人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

(インタビュー編その2)2018年 ホセ・クーラ プッチーニの西部の娘を演出・指揮

2018-10-22 | 西部の娘の演出・指揮




今年(2018年)9月、ホセ・クーラはバルト三国のエストニア国立歌劇場で、プッチーニの西部の娘を演出・指揮しました。その初演の日に合わせて、ネットニュースのサイトに長文のインタビュー記事が掲載されています。

今回はこのインタビューから、抜粋して紹介したいと思います。

内容は、西部の娘のプロダクションについてはもちろんですが、クーラの青年時代のことやキャリアの初期の頃、またテノールを選択したわけ、そしてクラシック音楽について、古典芸術とエリート主義について、天才とは、など、かなり多岐にわたっています。

いつもの通り、語学力不足による誤訳直訳、とりわけ抽象的、哲学的な話になると、なおいっそう理解がついていかない面があり、誤解を招かないか心配でもあります。原文(英語)をぜひご参照ください。







≪インタビュー:世界的オペラテノール、ホセ・クーラ、タリンで新プロダクション≫


●真の博学

――ホセ・クーラは手ごわい相手だ。対話の多くは、質問の背景についての短い導入から始まるが、それに人生におけるひとつの領域について、興味深く、重要な内容が続く。クーラは、オペラのテノール歌手、指揮者、ミュージシャン(熟練のギタリスト)、ディレクター、セットデザイナー、写真家、そして3人の子どもの父(英国の俳優ベン・クーラを含む)である。彼はキャリアのこれらの側面がそれぞれ関連しあっていると言うが、私たちの大部分にとっては、その半分以下の成果であっても傑出している。
しかし、彼は傲慢ではない。もしくは、一般的なアルゼンチンの国民性による以上のものではない。クーラは若い時代、キャリアについて説明する。



●アルゼンチンで育つ

(クーラ)私はアルゼンチンで歌い始めたが、経済的な制約のために、イタリアに移住してキャリアを築く必要があった。
当時のアルゼンチンは、1970年代半ば以降、国を支配した軍事政権が終わった直後の時期だった。民主化後の最初の数年は、芸術分野だけでなく誰にとっても容易ではなかったが、経済危機のもとで最初に削減されるのは、教育、文化などだった。

当時、作曲家や指揮者として生活費を稼ぐことはほぼ不可能だった。指揮できるオーケストラはほとんどなく、仕事を委嘱する人もほとんどいなかった。映画の音楽を作曲する少数のなかの1人でなければ、またそれらの多くは教師、演奏家などでもあるが、そうでなければ一般的に、作曲家として生計を立てることは簡単ではない。

●「スター」歌手になりたいと思ったことはない

私はテノールになることに決めた。それは、4つの男性の声のうち、最も見つけるのが難しく、そのため支払われる額も一番高いから――私は22歳のときに結婚し、25歳で最初の子どもをもったので、すべての条件を合わせるのは簡単ではなかった。
私は「スター」歌手になりたいと思ったことは一度もないが、振り返ってみると、信じられないようなことが起こった。

その一部は運命で、もう一つは「Carpe diem」(カルペ・ディエム、ラテン語で、「今を楽しめ」「この瞬間を大切にせよ」などの意味)だ。
砂漠でのどが渇いた時に、雨が降り始めるようなもの(すなわち、運命)だが、しかし雨をためるためにコップを持っていること、それは「Carpe diem」だ。

私の10代は、クーデターによって成立した軍事政権のもと、非常に困難な時代だった。軍事政権は、それに先立つ無秩序とテロリズムを取り締まるということで入ってきた。彼らはそれに成功したが、病気よりもさらに悪い治療になってしまい、彼らは長期にわたって権力を握った。
そして、戦争が起こった。戦い、兵役についたのは私の世代だった。

――クーラが短く語ったのは、非常に野蛮な1982年のフォークランド戦争/ マルビナス戦争を指している

私の同時代の人々の多くが、その戦争で死んだ。兵役には抽選があり、そしてもう一度運命が手を差し伸べた。私は呼び出されなかった幸運な人の1人だった。ハードな時代だった。しかしある意味では、人をより強くし、他の逆境の時代に生き残ることができる。






――オペラはエリート主義か?

私の答えは「イエス、オペラはエリート主義だが、しかし経済的なエリートではない」ということだ。
イギリスのコヴェント・ガーデン(王立歌劇場)のチケットは高価だが、しかしユベントスなどサッカーのトップチームの試合を観戦するには、その4倍の費用がかかる。

オペラや他の古典芸術から得られる喜びの度合いは、あなたが鑑賞したい芸術分野を掘り下げるためにつぎ込む時間と労力の量に比例する。エリート、財力とは関係なく、しかし少数のグループだけが、古典芸術を完全に理解し、楽しむために必要な武器やツールを手に入れるために、時間と努力を投資しようとしている。

それはアートでも同様だ。ルーヴル美術館のモナリザの前に立っていることを想像してみてほしい。ただ笑顔のぽっちゃりした女の子に見えたものは、その絵に込められている革命的な筆使いや視点、その他すべてのものを誰かが説明してくれる時、命が吹きこまれる。

クラシック音楽と同じ。その曲が好きだから行くのだと、つかむことができるのは作品の5%程度だけだ。しかしもし、ソナタ形式にもとづいて交響曲を構築するテクニックの全体的な使い方、テーマの使用にもとづいて、転換と発展、ある楽器から別の楽器への延伸と圧縮、カッティング、そして音楽の巨大なキャンバスを作り出すまでを理解するなら、作曲家の天才を聞き始めることが可能だ。

作曲家の天才は素晴らしいメロディーにあるのではない。それはほとんど誰でも思いつくことができる。作曲の天才とは、わずか20秒のメロディーで宇宙全体を創造することだ。それこそが作曲における天才だ。
偉大な天才のない人、短期間だけの天才は、ポップミュージックと呼ばれる1~2分のメロディーを作る。もちろんポップミュージックは、素晴らしいメロディーを持つことができ、そのなかにはクラシック音楽の曲よりも優れたものがある。しかし、その曲を1時間の交響曲に発展させるような作曲家としての熟練はない。そのためには特別な準備が必要だ。

そこには違いがある。自分が必要とするもの理解するためには、自分で準備する必要がある。
だから、クラシック芸術はエリートのためのものか?――イエス、それは、楽しみたいものを理解するために時間を割き、それをより楽める人たち、エリートのためのものだ。
プロフェッショナルのパフォーマーは、それを理解するプロフェッショナルな聴衆が必要であり、それが「ウィキペディア世代」では足りないものだ。巨大な古典芸術について、それをする方法はない。 プッチーニがいつ、どこで暮らしたかを知るより、重要なことは彼が成し遂げたことだ。


――天才はどこから生まれる?

