人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

2017 ホセ・クーラ 母校ロサリオ国立大学で「名誉教授」の称号を受ける / The title of 'Honorary Professor' to Jose Cura

2018-01-28 | 受賞・栄誉



ホセ・クーラは、昨年12月、母国アルゼンチンのテアトロコロンでアンドレア・シェニエに出演しました。その帰国に合わせて日程が組まれたのでしょうか、母校のロサリオ国立大学から、クーラは名誉教授に任命されました。
→ テアトロコロンのアンドレアシェニエの舞台情報については、ブログでいくつかの記事にまとめています。

トップの写真は、ロサリオ国立大学学長のフロリアーニ教授から証書を受け取るクーラと、右端はクーラの名誉教授任命を提案した人文芸術学部長のゴイティ教授。

授賞式は2017年11月16日に大学で行われ、その日の夜には、音楽学校の学生と意見交換、質疑応答を行うワークショップも開催されました。一般市民にも公開されたこの場で、クーラは、「あなた自身であれ――知的誠実さはたとえ短期的には成果につながらなくとも、歴史に痕跡を残す」という意味のタイトル(スペイン語)で公演を行ったそうです。


ロサリオ国立大学人文芸術学部のFBに掲載されたポスター





●受賞について、故郷ロサリオでの報道から


――著名なテノール、作曲家、指揮者のホセ・クーラ、ロサリオ国立大学の名誉教授に任命

フロリアーニ学長は、記念式典で、ホセ・ルイス・クーラ(ルイスがミドルネーム)を名誉教授に任命した。
この賞は人文芸術学部の理事会が提案したもので、学部長はホセ・クーラの存在の重要性に言及、世界における我々の国の主要かつ最も優れた代表者のひとりと考えていると述べた。また彼は、ロザリオ国立大学がクーラの人間形成に果たした役割を強調、それは、教育モデルとしての公立大学の意義を肯定するものとみなしている。

新しい名誉教授(クーラのこと)は、この大きなコミットメントに感謝を表明した。クーラはこの機会を利用して、彼の音楽の訓練に同行してくれた教師について述べ、 "才能と情熱を殺さずに引き上げてくれた人たち"として顕彰した。

ホセ・ルイス・クーラは、1962年12月5日にロサリオで生まれ、フアン・ディ・ロレンツォのもとでギターを学び音楽学習を始めた。15歳で合唱指揮者としてデビュー。翌年、カルロス・カストロと作曲、ズルマ・カブレラとピアノを学び始めた。

1982年、ロサリオ国立大学の芸術学校で学び始めた。翌年、合唱団の副監督を務めた。21歳でブエノスアイレスのコロン劇場芸術学校で奨学金を獲得した。そこで合唱団で数年間働きながら、同時に作曲と指揮を研究した。

1991年にホセ・クーラはヨーロッパに定住し、テノールのヴィットーリオ・テッラノーヴァと出会い、イタリア語のオペラスタイルの習得を学んだ。

午後、クーラ教授は大学の音楽学校の学生のために話をした。

RADIO UNIVERSIDAD 103.3




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記念式典の様子。何かメダルのような記念品を受け取っているようです。




●ネットに掲載されたクーラのインタビューより(記念式典のスピーチではありません)

私はロシアから、オスカーと呼ばれる賞(オネーギン賞で授与される像)を、私の音楽キャリアに対して受け取った(2017年11月、帰国の直前のこと)。
それは私を興奮させた。しかし、たとえ私がそれを受け取る最初の国際的なアーティストであっても、私自身は、ロシアに自分自身を社会的にコミットしていない。
一方で、ロサリオ大学の名誉教授であることは、感情的にも社会的にも私をコミットすることだ。教育機関に属するということへの責任がある。その言葉のすべての重さにおいて。
「PERFIL」(一部抜粋)



●記念式典でお礼のスピーチを行うクーラ









●旧友や恩師と再会して









●記念式典後、母校の学生や市民との懇談・交流









●地元ロサリオのラジオ局に出演

式典でのお礼のスピーチや、学生に対して語った内容はネットには発表されていません。「あなた自身であれ――知的誠実さはたとえ短期的には成果につながらなくとも、歴史に痕跡を残す」というスピーチのテーマは、いかにもクーラらしく、クーラが貫いてきた信念、芸術的キャリアをつらぬく姿勢そのものだと思います。ぜひ内容を詳しく知りたいものです。

