人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

(DVD告知編) 2017年 ホセ・クーラ ワーグナーのタンホイザーに初挑戦 / Jose Cura / Tannhäuser

2017-10-20 | ワーグナーのタンホイザー



今年2017年の2月にモナコのモンテカルロ歌劇場で初演を迎えた、ワーグナーのタンホイザーのフランス語パリ版の復活上演。ホセ・クーラがはじめてワーグナーに挑戦するということでも話題になりました。
このプロダクションが早くも、DVD・ブルーレイになるようです。 → *2018年12月現在、まだリリースされたという情報はつかめていません。どうなっているのでしょう??


まずは、リリース元のArthausMusikがYouTubeにアップした予告動画を。 
→ 残念ながら見られなくなっています。
代わりに、アップされた本編の録画を。

Tannhäuser




"This Monte Carlo opera production is a world premiere! For the first time Jean-Louis Grinda staged the french version of Wagner’s romantic opera which was a flop after its first performance in 1861. José Cura gave his debut in the complex role as Tannhäuser under the direction of Nathalie Stutzmann who is also well-known as opera singer. With her, a congenial partner was found to interpret Wagner’s music with such sensuality, intensity and love how this extensive opera requires it."
(ArthausMusik)

「このモンテカルロオペラのプロダクションは世界初演! ジャン‐ルイ・グリンダは、1861年の初演以降、はじめて、この失敗に終わったワーグナーのロマンチックオペラのフランス語版を演出した。ホセ・クーラは、オペラ歌手としても有名なナタリー・シュトゥッツマンの指揮のもと、複雑な役柄であるタンホイザーとしてデビューを果たした。彼女と、気心の知れたパートナーたちは、ワグナーの音楽を、この巨大なオペラが必要としている官能性、強烈さ、愛とともに解釈した。」(ArthausMusik)







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まだ発売予定日や日本での発売の有無、価格などは、情報がみあたりません。

このプロダクションについては、これまで7回の投稿で、レビューや放送予定、クーラのインタビューなどを含め紹介してきました。

クーラにとっては、念願の、初のワーグナー挑戦で、まったく新しい地平を開く成功をおさめました。またプロダクションそのものが大きな歴史的な意義を持つものとして、多くのレビューから高く評価されています。

この仏語のパリ版は、ワーグナー自身の手によって作成されたものであり、当時のパリ特有の背景もあってこの時の上演は失敗に終わったものの、その後のパリでのワーグナー人気に火をつけるきっかけとしても、ワーグナーのこの作品をめぐる探究、努力と試行錯誤の過程のひとつとしても、重要な意義をもつものだそうです。

そういう経過があるために、タンホイザーのスコアは、独語版、仏語版ふくめ、多くの版があり、さまざまな研究がすすめられているものの、フランス語パリ版としても決定版がどれかというのは、未だ議論があるようです。
今回のプロダクションでは、この舞台をモンテカルロ歌劇場で鑑賞された方が劇場関係者から得た情報によると、ショット社によるワーグナーの新全集のスコアを使用しているとのことでした。

ショット社のHP



ワーグナーの探求と版をめぐる議論については、私にはこれ以上、詳しいことはわかりません。しかしこの復活したパリ版仏語上演は、これまでのドイツ語版とは「まるで別物だ」と感じられるようで、それは、一方では拒否感を持たれた方もあるでしょうし、一方では、まったく別の魅力を感じた方もいることと思います。「より官能的でセクシー」「パッションにあふれる」などの声がみうけられました。

これまでもレビューから紹介しましたが、ワーグナー協会のHPにも明記されていたこのプロダクションには、ドイツをはじめとして非常に注目が寄せられ、意義、上演の質ともに高く評価されました。いずれにしても、こういうワーグナーもあるんだ、こういう解釈・パフォーマンスも可能なのだということで、ワーグナーの芸術の深さ、豊かさの一端を示す公演ではなかったかと思います。

またクーラの歌手としてのキャリアの上でも、特筆すべき出来事、重要な芸術的な実りの1つとなったと思います。
DVD発売が楽しみです。詳細がわかりましたら、また紹介します。









*画像はモンテカルロ歌劇場のFBなどからお借りしました。



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(追加画像とインタビュー編) 2017年 ホセ・クーラ ワーグナーのタンホイザーに初挑戦 / Jose Cura / Tannhäuser

2017-07-23 | ワーグナーのタンホイザー




ホセ・クーラの2016/17シーズンは、ボンのピーター・グライムズの最終公演(7/15)をもって終了しました。
改めてこのシーズンについて、まとめをつくりたいと思っていますが、それほどまでに、新たな地平を開く挑戦と創造、そして豊かな実りと円熟の1年でした。

その中でもとりわけ大きな節目だったのが、2月のモンテカルロ歌劇場でのワーグナーのタンホイザー(パリ版フランス語上演)初挑戦だったと思います。
この公演については、すでにこれまで何回も紹介してきて、もう終わりのつもりでしたが、先日、モンテカルロ歌劇場がシーズンの終わりにあたって、このタンホイザーの初日の舞台の新しい画像をたくさん、フェイスブックにアップしてくれました。
ぜひ直接、見ていただきたいのですが、とても魅力的な写真が多かったので、そこからいくつかをお借りして紹介したいと思います。

 → これまでのクーラのタンホイザー関連の投稿はこちら


これまで紹介していなかったドイツの雑誌「オペルングラス」のレビューとインタビューからの抜粋も掲載します。

 






――ドイツ誌のレビューより

●めったに聞く機会がない、美しいタンホイザーの解釈――すぐにまた聞きたい、フランス語でも、ドイツ語ででも

「…最後に重要なことは、スターテノールのワーグナーデビューだ。単刀直入に言うなら、観客は真のセンセーションを目の当たりにした。

…ホセ・クーラは、多くのテナーに恐れられる正当な理由をもつ、この非常に要求の厳しい役柄であるタンホイザーに、素晴らしいパフォーマンスでロールデビューした。それは驚くほど簡単に、あらゆる可能性のある困難を完全に否定するように見えた。

明らかに風邪で苦しんでいたにもかかわらず、彼のパフォーマンスには目立った弱点はなく、全くその反対だった――集中した、フォーカスされたピッチ、最も難しいパッセージにおいても確実なイントネーション、フレージングは言語の流れから完全に自然に発展し、素晴らしく響き渡る、力づよいバリトンのような音色、それらに加えて、見事な、安定したハイノート――これらのすべてが一緒になって、すばらしく透徹した、非常に表現力豊かな、同時に、ボーカルにおいてもバランスのとれた、めったに聞く機会がない美しいタンホイザーの解釈を創りあげた。

そして、それは人にすぐにまたもう一度、聞ききたいと思わせる―― フランス語でも、いつの日か、ドイツ語ででも!」

「Das Opernglas」(April 2017)









――2017年ドイツ誌でのインタビューより

Q、今シーズンは2つの待望のロールデビューをする。タンホイザーとピーター・グライムス。モンテカルロ歌劇場で2月に、ワーグナー・オペラに着手する。フランス語版なので実際には言語は問題ではない。あなたにとっての主な挑戦は?

