長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

突然炎のごとく……!!  総力特集 「せかいのサメ」 第1集

2013年10月26日 23時27分01秒 | 日記
ここでは、世界に400種生存していると言われるサメのうち、代表的な種を紹介します。

 トップバッターは、やっぱりこのお方。


ネズミザメ目(ホホジロザメ、アオザメ、バケアオザメ、ネズミザメ、ニシネズミザメ)
 この部類には、ホホジロザメをはじめとした、サメの代表的な種が含まれており、また非常に高度に発達した種もある。ただし、あまりに多様な種が含まれ、本当に同じ目に属するのかどうか疑問の残る種もあり、再編が考えられている。ネズミザメ目のなかでもネズミザメ科の種は、どれも非常に活発である。


ホホジロザメ(頬白鮫) Carcharodon carcharias
ネズミザメ科ホホジロザメ属(本種のみでホオジロザメ属を形成する)
別名   …… ホオジロザメ
英名   …… Great White Shark (グレイト・ホワイト・シャーク)
体長   …… 4~6メートル
生息年代 …… 中新世(約2300万~500万年前)から現在

体型
 平均的なホホジロザメの体長は4.0~4.8メートル、体重は680~1100キログラムである。オスよりメスのほうが大型で、身体能力も大きな差がある。最大体長および体重に関しては諸説あり、いまだに見解は一致していない。体長11メートルを超える巨大な個体も報告されているが、専門家の意見では体長6メートル、体重1900キログラム程度が最大と見積もられている。ただし、推定値ながら、台湾沖やオーストラリア沖などで、切り落とされた頭部の大きさなどから体長7メートル以上、体重2500キログラム以上と推定される個体が捕獲されたことがある。

 体型は特徴的ながっしりとした流線紡錘型で、どっしりとひきしまった体をしている。尾ビレは上下の長さがほぼ等しい三日月型をしていて、これによって非常に速いスピードで泳ぐことができる。また尾ビレの付け根にはみごとな隆起線が走っている。
 大きさや体型がウバザメに似ており、遠くから見ると間違われることもある(厳密にはウバザメの方が大きい)。

 歯は特徴的で、非常に鋭利でやや縦長の正三角形をしており、長さは7.5センチメートルある。そのエッジは皮や筋肉を噛み切りやすいようにノコギリのようにギザギザな形状「鋸歯(きょし)状縁」になっている。
 ホホジロザメは獲物から一撃で約14キログラムの肉塊を食いちぎることができるといわれている。歯列は3段あり、歯が1本でも欠けたり抜け落ちたりすると、すぐに後ろの歯列がせり上がってきて古い歯列を押し出す。これはサメ類に共通の特徴であり、歯は何回でも生え変わる。
 獲物の肉を食いちぎるときに欠けた歯を肉塊と一緒に飲み込み、それが内臓を傷つけることもあるといわれている。またホホジロザメはよくエイを食べるが、エイの棘が内臓に引っかかることも珍しくない。

体色
 背中は青灰色から黒色の間の灰色をしており、腹側は白色である。体色を背側から腹側へ見ると、グラデーションではなく1本の線ではっきりと分けられているため、腹の白とのコントラストが目立つ。そのため英語では「グレイト・ホワイト(偉大なる白いサメ)」とよばれている。側頭部が白いことが和名「頬白」の由来である。
 また、胸ビレ裏側の付け根と先端にはたいてい大きな黒い斑点が見られる。エラの部分の配色は個体によって異なり、ここで個体の識別ができる。

分布
 ホホジロザメは亜熱帯から亜寒帯まで、世界中の海に広く分布している。北ではアラスカやカナダ沿岸にも出現した記録がある。アメリカ合衆国や南アフリカ共和国、オーストラリア、ニュージーランドの周辺海域、地中海で多く見られ、日本近海にも分布する。
 2009年11月、メキシコ~ハワイ間の深海にホホジロザメが集まる海域「ホホジロザメ・カフェ」があるという研究結果が公表された。

 主に沿岸域の表層付近を泳ぎ、沖合から海岸線付近まで近づくこともある。海表面近くにいることもあるが、水深250メートル以上から1300メートル付近まで潜ることもある。アザラシやオットセイの繁殖地の周辺海域に集まることが多い。

