人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

2019年 ホセ・クーラ、プッチーニの家を訪ねる

2019-09-27 | 2019年プッチーニ音楽祭

 

 

ホセ・クーラは、今年、2019年のプッチーニ・フェスティバルに、20年ぶりに出演しました。演目は、初出演の1995年の時と同じ、プッチーニのトスカでした。この時の舞台の様子は、すでにこのブログでもお伝えした通りです。

 →  「(公演編)ホセ・クーラ、2019プッチーニ・フェスティバルのトスカに出演」 と、「インタビュー編」、「告知編

 

今回は、音楽祭の期間中、クーラがプッチーニゆかりの家を訪問した時のことを紹介したいと思います。 

プッチーニは、イタリア・トスカーナ地方のトッレ・デル・ラーゴという小さな町の、マサチュッコリ湖という湖のほとりで、長年暮らしたそうです。このプッチーニが愛した湖畔の家が、現在は、ヴィラ・プッチーニ博物館として保存されています。フェスティバルが行われる専用の野外劇場は、かつてはその敷地にすぐ隣接して作られていたそうですが、現在は、すぐ近くですが少し離れて、近代的な大きな劇場が建設されています。

また、プッチーニが生まれた家は、そこから東に30キロほどの、ルッカという町にあり、こちらも現在はプッチーニ生家博物館として公開されています。この生家を2008年にクーラが訪問した時の報道やインタビューについても、ブログ記事にまとめていますので、よろしければご覧ください。

 → 「2008年 ホセ・クーラ、生誕150年のプッチーニの生家を訪ねる

 

クーラは今回の音楽祭の間、その両方の家を訪問したようです。そこでの写真や動画、クーラのフェイスブックの投稿のリンクなどを掲載しています。

 

 


 

 

 ≪湖畔のプッチーニの家、ヴィラ・プッチーニ博物館にて≫

 

クーラは、博物館を管理する財団の招待によって、特別に、通常は非公開のプッチーニのプライベートなスペース、寝室や書斎に入ることができたそうです。そして許可を得て、プッチーニのピアノの前に座り、プッチーニが生前使っていた小物に触れ、寝室でベッドにもたれるなどしながら、しばらくの時間を過ごしました。敬愛するプッチーニを非常に近く感じることができたようで、インタビューでも、とてもエモーショナルに語っています。 

 

ーープッチーニ博物館のFBより

●プッチーニが愛した湖畔の家、前景

 

●改装・保存されている室内の様子

 

 

●プッチーニの家で ーークーラのFBより

” 財団のジョバンニ・ゴディ氏のプライベートな招待を受けて、プッチーニの家を訪問した。ゴディ氏は私に、ヴィラの一般公開されていないエリアを開く特権を与えてくれた。それゆえ私は、マエストロ・プッチーニのピアノに触れ、彼の机に座って彼の眼鏡をかけ、彼の寝室にも入り、彼のベッドの同じ側にいることができた。 たくさんの感情...このような名誉を与えてくれて、プッチーニ財団に大きな感謝! "

 

●フェスティバルのFBに掲載されたクーラのインタビュー動画より

イタリア語とスペイン語での2種類で、インタビュー動画がFBにアップされていました。

私にはイタリア語もスペイン語もまったく理解できないのですが、字幕によるとクーラは、” プッチーニの家には素晴らしい雰囲気があり、湖の湿気やまわりの木々、まるでドアの後ろにプッチーニがいるようで、彼の神聖な部屋にいると、とても感情的な気分になる” ”プッチーニ音楽祭は、ワーグナーのバイロイト音楽祭、モーツアルトのザルツブルク音楽祭と同等といえる”・・などと語っているようです。

 

●同じくプッチーニの家で。こちらはプッチーニ博物館のFBにアップされた写真

 

●プッチーニ博物館のFBの動画 



≪ルッカのプッチーニの生家にて≫

 

クーラは、フェスティバルの公演の合間に、トッレ・デル・ラーゴの家だけでなく、少し離れたルッカにある、プッチーニが生れた家にも足をのばしたようです。これまでもこの生家には何度も訪れています。

 

