したきっかけは?

A、それは結果だった。

もし、今から20年後、あるオペラの歴史の研究者が、クーラは何をしたのか、私たちのために何をつくったのか、と問うたとしたら、多分それは、舞台上での演技に対するコミットメント、時には歌唱を危険にさらすことさえしても、すべてキャラクターのために、舞台上のドラマのために、演じるという事実だろう。これは私が公然と認めていることだ。私は、何かを犠牲にしなければならないならば、むしろ音を犠牲にする、と言うことは恥ずかしいと思わない。音の”意図”が犠牲になった場合は、二度と回復しない瞬間が失われる。しかし、もし、より劇的な意味合いを与えることができるなら、それらの音は失われない。

そして、もし人々が、わずか2つか3つの音符が汚れたためにその公演全体を否定するのなら、彼らは、録音ではないライブ公演の原動力について、何も理解していないということだ。オペラ歌手は、”演技もする歌手”ではなく、同じ意味で俳優であり歌手であることを理解しなければならない。私の「姿」はそういうものだと信じている。そうでなければ、”単なる歌手”、または”単なる俳優”だ。 2つのことを共にするのは、自己犠牲と大きな肉体的努力を意味する。

 

Q、シェニエについては?

A、それはひとつの肖像。シェニエは自分の名声を利用して自分の考えを伝えた。彼は詩人であり、その当時のボブ・ディランだったが、ディランだけがノーベル賞を手に入れ、シェニエはギロチンで亡くなった。第1幕のシェニエのアリアは、抗議の歌=プロテスト・ソングだ。シェニエの誠実さ、一貫性は第3幕で完全に証明されている。なぜなら、彼は革命を支持しているが、革命は、それが対抗したのと非常によく似たものになり始めている。そして彼は、彼が革命を支持したのと同じ勇気で、その行き過ぎを非難する。彼はとても現代的なキャラクターだと思う。そして今日、我々はたくさんのシェニエを必要としている。

(「clarin.com」)



 

なかなか興味深いインタビューでした。クーラはここでも触れていますし、これまでの記事でも何度か紹介してきたように、少年時代から、指揮者、作曲家を志し、大学でも専門的に学んできました。しかし社会的に困難な時期に生きていくため、家族のために、より収入の得やすいテノールとなり、渡欧を決断し、そこから国際的なキャリアにふみだすことができました。

その結果、テノールとして世界的に有名になったために、指揮の活動に復帰できた時にも、”指揮もするテノール”とか、”有名になったために、余技で指揮をしている”などという見方をされ、それは現在でもあるように思います。

しかし今回のインタビューを読んで、あらためて、クーラ自身の音楽的な志向、アーティストとしての探求と欲求の芯には、一貫して指揮と作曲があったことがよくわかりました。そして歌手がメインとなった期間に、スコアとリブレットを通じてキャラクターとドラマの探求をすすめてきた経験と蓄積が、現在にいたる指揮者、作曲家としての活動を、より豊かに、より深くする関係になっているようです。

また、ペンデレツキに感銘を受け、その影響を受けた曲を書いていたことは、印象的なエピソードです。ペンデレツキは、広島の原爆犠牲者を追悼するレクイエムやアウシュヴィッツの犠牲者に捧げた作品を発表してきたそうです。私はペンデレツキについて詳しく知るわけではありませんが、クーラが共感し、影響を受けたのも、そういう社会的視野と音楽性の両方があるのかもしれません。

以下の文章は、ペンデレツキを紹介した「世界文化賞」のサイトからの抜粋、引用です。

「幼いときにユダヤ人迫害を目の当たりにした体験を持ち、アウシュヴィッツの犠牲者への追悼作『怒りの日』や、ポーランド民主化運動に関連した『ポーランド・レクイエム』などの作品もある。『芸術家はその時代について証言し、語る必要がある』と言う。 ……

 72年からは作曲だけでなく、指揮者としても活躍しており、ベルリン・フィルやニューヨーク・フィルなどを指揮、北ドイツ放送交響楽団の首席客演指揮者も務めた。『昔は作曲家は同時に指揮者だった。指揮をすることで、すべての楽器に精通することができ、正確な記譜ができる。作曲、演奏、指揮と、真の音楽家は何でもできなければならない』」