生態
 ホホジロザメは、その外見の良さから、人気度、知名度ともにトップクラスのサメである。

 ホホジロザメの生態はほとんど分かっていない。ホホジロザメは「奇網」と呼ばれる体内構造によって毛細血管の熱交換システムを発達させており、体温は常に水温よりも5~10℃ほど高く、これによって冷たい海でも活発な行動が可能になっている。ホホジロザメやアオザメといったサメは水族館での飼育がほぼ不可能で、すぐに死んでしまう。したがって野生でしかその姿を見ることはできない。また個体によってその性格も様々であるといわれる。
 ながらく飼育は難しいとされてきたが、アメリカのモントレー湾水族館では、2006年に若いメスのホホジロザメの飼育を198日間行った。 その後、この個体は海へ返されている。 飼育を断念したのは、成長に従って水槽内の他の魚への危険が増したためだとされている。

 普段はゆったりと泳いでいるが、瞬間的にはかなりのスピードで泳ぐことができ、最高遊泳速度は時速25~35キロメートルと言われる。また、海面から体が完全に飛び出すジャンプを行うことが可能で、これに相当する運動能力は、他のサメでは高速遊泳を行うことで知られるアオザメやオナガザメに見られるくらいである。
 ただし、あくまで「軟骨魚類にしては」運動性が高いのであって、最高時速50キロメートル以上も珍しくない硬骨魚類(バショウカジキは時速約110キロメートルで泳ぐという記録があり、クロマグロも時速70~90キロメートルで泳ぐことができる)や、鯨類をまともに追尾してとらえるのは困難であり、もっぱら遊泳速度が比較的に遅い海生哺乳類を狙っての奇襲攻撃を得意としている。また、ホホジロザメは歯を大事にしていることが最近の研究で判明し、獲物に喰いついて大ダメージを与えたのち放し、出血多量で弱って死ぬのを待つ、という手法が用いられていることが確認されている。
 学習能力に優れている事が近年の研究で判明し、獲物を襲う際には過去の成功と失敗の経験を活かすと言われている。

 海面を泳ぎながら顔を出し、体を横に回転させながら口を開けたり閉じたりする行動が見られ、この行動は、他のサメには見られないホホジロザメに特徴的なものである。

 食性は動物食で、イルカやオットセイ、アザラシなどの海生哺乳類を好み、魚類や海鳥も捕食する。クジラの死骸を食べることもある。南アフリカ沿岸のホホジロザメは、海面を泳ぐミナミアフリカオットセイを狙ってジャンプする。満腹になる食事量は体重の30% 程になるといわれる。
 空腹でない限りは何も襲わず、こちらから危害を加えなければ何もしてこない。

 天敵は人間やシャチ、他の大型のサメである。大型のサメは比較的小型のホホジロザメを捕食することもあり、また、同じホホジロザメ同士でも、より大型の個体が小型の個体を捕食することもある。シャチに関しては状況によってホホジロザメを攻撃することはあるものの、基本的には抵抗されると自身にも危険が及び、かつシャチは偏食の習性があるため積極的に攻撃や捕食の対象にしてはいないと見られている。ただし、近年ではいわゆるオフショア型(陸から離れた沖合いに生息している属性)のシャチは、ホホジロザメを積極的に捕食しているという説もある。また、子供を連れているシャチは子供に対する危険を除去する目的で積極的に攻撃を仕掛けてホホジロザメを殺害する例が幾度も観察されている。ちなみに、シャチはホホジロザメをはじめとした軟骨魚類を襲う場合、相手の身体をひっくり返して擬死状態に陥らせ、抵抗できなくなってから捕食する。
 捕食の対象となるハンドウイルカの幼体を襲う際、それを守ろうとする成体のハンドウイルカがサメに反撃する例も目撃されており、内臓を守る硬い骨格を持たない軟骨魚のサメに体当たりし、内臓を破裂させて死に至らしめることもある。シャチやイルカなどの海生哺乳類の知能には及ばないが、ホホジロザメは魚類の中でも高度な知能を持ち、近年の研究で社会性を持っていることが判明しており、仲間内で多彩な行動を取り、獲物を分けあう行動も確認されている。

 ホホジロザメは卵胎生で、子宮の中で卵から孵化した胎児は、胎内で他の未受精卵を食べて育ち、体長1.2~1.5メートルの大きさになってメスの胎内から出てくる。メスは11~12歳に成長してから子供を産み、1回で2~15尾の子を産む。妊娠期間については知られていない。幼体はしばらくは魚を中心に捕食し、大きくなると大型魚類や海産哺乳類を襲うようになる。
 その個体数はもともと多くはないとされる。ホホジロザメは海の食物連鎖の頂点に立つ生き物であり、生態系のバランスを保つのに重要な役割を果たしている。

