人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

2019年 ホセ・クーラ、ブルガリア・プロブディフ古代劇場でオテロ

2019-08-09 | オペラの舞台―オテロ

 

 

ホセ・クーラは、2019年7月26日、この夏の野外オペラのひとつ、ブルガリア第2の都市プロヴディフで、ヴェルディのオテロに出演しました。

会場は、古代ローマ時代の遺跡である野外の円形劇場。小高い山の上にあり、市内を見渡せる素晴らしいロケーション、そして石造りの劇場は、オテロの舞台そのものです。 

 

  

 

 

プロヴディフは、EU域内の独自の文化を守るという趣旨で作られた「ヨーロッパ文化首都」に、2019年、マテーラ(イタリア)とともに選ばれています。ブルガリアでは南寄りの都市、ギリシャやトルコはすぐ近くです。6000年も前からの住居跡が発掘されるとのことで、市内に多くの古代遺跡をもつ歴史ある町です。 

この公演は、プロヴディフ国立歌劇場による、古代遺跡の劇場を舞台にした夏の野外オペラシリーズのひとつであるとともに、とりわけ今年は「ヨーロッパ文化都市」に選ばれた年ということで、クーラを招聘するなど、力を入れて準備が行われてきたようです。

このことは劇場のディレクターがHPで次のように述べていたことからもわかります。

「3年間の交渉の後、有名なテノールのホセ・クーラ(アルゼンチン)が、彼の最も人気のある役の1つを歌うという招待状を受け入れてくれたことを感謝する。私たちは今年のフェスティバルで、ランドマークとしての彼の存在に注目するだろう。彼のオリジナルのオペラ解釈と魅惑的なステージ上の存在感は、私たち聴衆への贈り物になる」

 

 

 

State Opera - Plovdiv

OPERA OPEN:  Otello - Verdi  26.07.2019

Conductor: Dian Chobanov
Director: Nina Naydenova
Set design: Svetoslav Kokalov
Costumes: Tsvetanka Petkova-Stoynov
Choreography: Boryana Sechanova
Conductor of people;Dragomir Yosifov
Concertmaster: Micho Dimitrov
Orchestra, Choir and Ballet of Opera Plovdiv


Jose Cura = Otello
Tanya Ivanova = Desdemona
Piero Teranova = Iago
Elena Chavdarova Issa, Mark Fowler,Alexander Baranov,Alexander Nosikov
Evgeny Arabadzhiev,August Metodiev

 

 


 

 

古代ローマ遺跡の3000人収容といわれる野外劇場でのオテロ。石造りの舞台や円柱が、舞台の照明によって、暮れゆく空に美しく浮かび上がり、とても幻想的で、魅力的なプロダクションだったようです。

SNS上には、感動の声がたくさんあがっていました。

「プロブディフオペラと、オテロとして伝説的なホセ・クーラとの素晴らしい夜!」「昨夜は忘れられない経験だった」「素晴らしい出演者、素晴らしいパフォーマンス、素晴らしいミュージシャン」「オテロとの素晴らしい夜」「ソリスト、ホセ・クーラ、バリトンのピエロ・テラノヴァ、ターニャ・イヴァノヴァ、そしてマエストロの魔法の下で、プロブディフ・オペラの素晴らしい合唱団とオーケストラの本当に感動的な声!」・・等々。

残念ですが、やはり正規の録音や録画などはありません。しかし、劇場のFBには、本番の舞台を中心に、たくさんの写真が掲載されています。本当にうれしいことです。

美しく神秘的な古代劇場の様子、臨場感ある舞台、群衆の様子、クーラ・オテロの表情、苦悩、孤独感、怒りを映した写真、スタッフの奮闘ぶりなど、たくさんの写真をぜひ直接、ご覧になってみてください。


*右上のFBマークをクリックすると劇場FBのアルバムにいきます。

 こちらには114枚も。

 

こちらも40枚。

 

いくつかお借りして紹介を。

 

 

 

 

こちらは同じ劇場FBに掲載された、最終ドレスリハーサルの写真です。

 

 


 

 

この舞台にむけたいくつかの記事から、クーラの発言を紹介します。

 

≪「新しいオテロの誕生」と呼ばれてーー報道記事より抜粋≫

 

ーー古代劇場は一目で、有名なテノールを魅了した。彼は、これがまたフェスティバルの招待を受け入れる理由の1つであることを認めた。


(クーラ)初めて来た。もっと知りたいが、本当に不思議だ。ローマ人は素晴らしい。彼らが触れるところはどこでも、驚異的なことが起きた。


ーーオテロの役で、ホセ・クーラは1997年にクラウディオ・アバドの指導の下で劇場レッジョ・ディ・トリノでデビューした。そしてイタリアの報道機関は、「新しいオテロの誕生」と断言した。

(クーラ)その理由は、私が若くて未経験だったので、それがとても良かったということではないと思う。おそらく、私は、これまでの伝統からかけ離れて、これまでとは異なる方法で役柄を解釈した。つまり、今日、私はこのコメントをこのように読む。「オテロを演じる新しい方法が生まれた」と。

(「www.cross.bg」)

  

 

 

  "アーティストがアーティストになる前に有名になる"――インタビュー記事より抜粋≫

 

――ホセ・クーラは、Classic FMラジオのリスナーを次のように公演へ招待したが、彼のブルガリア人の同僚のレベルを高く評価することを忘れなかった。

(クーラ)7月26日、私はプロヴディフの古代劇場の舞台に立つ。私の優秀な仲間の歌手、プロヴディフ国立歌劇場の合唱団とオーケストラの人々、そして舞台裏の巧みに働く素晴らしい技術スタッフ。ここへ来て、素晴らしいショーを楽しみ、そして一緒に素晴らしい時間を過ごす準備ができている。