私が考えている1つは、天才は人類に属するものだということ。天才は、かつても、現在も、私たちと同じ人間であり、私たち全員が持っているそれぞれの問題と苦難を持っている。しかし彼らは、その天才を生かすことによって、それらを克服する。

神は天才ではなく、神であるなら天才ではない。天才のポイントは、それが私たちすべてが生まれもった、すべての美徳と悪徳を持つ人間だということだ。私たちが生きている限り、私たちが美徳を発展させていけば、いつかは天才になるかもしれない。 芸術に限らず、すべての人生の分野で、例えば、配られたカードでできるベストをつくした誰かが。
天才になる可能性はすべての人間にあり、モーツァルトである必要はない。

●過度に使われた言葉

今日、この言葉はあまりに過小評価されている。サッカー選手によく使われているが、それの意味するのは、ただ良い選手だということだ。
一方、歴史の中で最も顕著な天才の何人かは、彼らの時代から無視された。
作家は、とても華やかな彗星と、常にそこにある星に分かれる――そう言ったのはショーペンハウアーだったと思う。星の光は私たちから遠いので、光が地球に到達するまで数世代かかるかもしれない。それは本当の天才と同じだ。

例えばバッハは、私たちのすべての音楽の構造がベースにしている、音楽のアルファとオメガ、初めであり、終りである。彼は小さな教会でオルガンの奏者として亡くなった。彼の光が地球に完全に到達するまでには200年かかった。

あなたはそれを天才と呼ぶが、私は、人生で成功した人と呼ぶ。彼らが創造の機械で演じるために与えられた役割を果たしたとき、その人の存在が私たちの生活に与える影響の本当の大きさは、その人が去った時にだけ、私たちはそれを完全に感知し、その恩恵を受けることができる。それは良いバランスだ。誰かが生きているうちに天才として扱われれば、よほどバランスの取れた人間でなければ、簡単に愚か者に変わるからだ。






●観客との関係は恋人のように

――観客の役割について、クーラは語る


観客とステージは、一夜の恋人たちのようなもの。ステージは聴衆に多くのエネルギーを与え、観客がそれに応えることで、完璧な関係が現れる。パフォーマンスは魔法だ。
しかし観客が愛を返さず、チケットを買ったというだけで、それだけでいるのなら、それはほとんど「娼婦」のような感覚だ。そのような公演は多くはないが、もし観客がジャッジをするかのように、「商品の代金を支払ったのだから、それがもたらすものを見てみよう」というのは、悲しいことだ。チケットを支払ったことは事実だが、そのような態度はあるべきではない。
オペラには、マイクロフォンやモニターなどがない。クラシック音楽は、人間的活動において残された数少ないものの1つだ。歌手をロボットに、オーケストラを機械に置き換えることは、技術的には可能だが、人間の要素は、常にそこに存在する必要がある。もし私たちがその道から降りるなら、それは終わりの始まりになるだろう。


●芸術がすべてではない

私たちが生きているのは非常に複雑な時代だ。気候変動や同様な問題によってどうなっていくのか分からない。
私はオペラが継続することを望んでいる。しかし、あらゆるグローバルな問題があるなかで、それは私にとって最も重要なことではない。
私は、将来の年金の支払いなど、社会構造の継続について、より心配している。家の中に芸術作品を飾ることを心配する前に、まずは家そのものを修正し、バランスを保たなければならない。

芸術は、フランス人が言うように、"la cerise sur le gâteau"、ケーキの上にあるチェリーであり、ケーキ自体ではない。
テノールが歌うアリアのハイノートを心配するのは、私にとっては、優先順位を欠くように思える。
私たちアーティストは、社会にとって美しい補完物だが、それ以上にもっと重要なことがたくさんあることを忘れてはならない。


――次の質問。初めてオペラに入ろうという人がすべきことは?

好きかもしれないと思う作品を選んで、それを手に入れよう。それは本を読むのと同じ。
もしこれまで一度も本を読んだことがないなら、ジェイムズ・ジョイスのユリシーズからスタートはしない。それでは数ページで参ってしまうので、何かより簡単なものから始めるだろう。
しかし、偉大なスタイルの作家に挑戦する場合は、最初の数ページで本を閉じたい思いとたたかわなければないかもしれない。最初のパラグラフで引っかかれば、その後は喜びはない。


●良い食べ物とファーストフード
 
初めは、読書の時に辞書が必要だとしても、その体験があれば、再読した時、それは必ず純粋な喜びになる。
オペラやバレエも同じだ。初めはダンサーが何をしているのか理解できず、ステージ上でジャンプする人を見るだけだ。実はその背後に、毎日8時間の練習をし、血の涙を流していることを知り、その演技がどれほど素晴らしく複雑なものかを知る。
その反対に、いま、あらゆるところに「ファーストフード」の生き方がある。ファーストフードは最初の一口からおいしいが、食べ終えたら、あとには空虚な気分が残る。





●新プロダクション「西部の娘」―― La fanciulla del west

――西部の娘は、スパゲッティ・ウエスタンを連想させる?

そう、監督がイタリア人ならば、「スパゲッティ」と呼ばれ、スペイン語なら「チョリソー」などと呼ばれた(*日本では「マカロニ・ウエスタン」)。それらはヨーロッパの西部劇だった。
しかし「西部の娘」は、作曲家はイタリア人ではあったが、アメリカ合衆国の文脈のなかで、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場(1910年初演)でオペラが構想されたので、「西部の娘」が本当にそう呼べるとは思わない。
そこはカウボーイが本当にその国の文化史の一部であった場所であり、そしてフロンティアが閉鎖されてからわずか数十年後であり、コミックのなかの存在ではなかった。

●ブロードウェイの起源

そして「西部の娘」は、ブロードウェイとハリウッドが本格的に始まる数年前に初演されたが、その遺伝子は受け継がれている。あなたは「西部の娘」の中に、バーンスタイン、ガーシュウィンなどを聞くことができる。その意味では、すべてがプッチーニから来た。彼は本当にブロードウェイの起源だった。

「西部の娘」は非常に魅力的な作品であり、難しい作品でもある。技術的に難しいのではなく、はじめの明らかに安易なブロードウェイ風の印象を乗り越えて、作品を真に掘り下げることについてだ。

この作品と25年間もかかわっていても、新しいものを見つけることができる。 例えば、保安官のジャック・ランスのキャラクターは、ミニーをポーカーゲームで勝たせてやり、ジョンソンの人生を救うことで、長い間、愚かに思えていた。 しかし今では、プロのギャンブラーとしてのランスは、もし彼に何らかの動機がない限り、意図的にテーブルを離れるのはありえないことを認識している。彼がしたこと、それは、彼が、ミニーにゲームに勝つチャンスを与えたいと思っていたから。なぜならその女性を尊敬しているからだ。その瞬間、ランスは大きな人であることが証明される。私は最近、すべての後、そのことに気がついた。


●未来

今回の「西部の娘」がどうなるかを言うのは、まだ早すぎる。1週間後にもう1度私に尋ねれば、何か違うことを言うかもしれない。しかし、私はここで、オーケストラとの仕事、素晴らしいリハーサル、滞在している旧市街からの朝の散歩、ここでの仕事を非常に楽しんでいる。あと数日で、私たちはすべてのものを終わらせる...。


――私たちのほとんどが想像する以上のことをしている人の将来の野望は?