●ルッカのプッチーニの生家にて

クーラがFBに掲載した写真です。プッチーニの生家の壁、看板を背景に。8月のイタリア、とてもリラックスしたスタイル。

 

クーラがFBにアップした、ルッカの大聖堂の写真。写真が趣味で、公演旅行の際にも必ずカメラ持参のようです。鐘楼にのぼり、内部からルッカの町を眺めた写真でしょうか。

 

 


 

2019年の8月は、長期にイタリアに滞在して、プッチーニフェスティバルに出演したクーラ。そのため夏の休暇をまとめてとることはできなかったのではないでしょうか。公演の間にプッチーニの家をはじめ、イタリア・トスカーナ地方を訪ねたりして、休暇を兼ねたのかもしれません。

今回の訪問で、プッチーニの遺品に触れ、プッチーニをいっそう身近に感じ、思いを深める機会を得たクーラ。20年ぶりの出演で、当時からの友人、同僚との再会、温かい歓迎を受け、初出演と同じトスカのカヴァラドッシでも、熱狂的な喝采とビス(アンコール)の声が止まらないなど、公演を大きく成功されることができました。とても実りあるフェスティバル出演になったことと思います。

クーラの次の公演は、10月20日の中国・上海でのオペラアリアコンサートです。そしてその後、11月以降には、ハンガリーのブダペストで、ハンガリー放送文化協会との活動が本格的にスタートします。11月4日にベートーヴェン「エグモント」、クーラ作曲「Modus」を指揮するコンサートがあり、11月13日にはヴェルディ「レクイエム」を指揮します。またクーラ作曲のオラトリオの録音もおこなわれます。そして、来年1月に初演を迎えるクーラ作曲オペラ「モンテズマと赤毛の司祭」、その準備作業も併せてすすめられるでしょうから、この秋、クーラは、カレンダー上の出演予定は多くはなくとも、非常に多忙で、充実した期間だと思います。

そういう時期に、はるばる上海まで来てくれることになっています。過労による体調不良やキャンセルなく、アジアの地での公演を成功させてくれることを願っています。

 

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(公演編)ホセ・クーラ、2019プッチーニ・フェスティバルのトスカに出演

2019-09-03 | 2019年プッチーニ音楽祭

 

 

 

ホセ・クーラが20年ぶりに出演したイタリア・プッチーニフェスティバルのトスカ。3公演は、大盛況のうちに終りました。

会場は、プッチーニが暮らした湖畔に建てられた野外劇場ですが、報道によると、プッチーニが作曲した当時と同様に、字幕がないばかりか、マイク・スピーカーのシステムもないのだとか。湖の波の音、鳥や虫の鳴き声などを背景に、オーケストラの音楽に負けずに、人間の声だけで広い野外劇場全体に歌を届けきるわけですから、出演者には大変なことだと思いますが、多くの観客が、音楽と雰囲気を合わせて、「素晴らしかった」「夢のような夕べだった」などのメッセージをSNSにあげていました。

とりわけクーラが出演した最後のトスカ8月18日の公演は、「すべてが完璧で、調和していた」と書いた人もいたように、最高の舞台だったようです。クーラの「星は光りぬ」は、歌の後に大興奮した観客から、ビス(Bis=イタリア語のアンコール)の声がどうしても止まらず、2回歌ったのだそうです。いつもクーラはドラマの流れと緊張感を大切にしているので、アンコールに応じるのはとても珍しいです。通常のオペラ公演とは違うお祭りということに加え、それほど、舞台上、劇場内の盛り上がりと一体感が素晴らしかったのでしょう。

最後の公演後の報道には、「トスカ:プッチーニ音楽祭でのホセ・クーラの勝利」と見出しをたてたものもありました。別のレビューでも、「ホセ・クーラは確かに演出家の仕事を助けた。ステージに登場するやいなや、クーラは空間の真の支配者となった。彼は、同僚たちのパフォーマンスに敬意をもって、最低限の動きだが、しかし、たとえ顔と体の姿勢だけでさえ、解釈の絶対的な強さを与える」と評価されていました。一部、20年前と比べて声が同じではないと書いたレビューもありましたが、全体としてクーラのプッチーニフェスティバルへの復帰は、大きく歓迎されたと思います。