高いプロフェッショナルなレベルで機能し、気候も素晴らしい。私が最後に訪れてから16年が経ったが、ここで仕事をすること、さらに多くのことをするのは素晴らしい。プロヴディフが ”ヨーロッパ文化首都” に選ばれたのは良いことだ。オペラ劇団、劇場ともに素晴らしく、ディレクターは非常に歓迎してくれ、よく準備されている。

中国、日本、韓国、ロシアから新たな「声」が来ている。これは具体的な社会現象だ。私が若い頃、”なぜ南米人がヨーロッパを訪れて歌うのか”とよく聞かれた。その答えは、南米では、成功と失敗の違いは、”食べられるか、食べられないか”、だからだ。同じことがアジア、韓国、中国、ロシア、バルカン諸国の若者たちにも起きている。


ーー56歳のテナーは、次世代の才能あるアーティストを懸念。常にオペラの未来につよい関心を持っている。

(クーラ)アーティストは、そうなる前に有名になっている。アーティストになるためには、自分自身の道を歩かなければならない。1990年代の終わりから今世紀の初めまでには、有名になるためには、芸術的、専門的な多くの資質が必要だった。

今日、有名になるためには、インターネット、YouTube、Instagramなど、役立つコミュニケーションツールを十分に活用する必要がある。

才能は豊富であり、マスメディアはそれを台無しにしている。今、流行の若い指揮者たち。そのことは良い、素晴らしいことだ。しかし私が若い頃は、20歳でオーケストラの指揮者になることはできなかった。アシスタント・コンダクターとして技術を学んだ。

今日、すでに20代で、ロサンゼルス・フィルまたはニューヨーク・フィルの指揮者として選出されている。私は、まず知識を習得し、そしてこの仕事に取りかからなければならないと信じている。

彼らを成長させる前に彼らを台無しにしているので、おそらく私たちは、素晴らしい才能のあるアーティストを持つ機会を失ってしまう...だから未来は危機に瀕している...。バイオリン奏者、ピアニスト、歌手またはオーケストラの指揮者であるかどうかにかかわらず、クラシックの音楽家の場合、この職業を理解できるようにするためには、人生の15年を投資する必要がある。それは困難なほど美しいことだ。

今日、成功のためだけでなく、成功できるかどうかを試すために、15年、20年の人生を投資する準備ができている若者はどれほどいるだろうか。しかし、オーケストラの演奏、オペラの演奏、バイオリンの演奏は、ウィキペディアでは教えられない。それのような方法はない。


ーーインタビューの終わりに、Classic FMラジオの25周年記念について

25周年を迎えることは、同じ期間、結婚しているカップルのようなもの。今日の世界では、2人の若い恋人の間で、あるいは、既に成熟し、長年一緒に生活している家族の中で、そのような夫婦間の結びつきを維持することは、とても困難だ。物事は壊れやすい。何かを始めてから25年を経て、なおも、熱意を持ち続け、そうしようと願い続けている人は、誰でも皆、大きな拍手に値する。お祝いと、そして幸運を。

(「www.classicfm.bg」)


 

 


 

≪SNS上の動画≫ 

 

正規の動画、録音はありませんが、SNSにいくつか、客席からとった動画がアップされています。とても短く、画質も音質もよくありませんが、舞台の雰囲気が味わえて、ありがたいです。 

 

第3幕、本国からの使者を迎える場面。オテロは本国に召還、代わりにカッシオが総督になることを知らされる。様々な思いに心乱れるオテロ。残念ながら途中までです。

 

第4幕、ラストシーン、オテロの死。演出により、前後に、鐘の音が鳴り続ける場面が加わっています。

 

 

≪リハーサルの様子、バックステージ≫

 

リハーサルの様子を報道したニュース動画。ファンページ・ブラボクーラFBに転載されたものです。リハーサルでの、クーラのオテロとデズデモーナ役の親密な様子がたのしいです。クーラの短いインタビューも。

もとのページはこちら

 

リハーサル室のようです。劇場FBに掲載された写真。

 

古代劇場の石の客席で、指揮者、演出家らと語り合うクーラ。もう日も暮れているようですが、こうやって議論を重ねながら本番に向かっていっているのでしょうか。劇場FBより

 

 

 

終演後には、野外劇場の観客席最上部で、関係者による(運のいいファンも交えて?)懇親・交流会が開かれたようです。

 

劇場FBより、クーラとデズデモーナ役のTanyaさん

 

指揮者、劇場ディレクターと、客席最上部で。背後に舞台が見わたせます。

 

 

 


 

古都の古代遺跡を舞台にしたオテロ。クーラもほれ込むほどの美しく、素晴らしい環境で、劇場の人々ともとても気持ちのよい協力関係がつくられたようです。

デズデモーナ役のTanyaさんは、声も姿も可憐で美しく、成熟したクーラ・オテロとの組み合わせは、原作のイメージとも合って、とても良かったのではないでしょうか。どの写真も美しく、それゆえ、オテロの苦悩、孤独、悲しみが伝わるものが多かったと思います。

クーラがアーティストとしての生涯を通じて探究してきたヴェルディの大作オテロ。熟年オテロの集大成として、この数年のうちに、ぜひ映像化や録音が実現してほしいと切に思います。

クーラの次のオテロは、来年2020年の3月、ドイツのハンブルク歌劇場です。

 

*画像は劇場FB、HPからお借りしました。 


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