A(クーラ)、自然なボディランゲージを好むパフォーマー(ヴェルディ、プッチーニ、ヴェリズモの後期作品が好きなのは不思議ではない)として、ワグナーの驚異的な音楽レトリックを、演劇的に信憑性のあるやり方で伝えることは、確かに私の最大の課題。また、時にはテノールが歌うときに強制されるテッシトゥーラ(音域)も問題になるが、私は自分の歌を、スコアのニーズに合わせて解決できると信じている。


Q、フランス語上演は、あなたがこの役割をやるうえで考慮に入れた?

A、このことについて、あなたは私の目撃者だ。長い間、私たちはお互いを知っている。私がワーグナーを歌わない唯一の理由は、聴衆への敬意だ。現在話さない言語で歌うことを自分に許さないという敬意。
人々がそれを好むかどうかにかかわらず、役柄の解釈についてのクーラの「標準」がある。その標準は、テキストと身体の言語との関係に強く結びついている。これは、演劇の俳優で必須条件だが、オペラではそうではないようだ、あるいは必ずしもそうではない...。
もしその言葉が、あなたの文化的な持ち物に属していない場合、正直な身体的な言語表現をする方法はない。それで、私が流ちょうに話せるフランス語でタンホイザーのオファーを受けた時、すぐに受け入れ、これがおそらくワーグナーを歌う唯一のチャンスだと確信した。








●まったく新しい世界を発見しつつある――初のワーグナー挑戦

Q、正直なところ、ドイツ語版には本当に苦労させられる?

A、良い耳を持っているので、発音的には解決できるかもしれない。しかし、それは人々が私に期待するものではない。
ひとつは、クーラは他の何人かのアーティストほど良くはないと言っている人たちだが(これはその人の観点であり問題ではない)、しかし、まったく別のものが、クーラはいつものクーラほど良くないと言うこと...。


Q、パリでは、ワーグナー自身がフランス語の訳語を作った。さらに重要なのは、スコアそのものの変更、その間に作曲家の発展をかなり明確に示している。タンホイザーのさまざまな版のメリットは?

A、私はまだ、あなたの質問に答えるのに十分な権限をワーグナーについて持っていない。私は今、まったく新しい世界を発見しつつある。その発見のなかでは、私は子どもの無邪気さと、賢明な大人の慎重な備えをもって、前進しつつある...。








●タンホイザーは難しい歌唱でいっぱいの巨大なオペラ

Q、モンテカルロではオペラの指揮はナタリー・シュツッツマン、あなたと同じように、歌手であり指揮者。音楽解釈についてのコミュニケーションはどのように?

A、私は歌手・指揮者ではなく、後に歌手になった作曲家・指揮者。しかし、私はあなたの質問の意味は理解している。
まず私は、シュツッツマン氏に対して、指揮するときに、歌手ができることを同等に理解してくれるよう期待する。
それは確かに非常に難しい歌唱でいっぱいの巨大なオペラだが、それゆえに、歌手に愛と理解をもって寄りそい、権威を持ってオーケストラを「維持できる」指揮者が決定している。


Q、あなたのアプローチは、私たちがいつも聞いているものとは異なるものになる?

A、言ったように、ワーグナーに関する私の蓄積は非常に初歩的なので、私がタンホイザーを「創造」することができるのか、それとも、ただ良いプロフェッショナルとしての仕事ができるのか、私は言うことができない。(公演が終わった)3月にもう一度話そう...。








●リスクをとり、喜びとともに歩む「ドリーム・ロール」――ピーター・グライムズ

Q、タンホイザーのちょうど3か月後、次の大きな役柄のデビューがある。ピーター・グライムズ。今回はボンで、演出と舞台装置も行う。新しい役柄を準備しているアーティストにとってこれは大きな課題では?

A、これは大きな課題であり、大きなリスクだ。挑戦は私の肩にかかる仕事の量と関係があり、リスクは、演出・舞台監督と自分が一体であるため、私の解釈を最良の方法で作りあげることから自分自身を甘やかす恐れが・・。

冗談はさておき、それは仕事の地獄だが、また非常にやりがいのあること。芸術的な楽しみの縮図だ!

これがもっと頻繁に演奏されるオペラであれば、私は演出はせずに、歌っただろう。しかし再びいつ、このような、あまり演奏されないが素晴らしい作品を演出するチャンスが私にあるだろうか? 私はこの1つのチャンスを失うことはできなかった!


Q、ピーター・グライムズは、あなたにとって「夢の役柄」の1つだった。何がこの役割に関心を?そして何が挑戦?劇的に?

A、すでに語った、ワーグナーの音楽的レトリックと密度の濃い台本に対処するうえでの私の困難についての話に戻ると、ピーター・グライムズは正反対だ――音楽、テキスト、アクションの完璧な共存。私のようなパフォーマーにとっての夢だ。
この作品においては、すべての瞬間が挑戦。しかし、リスクを伴ってそれぞれのステップを踏む、このような魅力的な挑戦はまた、喜びとともにある一歩だ。






Q、あなたの2つの新しい役柄、タンホイザーとピーター・グライムズの間にはどのような違い、また類似点がある?

A、どちらもつまはじきにされた男だが、理由は異なる。タンホイザーは彼の運命に挑むが、ピーター・グライムスはその結果に苦しんでいる。
声楽的には、タンホイザーは素晴らしい音楽に非常に依存しているが、グライムスは精神の状態を伝えるために、声を使うことに依存している。時には単独の声だけに。たとえば第3幕の長い独白のように。

Q、今シーズン、あなたの最も重要な役割である3つに出演している――カラフ、西部の娘のディック・ジョンソン、オテロ。これらを現在のあなたの代表的な役柄とみなしている?

A、確かにオテロとディック・ジョンソンが私の代表的な役柄だといえる。カニオ、サムソンも同様に。そしてうまくいけば、数年後にはグライムスも。
カラフについては、私は何度も彼を演じて、それは成功しているが、彼は掘り下げるに十分な「人物像」を提供してくれないため、それを重要な役割とは考えていない。それは深い心理的な内面を演じる夜ではなく、素晴らしい歌の夜だ。


Q、これ以上の新しい役は?

A、タンホイザーを開発し、主に自分のグライムズを創るには数年かかるので、今はさらなる新しい役はない。
シンフォニックな面では、2017年3月にプラハで1989年に作曲した私のオラトリオ「この人を見よ」が世界初演される。








●変化する世界のなかで

Q、約25年前、あなたは家族とともにヨーロッパに移り、それからすぐに国際的なキャリアが始まった。
私たちは長年にわたって、あなたの歩みと時には通常とは違うやり方を追ってきた。私にとって個人的にも、あなたと話すことはいつも大変楽しい。
あなたの最初のインタビューは、1997年、表紙を飾った記事の1つだった。これらの年月を振り返ってみると、ビジネスが大きく変わった?