私はまだ歌っている。私は長年やりたかったベンジャミン・ブリテンのピーター・グライムズをモンテカルロでやってきた。私はイギリスで上演したかったが、人々は英語のアクセントを問うた。
私は言った。「失礼だが、あなたは、あなたがイタリア語で歌った時のときにアクセントを聞いたことはある?」
どのくらいの英国人が、純粋な「受け入れられた発音」のアクセントを持っているのだろうか。恐らくピーター・グライムスはそうではない。そして誰が彼のアクセントがどこから来ているのか知っているだろうか。
しかし、とにかく私は、他の場所でそれを演じて、楽しんだ。

(「news.err.ee」)






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今回のインタビューも、また率直で、クーラらしい言いぶりです。特に、クラシックとエリート主義のことでは、あえて誤解を招きかねない言い方をしています。
普通なら、エリート主義を否定し、広く国民全体のものに、というのが正解かと思います。
しかしポリティカル・コレクトネスの偽善的な面を嫌うクーラは、あえて逆説的なような言い方もし、古典芸術が決して簡単に理解できるものではないことを指摘しています。

もちろんクーラは、クラシック音楽を含む文化、芸術が、すべての国民のものであり、現実にすべての人が楽しむことのできるように、その機会と条件、とりわけ教育が必要なことを繰り返し語っています。また実際にも、堅苦しいスタイルを嫌い、若い人たちが親しみやすく、誰でも一緒に音楽を楽しめるコンサートを各地で行い、またクラシックとポップスの垣根を取り払って、ポップスの曲をさまざまな機会に演奏し、他ジャンルの歌手とも多くの素晴らしい共演を重ねてきました。

それでもあえて今回、こういう主張をしているのは、近年、ネットの普及、SNSの普及のなかで、手軽で即席なもの、安易な手段に流れる風潮がつよく、そのことに警鐘を鳴らしたいという思いが強いからではないかと思います。

40年余の音楽活動をつうじて、全面的に開発され、成熟したアーティストをめざし、努力を重ねてきたクーラにとって、音楽や芸術が大切なものであることは、いうまでもないでしょう。しかしあえて、現代社会が抱える諸問題、気候変動や、戦争や紛争、格差、社会保障の削減、政治の混迷などの大きな危機的現状を前に、現代に生きるひとりの人間として、もっと大切なことを考えよう、この世界と現実を知り、変えていこうと、クーラは今回のように様々な機会に語ってきました。クーラの知性と人間性、誠実さを示していると感じます。




*画像は劇場のHPなどからお借りしました。
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(初日編)2018年 ホセ・クーラ プッチーニの西部の娘を演出・指揮

2018-09-27 | 西部の娘の演出・指揮




ホセ・クーラの新プロダクション、エストニア国立歌劇場の西部の娘は、無事に初日を迎え、大好評だったようです。

クーラは今回、初めて西部の娘を演出・舞台デザイン、そして初日と2日目(2018年9月21、23日)の指揮を行いました。この2日とも、チケットは完売だったそうです。

西部の娘の主役のひとり、ディック・ジョンソンといえば、クーラが長年歌い続けてきて、オテロやサムソンと並び、そのドラマティックな存在感と解釈の深さで他の追随を許さない役柄ではないかと思います。

エストニアの歌劇場は、そのクーラを、歌ではなく、演出家と指揮者として採用しました。これが劇場の初めからの提案だったのか、それともクーラの要望を入れての結論なのかは私にはわかりませんが、いずれにしても、この人選は、大成功だったようです。

劇場がアップした最終リハーサルの舞台画像や、SNSにアップされた情報などを紹介したいと思います。
→ これまでのエストニアの西部の娘の関連記事はこちらをご覧ください。







初日と2日目以外はクーラは指揮をしませんが、公演は続いています。年内、そして来年も上演されます。
エストニアにご旅行予定の方は、ぜひご検討いただければと思います。



●初日のオーケストラピットに入場する、"指揮者"クーラ

クーラがフェイスブックに投稿した動画です。9月21日のプルミエで、オーケストラピットに入場する様子を撮影しています。
オケのメンバーや観客に、手を振ったり、グッド・イブニングと挨拶したり、とてもリラックスした雰囲気です。リハ―サルを通じて、もうやるべき準備はやったという心境でしょうか。







●舞台の様子――劇場のSNSより

クーラがデザインした西部の娘の舞台の様子、劇場がインスタグラムにアップした最終リハーサルの写真を紹介します。
どうやら、リアルに当時のアメリカ西部、ゴールドラッシュの時代、その雰囲気を感じさせるもののようです。

"移民とノスタルジー"がこのオペラの重要なテーマだとクーラ。そしてインタビューでは、クーラの祖父母も、イタリア、スペイン、レバノンからアルゼンチンへの移民だったこと、自分もまた、アルゼンチンから欧州への移民であったと語り、家族と自らの幸せを求めて世界中へ移り住む移民の問題は、決して現代だけの新しい問題ではないと述べていました。実はプッチーニ自身の弟も、アルゼンチンに移住し、若くして母国を遠く離れた地で亡くなったのだそうです。

もちろん移民を生み出す社会背景、戦争や民族紛争、政府による国策としての移民、差別と迫害、経済的破綻、貧困など・・その時々の状況、要因は様々ですが、いつの時代でも、少なくない人々が、生存のため、家族と自分の平穏な暮らしを求めて、生まれた国と我が家を離れる決断をせざるを得ない状況が続いてきました。クーラは、こうした社会的背景を踏まえたうえで、そこで生きる人々の思い、辛さ、寂しさ、苦しさ、アルコールや女性から得ようとする慰め、ささやかな楽しみ、キャラクターの感情と姿に焦点をあて、生きいきと描き出そうとしたのではないかと思います。

前回の記事でも紹介しましたが、その移民たちの孤独と母国に残してきた家族への痛切な思い、ノスタルジアを共感をもって描こうとする、今回のクーラの演出の意図が、これらの舞台写真からも感じられるように思います。



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Take a look at our first new production of the season "The Girl of the Golden West". 👀 Audience will be transported to the Wild West 🏜 in the era of the goldrush, where a saloon owner Minnie 👱‍♀️ finds herself in a love triangle with a handsome outlaw Dick Johnson 🧔and the sheriff Jack Rance 🤠. ❗️Tickets for tonight’s performance are sold out but there are seats available for September 29! *** Heida pilk meie hooaja esimesele uuslavastusele "Tütarlaps kuldsest läänest". 👀 Ooper viib vaataja Metsikusse Läände 🏜California kullapalaviku ajal, mille taustal satub kõrtisomanik ja ooperi peategelane Minnie 👱‍♀️armukolmnurka lindprii Dick Johnsoni 🧔ja šerif Jack Rance'iga🤠. ❗️Tänase etenduse piletid on välja müüdud aga veel on kohti saada 29. septembriks! #operaestonia #lafanciulladelwest

Estonian National Operaさん(@estoniannationalopera)がシェアした投稿 - <time style=" font-size:14px; line-height:17px;" datetime="2018-09-23T10:54:17+00:00">2018年 9月月23日午前3時54分PDT</time>