 

劇場がFBにアップした写真や動画、現地のニュース動画などを紹介したいと思います。

*フェスティバルの全体は、(告知編)をどうぞ。またフェスティバルやイタリアとの関係、カヴァラドッシの役柄についてなど、クーラが語った記事を紹介した(インタビュー編)もぜひご覧ください。

 

 

 

Floria Tosca = Maria Guleghina
Mario Cavaradossi = José Cura
Il Barone Scarpia = Carlos Almaguer
Cesare Angelotti = Davide Mura
Spoletta = Francesco Napoleoni
Il Sagrestano = Lisandro Guinis

Direttore Dmitri Jurowsky
Regia Dieter Kaegi
Scene Carlo Centolavigna
Costumi Fondazione Cerratelli, Pisa
Disegno luci Nino Napoletano
Maestro del coro Roberto Ardigò
Maestro del Coro di voci bianche Viviana Apicella

Orchestra, Coro e Coro delle voci bianche del Festival Puccini

Gran Teatro Giacomo Puccini - Torre Del Lago

65° Festival Puccini 2019    Tosca   2, 11, 18 August

 


 

 

 ≪劇場のFBより、劇場や舞台、セットなどの写真≫

 

プッチーニフェスティバルのFBには、連日、様々な情報がアップされました。ここで紹介しているトスカ以外の演目の投稿も同様に豊富ですので、ぜひご覧ください。今年の全公演を終え、すでに来年の演目、日程も発表されています。ただし出演者は未公表、さて、来年クーラは出演するのでしょうか?

 

 

●まずは、劇場の美しいロケーションやトスカのセットなどが見られる投稿を。

 

 

●今年の全公演終了後、劇場のFBに掲載されたトスカのアルバム。トップの写真はこちらからお借りしたものです。右上のFマークをクリックすると、すべての写真を見ることができます。迫力ある舞台写真がたくさんです。

 

●カヴァラドッシ用の拷問による流血で赤く染まった衣装、小道具、セット、オーケストラピット、劇場のまわりの風景など。

 

 

≪ニュース動画より≫

 

現地メディアがたくさんニュース動画で紹介してくれています。ただしどれも短いカットばかりで、見れば見るほど欲求不満がつのるという面も・・。

 

●「トスカ:プッチーニ音楽祭でのホセ・クーラの勝利」と題されたニュース映像。各シーン、指揮者インタビュー、最後にクーラのカーテンコールの様子など。

Tosca: il trionfo di Josè Cura al Festival Pucciniano

 

●同じくニュース映像。第1幕の2重唱のごく一部、第2幕尋問シーン少々、第3幕「星は光りぬ」一瞬だけ・・と各シーンをチラ見できます。

 

●今回のフェスティバルのトスカ全体を振り返るようなニュース映像、13分と長めです。指揮者、クーラをはじめ、キャストのインタビューや舞台の様子も。 クーラのインタビューは10分10秒過ぎから。

 

●劇場FBにアップされた告知動画。音声はありませんが、クーラのカヴァラドッシが大勢の警吏を振り払おうとする場面や、3幕ラストのトスカとカヴァラドッシのシーンなどが少し見られます。

 

 

≪劇場のライブ放送より≫

 

実は、プッチーニフェスティバルの各公演は、毎回、各幕からそれぞれ一部分が、ネットライブ中継されました。本当にありがたいことで、うれしいのですが、一方でとても残念なことに、観客席内からスマートフォンでとったのかと思われる感じの映像で、画質、音質ともに、少々・・というものでした。とはいえ、中継してくれるだけでも、もちろんうれしいです。

クーラが出演した3回のトスカも、それぞれ、部分的にライブ中継され、その録画が劇場のFBで現在も見ることができます。その日によって、少しづつ録画のシーンが違っていますが、なぜか冒頭の「妙なる調和」だけは3回とも中継され、期待の「星は光りぬ」は1度もなし・・。トスカのアリアもありませんでした。

とりあえず、2つだけ、初日の第2幕「ヴィットーリア」と、最終日、長めに中継された第1幕の録画リンクを紹介します。それ以外にもたくさんの録画がありますので、劇場のFBをご覧ください。 