ここで紹介されているペンデレツキの言葉は、アーティストの社会的責任、芸術的多面性など、クーラの信条、芸術的信念と共通点がとても多いように思います。ペンデレツキのいう「真の音楽家」の道、クーラは今後、どこまですすんでいくのでしょうか。

 

 

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(告知編) 2020年 ホセ・クーラ ウィーンでサムソンとデリラに出演

2019-04-04 | オペラの舞台ーサムソンとデリラ

※2020年3月21日追加

大変残念なことになりました。欧州でも急速に拡大する感染症への対策のため、ウィーン国立歌劇場は、公演キャンセルを延長し、4月13日までとすることを公表しました。これによって、4月4日のクーラのサムソンのライブ放送もキャンセルになります。

 

※2020年3月10日追加

なんと、新型コロナウイルス対策のため、ウィーン国立歌劇場は3月末までの全公演をキャンセルという情報が入ってきました。オーストリア政府が屋内では100人以上のイベント中止を求めたことによるそうです。4月から再開されるのかどうか、4月4日のクーラのサムソンのライブ放送がどうなるのか、今後の推移によると思われますか、早く事態が改善されることを願うばかりです。

 

 ※  ※  ※  ※  ※

 

ホセ・クーラが、来年2020年の3~4月、ウィーン国立歌劇場でサン=サーンスの「サムソンとデリラ」に出演することが、劇場の2019/20シーズンプログラム発表でわかりました。

クーラのウィーンへの出演は、2016年12月のプッチーニ「西部の娘」以来、3年半ぶりです。1996年にトスカのカヴァラドッシでハウスデビューしてから、20年間、ほぼ毎年のようにウィーン国立歌劇場に出演し、KS(宮廷歌手)の称号も得ています。

 → クーラのウィーンデビューから20年の歩みは以前の記事で紹介しています。

久しぶりのウィーン出演、サムソンはクーラの18番というべき役柄のひとつですが、手元の記録では、ウィーンでは、このサムソンに出演したことがないように思います。間違いかもしれませんが、もしそうなら、ウィーンでのロールデビューになります。クーラのサムソンのオペラ出演は、2018年5月のサンクトペテルブルク以来。トップの画像は、その時のコンサート形式の舞台中継からのものです。

そして本当に嬉しいことに、このサムソンもライブ・ストリーミングが予定されています!楽しみです。

 

 

 

 

≪日程・キャスト≫

Camille Saint-Saëns
SAMSON ET DALILA
CONDUCTOR Frédéric Chaslin

DIRECTOR Alexandra Liedtke
SET DESIGN Raimund Orfeo Voigt
COSTUMES Su Bühler
CHOREOGRAPHY Lukas Gaudernak
LIGHTING Gerrit Jurda

Dalila Anita Rachvelishvili
Samson José Cura
Oberpriester des Dagon Clemens Unterreiner
Abimélech Sorin Coliban

 

2020年3月29日、4月1日、4日、7日

  • サムソン:ホセ・クーラ  
  • デリラ:アニタ・ラチヴェリシュヴィリ    
  • 指揮:フレデリック・シャスラン

アニタ・ラチヴェリシュヴィリは、黒海に面したジョージア出身34歳のメゾソプラノ。クーラとは、ベルリンのカルメンで共演したことがあります。指揮者のフレデリック・シャスラン氏はフランス出身、新国立劇場には何回も登場したことがあるようです。

このプロダクションは、昨年2018年、サムソンをロベルト・アラーニャ、デリラをエリーナ・ガランチャで初演されたようです。クーラとアラーニャ、ラチヴェリシュヴィリとガランチャとでは、個性も雰囲気も、正反対といっていいほど違い、観客の好みも分かれるところだと思います。パワーと迫力では圧倒的な、このクーラ、ラチヴェリシュヴィリの2人、どんな舞台になるでしょうか。

 