●エストニアのTV報道より――クーラのインタビューとリハーサルの様子


現地で報道された動画の抜粋を紹介させてもらいました。 
クーラのインタビュー(英語)を中心に、最終リハーサルの舞台の様子もあります。
また2011年のエストニアでのクーラのコンサートや、今回のエストニア歌劇場のシーズンスタートにあたっての顔合わせで、サプライズで椿姫の二重唱を歌わされたところなど、珍しい場面も挿入されています。10分強です。
語学力の不足から全部聞き取ることはできませんが、相変わらず、率直で闊達、フランクな話しぶりです。クーラの人柄がよくわかり、魅力的です。





●初日のカーテンコールの様子――鑑賞した方のFBより


現地で鑑賞された方がFBにアップしてくれた動画です。大歓声が聞こえます。
ご本人のコメントがついていますが、とても素晴らしい感動的な舞台だったようです。






●ランスからのメッセージ――クーラへの出演者の思い


これはクーラが初日終了後に、保安官のジャック・ランス役の出演者から受けたメッセージを、FBに紹介したものです。
今回のプロダクションで、演出家としてのクーラの能力とこれまでの経験、蓄積、そして人間的な魅力が、全面的に発揮されたことの証拠のように思います。クーラ自身も感銘をうけたようです。




≪クーラのコメント≫
――私は、私のランス保安官であるRauno Elpから受け取ったばかりの投稿を共有したいと思う。彼の言葉に私は深く感動した。

「ホセ・クーラはマスターだ。彼は、彼の豊富な宝の箱を開いて、私たちに、誰でも望むだけ無条件に、それらを使わせてくれた。彼はそれによって衰えることなく、しかし私は間違いなく、より豊かになった。私は彼もそうであることを願っている。
彼は、優しさ、正直さ、誠実さ、徹底性、プロフェッショナリズムの人だ。私はこのような素晴らしい人と一緒に仕事をする機会を得て、本当に感謝している。それは間違いなく、私の歌手としてのキャリアのハイライトの1つだ。」

ありがとう、親愛なるRauno!あなたの初めてのランスを演出し、指揮することは、光栄だ。この素晴らしい役柄(ランス保安官)の最高の解釈者になることは、あなたの運命のなかにある。公演後、多くの人が私に、この西部の娘のバージョンは、『ランスの物語』と呼ばれるべきだと言ったほどなのだから。


**************************************************************************************************


出演者から寄せられたクーラへの感謝と信頼の思いは、クーラにとって心を揺さぶる喜びだったと思います。
劇場を愛し、出演者、スタッフを愛し、観客を愛し、オペラを真から愛するクーラ。そして、出演する者の顔ではなく、キャラクターの顔が見えるオペラ、脚本と音楽が描こうとするドラマと人間的な感情、キャラクターの生きた姿を表現するオペラ、そういう現代にふさわしいオペラを探究してきたクーラです。
そのクーラが、長年トップテノールとして各地で歌い、深めてきた解釈、表現、蓄積を、今回は演出、舞台デザイン、指揮者として、全力でつぎ込んだ今回の西部の娘が、出演者からも、観客からも大きな評価と受け、喝采を受けたことは、本当にうれしく、喜ばしいことです。

まだまだ第一線で歌い続けてほしい、特にジョンソン役で歌ってほしいと願いますが、こういうクーラの経験が生かされる新プロダクションが増えていくことは、オペラの脚本とスコアを深く理解した舞台を味わう楽しみ、その機会を広げることになると思います。




*画像などは劇場のHPやSNS、クーラのFBなどからお借りしました。

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(本番直前編)2018年 ホセ・クーラ プッチーニの西部の娘を演出・指揮

2018-09-22 | 西部の娘の演出・指揮




ホセ・クーラが演出・舞台デザイン、そして指揮者を務めるエストニア国立歌劇場の新プロダクション、プッチーニの西部の娘は、まもなく、現地時間9月21日夜7時に初日を迎えます。
本番を目前にして、劇場のHPには、さらにリハーサルの写真がアップされ、エストニアのTVやネットニュース、SNSなどで、クーラのインタビューがたくさん掲載されました。

それぞれとても興味深いインタビューなのですが、語学力不足から和訳が追い付かず、いずれまた抜粋して紹介したいと思います。
今回は、今晩初日ということで、とり急ぎ、追加情報を掲載します。








●迫真の演技指導、ジョンソンそのものの演出家クーラ


長年、西部の娘のジョンソンを歌い演じてきたクーラ、演技指導にも熱が入ります。ほとんど主役かと思うような写真がたくさん掲載されています。

こちらがエストニア国立歌劇場のリハーサル紹介ページです。



いくつか紹介を。





ミニーへの思いが高まるなか、強盗という我が身を思い、苦悩するジョンソン。ジョンソンそのものの表情で、熱くミニーを抱きしめる「演出家」クーラ。熱の入った演技指導が、どんなドラマに結実して舞台で展開されるのか楽しみです。

 
 



●エストニア国立歌劇場HPの解説文より


リハーサルは進行中であり、あらゆる種類の話題について考えを交換している。
世界中から移住してきた金鉱の鉱夫(ゴールドラッシュの時代)のことは、よく知られている。彼らは皆、愛する人びとと離れなければならなかった。これは誰にとってもよく分かる感覚だ。

ホセ・クーラは語る。

「私は今回、このオペラに取り組んで、これまで考えていなかったことを発見した。例えば、私たちは、愛する人たちから離れたことによる郷愁と憧れについて話し合った。26年前に初めて西部の娘に出演した時、私はそれについて考えていなかった。
しかし、自分自身が移民だ... 1991年にアルゼンチンからヨーロッパにやってきて、母親、父親、兄弟、姉妹を残してきた。すべての愛する人たちを。

私は自分がたった一人であることを知った。どこにいたのかも分からず、証明する文書もない。何もない!しかし私は生き残るためには、移住の決断をせざるをえなかった。アルゼンチンでは指揮者や作曲家として働くことはできなかった。

ヨーロッパの現在の移民問題を危機と考えることもできるだろう。そして政治的な混迷、それらは不運な人々の苦しみを利用している。もちろん、危険な人たちもいる。クレイジーな集団がいるとしても、それは皆がそうなることを意味するものではない。

しかしあなたは、人々が、騒動を引き起こす目的のために、自分の国、家、自分の物から離れて来ていると思うだろうか?