 

●8/18 第1幕、冒頭~「妙なる調和」~トスカとカヴァラドッシの2重唱

 

●8/2 第2幕、拷問に屈せず、共和派の勝利に歓喜の声をあげる「ヴィットーリア」のシーン

 

 

≪舞台裏の写真≫ 

 

バックステージの写真は、独特の面白さ、魅力があります。劇場や関係者のSNSからいくつか紹介します。

 

●気合十分、すでに役に入り込んでいるような、幕間の控室のクーラ。

 

●拷問による出血を丁寧にメイク中。メイク担当の方がいるのだと思いますが、仕上げは自分がやっているのでしょうか?

 

 

●カメラマンがインスタに投稿した、舞台袖で出番を待つクーラの写真。生の舞台の緊張感が伝わってきます。

 
 
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Lorenzo Montanelliさん(@lorenzo.montanelli)がシェアした投稿 - <time style=" font-size:14px; line-height:17px;" datetime="2019-08-25T17:29:31+00:00">2019年 8月月25日午前10時29分PDT</time>

 

●クーラがFBにアップした写真。最終日、「星は光りぬ」をアンコールで歌うことになった、その舞台袖からとった、湖の上に輝く月の写真。

「”星は光りぬ”を歌うために歩き出す数分前、舞台から撮った写真。文字通り、観客によって”強いられ”て、繰り返し歌った。プッチーニの家の前で、最も象徴的なアリアのアンコール、そしてこのような月を背景にするのは、夢を見る以上のものだ。」

  

●初出演の1995年以来の付き合い、サブ・ディレクターのルカさん、スカルピアのカルロスさんと。

 

●同じくルカさんが投稿した、クーラとの3人組の写真。

 

 

 


 

クーラにとってトスカのカヴァラドッシは、インタビュー編でも紹介したように、正義のために命をかける屈服しない人であり、アンドレア・シェニエとともにクーラ自身が共感できる役柄だと繰り返し語っています。とりわけ、世界がさまざまな困難に直面している現代だからこそ、今回の公演でも、クーラ渾身のカヴァラドッシは自由と民主主義の価値、それらを守り抜く信念と行動、人生について問いかけ、ドラマティックな音楽とともに多くの観客に深い感動をもたらしたのではないでしょうか。

そのカヴァラドッシにロールデビューしたのが、このプッチーニフェスティバルであり、1995年、クーラ32歳の時でした。その後、ウィーンやニューヨーク・メトロポリタンをはじめ、世界中の歌劇場で繰り返しこの役柄を歌い、演じています。そういう生涯をかけて演じ続けている役を、プッチーニ生誕の地の音楽性でデビューし、そしてまた20年余を経て、また同じ役柄で戻ってきたことに、クーラもとても深い思いを抱いたようです。

この滞在期間に、ルッカのプッチーニの生家を再訪し、またプッチーニが暮らした湖畔の家にも訪問しています。その際のクーラのプッチーニへの思いの込もったインタビュー映像などもありますので、いずれ紹介したいと思います。

 

 

*画像はフェスティバルFBなどからお借りしました。

 

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(インタビュー編)ホセ・クーラ、2019プッチーニ・フェスティバルのトスカに出演

2019-08-21 | 2019年プッチーニ音楽祭

 

 

 

ホセ・クーラは、夏の音楽祭のひとつ、イタリアの伝統あるプッチーニフェスティバルに出演中に、いくつかインタビューにこたえ、現地の新聞、ネットなどで報道されています。今回は、そのインタビューから、抜粋して紹介したいと思います。

クーラの出演は、トスカのカヴァラドッシで、2019年8月2、11、18日の3公演でした。フェスティバルについて詳しくは(告知編)を。また終了した公演の様子は、いずれ近いうちに紹介したいと思います。

 

 

 


 

 

 

 

 

≪ホセ・クーラ 「決して屈服しない人の誇り」≫

 ーー20年後、アルゼンチンのテノールは、トスカと共にプッチーニフェスティバルに戻る

 

アルゼンチンのテノール、ホセ・クーラ。20年後、彼は、トーレ・デル・ラーゴのプッチーニフェスティバルに戻る。有名なアルゼンチンのテノールは、トスカで今夜8月2日、そして11日と18日に主演する。トスカのパートナー、マリア・グレギーナと、偉大なバトン、指揮者のドミトリー・ユロフスキーとともに。

1995年、クーラは、トーレ・デル・ラーゴで、カヴァラドッシの役でデビューした。現在と同じ舞台ではなく、古い劇場がまだあった時で、彼は感慨深く、現在イゴール・ミトラジの彫刻が立っている場所を指した。

  

ーートスカのカヴァラドッシは?