――ウィーン国立歌劇場2019/20シーズンプログラム(PDF)より。画像をクリックするとプログラム全体にリンクしています。

 

 

≪ライブストリーミングの予定≫

 

ライブ・ストリーミングは、2020年4月4日の公演です。事前に登録して1公演だと14ユーロのチケット購入が必要です。もちろんウィーンとは時差がありますが、あらかじめ自分の見やすい時間帯を指定して視聴できます。

私は、前回クーラのストリーミングがあった2016年の西部の娘の際に、初めて登録して視聴しましたが、スムーズに、比較的良い画質で観ることができました。

 → 2016年ウィーン「西部の娘」ライブ中継についてのブログ記事

 → 初めての方は、劇場のライブストリーミング説明ページを(日本語)

 

 

≪ホセ・クーラのサムソン≫

クーラは1996年にサムソンでロールデビューしていますが、その後、世界各地で歌うとともに、2010年にはドイツ・カールスルーエで、クーラが演出・舞台デザインを行い、主演したプロダクションを大きく成功させています。DVDにもなりました。

その作品に関して、クーラが作品解釈を語ったインタビューや動画などを以前の記事で紹介しています。

 

ーーいくつかクーラの言葉を

●セックスと権力、宗教の名による殺りく

セックスと権力との関係は、このオペラの心理的な構造だ。サムソンは全男性と同様に、本能に従い、動物のように行動する。これが全体を非常に普遍的にしている。彼がなんらかの内省を示す唯一の場所は、第3幕冒頭のアリアだけだ。

サムソンは内省するが、しかし回復した後、再び強くなる。そして彼は、自分が神の代理として行動していることを信じて、他の人々を殺す。この点において、世界は、残念ながら今日も何ら変わっていない。

●強欲さと富への渇望の象徴
演出にあたって、私は放棄された油田のキャンプに全体の舞台を置いた。現在は留置施設として使用されている。オイルは強欲さと富への渇望を示す。これらは現実に、民族間の紛争の背後にあるものだ。人々は特定せずに、単に2つの民族としてのみ示した。

●子どもたちに希望を
課題はメッセージをもたらすことだ。神の名による殺人――特定の宗教に関わりなく、野蛮な時代錯誤だ。
私は子どもたちに、愛と希望のメッセージを託す。紛争に関与する2つの民族の子どもたち。彼らは、民族や宗教に関係なく、一緒に遊び、そして友人を守る。

 

――サンクトペテルブルクのサムソン

2018年、コンサート形式ですが、サンクトペテルブルクでオリガ・ボロディナと出演したサムソンの舞台を。ありがたいことに劇場の公式チャンネルに全編がアップされています。現在も視聴可能です。

 


 

久しぶりのウィーン国立歌劇場への出演、そしてライブ・ストリーミング、とても楽しみです。

サンクトペテルブルクでクーラのサムソンを鑑賞した記事にも書きましたが、クーラの声は年々重くなっています。現在、56歳、このライブ放送の頃には57歳になっているわけですから、若い頃に比べれば、やはり体力も声のコンディションが変化していくのは当然だと思います。

しかしマリインスキー劇場で生のクーラのサムソンを鑑賞した実感としては、この物語において、神から授けられた巨大な力をもつサムソンの、そのカリスマ性、エネルギー、存在感を存分に表現できるのは、まさにクーラだ、と思います。コンサート形式だったにもかかわらず、クーラが登場しただけで舞台上の空気が一変したように感じました。

もちろん他にも、多くの歌手がサムソンを歌っていますし、より滑らかな歌唱、美しい歌唱、きれいな声という点では、他にたくさんの選択肢があるでしょう。しかし、サムソンのキャラクターを舞台上に再現し、その圧倒的なパワーとエネルギーを感じさせるという点では、クーラは過去も現在も、抜きんでた存在だと確信しています。

ぜひ多くの方がライブストリーミングをご視聴いただけるとありがたいです。また、もし現地でご鑑賞されましたら、ご感想など教えていただければうれしいです。キャンセルなく、良いコンディションを保ってくれることを願っています。

 

 

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