彼らは恐怖を感じているから逃げてきた。もし私たちが、彼らの土地を略奪し、彼らを取り残してしまった戦争を止めることができたなら、彼らが最初にすることは、自分たちの荷物をまとめ、家に帰ることだろう。彼らは自分たちの家を愛しているのだから――それが西部の娘のメッセージだ。

それは政治的な課題だが、芸術や芸術家の仕事は、人々に素晴らしい傑作について考えてもらうことだ。最高の革命家は、常に詩人、芸術家、作曲家だった...」

エストニア国立歌劇場HPより)




●劇場のインスタグラムより

掲載された舞台リハーサルの写真。元の設定に忠実で、リアルなセット、衣装のように思われます。






最終リハーサルを終えて、穏かな表情のクーラ。いつものゲネプロの日の勝負服「Carpe diem(今この瞬間を楽しめ)」のロゴ入りTシャツを着ています。




●クーラのインスタグラムより、セットを作るスタッフの様子

今回は、演出・舞台デザイン、指揮を担当します。いつもスタッフの仕事に気を配るクーラ。インスタにいくつかセット作成の様子をアップしました。







舞台の様子。西部の荒くれ男たちの胸の内、孤独と故郷を思うノスタルジアを描きたいと語るクーラ。しみじみとした雰囲気が感じられます。





●エストニアのTV報道より、クーラのインタビュー、リハーサルの様子

以下の画像をクリックすると、約2分の動画のページにリンクしています。





クーラ渾身の新プロダクション、エストニアの西部の娘、初日が無事成功することを願っています。

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(リハーサル編)2018年 ホセ・クーラ プッチーニの西部の娘を演出・指揮

2018-09-16 | 西部の娘の演出・指揮



ホセ・クーラは現在、エストニア国立歌劇場で間もなく初日(2018年9月21日)を迎えるプッチーニのオペラ、西部の娘の準備中です。

この新プロダクションでは、クーラは、舞台デザインと演出、そして指揮(初日と23日のみ)を行います。

これまでに、(告知編)、(インタビュー編)も掲載していますので、そちらもご覧いただければうれしいです。

今回の記事では、SNSや劇場HPなどに掲載されているリハーサルの様子を中心に紹介したいと思います。


ホセ・クーラのフェイスブックに掲載された告知画像




●セットをつくる

演出をひき受ける時には、必ず舞台デザインも一体のものとして担当するクーラ。
今回もクーラが手がけた西部の娘の舞台には、どうやら巨大な岩山が登場するようです。

次の2つは、クーラがFBとインスタグラムに投稿した動画です。
クリックすると見ることができます。

「多くの人は、舞台の裏側がどれほどのハードワークか、あまり想像したり考えたことはないだろう。私たちはいつも、それがもともとそこにあったかのように、物事を当たり前のように考えるが・・。
1つの山全体をペイントするのは毎日の仕事ではないけれど、これらの素晴らしいアーティストたちが、魔法をかける・・。
このあとのことは、9月21、23日、見に来て!」
とクーラのコメントです。

また2番目の動画には、「おはよう!名前は?素晴らしい仕事をありがとう!」と作業中のスタッフに話しかけるクーラの声も入っています。
劇場を愛し、スタッフをリスペクトして、みんなで心ひとつに舞台をつくるチームワークを大切にするクーラです。





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Painting the mountain of my Fanciulla production...

José Curaさん(@josecuragram)がシェアした投稿 - <time style=" font-size:14px; line-height:17px;" datetime="2018-09-06T05:45:01+00:00">2018年 9月月5日午後10時45分PDT</time>




●演技と歌唱ーー出演者とのリハーサル

出演者とのリハーサル風景の写真が、エストニア国立歌劇場のHPにたくさん掲載されました。
いくつかお借りして紹介しましたが、劇場HPには20枚以上の写真が掲載されていますのでぜひご覧ください。

→ 劇場HP


こちらは、楽譜にもとづいて、ピアノに合わせて音楽の流れをつくっているところでしょうか。




立ち稽古というのでしょうか。リハ室で実際に演技をしてみせるクーラ。いつも自分で動いてみないではいられないようで(笑)。
クーラが主演かと思うような画像が多数です。








――劇場HPの解説より

8月中旬以降、演出家、舞台デザイナー、照明アーティスト、指揮者のホセ・クーラは、国立歌劇場に完全に彼自身を捧げている。
一緒に、彼らは、プッチーニの音楽の深みに潜入し、キャラクターの内面を見直し、各シーンのあらゆる詳細を引っ張り出す。
この舞台は、19世紀半ばのワイルドな西部のゴールドラッシュの時代であるという事実にもかかわらず、プッチーニのオペラは非常に現代的だ。

ホセ・クーラーー「みすぼらしく、邪悪で、攻撃的、しかし愛すべき鉱夫たちは、本当にノスタルジアでいっぱいになっている。
これは、移民のノスタルジアであり、彼らとその隣人たちは、それぞれの人間としての″精神的人格”に従って反応する。
つき動かしているもの。それはその人にとってのノスタルジア。必死に頑張って生き抜いてきた人々、まだ彼らの夢を背後に残しているが、しかしメランコリックな思いを抱えている。
プッチーニは、この息苦しいような寂しさと望郷の思い、孤独感、それらを酒と女性、またはカードゲームで紛らわしていることリアルに理解している。」
・・・


●拳銃の試し撃ちも大事な仕事(?!)

舞台を成功させるためには、大小ふくめ本当にいろんな仕事がある、と思わされるのが、次の動画です。
西部の娘は、アメリカ西部のゴールドラッシュの時代を背景にしています。そのため、拳銃の出番があるのですが、その試し撃ちをする様子を、クーラがインスタに投稿しました。

実はこれには、その前からのエピソードがあります。昨年12月にテアトロコロンでアンドレア・シェニエのリハーサル中、演技の中で、はじめて拳銃を撃った(もちろん音だけ)ところ、その音の巨大さ、衝撃で、舞台上の出演者、クーラ含め、みんなが飛び上がって驚き、心臓を抑えた、ということがあったのでした。今回の試し打ちは、出演者を心臓発作から守るためにも、不可欠だった(笑)というわけです。

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Trying guns for Fanciulla...

José Curaさん(@josecuragram)がシェアした投稿 - <time style=" font-size:14px; line-height:17px;" datetime="2018-09-10T08:05:23+00:00">2018年 9月月10日午前1時05分PDT</time>




●指揮者としてオーケストラとのリハーサル


そして指揮者でもあるクーラには、きわめて重要な、オーケストラとのリハーサルの仕事もあります。
下の写真は、劇場のインスタに掲載されたもの。
いつもハードワーカーのクーラですが、それにしても舞台デザインと演出、指揮者も兼ねるということは、クーラには全く休む間がないということのように思えます。

この後は、舞台上での動き・演技の確認、オケと出演者と合わせるリハーサル、そしてドレスリハーサルと続きます。出演者、スタッフ、劇場のあらゆる部門の進行状況をチェックしながら、初日に向けて最高のものをつくるために、今日も奮闘中のことと思います。

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10 days until the premiere! 🤠 Intensive rehearsal period is in full swing. 💪 Besides directing Puccini's "The Girl of the Golden West", José Cura also conducts two of the performances. PS! For more rehearsal photos check out our blog! Link in bio! *** Käimas on intensiivne prooviperiood, sest "Tütarlaps kuldsest läänest " esietenduseni on jäänud 10 päeva! 💪Ooperi lavastab mitmekülgne mees José Cura, kes ise ka kahte esimest etendust dirigeerib. PS! Rohkem fotosid proovidest näeb meie blogis! Link bios!#operaestonia #lafanciulladelwest #josécura