(クーラ)カヴァラドッシは、私にとっては、特に一体感を抱くことができるプッチーニの男性キャラクター。決して屈服しない。名誉と尊厳を売り渡さず、理想を守るために死を選ぶ人物。


ーーレパートリーとして多くの役割を歌ってきたが?

(クーラ)私のような好奇心旺盛で落ち着きのないアーティストには、解釈する特権を持っていた多くの中から、ひとつの役だけを選ぶことはできない。しかし、私が、オテロ、サムソン、カニオ(道化師)、カヴァラドッシ(トスカ)、ジョンソン(西部の娘)を愛し、今でも愛していることは明らかだ。だが最近、ブリテンのピーター・グライムズに挑戦することができ、それ以来、私はこの役に心を奪われた。


ーー良き落ち着きのない魂、クーラは、テノール、指揮者、演出家、プロデューサーであり、彼をレオナルド・ダ・ヴィンチの折衷主義と比較する者もいたが?

(クーラ)映画業界では、俳優が監督、脚本家、プロデューサーでもある場合でも、彼に対し、何をしたいのかなどと誰も尋ねはしない。クリント・イーストウッドやロバート・レッドフォードなど、非常によく知られている2つの名前を思い起こすだけでわかるはずだ。一方、クラシック音楽では、そういう多面的なやり方で取り組むことは、常に義務的に質問を引き起こす。

私はアーティストとして、自分が受けた贈り物(才能)を隠さないことを選択した。これには批判されるリスクがある。しかし卓越したアーティストになるには、 「美しい」方法で自己を表現するだけでは不十分だ。あらゆる美しさ、観点とともに 、自分の信念を守る勇気が必要となる。

私はベストを尽くしている。いつの日か、この素晴らしい仕事にむかってすすむ私の軌跡が、何らかの、または誰かに、特に将来の世代に役立ったと言えることを願っている。

 

ーートッレデルラーゴのプッチーニフェスティバルのトスカの後、あなたは28日にオマーンのマスカットに向けて出発する。ブエノスアイレスのコロン劇場とともに、カルメンに出演し、ベートーヴェンの第九を指揮するために。その後、中国・上海でのコンサート、そして11月には・・?


(クーラ)ブダペストで、ハンガリー放送交響楽団や合唱団と一緒に、私が作曲したEcce Homoのオラトリオを録音する。私はハンガリー放送文化協会のメインゲストアーティストであり、このアンサンブルで、2020年1月に私の作曲したオペラ「モンテズマと赤毛の司祭」の世界初演を行う。

 

ーー イタリアのヴェローナで何年かの訓練を受けた?

私が住んだ当時、法律が非EU市民を保護しなかった時代であり、私はヴェローナを去るように促された。現在の状況については、新聞だけでしか知らないのでコメントはできない。

しかし、間違いなく言えることの1つは、全世界が非常に深刻な価値の危機にさらされており、緊急にその是正を求めなければ、それがどのような終焉をもたらすのかわからないということだ


●記事を紹介したフェスティバルの公式FB




その他にも、いくつかインタビュー動画や記事がありました。

 

●リハーサルの合間に、湖畔の劇場から、古い劇場の跡地を指して、初めてプッチーニフェスティバルに出演した1995年、その後の97年、99年の出演の思い出などを語っているようです。そして今回、20年ぶりの出演で、再びトスカに出演することの感慨など。イタリア語。