 ホホジロザメは人間にとって、襲われれば最も危険な種のサメであり、世界中で死傷事故が発生している。サーフィンの最中や、貝などの漁で潜水しているとき、または海水浴場での遊泳中に襲われる場合が多い。噛みつかれると致命傷になることがしばしばあり、死に至らなくとも手足を切断されるような重傷を負うことがある。しかし、実際にはシャチに襲われていたケースが、ホホジロザメと誤認される場合もある。
 世界中の海の沿岸域に生息しているために、サメの中でも人を襲った記録が多い。このようなこともあって、ホホジロザメはサメの中では世界最大のジンベエザメと並んで一般によく知られている。「サメ」と言えば、大口を開けたホホジロザメがイメージされることも多い。

 1876~2004年の約130年間に確認されたホホジロザメによる人身事故は224件あり、その内63件が死亡事故である。地域別に見ると、アメリカ西海岸が最も多く(84件)、次が南アフリカで(47件)、3番目はオーストラリア(41件)となっている。他には、地中海やニュージーランドでの被害も多い。

なぜ人を襲うのか
 ホホジロザメが人間にとって脅威となるのは、巨大な身体、大きなアゴ、鋭い歯をもち、泳ぐのが速く、獲物の探知に優れているなど捕食者としての能力が高いことである。特に鋸歯状縁の歯は肉などを簡単に切り裂くことができる。人を襲うものは4~5メートル級の大型個体が多い。また、人との接触の機会が多いことも事故が起こる要因の一つである。ホホジロザメは温帯から亜寒帯の海に生息し、かなり冷たい水温にも耐えられ、時期によっては亜熱帯海域にまで進出する。さらに沿岸域の浅い所で生活し、昼行性であるため、人の活動時間・空間ともに重なることが多い。
 大型個体はアザラシやオットセイなどの海生哺乳類が主食であり、とくにアザラシと人間を見間違えて襲うという意見がある。サーフィン板等の上で腹ばいになってパドリングする人間の動きや、ウェットスーツを着て足ヒレを動かす姿をアザラシと誤認することもあるといわれる。

 襲われないようにするための有力な対策として、以下のようなものが挙げられる。
・ホホジロザメの生息している可能性の高い危険海域には近づかないこと
・色の明暗がある水着やサーフボードを利用すること
 ……黒と白の縞模様など、なるべく明るい色の入った柄が望ましい。サメは明暗がわかるので、アザラシなどと勘違いされることを避けることができるとされている。
・海中で排尿、排便をしたり、出血するほどのケガを負っている(生理中の女性も同じ)場合は泳がないこと
 ……サメ類は嗅覚がとても優れているので、臭いがすればすぐに寄って来る可能性がある。

 狂暴でない個体でも突然に人を襲うケースもあり、サメが人を襲う根本的な理由は確認されていない。そのため、一番の予防策はとにかくサメに遭遇しないように細心の注意をはかることであり、これはホホジロザメ以外にも、大型で危険だとされるサメ類全てに言えることである。

保護
 スティーヴン=スピルバーグ監督の出世作である、1975年6月公開のサメパニック映画『ジョーズ』に登場する巨大ザメのモデルとなって以来、ホホジロザメは悪名高き人喰いザメ( Man eater shark)として、まるで海の悪者のような扱いを受け、アメリカなどではしばらくのあいだ虐待の対象となっていた。21世紀現在は保護される機会も多くなったものの、ホホジロザメの絶滅を危惧する声は高い。

 その他にも、フカヒレ漁などでの乱獲、ホホジロザメの高価なアゴ骨を求めておこなわれる密漁、害魚(人間にとって食用になる海生哺乳類や魚類、貝類、甲殻類などを食べるため)としての駆除、スポーツ・ハンティングなどの影響で生息数は激減しているとされているが、資源量や生態は未知の部分も多い。それほど減っていないという意見もあるが、絶滅が心配されている最大の理由は、海で見かける機会が減っているためらしい。

 現在オーストラリア、南アフリカ、アメリカのカリフォルニア州、マルタによって保護種に指定されている。また、IUCN(国際自然保護連合 1948年に設立された、国家と NGO団体からなる国際的な自然保護機関)は、このサメをレッドリストの中で「絶滅危惧第2類」に指定している。
 2002年9月に、ホホジロザメはボン条約(CMS)の『付属書1』に登録された。このためホホジロザメは、約80の加盟国によって厳重に保護されることになる。そしてさらに、2004年10月、ホホジロザメはワシントン条約の『付属書2』にも登録された。これからもこの種を国際的に保護しようという運動は、続いていくと思われる。