Estonian National Operaさん(@estoniannationalopera)がシェアした投稿 - <time style=" font-size:14px; line-height:17px;" datetime="2018-09-11T19:53:59+00:00">2018年 9月月11日午後12時53分PDT</time>




――西部の娘の音楽への思い

「私は1992年に初めて、西部の娘のジョンソン(実は強盗ラミレス)を歌った。以来、この素晴らしいオペラを愛し続けてきた。
人は、このオペラが、プッチーニの最高の脚本ではない、または、円熟した音楽の傑作ではない、と主張するかもしれない。しかし西部の娘は、ハーモニーとメロディの革命によって当時の音楽界に衝撃を与え、その後の作曲家に巨大な影響を与え、多くの模倣者さえもたらした。
こうした恥知らずの模倣は、時には現代においても続く。それでも(これが傑作ではないという)この意見が、真実といえるだろうか。
私はいつも、この素晴らしい作品の中の、感情的で心理的な深みのある多くの瞬間を表出させたいと夢見てきた。
エストニア国立歌劇場が私にチャンスを与えてくれた。美しい真のコラボレーションを楽しみにしている。これが今後の多くの共同の土台となることを願う。 ホセ・クーラ」

(エストニア国立歌劇場HPより)


●PR動画のための小旅行

リハーサル期間のある1日には、宣伝用の動画の撮影のためにロケもしたようです。
採石場の跡地をアメリカ西部の岩山に見立て、出演者たちはみんな衣装を着けてポーズをとりました。ちょっとした小旅行みたいで楽しそうですね。

この場所は、エストニアのルンム採石場跡地。ここは旧ソ連時代の刑務所跡地なのだそうです。ソ連に併合され、支配されてきたエストニアの悲劇的歴史の遺跡のひとつです。
また一方では、現在は、レジャーを楽しむ場になっているとのこと。長年放置されているうちに、地下水が溜まって建物が水没し、美しい澄んだ湖面の下に不思議な光景が広がっているとか。

クーラがキャストに演技をつけ、いろんなポーズで宣伝用の写真や動画を撮影したようです。アメリカ西部にも似た岩山を背景にして、出演者たちと、キャラクターたちの思いを深める機会になったのかもしれません。


これも劇場のHPに掲載された写真。衣装を着けた出演者たちに囲まれて、撮影した画像を確認しているのでしょうか。




クーラのインスタに掲載された写真。なぜかクーラがカメラマンも?
たぶん本職のカメラマンが同行しているのだと思いますが、写真が趣味のクーラとしても、当然"マイカメラ”持参で参加したのでしょう。






そしてこちらが、撮影旅行の成果のひとつ、劇場の「西部の娘」の紹介ページのトップ写真です。
エストニア国立歌劇場のHPより





さらに動画もアップされました!クーラのFBにリンクしています。
この演奏は、クーラの指揮なのでしょうか?





舞台デザイン、演出、指揮、そして全体の統括・・クーラの多面的な能力をいかんなく発揮して、全面的に取り組んでいるエストニアの新プロダクション、西部の娘。長年歌い続けてきたこの作品への思いと、深めてきた解釈、経験と蓄積がすべてつぎ込まれることでしょう。本当に楽しみです。

もう少しエストニアが近ければ・・。飛んでいけないのがあまりに残念です。録音だけでも放送してほしいと切に願います。
舞台が成功し、クーラ渾身のこのプロダクションが、エストニアの人々に長く愛されることを願っています。




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(インタビュー編)2018年 ホセ・クーラ プッチーニの西部の娘を演出・指揮 / Jose Cura, directer and conductor of Fanciulla del west

2018-05-02 | 西部の娘の演出・指揮





ホセ・クーラは今年2018年の9月、バルト三国エストニアの首都タリンの国立歌劇場で、プッチーニ「西部の娘」の演出・舞台デザインを手がけます。
以前、(告知編)でも紹介しました。

今回は、劇場のHPに掲載されたクーラのインタビューから抜粋して紹介したいと思います。
内容は、演目である西部の娘についても若干ふれていますが、クーラの家庭のこと、子どもたち、人生観、夫婦間・男女間についてなど、様々なことについて問われ、回答しています。

元はエストニア語のため、翻訳が全く不十分で、クーラの言わんとしていることの意味、ニュアンスが誤って伝わるのではないかという恐れを抱いていますが、あくまで抜粋、概略ということでお許しいただき、ぜひ劇場のページをご覧いただければと思います。






Staging team
Conductors: José Cura, Vello Pähn, Jüri Alperten
Stage Director and Lighting Designer: José Cura
Costume Designer: Silvia Collazuol




"私は本当の反逆者だった"

――ホセ・クーラ インタビュー エストニアにて


秋に、ホセ・クーラ演出のプッチーニ・オペラ「西部の娘」がエストニア国立歌劇場で上演される。
クーラは、妻シルヴィアが一緒でなければ、今日の彼にはなりえなかったと語る。シルヴィアは、神聖なる結婚の一方の側が大きな世界でその夢を実現できるように、主婦と母親の役割を選んだ。



Q、あなたはたくさん旅行する。家庭的な感情が失われたり、ルーツが破壊されることは?

A、見てほしい。樹木のセコイアは数百メートルまで成長することができるが、その根は依然として下に張っている。根が取り除かれると木は死ぬだろう。
人間も同じだ。経験を得るために遠くまで行っても、もし根っこや家族が強ければ、我々は立ち続けることができる。

アルゼンチンは私の母国。母、兄弟、友人がそこに住んでいる。私は過去30年間ヨーロッパに住んでいるが、私は自分のルーツを失っていない。
そして私はマドリードにも新しいルーツを持っている。もしそうでなければ、私は自分自身を罰するだろう。それはあまりにも辛いことだ。

私には妻シルヴィアがいる。これからの40年も共に生きてゆくだろう。
私には3人の子どもがいる - 長男は俳優としてのキャリアを始め、娘は写真家で、一番下の息子は大学で物理学と数学を勉強しており、プロのラグビープレイヤーだ。彼らは皆とても違っていて、とても良い。


Q、あなたはどのくらい子どもたちを導いている?

A、私は彼らに、それを理解させないようにしてきた(笑)。子どもに、この本を読まなければならないと言えば、彼らは読まないだろう。本は秘密にどこかに隠されていなければならない...。
俳優である私の息子は、私と一緒に彼の最初の舞台出演をした。オペラで少年の役割が必要だった(ヴェルディ「運命の力」に親子で出演)。関心をもった8歳の息子を招き入れ、そこから彼の興味が始まった。私はこれが彼の後の選択に影響を与えたと思っている。


長男ベンと。ヴェルディ「運命の力」1998年マルセイユ




Q、また、あなたには、音楽に加えて、いくつかの情熱を傾けるものがある。写真撮影をするし、ハードな修理工でもある?