●8/2の初日の後に公開されたTVニュース映像。初日の舞台の様子、クーラが歌う「星は光りぬ」の一部と、拍手を受ける様子などがあります。クーラのインタビューも。


●こちらは新聞の記事。

イタリア語で私は全く読めませんが、語学に堪能な方が大変ご親切にも、内容を教えてくださいました。感謝です。一部、紹介すると、「トスカは愛の物語にみえるが、あくまでも革命の本質を伝えるもの」「自分の声はもう若くない自覚はあるが、たくさんの経験を積んだ人間としての確信もあり、プッチーニがマリオ役を通じて伝えたかった自由というメッセージの深い部分をよく理解している」「役者の責務は、役を心理学的に掘り下げて解釈し、一節一節の美しさに身を捧げること」・・など。まだまだこの他にも、アーティストとしてのキャリアや今後についてなど、たくさんのことを語っているそうです。ありがとうございます。

 




初出演から24年、最後の出演からも20年ぶりのプッチーニ音楽祭。クーラの出演を、地元メディアや劇場関係者も大歓迎して、温かく迎えられたようです。初出演の時からのスタッフ、初出演を鑑賞したという地元の観客もたくさんいたようで、久しぶりの再会を喜び合う様子が、SNSにもたくさんアップされていました。クーラが、現地の人々に本当に愛されていることがよく伝わってきました。

繰り返しになりますが、クーラは1991年にアルゼンチンから、祖母の地を訪ねてイタリアに移住、イタリア北部のヴェローナ近郊に住み、様々な仕事をして生計をたてながら、歌手としてデビュー。そこから国際的なキャリアへの飛躍を果たしました。そのためクーラの歌手としての出発点ともいえるごく初期のキャリアは、ヴェローナやミラノをはじめ、トリノやジェノアなどイタリア北部が中心でした。だからこそかつての若いクーラの姿を覚えて応援してくれる観客が多くいるのだと思います。 → ホセ・クーラ これまでの軌跡 ~ 主な舞台出演の一覧

クーラもふれていますが、当時、移民排斥を訴える北部同盟が勢力を広げるなかで、アルゼンチンからの「移民」であったクーラは、住み続けることができなくなり、フランスへ渡りました。多くの友人がいて、祖母の生まれた自分のルーツのひとつでもある土地と別れざるを得なかったのは、本当に無念だったことと思います。現在では、北部同盟は伊政権につくまでに伸長しています。クーラが繰り返し危惧を表明している、これらの問題は、イタリアだけでなく、世界的な課題となっています。

文化的にも、財政難などから多くの劇場が苦境にあるといわれています。少し前の記事でカーディフのマスタークラスでの発言も紹介しましたが、イタリアオペラを継承する責任をつよく感じているクーラ。今後、イタリアでの出演が増えてゆくのでしょうか。

 

*画像は、劇場FBや動画などからお借りしました。

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(告知編)ホセ・クーラ、2019プッチーニ・フェスティバルのトスカに出演

2019-04-27 | 2019年プッチーニ音楽祭

 

 

                                                               *トップの画像は2014年ドイツ・ハノーファーでのトスカの舞台(コンサート形式)より

 

まだホセ・クーラの公式カレンダーは記入されていませんが、新しい出演予定のニュースが入ってきました。*公式発表ありました!

この夏開催される2019年プッチーニ・フェスティバル(プッチーニ音楽祭)です。作曲家ジャコモ・プッチーニが生前に住み、仕事場を構えていたイタリアのトッレ・デル・ラーゴという町で、プッチーニのオペラ上演のために開催されています。プッチーニの故郷で生家があるルッカも近くです。1930年に始まり、その後、中断もありつつ、1966年からは毎年開催されているそうです。

演目はトスカで、クーラは、主人公トスカの恋人のマリオ・カヴァラドッシ役です。クーラがこれまで演じたオペラのキャラクターのなかでも、このトスカのカヴァラドッシは、出演回数も非常に多く、またクーラ自身が、共感できる役柄だと語っています。共和主義者で、逃げてきた政治犯をかくまい、拷問にも黙秘を貫いて、最後には銃殺されてしまう理想主義者です。信念のある人物、いかなる圧力、攻撃にも、死を賭しても、自分らしい生き方を手放さないというカヴァラドッシの姿は、クーラ自身の生い立ち、生き方とも共通する要素があり、ぴったりの役柄です。