同じ時期に、地元ラジオ局のラジオ・ロサリオ・クラシカに出演しています。そこで、自分のキャリアや考えなど含めて、さまざまな語ったものが、オンデマンド録音で聞くことができます。ただし、すべてスペイン語で、残念ながら、私にはまったく聞き取り不可能です。アルゼンチン在住のクーラファンの友人の話では、クーラが学生に語った内容とも共通するものがあるようです。
いつまで聞けるかはわかりませんが、リンクを貼っておきます。前後編、2つに分かれていて、各25分ずつほどです。









ネットに公表されたインタビューもあり、紹介したいと思っていますが、スペイン語はなかなか難しく、時間がかかっています・・(苦笑)
55歳になり、現在では、演出や指揮、そして自作のオペラの創作を含めた作曲などで大忙しのクーラ。自らの芸術的な境界を広げ、もてる能力の全面的な開花をめざしてフルに活動を続けています。
一方で、歌手として、オペラ出演は非常に少なくなっていますが、昨年ネットで放送された、コロン劇場のアンドレアシェニエ(12月)、リエージュのオテロ(6月)、モンテカルロのタンホイザー(2月)などを視聴する限りでは、声の調子も非常に好調を維持し、持ち前の美しい声に加えて、円熟した表現力と解釈、抜群の舞台上の存在感で素晴らしいパフォーマンスを積み重ねています。まさに今が、クーラの実りの秋、絶頂期といえるのではないかと私は思っています。もし旅行先で運よくクーラの舞台に出会う機会がある皆さまには、マスコミやネットから得た偏見や先入観にとらわれずに、ぜひクーラの現在の姿を知って、見ていただければと思います。その際には、ぜひ、ご感想などお寄せいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。





*写真は大学のFBなどからお借りしました。

















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2018 ホセ・クーラ演出・制作のカヴァレリア・ルスティカーナ&道化師 サンフランシスコで再演 / Jose Cura / Cav & Pag in San Francisco

2018-01-20 | サンフランシスコのカヴァレリアと道化師




昨年12月以来、コロン劇場のアンドレア・シェニエの感動に浸って(笑)録画・録音を繰り返し聞き直しているうちに、はや1月も後半に入ってしまいました。
ご挨拶が大変に遅れてしまいましたが、どうか今年もよろしくお願いいたします。


●クーラのプロダクションがサンフランシスコの開幕公演に

そうこうしているうちに、嬉しいニュースが入ってきました。クーラ制作のカヴァレリア・ルスティカーナ&道化師のプロダクションが、2018/19シーズンのサンフランシスコ・オペラで再演されるそうです。何とサンフランシスコの2018/19シーズン開幕公演です。
日程は、2018年9月7,12,16,19,22,28,30の7公演のようです。


以下の画像をクリックすると、サンフランシスコオペラのHPにリンクしています。




≪CAST AND CREATIVE≫
Conductor= Daniele Callegari *
Production= José Cura
Revival Director= Jose Maria Condemi
Chorus Director= Ian Robertson

Turiddu= Roberto Aronica
Santuzza= Ekaterina Semenchuk
Alfio= Dimitri Platanias *
Lola= Laura Krumm
Mamma Lucia= Jill Grove
Canio= Marco Berti
Nedda= Lianna Haroutounian
Tonio= Dimitri Platanias *
Silvio= David Pershall
Beppe= Amitai Pati




●クーラが舞台デザイン・演出・主演を行ったリエージュでの初演

このプロダクションは、もともと2012年にベルギーのリエージュにあるワロン王立歌劇場で、クーラの舞台デザイン・演出・主演(トゥリッドウとカニオ両方)によって初演され、観客からも批評家らも大好評だったものです。その後、2015年にクーラの故郷アルゼンチンのテアトロコロンで再演されました。その時には、クーラが演出、そしてカニオだけに出演したのでした。