A、写真は良い趣味だ――見ることを学び、自分の身近な物事を見る。
しかし大工仕事のハンマーの取り扱いには注意が必要。指を怪我すると、しばらくの間ピアノの後ろに座ることができない。
生活の中には、どんな人でも、恐れずにやってみるべきシンプルな良い仕事がある。私たちはすべて人間。マドリードの私の家は、すべて私が設計したり造ったりした。もちろん家本体は違うが。
時々自分自身でやったことを見るが...それは非常に良い出来とはいえないかもしれないが、別の価値がある。


2009年チューリヒのインタビュー動画より




Q、あなたはシンプルな人?

A、私はそう。そして、あなたは?
遅かれ早かれ、人生はプレッシャーにさらされる。私はプロフェッショナルとして誇りを高めていくが、それは傲慢さのためではなく、何年もの経験と自信を持っているからだ。
今、私は、何がうまくいき、何がうまくいかないのか、自分がそれを知っている。
・・
もし本当に知らなければ、すべてを知っていることを証明する必要はない。チームを信頼することは、どの分野においても最も重要なことだ。


Q、あなたは観客に、感情的な体験を贈る。あなたは何を得ることができる?

A、私は同じエネルギー、良い感情を得る。
ただ旅行では残念なことも多い。劇場、舞台、素晴らしい人々とオーケストラに出会う。しかしそれがすべてだ。夜はホテルの部屋とベッドを見るだけ。壁の中で1日12時間から13時間を過ごすしている。


Q、だから、あなたはどこにいてもミュージシャン?

A、それだけ!
リハーサルをして、舞台の中心にいる。それが終わっても、観光客として街を見てまわることはない。
オペラ歌手の人生が、キャビアとシャンパンだというのは、ハリウッド映画の中だけだ!
実際の生活は、ホテルの部屋に帰り、1日食べられなかったので、小さなバーで食事をし、眠りにつく。






Q、あなたは何度もエストニアに戻ってくる。なぜ?

A、巨大な劇場はなくても、そこに住んでいる人たちだ。エストニアには人がいる!
なぜあなたは、ウィーンやニューヨークが、より優れていると思う?みんながすべてに慣れているということはしばしばあるが、驚くべきことはない。
あなたの国立オペラ座は、他の主要オペラハウスと比べても申し分ない。プロフェッショナルの人々、オーケストラ、合唱団がいる。彼らは本当に素晴らしい。


Q、あなたは作曲家、指揮者、演出家、アーティスト、歌手だが、どういう子どもだった?

A、私は本当の反逆者だった! 私はトラブルや頭痛の種を引き起こしたが、同時に非常に礼儀正しかった。私はいつも反骨精神をもち、何に対しても、誰に対しても、反対して論争したがっていた。
私は40歳の誕生日に、母親から非常にクールな贈り物を受け取った。
私の先生が、私が9歳の時に手紙を寄こした。当時私は知らなかったが、そこはこう書かれていた。
“親愛なるホセのお母さん、私はあなたに、小さなホセは、常にあらゆるものを自分で管理しようとする気性の少年であることを伝えたい。何か問題が起きるとき、それは常に最初の1人だ。何か良いことがある時も、一番最初だ。”
先生は次の言葉で文章を終えていた。
“私はホセが、大人になったら素晴らしい人になると思っている。”
それは心に響く手紙だった。


Q、あなたは妻であるシルビアと40年間ともに歩いてきた?

A、私たちは1979年に出会い、間もなく40年を祝う。


Q、良い長い関係の秘訣は?

A、忍耐とスキルと耳を傾けようとすること。
日常生活において、私たち男性は女性と平等だが、ベッドに行くときは、彼女は女性で、私は男性だ。

私は彼女のためにドアを開け、コートを脱ぐのを助け、花を贈るだろう。私が病気の時は、彼女は私を休ませ、治療を助けてくれる。
私たちは家で、すべてのことに全力をつくす。私は自分で靴下を洗い、食事をとることができるが、家族と妻のために自分がやる必要があるときは、私はそれをやる。男性として、父親として。
シルビアが弱いから?NO!愛する女性を守ることは、私の血のなかにある。






Q、今、平等について多くの議論があるが、どう思う?

A、このトピックは間違って議論され、政治的に使用されている面があると思う。
誰もが平等な機会を持たなければならないことは明白なことだ。これは人権だ。
しかし正直に言って、男性は男性で、女性は女性であり、そのことは残るし、残るはずだ。
2人の男女間の素晴らしく優しい関係は最高だ。なぜそれを破壊しようとする?
私は女性には女性に対するように接したいと思っている。

しかし、職場での仕事においては、私たちは翼の一翼として見られるべきだと思う―― 彼女が私より優れていれば、より良い給料を得る必要がある。
私は多くの成功した女性を知っている。彼女たちは教育を受け、素敵で、強く、しかし1人でいる。それは、彼女たちの世界に合った男性が見つからないからだ。彼女たちは、愚かな人と一緒にいるよりも、むしろ独りでいる方が好きだと言う。

私たちはともに社会的な能力をもち、平等でなければならない。
しかし、どうか、花を渡し、ドアを開き、称賛することを続けさせてほしい。


Q、あなたの日々は、サーチライトの光の中で何百もの人々の視野のなかを通過してきた。これまでに、ステージにあがることが精神的または肉体的に不可能な瞬間があった?

A、私は1年半前に深刻なバーンアウトを経験した。私はそれまで30年連続で毎日働いてきた。私は毎日、非常にアクティブだったが、その時、私の体は言った - 今は休憩だ!と。詳しく語るつもりはないが、良いレッスンだった。

物事を考える時だった。私は何年も他の人をケアしてきたが、自分自身ではなかった。私は自分の死後、まわりが悲惨になることを望んでいない。それはエゴイスティックだろう。人は救われ、愛されなければならない。


Q、プッチーニのオペラを国立オペラ座で演奏するが?

A、「西部の娘」は、私の非常に好きな演目の1つ。
一流の仕事を創造するために招待された時には、より強力な権限をもち、あなたが一番好きなことをやってほしい。
私は仕事をしている?それとも趣味?私は大好きなことをやり、それによってお金を得ることができる。
過去には、私は、ある評論家、また別の評論家が、後で何を書くのか心配していたが、今日では、もはやそれを考えない。
心が満たされるように私がドアを閉じることができれば、それは最高です。
誰もがあなたのことを好きではないし、それでは誰も幸せになれない。しかし自分自身が満足できれば、あなたは幸せになれるだろう。



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いつものように率直な物言いで、誤解を恐れぬ語りぶりです。クーラ自身は、たいへんなロマンティストで、キリスト教的な「騎士道精神」が身についているように思います。また外見は非常にマッチョな人ですが、このインタビューでも、男女の平等は当然であり、平等は人権だと言い切っているのは、当然ですが重要なことだと思います。

またデリケートな今日的な話題にも率直に発言していますが、オペラと芸術のテーマのほとんどは、愛と性に関するものであると指摘するクーラらしく、個人的な性愛にもとづく豊かで優しい男女の関係の素晴らしさと魅力を語り、一方で仕事の面や社会における男女平等と能力にもとづく評価の重要性の問題を明確に分けて、それぞれ強調しているところが大事な点だと思いました。