 → クーラの「トスカ」についての解釈、カヴァラドッシについて紹介した記事

実はクーラがトスカのカヴァラドッシにデビューしたのは、1995年のこのプッチーニ・フェスティバルだったそうです。91年にアルゼンチンからイタリアに移住したクーラ。数年後のその当時は、テノールとしての国際的なキャリアが急速に開けつつあった時期です。その後1999年にもカルメンで出演しているようです。

初出演から24年、四半世紀近くたち、56歳となって、プッチーニフェスティバルに登場です。

現在わかっている情報についてまとめてみました。 


 

 

 ≪公演の概要≫

今年の第65回プッチーニ・フェスティバルは、2019年7月6日から8月24日までの間、開催されます。

 → プッチーニ・フェスティバル公式HP

上演されるプッチーニのオペラは、「西部の娘」、「トゥーランドット」、「ラ・ボエーム」、「蝶々夫人」、「トスカ」、「妖精ヴィッリ」の6演目。いずれも美しいメロディにあふれ、ドラマティックな物語で人気のオペラです。このほかにも、イタリアのソプラノ歌手カーティア・リッチャレッリのキャリアへのオマージュのコンサートや、バレエ公演などもあるようです。

クーラが出演するのは、8月2日、11日、18日のトスカ。8月24日はダブルキャストの別の出演者になります。

 *クーラの公式カレンダーに、8月2日の公演も追加されました。

トスカは、ロシアのソプラノ、マリア・グレギーナ。クーラとグレギーナは、2006年にボローニャ歌劇場公演のアンドレア・シェニエで一緒に来日したこともあります。ともに長いキャリアをもち、共演回数も多いです。


この写真は、日時は不明ですが、グレギーナとクーラのトスカのようです。若いです。

 

 

 ●「トスカ」

 

Tosca
2 11 18 and 24 August
On the podium Dmitrij Jurowsky and Hirofumi Yoshida / Directed by Dieter Kaegi

 ≪Cast≫ 

  • Tosca=  Maria Guleghina and Lacrimioara Cristescu
  • Cavaradossi= José Cura and Hovhannes Ayvazyan
  • Scarpia= Carlos Almaguer and Stefan Ignat

 

トスカの初演(1900年1月14日、ローマ)のためにつくられたポスターを紹介するフェスティバルのFB記事 

 

 

 

≪フェスティバル会場≫

会場は、 イタリア・トスカーナ地方の町トッレ・デル・ラーゴのマサチュッコリ湖畔に建つ野外劇場。2008年にオープンし、3200席もあるそうです。クーラが1995年に出演した当時は、まだこの豪華な野外大劇場は造られておらず、プッチーニの家の近くの広場におかれた特設ステージが会場だったとのことです。それにしても素晴らしいロケーション。写真を見ただけでも行ってみたくなります。


 

 

野外劇場と湖、その周辺を上空から撮影した動画です。この美しい風景、湖畔の水の音に囲まれて、プッチーニはあの多くの名作を作曲したのですね。

Gran Teatro all'aperto G.Puccini TORRE DEL LAGO

 

 

≪出演者紹介≫

●公式FBに掲載されたクーラの紹介

1995年にこのフェスティバルでカヴァラドッシにデビューしたことなどが書かれています。コメント欄には、「必ず行く」「私も一緒に!」などや、95年の公演に「私はそこにいた」「私も!」などのコメントが書き込まれています。クーラは1991年にアルゼンチンからイタリアに移住して、5年ほど住み、そのイタリアでテノールとして本格的なキャリアを開始していますから、初期の頃からクーラを知って応援してくれていたファンがたくさんいるのだと思います。

 

●マリア・グレギーナ

グレギーナは今年のフェスティバルには、トスカと西部の娘の2演目に出演するようです。

 

 

≪その他の演目≫

クーラが出演するトスカ以外のプッチーニのオペラは、以下の5つです。 

 

●「西部の娘」

La fanciulla del West

12 and 26 July

Conductor   Alberto Veronesi and Gianna Fratta
Direction, scenes and costumes by Renzo Giacchieri
Maria Guleghina and Tamar Iveri
Hovhannes Ayvazyan and Alberto Mastromarino