A、世界は大きく変わり、ビジネスも変わってきた。新しい技術、特にインターネットは、多くの人の心に、もはや成功するためには、長い時間の努力と研究は必要ではないと考えるようにさせた。今日、誰もが写真家であり、作曲家、作家、映画監督、歌手、俳優、料理人だ..。

現在ほど、「有名」であることと「偉大」であることとの違いが大きいことはなかった。かつては、有名になるためには優れていることが必要だった。そして時とともに偉大になったなら、賢明さにより尊敬を受けた。今日では、社会に貢献するものを持たずに、「世界規模のネット」を通じて簡単に有名になることができる。

それはそれでよい。誰もが有名になる権利を持っている...。しかし長期的には、これは私たちが物事を行う際の質に深刻な影響を与えている。大多数の人々が、自分に親近感を感じる悪いものを「楽しむ」ことを好むからだ。素晴らしいものよりも。それらは、彼らの頭の中で快適でなければ、彼らはそれを劣っているものと感じる。
 
他者の素晴らしさは、常に人々に2つの異なる効果をもたらしてきた。羨望と憎しみ――自分はあなたのようにはなり得ないから。または賞賛と感謝――
他者の偉大さが、自分自身を改善し、成長し、より良い個人になるように刺激するから。

この古くからの現象(我々の種のように古い)は、今日、インターネットの受け入れやすさによって、無限に増殖されている。

「Das Opernglas」(2017年2月)







*画像は劇場のFBよりお借りしました。
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(追加情報編) 2017年 ホセ・クーラ ワーグナーのタンホイザーに初挑戦 / Jose Cura / Tannhäuser

2017-03-31 | ワーグナーのタンホイザー



モンテカルロ歌劇場のタンホイザー・パリ版仏語上演で、はじめてのワーグナー挑戦を成功させたホセ・クーラ。これまでの情報については、いくつかの投稿で紹介してきました。
 
 → (録画編)  (レビュー編)  (放送告知編)  (リハーサル編)  (緊急告知編)

以上で終りのつもりでしたが、その後もいくつか、レビューや紹介記事が出され、またクーラがインタビューで、タンホイザーの反響について語ったりしていましたので、そうした情報を今回、追加的に紹介したいと思います。


●インターネット情報サイトEuronewsが紹介

ヨーロッパを中心とするインターネット情報サイトのEuronewsで紹介記事が掲載されています。



Euronewsでは13ヶ国語による紹介動画を作成していて、Youtubeにもアップされました。

こちらは英語版
Tannhäuser: a Wagner opera with a French accent - musica



*ついでに、まだこのタンホイザーの全編録画をご覧になっていない方に、Youtubeにアップされている、最終日2017年3月1日の録画リンクを。
たいへん珍しい、ワーグナーのタンホイザー、パリ版フランス語上演の舞台、モンテカルロ歌劇場でのライブ収録。

"Tannhäuser" de Wagner en français - l'Opéra de Monte-Carlo


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――ホセ・クーラ プラハでのインタビューより(2017年3月)

●タンホイザーの反響について


ドイツからの反応は、明らかな驚きだった。ドイツ人は彼らのワーグナーと英雄的なテノールを守っている。これは、ワーグナーを行うための別の方法だ。

今、みんなが私に電話してきて、オリジナルでの(ワーグナーの)役柄を学ばせようとするが、私がドイツ語を習得する前に、私は60歳になるだろう(笑)。

(「iDNES.cz」)





――モナコの情報サイトでのプロフィール紹介とインタビューより(2017年3月)

●役柄へのアプローチでこんなに苦しんだことはない

Q、あなたは初めてのワグナーをフランス語で歌う!この経験をどのように表現する?

A、山に登るようだ!
スコアは非常に長く、ボーカルがたいへん複雑であるだけでなく、テキストの量も膨大だ。


Q、新しいレパートリーやタンホイザーのような役柄にどのようにアプローチする?

A、通常、まず台本を学ぶことから始めて、それから、作曲家が、その言葉がどのように聞えると想像していたのかを見つけ出そうとして、音楽を汲み取る。

タンホイザーの場合、これまでになく、テキストを覚えるのに苦労したために、そのプロセスは非常に遅かった。
なぜなら、おそらく、私が多くの瞬間、フランス語の歌詞が音楽と衝突していると感じたためだと思う。
私は、役柄にアプローチするのに、これほど苦しんだことは一度もない!

(「Little Big Monaco」)

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――レビューより

●ローマ語りはまぎれもなく感動的

ホセ・クーラは、彼のタンホイザーに対して、様々な意見を集めた。一部は不十分さを感じたが、これらのほとんどはオリジナルのドイツ語を好み、フランス語上演に疑問をもっている人だ。確かに、その役割における「ラテンらしさ」の量は、ドイツスタイルの特定の歌手のパフォーマンスと比較する人にとって、混乱させることかもしれない。

私たちは、有名なオーケストラを指揮する良いミュージシャンでもある、このカリスマ的な芸術家の解釈を好む。そして、オテロの熱烈な衝動やサムソンのアクセントを見出すことで私たちを不快にすることはなかった。

さらに、クーラは、タンホイザーのもろさや懐疑的になった時、必要に応じて、ささやき声やメッツァ・ヴォーチェを使い、情熱や反乱の爆発をどう制御するかを知っている。

最後の幕で、彼のローマ語りは、紛れもなく感動的だった。

(「Metamag」)





●ボーカルも演劇的にも優雅、熟した声、楽々と

ホセ・クーラのタンハイザーは、フランス語ではじめてのワーグナーへのコミットメントをうまく克服した。

彼のキャラクターはさまざまなニュアンスを含み、ボーカル的にも演劇的にも優雅に現れている。彼の声は、熟して、楽々と放射される。

(「OperaClick」)


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台本とスコアの分析、役柄の研究を、これまでにないほど苦しみながら、徹底的にやったクーラのタンホイザー。その努力と到達が、多くのレビューでも高く評価されたことは、本当に喜ばしいことです。

またあちこちから、ワーグナーを原語であるドイツ語で、という誘い(?)がすでにあるようです。
もちろんクーラは、すでに日常会話程度のドイツ語はできるし、ドイツ誌のインタビューでも答えていましたが、ミュージシャンとしてとても良い耳をもっているので、言葉を発音することは可能ということです。しかし、音楽と脚本の解釈、歌唱と演技を一体化させたクーラ自身の「基準」からは、満足できるものではなく、それをやらないのは、楽曲と聴衆を尊敬しているからこそだ、とのことでした。

ということで、現在のところは、ドイツ語のワーグナーにあらためて挑戦するつもりはなさそうですが、今後、クーラを説得する劇場やマネージャーが現れるのかどうか、これはクーラの今後の歌手としてのキャリアにとって大きな影響を与えることでもあり、興味深いです。








*写真は、劇場のHPなどからお借りしました。
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(録画編) 2017年 ホセ・クーラ ワーグナーのタンホイザーに初挑戦 / Jose Cura / Tannhäuser

