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(動画公開編)2020年 ホセ・クーラ脚本・作曲のオペラ「モンテズマと赤毛の司祭」世界初演へ

2020-04-26 | クーラ脚本・作曲オペラ「モンテズマと赤毛の司祭」

 

 

 

ホセ・クーラが、脚本執筆、作曲、オーケストレーションを手がけ、今年2020年1月29日、ハンガリー・リスト音楽院での世界初演で自ら指揮をした新作オペラ「モンテズマと赤毛の司祭」、初演の舞台の動画が公開されました。セミステージ形式です。

当日、ラジオで放送され、1か月ほど聞くことができましたが、今回は、世界的なコロナ禍で家に閉じ籠らざるを得ない音楽ファンのために、クーラ自身がYouTubeチャンネルにアップしてくれたものです。

いつまで公開されているかはわかりません。突然、非公開にしてしまうこともありますので、興味をお持ちの方はぜひお早めにどうぞ。

なお、物語は、キューバの作家カルペンティエールの「バロック協奏曲」を原作としています。主人公のメキシコ出身の男爵と、ヴィヴァルディ、ヘンデル、スカルラッティという3人の作曲家たちとの出会い、実在のオペラ「モンテズマ」誕生に至るエピソードが盛り込まれています。

音楽としては、クーラの作曲と構成のなかに、中心人物のヴィヴァルディやヘンデルをはじめ、様々な有名な曲やセリフが引用されていて、どこに誰の何が出てきているのかを知る楽しさもあります。

また使用言語は、スペイン語、イタリア語、ドイツ語など、キャラクターによって使い分けられています。字幕はありませんが、クーラが脚本を原語版、英語版の両方で公開してくれています。下にリンクを掲載していますのでご参照ください。

とはいえ、英語の脚本でも、私などには、なかなかすぐには理解しにくく、いずれ訳して紹介したいとは思っていますが、まだまだ先になりそうです。なので、以前の投稿で、初演の舞台に登場したナレーション(録画ではカット)の原稿をざっくり訳していますので、多少はストーリー展開を知る参考になるかと思います。よろしければどうぞ。  →  (オンデマンド録音編

 

 

 


 

 

 

≪ホセ・クーラ脚本・作曲「モンテズマと赤毛の司祭」 録画≫

 

Montezuma e il Prete Rosso, opera buffa ma non troppo by José Cura

 

 

World Premier in Concert at the Budapest Music Academy Great Hall ,  January 29, 2020

Cast in order of appearance

Prologo
Francisquillo – János Alagi
The Baron – Matias Tosi
The Lover – Katalin Károlyi

Backstage voices
A Woman – Gabriella Sallay
A Man – Péter Tóth

Quintet
1. Nóra Ducza
2. Bernadett Nagy
3. Kornélia Bakos
4. József Csapó
5. Szabolcs Hámori

Il Carnevale
Vivaldi – Donát Varga
Handel – Domonkos Blazsó
Scarlatti – József Gál
Filomeno – Zoltán Megyesi
Host – Róbert Rezsnyák

Orchestrina
Dávid Simon (flute)
Zsanett Pfujd (bassoon)
Balázs Csonka (violin)
Eszter Reményi Csiky (violoncello)
Helga Kiss (percussion)

Stornello

Uomo 1 – József Csapó
Donna 1 – Kornélia Bakos
Donna 2 – Nóra Ducza
Uomo 3 – Szabolcs Hámori
Donna 3 – Katalin Süveges
Uomo 2 – Gábor Pivarcsi
Donna 4 – Bernadett Nagy

L’Ospedale
Orderly Noun – Borbála László

Orphans orchestra
Bianca Maria – Fruzsina Varga (flute)
Claudia – Melinda Kozár (oboe)
Cattarina – Yoshie Toyonaga (clarinet)
Lucietta – Dóra Béres (trumpet)
Pierina – Ildikó Fazekas (violin)
Bettina – Katalin Madák (viola)
Margherita – Rita Keresztes (cello)
Giuseppina – Gerda Kocsis (contrabass)