このプロダクションの特徴と2015年のテアトロコロンでの再演の様子を、以前の記事で紹介しています。クーラの作品への思い、解釈、最愛のトゥリッドゥと呼んでいるカヴァレリアの主人公への思い入れをその一端だけでも知っていただけるかと思います。

カヴァレリア・ルスティカーナと道化師の演出


●サンフランシスコではクーラは演出も主演もしない・・😞

そして今回は、スタッフ・キャストの一覧を見ていただいてお分かりのように、クーラは、演出も出演もせず、クーラのプロダクションだけがサンフランシスコに渡ることになるようです。トゥリッドゥはロベルト・アロニカ、カニオはマルコ・ベルティ。

とても残念ですが、そのあたりの事情をクーラがFBで説明してくれました。




クーラはちょうどこの時期(2018年9月)に、エストニアのタリン国立歌劇場で、プッチーニの西部の娘の新制作を演出・セットデザイン、そして指揮するためでした。このFBで書いているように、クーラ自身、サンフランシスコでの再演は大変、喜ばしいことであるとともに、自分の「子ども」の晴れ舞台を見届けられないことは、残念を通り越して怒りを感じるほどだそうです。開幕公演という時期でのオファーのために、うまく調整できなかったのでしょうか。ファンとしては、クーラが演出して、せめてカニオだけでも歌ってほしかったというのが率直な感想です。

幸い、再演を同郷の演出家が担うということで、今後、緊密に連携しながら準備していくとのことです。
エストニアの西部の娘のプロダクションについては、以前の記事で紹介しています。クーラのインタビューや録音を紹介したラジオ番組のリンクなども紹介しています。

→「(告知編)2018年 ホセ・クーラ プッチーニの西部の娘を演出・指揮


●サンフランシスコオペラのHPより

こちらの画像は、サンフランシスコオペラのHPにアップされている2018/19シーズンパンフレットから、クーラのプロダクション紹介ページです。








●リエージュでの初演時の紹介動画

初演の際のワロン王立歌劇場がアップした紹介動画です。

Cavalleria Rusticana & Pagliacci (Pietro Mascagni) - Extraits


同様に劇場がアップした動画で、リハーサルの様子やクーラのインタビューが収録されています。
Cavalleria Rusticana & Pagliacci (Pietro Mascagni) - Répétitions



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このプロダクションは、舞台をイタリアのシチリア島から、クーラの故郷アルゼンチンのイタリア移民の街に移し、バンドネオンの音楽、タンゴなど、ブエノスアイレスの雰囲気たっぷりに設計されています。2作品が同じ街、時間的にもつながった事件として描かれていて、登場人物の人間像、行動の動機と因果関係、感情の掘り下げが深く、とにかくエモーショナルです。セットの細部や小物、登場する群衆の一人ひとりにまで目配りされ、映画のような美しい舞台となっていました。
私はリエージュでのクーラ主演の公演を、ARTEでオンデマンド放送されていた際に視聴することができました。DVDになるかと期待していたのですが、現在までリリースされていません。それは今回のように、他の劇場からプロダクション利用の要請があるからなのでしょうか?そのあたりの事情はまったく分かりません。








現在クーラは、2月のモンテカルロ歌劇場でのピーター・グライムズ再演(演出、舞台デザイン、主演、2017年ボンで初演)を控えています。
これはおまけの話ですが(笑)、先日、クーラがインスタグラムとFBにアップした、マドリードの自宅近くの森の写真に、私がちょっとしたコメントを書き込んだところ、たまたま目をとめたクーラが返信をくれました(#^^#) これまでも運が良いと返信してくれることがあり、ほんのささやかな対話ですが、クーラのファンを大切にする優しい人柄が感じられてとても嬉しかったです。





今年はこのプロダクションの他に、クーラは、先ほど紹介したタリンでの西部の娘と、プラハでのヴェルディのナブッコと、2つの新演出に取り組みます。
ますます演出家・舞台デザイナーとして、また作曲家、指揮者としての仕事が増え、多忙になっているように思われます。
健康を維持して、多面的で豊かな実りがもたらされることを祈るとともに、コロンのシェニエで見せてくれたように、歌手としても、まだまだ美しく魅力的な歌声を聞く機会が増えることも願わずにはいられません。



*画像は劇場HPからお借りしました。
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