2017-03-05 | ワーグナーのタンホイザー



ホセ・クーラのワーグナー初挑戦、モンテカルロ歌劇場のタンホイザーパリ版仏語上演は、大好評のうちに、無事に終了しました。
最終日の2月28日の舞台は、フランスの公共テレビ、フランス3が収録、系列のインターネット配信サイトCultureboxで世界に中継されました。日本でもたいへん良い画質、音質で順調に観賞することができました。

そして2017年9月1日まで、半年間、無料でオンデマンド視聴が可能です。

TANNHÄUSER Richard Wagner

2017年2月19日(日曜日) - 15H
2017年2月22日(水曜日) - 20H(GALA)
2017年2月25日(土曜日) - 20H(収録)
2017年2月28日(火曜日) - 20H(収録・ライブ放映)

Conductor= Nathalie Stutzmann
Directer= Jean-Louis Grinda
Set&Light= Laurent Castaingt , Costumes= Jorge Jara

Tannhäuser= José Cura
Hermann, Landgrave de Thuringe= Steven Humes
Wolfram= Jean-François Lapointe
Elisabeth, nièce du Landgrave= Meagan Miller
Vénus= Aude Extrémo
Walther= William Joyner , Biterolf= Roger Joakim , Henry= Gijs van der Linden
Reinmar= Chul-Jun Kim , Un Pâtre= Anaïs Constans




また手軽に楽しみたい方にはYouTubeの公式チャンネルにもアップされています。 → 終了 別のリンクを

"Tannhäuser" de Wagner en français - Live @ l'Opéra de Monte-Carlo



加えて、DVDもリリースされるそうです。いたれりつくれりのサービスに、感謝感激です。


劇場のFBに掲載された、収録中の様子。


舞台は、簡略なセットですが、背景に映像を使用して、非常にカラフルで、舞台設定やドラマの背景、タンホイザーの心象風景などを幻想的に映し出すもので、たいへん美しく、魅力的でした。

これまで(レビュー編)で紹介しましたが、レビューは全体として非常に好評、初演時に大失敗に終わったパリ版仏語上演を復活成功させた歴史的意義への評価とともに、ナタリー・シュトゥッツマンの指揮は高く評価されていました。

またクーラのタンホイザーへの評価も、一部に、仏語の発音や歌唱テクニックの問題の指摘、またスタイルがワーグナーではなくヴェリズモ的だとするものもありましたが、ほとんどが好評でした。
「タンホイザーのキャラクターに人間性をふきこんだ」「主人公の苦悩に焦点をあてた」など、クーラの志す、人間のリアルなドラマを浮き彫りにする現代のオペラが、この舞台でも実現したことを示唆する評もありました。

ぜひ、このユニークでエモーショナルなプロダクションをご覧ください。
以下では、(レビュー編)で紹介された後、新たに出されたレビューから、主にクーラに関する部分をいくつか抜粋しつつ、舞台の様子を紹介したいと思います。


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≪第1幕≫
麻薬と愛欲に溺れるヴェーヌスベルクでのあけくれに嫌気がさし、脱出を望み、引き留める女神ヴェーヌスを振りきろうとするタンホイザー。
非常にやわらかく歌いはじめたクーラの印象的な歌唱。






●「リスクが報われた」
「タイトルロールのホセ・クーラが印象的。彼の真のテノールは、高音からバリトンの印象まで、魅力的に変化し、無慈悲に対しての成功の願望のない闘争を表現する」「キャラクターの脆弱性を表現できている」
(「Opera-Online」)

●「刺激的で、詩的」
「ホセ・クーラはひどい風邪をひいていて、バレエの間に何度も咳をした。最悪のことを恐れたが、そんなことはなかった―― クーラは見事にタンホイザーを征服した。おそらく風邪のために、中心的なシーンの前は抑えていたが、クライマックスでは激しく歌い、アンサンブルとともに、非常に多くのニュアンスを持つローマ語りを描き、涙を抑えきれないほどだった。柔らかい色調と視覚的にも感動的なパフォーマーとして際立ち、彼はロマンチックな英雄として飛びぬけて優秀であり、依然としてハンサムな男、またフランス語においても真面目で、絶対的なプロフェッショナルだった。脱帽!」
(「OperaLounge」)


ヴェーヌスベルクを抜け出し、現実世界に戻ったタンホイザー。


喜びと悔悟の念で泣きながら祈る。



領主ヘルマンや親友ヴォルフラムとの再会し、城に戻ることを決意。


1幕最後の、復活を決意するタンホイザーと合唱は、すばらしい。



●「・・我々は、彼の最初のタイトルロールでの、ホセ・クーラの非常にカリスマ的なパフォーマンスを賞賛するだろう」「私たちは彼の(モンテカルロ歌劇場での)スティッフィリオの忘れられない解釈と、最も最近、目を奪われた非常に親密なリサイタルをおこなった、アルゼンチンのテノールとヴェルディとのつながりを想起することは避けられない。非常に美しく柔らかなボーカルライン、とてもまろやかで、ボリューム感があり、歌唱のなかに、こっそりと、ほとんどドビュッシーのようなントネーション、常に官能的」
(「Musicologie.org」)


≪第2幕≫

エリザベートと再会、彼女の耳元でささやくように歌うタンホイザー。クーラのフランス語が非常に官能的。


タンホイザーとエリザベートの二重唱。印象的でユニーク。


抱き合う二人、エリザベートを押し倒し、激しくキスするタンホイザー。その場面を、現れた領主ヘルマンも見てしまう。


歌合戦の開始を宣言する領主の話の間でも、落ち着かずにエリザベートの様子をうかがい、こっそり手をにぎるタンホイザー。


神聖な愛を歌うヴォルフラムらの様子を、タンホイザーはふんぞり返って聞き、反論する。傲慢で、自己中心的な人物像が描かれる。




ついにヴェーヌスベルクを賛美しだすタンホイザー。女神たちが現れる。


衝動にまかせて、みんなの前でエリザベートを抱きすくめ、強引にキスをし、彼女に頬を平手打ちされる。





●「クーラの声は、高音は依然として激しく聞こえるが、25年のキャリアの後も、まだ十分な広さと、強力な表現力と耐久性がある。彼の本能的で衝動的な気質は、アンチヒーローのタンホイザーに適している」
「(ConcertClassic.com」)

●「ホセ・クーラの非常に魅力的な音色、彼の勇気は癒しを支える」
(「ResMusica」)


みんなに非難されるタンホイザーを、命をかけて救おうとするエリザベート。彼女の思いに我にかえり、後悔し、ローマへの巡礼で許しを得ようと決意するタンホイザー。







●「全体のチームの歌手は、見事な言語的技巧と豊かな声で演奏した。ホセ・クーラにワーグナーオペラへのデビューを説得することができ、理想的なタイトルトールの英雄を得た。彼は、すべての音を見事に、勇敢にを歌った。ワーグナーは常に、彼の歌手にイタリアの声を要求しているが、それを、柔らかい声で、楽々と高音部でも歌ったホセ・クーラは、非常に印象的。理想的なタンホイザー!」
(「Weltexpress」)