以前の記事でも何度か紹介しましたが、クーラと妻シルヴィアさんは、幼い長男とともに91年にイタリアへ渡りました。母国アルゼンチンでは軍事独裁政権を終わらせたばかりで、経済的混乱のなか食べていくのが難しかったからです。以来、イタリア、フランスと安住の地を求めて移り住み、ようやくクーラが歌手として売れ出し、パリ郊外にマイホームを得たと思ったら、第4のテノールだとか、セクシースターとして売り出そうとするエージェントや広告会社に納得できず、独立して、苦しくても自分の足で歩むことを決断したのでした。
その後、スペインのマドリードに自宅と事務所を構え、シルヴィアさんはクーラの会社の会計責任者として、公私とものパートナーとして、ともに支えあってきたということです。困難を乗り越えてきた絆、お互いへの尊敬、細やかな愛情があってこその40年間なのでしょうね。

子どものころのエピソードは、なるほど納得!という感じで、そのまますくすくと育ったのですね(笑)。クーラのお母さんが、彼の個性を否定したり変えようとしたりせず、認めて育てたことがよくわかりました。

9月のエストニアの西部の娘、今後、クーラが演出構想などを発信してくれるのを楽しみに待ちたいと思います。




*このインタビューは、クロニクルジャーナルの3月号に掲載されました。劇場HPはこちら

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(告知編)2018年 ホセ・クーラ プッチーニの西部の娘を演出・指揮 / Jose Cura, directer and conductor of Fanciulla del west

2017-11-11 | 西部の娘の演出・指揮


2018年のカレンダーの記事でも紹介しましたが、来年、ホセ・クーラは2つのオペラを演出します。ひとつはプラハで6月からのヴェルディのナブッコ。 → このブログでの紹介記事(告知編)
もうひとつが、バルト3国のエストニアの首都タリンにあるエストニア国立歌劇場で、9月に初演を迎えるプッチーニの西部の娘です。
トップの写真は、エストニア国立歌劇場のFBに掲載されたもの。10月に劇場で、舞台のデザインや演出構想についてプレゼンテーションした時のようです。

クーラは、演出と舞台デザインに加えて、今回は指揮者としても出演するとのことです。
劇場はフェイスブックで告知し、クーラの訪問の記事などをアップしていますが、まだHPのカレンダーには発表されていません。そのため出演者など詳細はわかりませんが、クーラが指揮する日程は、2018年9月21、23日。
上演自体が2日間で終わりなのか、その後も指揮者を変えて再演されるのか、そのあたりもまだ不明です。




クーラの公式カレンダーより


エストニア国立歌劇場
西部の娘/プッチーニ
2018年9月21、23日
セットデザイン、演出、指揮



西部の娘のディック・ジョンソンといえば、オテロやサムソンと並んで、クーラの18番。演技、歌唱、役柄解釈、ワイルドな風貌とパワー、情熱・・この役が求めるすべてを兼ね備えたパフォーマーではないかと私は考えています。しかし今回はクーラは歌いません。
残念ではありますが、長年ジョンソンを歌ってきたクーラが、どのような舞台をつくり、指揮をするのか、非常に楽しみです。



――バルト3国エストニアの首都タリン

タリンはグーグルの地図でみたところ、旧ソ連のバルト3国のなかでも、もっとも北の方に位置しています。クーラの住むスペインのマドリードが地図の左下に見えますが、同じ欧州とはいえ、かなり距離があります。
一方、10月末にクーラがオネーギン特別賞を受賞し、関連行事に参加したサンクトペテルブルクは、タリンとは結構近いですね。
6月プラハと9月タリンで初演を迎える2つのプロダクションの準備を同時進行で進め、そのほかにコンサートや作曲などをこなしているクーラ。多忙ななかで、できるだけ合理的に移動するために、サンクトペテルブルク訪問の後にも、タリンで演出の打ち合わせやプレスの取材を受けてきたようです。






これはクーラが自分のインスタグラムに投稿した写真で、タリン空港に設置されている無料のフィットネスジム。空港の搭乗口の隣に設置されているそうです。この夏、熱心にフィットネスに励んだ後だっただけに、とりわけ印象的だったのでしょうか。







――エストニアのラジオ番組でインタビュー

エストニアのラジオのインタビューに答えるクーラ。下の画像をクリックすると、放送局のページにとびます。10月のものです。
約50分、音声のみですが、クーラの若い頃の録音でトゥーランドットやオテロなどの曲と、クーラの英語でのインタビューが収録されています。





こちらは11月のもの。同じくクーラのインタビューと歌で構成されたラジオ番組で、50分余の音声のみです。
若い頃の録音(サムソン、オテロ、西部の娘)や今年iTunesで再リリースしたドヴォルザーク歌曲など、クーラの歌がたくさん聞けます。インタビューは英語ですが質問はエストニア語。クリックで番組ページにとびます。




このインタビューのなかでもいろいろ語っているのだと思いますが、語学力がなく、とりわけリスニングはお手上げ(T_T)、十分聞き取れないのが残念です。



――クーラの「西部の娘」の解釈

これまでもクーラは、西部の娘に出演した際に、作品解釈やジョンソンの人間像について語ってきました。いくつかの投稿で紹介してきました。

「ホセ・クーラ プッチーニの西部の娘」
「西部の娘 プッチーニは最もエロティックな作曲家の1人」
「2016年 ホセ・クーラ 西部の娘 in ウィーン」


今回の演出構想についても、いずれクーラ自身がFBで紹介してくれると思いますので、楽しみに待ちたいと思います。



――クーラの歌う「西部の娘」ディック・ジョンソン

今回のエストニアではクーラは歌いませんが、クーラのジョンソンは本当に素晴らしいと私は思っています。ぜひひとりでも多くの方に、見て聞いていただきたいのが、他の投稿でも紹介してきた2016年ウィーンでの舞台動画です。本来のジョンソンの設定より多少年齢は高めですが、荒くれ者だが内面には優しさと知性、無垢な部分をもっている人間像、おずおずと真の愛にめざめていく控え目な表現がとても魅力的です。そしてなんといっても、第1幕と第2幕のミニーとの二重唱、そしてジョンソンの最後のアリアなど、聴きどころが沢山あるうえに、クーラが絶好調、のびやかで美しい、ハイノートまで楽々と歌いきる安定した歌唱を聞かせてくれます。前・後半に分かれてアップされています。


前半 第1幕
Puccini - La fanciulla del West (Part I) Eva-Maria Westbroek, Tomasz Konieczny, Jose Cura


後半 第2幕、第3幕
Puccini - La fanciulla del West (Part II) Eva-Maria Westbroek, Tomasz Konieczny, Jose Cura





――美しいエストニア国立歌劇場

下は劇場がアップしている紹介動画です。
エストニア国立歌劇場は1913年完成のアール・ヌーヴォー形式の建築物とのこと。なかなか優雅で瀟洒な雰囲気の内装です。
タリンの街並みも中世の雰囲気を伝えるとても美しいものだそうで、行ってみたくなりました。


ESTONIAN NATIONAL OPERA - Video Tour of the House











*画像はエストニア国立歌劇場やクーラのFBなどからお借りしました。
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