 

●「トゥーランドット」

Turandot

13 and 19 July, 17 August

Conductor Marcello Mottadelli
Directed by Giandomenico Vaccari
Veronika Dzhioeva and Lubov Stuchevskaya Valeria Sepe and Claire Coolen
Zoran Todorovich

 

 ●「ラ・ボエーム」

La bohème

20 July, 3 and 10 August

Conductor Mārtiņš Ozoliņš
Directed by Alfonso Signorini
Hui He and Angela Gheorghiou = Mimì
Jean François Borras and Angelo Fiore = Rodolfo
Ivana Canovic and Micaela Sarah D'Alessandro = Musetta
Nikola Mijailovic and Pierluigi Dilengite = Marcello

なんと、ミミの役に、ホイ・ヘーとアンジェラ・ゲオルギュー!

ゲオルギューを紹介したFBの記事

 

●「蝶々夫人」

Madama Butterfly

27 July, 12 and 23 August

Conductor Alberto Veronesi and Nir Kabaretti
A new production by Stefano Mazzonis di Pralafera
Hiromi Omura and Karine Babajavyan = Cio Cio San
Stefan Pop and Angelo Fiore = Pinkerton Bruno De Simone and Stefan Ignat = Sharpless

蝶々夫人には、日本のソプラノ、大村博美さんが出演されます。クーラは大村さんとは、2011年、仏ナンシーでの東日本大震災復興支援のコンサートで共演したことがあります。

 → 大村さんとクーラが出演した東日本大震災復興支援チャリティーコンサートの記事

 

●「妖精ヴィッリ」

Le Villi

August 16th

Conductor Keri-Lynn Wilson
Directed by Csaba Kàel
Dafne Tian Hui, Carlo Ventre and Raffaele Raffio

 

 

≪ホセ・クーラのマリオ・カヴァラドッシ≫

最後に、クーラのカヴァラドッシの舞台から、「星は光りぬ」など、関連動画をいくつか。(追加あり)

 

●1995年プッチーニ・フェスティバルでのロールデビュー

95年の動画はないものと思い込んでいましたが、以前見たことのあるこの動画が、どうやら95年のプッチーニ・フェスティバルの時のようです。画質も音質もよくないし、クーラのアリアの部分ではなく、逮捕されたカヴァラドッシがスカルピアに尋問されているシーンだけです。とはいえクーラの声の強さ、豪胆な面構え(笑)がなかなかです。 

Franco Giovine Scarpia Duetto "Tal Violenza" Tenore J.Cura

 

●1996年ウィーン「妙なる調和」

プッチーニ・フェスティバルでのロールデビューの翌年、ウィーン国立歌劇場に初出演した時のトスカから。若々しく強靭な歌声です。音声のみ。

Jose Cura "Recondita armonia" 1996 Tosca

 

●2000年バーリ「ヴィットリア!」

DVDになっている2000年のイタリア・バーリでの舞台から、血まみれ、渾身の叫び「勝利だ!」

 

 

●2000年ブダペストでのコンサートより「星は光りぬ」

コンサートですが、年齢的にも、容姿、声、カヴァラドッシそのもののように思えます。

José Cura E lucevan le stelle Cavaradossi Tosca Budapest

 

●2014年ハノーファー「星は光りぬ」

比較的最近のクーラの動画。ドイツ・ハノーファーの野外オペラ「トスカ」から。円熟の表現力です。

Jose Cura "E lucevan le stelle"

 

 


 

夏休みの時期なので、もう少し早くわかっていれば行きたかった・・と思います。カヴァラドッシは、私にとって、クーラの生の舞台をぜひ鑑賞したい演目のひとつ。ただ野外ということでリスクもあります。とはいえ、あの美しいロケーションの野外劇場。天候にさえ恵まれれば、本当に素晴らしい舞台になることでしょう。夏のご旅行でイタリアをご検討中の方、行かれるご予定の方がいらしたら、ぜひご感想などお聞かせいただければありがたいです。

 

*画像はフェスティバルFB,HPなどからお借りしました。トップとラストはハノーファーのトスカから。

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