≪第3幕≫

ローマで救いを得られず戻ったタンホイザー、ヴォルフラムと再会し、その顛末を話し始める「ローマ語り」。このドラマのクライマックス。







●「ホセ・クーラは、全体を通して弾力のある声を維持し、ローマ語りでボーカルへの要求の高まりにもかかわらず、陥る可能性があった音楽の歪みが何もなかった」「このオリジナルのパリ版を非常に丁寧に発表したモンテカルロへを賞賛する」
(「Beckmesser's Quill」)

●「タイトルロールのクーラは、耐久力とパワーを持っている。メロディラインは、時には、もう少しきれいであることができるかもしれないが、暗さとラテンの両方のカラ―は、すべての苦しみの信頼度、ローマ語りで最高潮に達する外向的な化身の芸術として、素晴らしいものだった。フランス語においても、アクセントで部分的な課題にもかかわらず、非常に正確な言葉」
(「Diapason」)


絶望し、ヴェーヌスベルクに戻ろうとする思いと、ヴォルフラムの説得との間で引き裂かれ、混乱するタンホイザー。


自らのために命をかけたエリザベートの名前を聞き、ヴェーヌスベルクの呪縛から解き放たれるタンホイザー、一方で、ヴェーヌスに手をひかれ、ヴェーヌスベルクに向かうヴォルフラム。タンホイザーはうなづき、彼の出発を見送る。





●「十分に明確なフランス語の雄弁術で、クーラは、苦悩の側面を強調し、彼の情熱と攻撃的な後悔のバースト、加えて、カリスマ的なステージ存在感。様々なカラ―、色合いで描き出されたローマ語りは、予想外に、驚くべきほどの解釈の集大成だった」
(「El cronista errant」)


ラストシーン。タンホイザーを見つけ出し、とりまいた城の人々。彼に銃口が向けられる。


終幕



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クーラは、非常な覚悟と研究でタンホイザーに立ち向かい、準備をすすめたようです。
中継で彼の歌唱と演技をみて、インタビューでクーラが語っていたことが、納得されたように思いました。
これまでも紹介しましたが、いくつか再掲します。

――私はタンホイザーと苦闘している。キャラクターのなかに意味を見いだすために、多くの労力を費やす。音楽が展開するにつれて、つぎつぎ現れ、3秒で表現されている可能性すらあるメッセージをつかみとるために。

――レトリックはワーグナーのスタイルの一部であり、その音楽の美しさは信じられないほどだ。しかし、イタリアオペラのリズムに慣れ、「リアリズム」の演技のなかにいる人間には、多くの思考が必要であり、私はバランスを見つける必要がある。



クーラの解釈と苦闘、彼が、ワーグナーのレトリックと、自らのリアリズムの間にいかにバランスを見出したのかーーぜひ、クーラの挑戦を動画で確認してみてください!

この録画を振り返って、やはりタンホイザーという、衝動的で、理想と現実、精神的なものと人間の情念、官能、欲望との間で揺れ動き、動揺する人物を描き出すうえで、クーラの表現力ゆたかな歌唱、そしてカリスマ的な存在感、舞台上の姿、説得力のある演技が、たいへん力を発揮したと思います。

単に、精神的な愛と官能とを切り離して、どちらが正しいかというのではなく、人間のなかにある両方の面、その対立、矛盾と、その両者が存在あるがゆえの、苦悩と喜びを、人間的に、リアルに、タンホイザーのキャラクターで表現したのではないでしょうか。
細かな演技をふくめ、演出家といっしょにつくっていったのだと思いますが、好色でわがまま、傲慢で、衝動的、常に揺れ動き、自己中心的だけれど、憎めない、魅力的なタンホイザーでした。

とりわけ、3幕は、やはりクーラの本領発揮。長年、キャラクターのリアリズムとドラマを描き出すことに執念を燃やしてきたクーラならではだったと思います。
もちろん、オテロやトスカなど、クーラが長年歌ってきた役に比べれは、これはまだ第一歩にすぎません。この先、クーラがどう進むのか非常に興味深いです。

クーラは、2/28にモンテカルロでタンホイザーの最終日を終え、すでに2日後の3/2には、もうプラハで、プラハ交響楽団とのコンサートにむけて、リハーサルに入っています。今度は作曲家・指揮者として、3/8,9にコンサートを予定しています。
さらに、その次は、5月にボン劇場で、これも初のピーター・グライムズの演出と主演があります。これは来年、モナコでも上演するようです。

タンホイザーの疲れも見せず精力的なクーラ。やはり、自分の芸術的な信念をつらぬき、長年の夢を実現して、やりたいことをやっているからこその、充実ぶりです。あらたな黄金期を迎えていると、ファンの1人として実感します。





FBに紹介されたカーテンコールの様子。



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(レビュー編) 2017年 ホセ・クーラ ワーグナーのタンホイザーに初挑戦 / Jose Cura / Tannhäuser

2017-02-26 | ワーグナーのタンホイザー



ホセ・クーラがワーグナーに初挑戦した、モンテカルロ歌劇場のタンホイザー・パリ版フランス語上演。レビューも、ほとんどが高く評価しました。

最終日、2月28日の舞台は、前回の投稿で紹介したとおり、ライブ中継があります。このタンホイザーについての情報を掲載したこれまでの投稿もご参照ください。
 → (放送告知編) 、(リハーサル編) 、(緊急告知編)

今回は、ネット上で読むことができたレビューから、全体の評価と、主にクーラに対する部分を抜粋して紹介したいと思います。





Tannhäuser in French at the Monte-Carlo Opera
Conductor= Nathalie Stutzmann
Directer= Jean-Louis Grinda
Set&Light= Laurent Castaingt , Costumes= Jorge Jara

Tannhäuser= José Cura
Hermann, Landgrave de Thuringe= Steven Humes
Wolfram= Jean-François Lapointe
Elisabeth, nièce du Landgrave= Meagan Miller
Vénus= Aude Extrémo
Walther= William Joyner , Biterolf= Roger Joakim , Henry= Gijs van der Linden
Reinmar= Chul-Jun Kim , Un Pâtre= Anaïs Constans


第1幕 女神ヴェーヌスのヴェーヌスベルクで、麻薬や愛欲に溺れる騎士タンホイザー



●フランス全てで見る価値がある

「ワーグナーのオペラの素晴らしいパフォーマンス」 「成功は総合的」
「歌手は豪華な布陣、筆頭はホセ・クーラ、英雄的な声」
「フランスのTVはタンホイザーを全編放送する。フランスのすべてが、このショーを、クーラとこのカラー(カラフルな照明・映像を使った演出のことか?)で、すべて見る価値がある!」
(「Monaco-Matin」)


ヴェーヌスベルクを脱出したタンホイザー。かつての主人、領主ヘルマンや親友ヴォルフラムと再会し、再び城に戻ることを決意する。



●この偉大な芸術家は、何を歌い、どの表現するかを理解している

「復活したフランス語の台本の「タンホイザー」、本当のパリ版。絶品」
「確かにホセ・クーラは、情熱的で豊かなタンホイザーを体現している。ヴァルトブルクの厳しさより、ヴェーヌスベルクの官能性で、よりいっそうに」
「オペラハウスの小さなサイズは、スコアに合った繊細でニュアンスのある歌を可能にしている」
(「Lalibre」)