Il Cimitero
The Gondoliere and the Friar – Róbert Rezsnyák

Hungarian Radio Symphony Orchestra and Choir (choirmaster: Zoltán Pad)
Organ, harpsichord continuo: Soma Dinyés

 

 

 

≪ 脚本 ≫

 

クーラが執筆した脚本です。公式HP(全体はリニューアル作業中)に掲載されています。44ページのPDFで、左右に「原語版」と「英語版」が並んでいます。以下の画像にリンクをはってあります。

なお、今回、公開された動画では、最後のシーン、「リハーサル」の場面がカットされています。クーラの説明によると、初演後に大幅に書き直したそうで、そのために動画からはカット、この脚本には改訂後の文面が掲載されているようです。

クーラが執筆した脚本には原作があり、キューバの作家カルペンティエールの「バロック協奏曲」にもとづいています。

 

 

 

 

 

≪解説と資料≫

 

同じく、クーラの公式HPに掲載されたもので、PDFで13枚、クーラ自身が執筆した脚本や音楽面、史実などに関する解説、引用元、資料の紹介、クーラやヴィヴァルディの自筆の楽譜の写真、原作本の写真なども掲載されています。(英語)

 

 

 

 

 


 

 

クーラの新作オペラ、動画に加え、脚本、解説・資料まで、すべてを無料で公開してくれました。クーラの丹念な仕事ぶり、凝り具合がよくわかるのではないでしょうか。作曲だけでなく、歴史的事実と資料収集などの探求と研究、執筆、英語版の作成、解説の作成、動画のアップ作業・・本当に、大変な労力と時間、情熱がつぎ込まれています。こういう手間のかかる仕事を、コツコツと熱心に続け、多面的に展開させている多才なアーティスト、本当にユニークな存在ではないかと思います。しかも、しかるべきレーベルから出版、書籍化すれば、収益にもなるだろうに、今、みんなが苦しんでいる時だからと、すべて無料で公開してくれています。

クーラが原作とした「バロック協奏曲」は荒唐無稽な空想的なストーリーで、私が読んだ印象では、なかなかオペラ化するのは難しそうに思われましたが、その奇想天外な展開をそのままに、エッセンスをぎゅっと詰め込み、ドラマティックでカラフル、コミカルな音楽を豊富に付けたという印象です。

音楽の楽しさ、素晴らしさとともに、人種差別と自由、他民族への侵略の歴史、文明の対立、アーティストのアイデンティティなどの社会的、歴史的視点も編み込まれています。

そしてこれは、もともと何年か前に作曲されたたものですから、クーラが意図したものではないのですが、そして原作がそもそも描いていることですが、伝染病による悲劇を悼む内容ともなっていることです。オペラの冒頭、旅に出た主人公が、キューバで疫病の流行に巻き込まれ、同行した従者が亡くなるという悲劇に見舞われます。そしてクーラは、この部分に、死者を悼み、悲しみと祈りのレクイエムを、たっぷりの時間をかけて作曲しています。全体としては喜劇を標榜していますが、この前半部分は、とても切なく、美しくドラマティックな悲劇的な場面となっています。作曲時に意図していたわけではないけれど、今、この曲が公開されたことで、世界が直面している新型ウイルスによる犠牲者を悼み、困難に直面している人々を慰める音楽となっているようにも、私には思われます。これはあくまでも偶然ですが、クーラの人間と人間社会に対するリアリズムとヒューマニズムが、そういう受け止めを可能にしているのではないかとも思います。

ぜひ、大勢のみなさまにご覧いただければと願っています。また、今回はセミステージ版でしたが、いつか舞台化され、完成版として上演されること、またDVDなどで映像化、リリースされることを心から願っています。

 

 

*画像は、クーラとハンガリー放送協会のFBからお借りしました。


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