ホセ・クーラは、昨年12月、母国アルゼンチンのテアトロコロンでアンドレア・シェニエに出演しました。その帰国に合わせて日程が組まれたのでしょうか、母校のロサリオ国立大学から、クーラは名誉教授に任命されました。
→ テアトロコロンのアンドレアシェニエの舞台情報については、ブログでいくつかの記事にまとめています。
トップの写真は、ロサリオ国立大学学長のフロリアーニ教授から証書を受け取るクーラと、右端はクーラの名誉教授任命を提案した人文芸術学部長のゴイティ教授。
授賞式は2017年11月16日に大学で行われ、その日の夜には、音楽学校の学生と意見交換、質疑応答を行うワークショップも開催されました。一般市民にも公開されたこの場で、クーラは、「あなた自身であれ――知的誠実さはたとえ短期的には成果につながらなくとも、歴史に痕跡を残す」という意味のタイトル(スペイン語)で公演を行ったそうです。
ロサリオ国立大学人文芸術学部のFBに掲載されたポスター
●受賞について、故郷ロサリオでの報道から
――著名なテノール、作曲家、指揮者のホセ・クーラ、ロサリオ国立大学の名誉教授に任命
フロリアーニ学長は、記念式典で、ホセ・ルイス・クーラ(ルイスがミドルネーム)を名誉教授に任命した。
この賞は人文芸術学部の理事会が提案したもので、学部長はホセ・クーラの存在の重要性に言及、世界における我々の国の主要かつ最も優れた代表者のひとりと考えていると述べた。また彼は、ロザリオ国立大学がクーラの人間形成に果たした役割を強調、それは、教育モデルとしての公立大学の意義を肯定するものとみなしている。
新しい名誉教授(クーラのこと)は、この大きなコミットメントに感謝を表明した。クーラはこの機会を利用して、彼の音楽の訓練に同行してくれた教師について述べ、 "才能と情熱を殺さずに引き上げてくれた人たち"として顕彰した。
ホセ・ルイス・クーラは、1962年12月5日にロサリオで生まれ、フアン・ディ・ロレンツォのもとでギターを学び音楽学習を始めた。15歳で合唱指揮者としてデビュー。翌年、カルロス・カストロと作曲、ズルマ・カブレラとピアノを学び始めた。
1982年、ロサリオ国立大学の芸術学校で学び始めた。翌年、合唱団の副監督を務めた。21歳でブエノスアイレスのコロン劇場芸術学校で奨学金を獲得した。そこで合唱団で数年間働きながら、同時に作曲と指揮を研究した。
1991年にホセ・クーラはヨーロッパに定住し、テノールのヴィットーリオ・テッラノーヴァと出会い、イタリア語のオペラスタイルの習得を学んだ。
午後、クーラ教授は大学の音楽学校の学生のために話をした。
「RADIO UNIVERSIDAD 103.3」
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記念式典の様子。何かメダルのような記念品を受け取っているようです。
●ネットに掲載されたクーラのインタビューより(記念式典のスピーチではありません)
私はロシアから、オスカーと呼ばれる賞(オネーギン賞で授与される像)を、私の音楽キャリアに対して受け取った(2017年11月、帰国の直前のこと)。
それは私を興奮させた。しかし、たとえ私がそれを受け取る最初の国際的なアーティストであっても、私自身は、ロシアに自分自身を社会的にコミットしていない。
一方で、ロサリオ大学の名誉教授であることは、感情的にも社会的にも私をコミットすることだ。教育機関に属するということへの責任がある。その言葉のすべての重さにおいて。
「PERFIL」(一部抜粋)
●記念式典でお礼のスピーチを行うクーラ
●旧友や恩師と再会して
●記念式典後、母校の学生や市民との懇談・交流
●地元ロサリオのラジオ局に出演
式典でのお礼のスピーチや、学生に対して語った内容はネットには発表されていません。「あなた自身であれ――知的誠実さはたとえ短期的には成果につながらなくとも、歴史に痕跡を残す」というスピーチのテーマは、いかにもクーラらしく、クーラが貫いてきた信念、芸術的キャリアをつらぬく姿勢そのものだと思います。ぜひ内容を詳しく知りたいものです。
同じ時期に、地元ラジオ局のラジオ・ロサリオ・クラシカに出演しています。そこで、自分のキャリアや考えなど含めて、さまざまな語ったものが、オンデマンド録音で聞くことができます。ただし、すべてスペイン語で、残念ながら、私にはまったく聞き取り不可能です。アルゼンチン在住のクーラファンの友人の話では、クーラが学生に語った内容とも共通するものがあるようです。
いつまで聞けるかはわかりませんが、リンクを貼っておきます。前後編、2つに分かれていて、各25分ずつほどです。
ネットに公表されたインタビューもあり、紹介したいと思っていますが、スペイン語はなかなか難しく、時間がかかっています・・(苦笑)
55歳になり、現在では、演出や指揮、そして自作のオペラの創作を含めた作曲などで大忙しのクーラ。自らの芸術的な境界を広げ、もてる能力の全面的な開花をめざしてフルに活動を続けています。
一方で、歌手として、オペラ出演は非常に少なくなっていますが、昨年ネットで放送された、コロン劇場のアンドレアシェニエ(12月)、リエージュのオテロ(6月)、モンテカルロのタンホイザー(2月)などを視聴する限りでは、声の調子も非常に好調を維持し、持ち前の美しい声に加えて、円熟した表現力と解釈、抜群の舞台上の存在感で素晴らしいパフォーマンスを積み重ねています。まさに今が、クーラの実りの秋、絶頂期といえるのではないかと私は思っています。もし旅行先で運よくクーラの舞台に出会う機会がある皆さまには、マスコミやネットから得た偏見や先入観にとらわれずに、ぜひクーラの現在の姿を知って、見ていただければと思います。その際には、ぜひ、ご感想などお寄せいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
*写真は大学のFBなどからお借りしました。