「この偉大な芸術家は、彼が何を歌い、どのように表現するかを理解している」
(「Forumopera」)


第2幕 かつての恋人エリザベートに再会し、愛を確認しあう。





●最高レベルでこの難役を修得

「ワーグナーのコミュニティにとって、この初演は特別な意味があった。モンテカルロは、タイトルロールをホセ・クーラがすることを発表した!結論として、その結果は、センセーショナルだった」
「アルゼンチン人(クーラ)は、今までイタリアとフランスのレパートリーのプロフェッショナルとして活動してきたが、最高レベルで、この困難な役を修得した。彼の同僚たちがその成功を喜んでいるところでは、クーラは、想像を絶する表現のパレットを所有している」
「エリザベートとのデュエットで・・パッセージのリズミカルな精度にはただ驚嘆した。」
「叙情的な語りと外向的自己忘却の表現の混ざり合ったローマ語りにおいて、すでにアンネマリー・クレーマーの深い祈りによって高められた緊張が、耐え難いほどのレベルで最高潮に達する」
「国際的なディレクターの協会は、ホセ・クーラが深くドイツ語を学ぶコースの資金提供のために、今、一緒に動くべきだ。このように歌うタンホイザー歌手は、バイロイトからテアトロ・コロン劇場まで(世界中という意味か)、そうは多くいない」
(「Die Presse」)


愛を称える歌合戦に参加したタンホイザー。精神的な愛を称える他の騎士たちに対して、自由で官能的な愛を歌い、ヴェーヌスを称えたため、激しい反感をかい、領主に追放される。







●タンホイザーの人間性と脆弱性を探求

「ホセ・クーラの解釈はマッチしている」
「枯渇することのない混ざり合った声の卓越した修得によって・・柔らかい声でささやくローマ語りで最高潮に達する」
「アルゼンチンのテノールは、何よりも、タンホイザーの人間性と脆弱性を探求しようとしている。かつてヴォルフガング・ヴィントガッセンによって見事に具現化されていた、病的で、非友好的、その対立」
(「Concertonet」)


第3幕 ローマに贖罪の巡礼に行ったが、許されることなく戻ったタンホイザー。ヴォルフラムと再会し、ローマでの顛末を語る「ローマ語り」。エリザベートの深い愛と死を知り、悔恨にさいなまれる。








●ローマ語りは非常に劇的で強力

「ホセ・クーラはタンホイザーとして、役柄のさまざまな段階にドラマティックに注ぎ込むことができる」
「ローマ語りの非常に劇的で強力な物語が心に残る」
(「Bachtrack」)

「主役を担ったホセ・クーラ。その絶望的なローマ語りは非常に効果的だった」
(「arts-spectacles」)


●クーラはプロダクションに人間のキャラクターを与えた

「彼の演劇的な存在感を通じて、このプロダクションに、特にその "人間"のキャラクターを与えたのはホセ・クーラだった」「特に第2、3幕では、完全に彼の要素内にある」
「クーラは、衝動を制御することができないために絶えず落ちいる(タンホイザーの)キャラクターの苦悩の中に、私たちの興味を引きこむ」
「クーラは、深刻なシーンに、ユーモアを挿入することさえある。・・友人のヴォルフラムにヴェーヌスベルクの喜びを味わってもらうように勧める。このような演技の描写は台本にはないが、このジェスチャーはキャラクターに明るさを与え、セックスと禁欲主義の間の二元論からオペラを解放することに役立つ」
(「Classicagenda」)







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クーラの初挑戦、そしてタンホイザーのパリ版フランス語上演という思い切った試みは、全体として、非常に高く評価されたようです。

オーストラリアの保守系の全国紙がクーラのタンホイザーを大絶賛し、「世界中の劇場のディレクターはクーラに完全なドイツ語修得のための資金調達を」とまで書いたのには、びっくりしました。クーラのワーグナーをもっと聞きたいという、つよいエールと賛辞だと思いました。

現地2月28日の最終日のライブ放映がたいへん楽しみです。

*アップされた録画リンク








*これらの美しい画像は、劇場のHPや報道などからお借りしました。モンテカルロ歌劇場のHPには、まだまだ魅力的な画像が大量に掲載されています。ぜひご覧ください。
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(放送告知編) 2017年 ホセ・クーラ ワーグナーのタンホイザーに初挑戦 / Jose Cura / Tannhäuser

2017-02-23 | ワーグナーのタンホイザー



2017年2月19日に初日を迎えた、ホセ・クーラ初のワーグナー・ロール、タンホイザー。
このモンテカルロ歌劇場のプロダクション、初日の会場は、大喝采。そして多くのレビューも大絶賛でした。

タンホイザーのパリ版フランス語上演という歴史的な意義に加えて、主演のクーラをはじめとする歌手、合唱、演出、指揮、オケなど、パフォーマンス全体を高く評価するレビューが少なくありませんでした。

フランスの公共テレビ局フランス3が収録するという情報が入っていましたが、ようやく、放送日時が決まりました!
どうやら、最終日の2月28日の舞台を、ライブ放送するようです。

 → 無事放送終了! オンデマンドで2017年9月1日まで視聴可です!


●現地時間――2月28日(火)午後8時~放送開始

●日本時間――3月1日(水)午前4時~
 
●放送時間――3時間20分

●放送は、フランスの放送局のインターネットサイト、CULTUREBOX




*アップされた録画です



Conductor= Nathalie Stutzmann
Directer= Jean-Louis Grinda
Set&Light= Laurent Castaingt , Costumes= Jorge Jara

Tannhäuser= José Cura
Hermann, Landgrave de Thuringe= Steven Humes
Wolfram= Jean-François Lapointe
Elisabeth, nièce du Landgrave= Meagan Miller
Vénus= Aude Extrémo
Walther= William Joyner , Biterolf= Roger Joakim , Henry= Gijs van der Linden
Reinmar= Chul-Jun Kim , Un Pâtre= Anaïs Constans


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指揮者は、ナタリー・シュトゥッツマン、演出は、モンテカルロ歌劇場の総支配人でもあるジャン=ルイ・グリンダ。

ジャン=ルイ・グリンダは、日本の新国立劇場で、この3月14日から始まる新制作のルチアの演出家でもあります。このルチアは、モンテカルロ歌劇場との共同制作なのですね。
グリンダ氏は、タンホイザーの初日を終えて、すぐに出発し、すでに日本に滞在中のようです。フェイスブックに、「ホテルの窓から富士山が見える」と写真を投稿していました。

モンテカルロ歌劇場は、このタンホイザーの宣伝動画をアップしてくれています。クーラのインタビューなども入り、とても美しい舞台の様子が分る動画です。

Tannhäuser - MONACO INFO - Février 2017 2



ライブ放送は、日本時間の深夜から朝にかけてなので、なかなかきついですが、オンデマンドでしばらく見られる可能性もあるかもしれません(??)
先ほどのリンクページに、184日間、再生できると書いてありました‼
2/27追加 184日間という表示が見つからなくなりました。オンデマンドがあるのかどうか、現時点では未確認です。
→ 前述のとおり、9月1日まで、オンデマンド視聴可能です。

また、この動画の最後に、ナレーターが、DVDについてふれていますので、録画がDVDとしてリリースされるかもしれません。
クーラの出演したオペラのDVDは、これが実現すれば、2010年のカールスルーエのサムソンとデリラ以来です。
楽しみに待ちたいと思います。

舞台の様子、またレビューもたいへん興味深いものがたくさん出ていますので、次回まとめて紹介したいと思います。








*写真は、モンテカルロ歌劇場のHP,FBなどからお借りしました。
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(リハーサル編) 2017年 ホセ・クーラ ワーグナーのタンホイザーに初挑戦 / Jose Cura / Tannhäuser

2017-02-17 | ワーグナーのタンホイザー

モンテカルロ歌劇場HPに掲載されたタンホイザーのリハーサルの写真)


ホセ・クーラがはじめて挑戦するワーグナー、タンホイザーのパリ版フランス語上演の初日が、いよいよ目前、2月19日(日)に迫りました。劇場はモナコのモンテカルロ歌劇場、プロダクションは、ドイツのボン劇場との共同制作だそうです。

4日間の公演のチケットは、すでに全席完売とのことです。
リハーサルも順調にすすんでいるようで、劇場や指揮者がさまざまな画像をネットにアップしてくれていますし、クーラ自身も、まだ少ないですが、新たにはじめたインスタグラムで発信しはじめています。

まずはリハーサルの様子を中心に、いくつか画像をお借りして紹介したいと思います。





モンテカルロ歌劇場は、モナコの有名なカジノに隣接した、非常に豪華絢爛の建物のようです。
クーラは、これまでこの劇場で、ヴェルディのスティッフェリオに出演、アルゼンチン音楽のリサイタルも開いています。

座席数は、わずか524!
これはこれまでクーラが近年出演している劇場のなかで、最も小さく、巨大劇場のテアトロコロン(2487席)、メトロポリタン歌劇場(3088席)をはじめ、欧州の主要劇場のスカラ座(2030席)、ウィーン国立歌劇場(1709席+立見席)や日本の新国立劇場(1814席)と比べると、その小ささがわかります。小規模といわれるチューリッヒ歌劇場(1189席)でもモナコの倍の規模です。
しかし、これほど贅沢な劇場はないといえます。歌手の表情や演技も近くに見え、声もよく響くことでしょう。クーラにとっても、ワーグナー初挑戦には、最適ともいえますね。





TANNHÄUSER Richard Wagner

2017年2月19日(日曜日) - 15H
2017年2月22日(水曜日) - 20H(GALA)
2017年2月25日(土曜日) - 20H
2017年2月28日(火曜日) - 20H

Conductor= Nathalie Stutzmann
Directer= Jean-Louis Grinda
Set&Light= Laurent Castaingt , Costumes= Jorge Jara

Tannhäuser= José Cura
Hermann, Landgrave de Thuringe= Steven Humes
Wolfram= Jean-François Lapointe
Elisabeth, nièce du Landgrave= Meagan Miller
Vénus= Aude Extrémo
Walther= William Joyner , Biterolf= Roger Joakim , Henry= Gijs van der Linden
Reinmar= Chul-Jun Kim , Un Pâtre= Anaïs Constans



指揮者のナタリー・シュトゥッツマンがFBに掲載した、リハーサルの様子。

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いつもは、リハーサル期間に、インタビューや役柄解釈などについて、いろんな投稿を掲載してくれるクーラですが、今回は、初のワーグナー挑戦のためか、ほとんど、フェイスブックでの発信はありませんでした。

●『Das Opernglas』誌の表紙とインタビューに登場

一方、ドイツの有名なオペラ雑誌『Das Opernglas』2017年2月号に、表紙に登場し、ワーグナーのタンホイザーでのデビューや、5月のボンでのピーター・グライムズ演出・主演などについてのインタビューが掲載されました。
まだ実物を入手していないので内容はわかりませんが、「私は全く新しい世界を発見する過程にいる」と見出しがたてられていて、初挑戦のワーグナーで苦闘しつつ、新たな世界へチャレンジしていることなどが語られていると思われます。


  

『Das Opernglas』誌は、記事ごとのPDFでも、1冊でも、ネットで購入できるようですので、興味のある方は、ぜひHPをご覧になってください。
 → 『Das Opernglas』 HP


●南西ドイツ放送(SWR)で2時間の特集番組(2月19日までオンデマンドで日本でも可)

またドイツの公共放送、南西ドイツ放送(SWR)がラジオで2時間のクーラ特集番組を放送しました。タンホイザー初日の2月19日の午後3時まで(現地)、ネットでオンデマンドで聴くことができます。日本時間だと19日(日)の夜11時まで可能だと思います。
内容は、インタビューとクーラの歌や指揮した曲など。最近のアルゼンチン・南米の歌のコンサートでの歌唱をはじめ、かつてのプッチーニアリア集からの「誰も寝てはならぬ」など、たくさんの曲が放送されてます。クーラは英語で話していますが、ドイツ語の通訳が被っていますので、ちょっと私には聞き取りが困難ですが、主に、クーラの人生とキャリアについて、問われて語っているようです。
クーラはFBで、「SWRがこんなに素晴らしいプログラムで私を賞賛するとは思わなかった。 ありがとう、SWR!」と驚いたことを書いていました。

 → クーラの番組へのリンク SWR南西ドイツ放送



以下、指揮者シュトゥッツマンやモンテカルロ歌劇場がアップしてくれた、リハーサルの画像をいくつか紹介しながら、以前のクーラのインタビューからタンホイザーへの思いについて触れた部分を抜粋して、再掲したいと思います。


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このお花畑のようなところがヴェーヌスベルクでしょうか?メルヘンの世界のようです。


リハーサル中のクーラや出演者たち。





――クーラのフェイスブックから フォロワーの質問に答えて(再掲)

Q、ワーグナーへの挑戦は?


A、タンホイザーの音楽、一般にワーグナーは、私のように、音楽と演技とのリアルな結びつきを求める者にとっては、理想的とはいえない。しかしこれはスタイルの問題であり、私が解決すべき問題だ。

それには関係なく、ワーグナーの音楽は、信じがたいほどの音のモニュメントだ。残念なことに、台本は愚かしいけれど...。
とにかく私は、タンホイザーをやってみたかった。
なぜなら、私は少なくとも一生に一度は、ワーグナーのオペラを演じたかったからだ。ドイツ語は私には手が出せないので、この「フランス語上演」のチャンスを手放すことはできなかった。







――ついに実現するワーグナーでのデビュー(2016年9月のリエージュでのインタビューより再掲) 

Q、2007年のインタビューでは、2010年にコンサート形式でパルジファルを歌うと聞いたが?


A、私はドイツ語を怖れ、自分のスコアを知っていたが、コンサート形式なら可能だろうと思い、受け入れた。しかしコンサートは残念ながらキャンセルされた。


Q、ついに2017年2月に、モンテカルロでワーグナーのタンホイザーにデビューするが?

A、タンホイザーは、偉大で、巨大な、非常に難しい役柄であり、私は怖ろしく怯えていることを告白しなければならないが、もし私がマスターしていない言語でそれを解釈しなければならないならば、それは単に不可能だっただろう。少なくとも、フランス語版のおかげで、私はワーグナーを歌うことができる。


ピアノドレスリハーサルの様子(指揮者のFBより)。歌合戦の場面でしょうか?



Q、このフランス語版タンホイザーのプロジェクトはどのように始まった?

A、私がヴェルディのオペラ、スティッフェリオのためにモンテカルロ歌劇場に行った時、Jean-Louis Grindaは、タンホイザーのパリ版をやりたがっていた。彼が私に提案し、私はやりたかったと答えた。そして、それがフランス語で正式に書かれた唯一のワーグナーであるので、私の唯一のワーグナーへの挑戦となるだろうと思う。

Q、言語だけでなく、長さも問題になる?

A、私はタンホイザーと苦闘している。キャラクターのなかに意味を見いだすために、多くの労力を費やす。音楽が展開するにつれて、つぎつぎ現れ、3秒で表現されている可能性すらあるメッセージをつかみとるために。
レトリックはワーグナーのスタイルの一部であり、その音楽の美しさは信じられないほどだ。しかし、イタリアオペラのリズムに慣れ、「リアリズム」の演技のなかにいる人間には、多くの思考が必要であり、私はバランスを見つける必要がある。

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●現地の公演紹介企画より

公演紹介のHPに紹介されていたタンホイザーの衣装のスケッチ画。

  




●指揮者のFBより

ナタリー・シュトゥッツマンのフェイスブックには、いろいろなリハーサル中の写真がアップされています。演出家の娘を出演者が交代で子守りしてる様子など、リラックスしている家族的な雰囲気です。
子ども好きのクーラ、演出家の娘とツーショット。






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初日をいよいよ数日後に控え、ドレスリハーサルの写真も続々と発信されつつあります。次回は、それらや、本番の舞台の情報などを紹介したいと思っています。

どの写真をみても、わくわくするようなものばかりです。実際にモナコに飛んで行けないのが、つくづく残念です。
とにかく、初挑戦のワーグナー、困難はあったでしょうが、無事にリハーサルがすすんだことは本当に良かったです。本番の成功を心から願っています。




*画像は、クーラや劇場、指揮者シュトゥッツマンなどのHP,FBからお借りしました。
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(緊急告知編) 2017年 ホセ・クーラ ワーグナーのタンホイザーに初挑戦 / Jose Cura / Tannhäuser

2016-07-13 | ワーグナーのタンホイザー

 *写真は2016年7月、スロヴェニアのリュブリャナ・フェスティバルのオテロより

ホセ・クーラの念願のワーグナー・ロールデビューが、ようやく公式カレンダーに掲載されました。
2017年2月、タンホイザーのタイトルロール、場所はモナコのモンテカルロ歌劇場です。
→ クーラHP公式カレンダー (2016年の分の下に続いています)

もともとワーグナーについては、若い頃、バイロイトからもオファーがあったようですが、ドイツ語が問題だと断ってきたようです。日常会話程度なら問題はないが、役柄を深く掘り下げ、解釈、演技、歌唱を一体に舞台上のドラマをつくりあげるクーラのスタイルからすると、「言葉のパヒューム(香り、ニュアンスを含めた理解という意味か)」までは理解できないからということでした。

しかしワーグナー・デビューは、クーラ自身にとっても念願だったようで、タンホイザーのパリ版フランス語上演という方法で、ついにロールデビューの場を得ることができました。

*パリ版フランス語上演 2017/2/19、22、25、28
 この他にも、ボンのピーター・グライムズの演出・主演なども掲載されています。これらはまだ17年の予定の一部とのことです。



モンテカルロ歌劇場のホームページ → タンホイザーのページ 

キャスト・スタッフ


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これまでも折にふれて、クーラは、ワーグナーをやりたいということを発言していました。いくつかのインタビューから、ワーグナーについて、ロールデビューについての発言を紹介します。

〈私には夢がある――ブリテン、ワーグナー、モーツアルト‥〉
●2009年インタビューより
私は、ブリテンのピーター・グライムズを歌いたいと思っている。それが英語での私の最初の役柄になるだろう。
おそらく私は、ひとつか、またはいくつか、ワーグナーの役柄も歌うことができると思う。しかし、ただ、言葉について考えるとき、私自身の要求のレベルにおいて、それを実行できないならば、私はそれを行うことは決してないだろう。

しかし、私は夢を持っている。それはモーツアルトのドン・ジョヴァンニ。私にはあまりに重すぎると言わないでほしい。私はオテロにおいて、時にはそれ以上に深く歌っている。

私はモーツァルトを愛している。しかし残念ながら、モーツアルトは私に合うテナーの役割を残さなかった。
――しかし、ドン・ジョヴァンニ・・・私が、この役柄のために年を取りすぎる前に、どうか私に任せてくれないか!



〈ワーグナーの美しさ、音楽的レトリック〉
●2015年インタビューより

ヴェリズモオペラは、ワーグナーの素晴らしいレトリック、ヴェルディの英雄的人物像に対するアレルギー反応のように誕生した。ヴェリズモは彼らの悲惨さを露出し、肉と血、過ちを犯す人々を描きだした。

今2017年にタンホイザーを準備している。ワーグナーの美しさが印象的だ。しかし音楽的レトリックに基づいている。ワーグナーのアプローチは、音楽的に何が起こっているかを理解する努力が必要だ。



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いよいよ長年の夢の1つ、ワーグナーに挑戦するホセ・クーラ。今年の秋から、2016-17シーズンにかけては、そのほかにも、16年9月のトゥーランドットの演出と主演、17年ドイツのボン劇場でのブリテンのピーター・グライムズ、演出・主演、さらにプラハ交響楽団での指揮と作曲作品の上演などなど、目玉のプロダクションが続々です。

50代半ばにさしかかり、これまでさまざまな困難や障害を乗り越えて、自分の信じる音楽と芸術の道を、独立独歩で歩んできた、そのすべて――指揮、作曲、歌、オペラの解釈と演技、演出、セットデザイン・・において、実りの時期を迎えつつあるように思います。

日本では、こうしたクーラの活動はほとんど報道されることなく、ウィキペディアばりの歌唱技術うんぬんの、紋切型の批判や、年をとって太ったなどの外見だけの断片的な情報が散見されるばかりですが、1人の誠実なアーティストとして、商業主義、宣伝、大劇場中心主義とは一線を画して、着実に歩むクーラのリアルタイムの姿を、ひきつづき追っていきたいと思っています。
まさにこれからが黄金期を迎えつつあるのではないでしょうか。本当に楽しみです。


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