フィクション世界でのホホジロザメ
 映画『ジョーズ』に登場する人喰いザメはホホジロザメであるという設定だが、「体長8メートル、体重3000キログラム」という、正式には確認されていない常識外の大きさである。さらに、シリーズ後続作の『ジョーズ3』(1983年公開)と『ジョーズ'87 復讐篇』(1987年)に登場するホホジロザメは「体長10メートル」にまでスケールアップしている。
 人喰いザメの代表というイメージから、良くも悪くも人々の注目を集めるサメであり、ジャンルを問わず数々の作品でホホジロザメや、それをモチーフとしたキャラクターが登場している。


アオザメ(青鮫) Isurus oxyrinchus
ネズミザメ科アオザメ属
英名 …… Shortfin Mako Shark (ショートフィン・マコ・シャーク)
体長 …… 1~4メートル

体型
 サメのなかでも特に速く泳ぐために進化した種であり、がっしりして引きしまった体型でジェット戦闘機のような機能美をそなえている。

 最大で全長4メートル、体重505.8キログラム。平均的な成魚は全長約3.2メートル、体重60~135キログラム程度である。体型はマグロ類などの高速遊泳魚と同じ流線型。背側の体色は鮮やかな光沢のあるメタリックブルー。腹側は白色で、その境界は明瞭である。頭部は扁平で尖る。特徴的に大きく無機質な目をしている。胸ビレは比較的短く、第2背ビレと尻ビレはかなり小さい。尾ビレはほぼ三日月形。尾ビレの付け根には見事な隆起線が走っている。
 上下のアゴの歯は同形。歯の形状は細く鋭いキバ状で、魚類を捕らえやすいように内側に向かってやや湾曲する。縁は鋭く滑らかで、鋸歯縁状ではない。

体色
 メタリックな輝きを放つが、これは水中の色に溶け込んで捕食する相手に気づかれないためのカムフラージュである。背中はあざやかな青で、腹は白い。

分布
 世界中の外洋に分布しているが、亜熱帯もしくは温帯の暖海域をこのみ、水温16℃以下のところではめったに現れない。外洋に生息するため、船乗り以外の人間と接触する機会は多くない。

生態
 アオザメは最も速く泳ぐ魚のひとつであり、一説によれば最高時速70キロメートルで泳ぐこともできるという、非常に活動的な種。しかし、実際にはホホジロザメとさほど変わらない時速40キロメートルほどが限界なのではないかという慎重な意見もある。かなりのスピードで海面から飛び出すことができ、最大で6メートルの高さまでジャンプできる。

 ホホジロザメと同じように、毛細静脈と毛細動脈が緻密に入り組んだ熱交換システム「奇網」を筋肉の周囲に備え 、体温を周囲の海水温よりも高く保ち、冷たい海域でも筋肉の運動性を維持できる(類似の組織は高速遊泳を行う硬骨魚のマグロ類やカジキ類などにも見られる)。身体は流線型で水の抵抗を受けにくい。尾ビレは長時間かつ高速の遊泳に適した三日月形である。

 ネズミザメ目に多く見られる卵胎生で、胎児は子宮内で孵化したのちに他の未受精卵を食べて育つ。3年に1回繁殖を行い、妊娠期間は15~18ヶ月。一度に産む幼魚数は4~25尾で、産まれたときの大きさは60~70センチメートル。成熟年齢はオス7~9歳、メス18~21歳。寿命はおよそ30年前後と見積もられている。

 英語名のマコシャーク( Mako shark )の「マコ」の語源は、ニュージーランドの先住民族のマオリ語に由来するといわれる。マコとは「人食い」の意味もあるらしく、厳密には「マコ・マコ」が正しいそうである。
 長い胸ビレをもつ同属のバケアオザメを「 Longfin mako 」と呼ぶことから、アオザメを「 Shortfin mako 」として区別している。

 個体数の減少が心配されているものの、詳しいことは分かっていない。

水産
 世界的には重要な漁業対象種であり、マグロやカジキの延縄(はえなわ)漁や流し網漁などでよくかかるサメである。また、引きが強く針にかかると空中にジャンプするので、スポーツ・フィッシングの対象種にもなっている。
 日本での1992~2009年の水揚量は800~1500トンで、サメ類全体に占める割合は4~8%。肉はソテーやみそ漬けになる他、日本ではヨシキリザメとともに、高級はんぺんの材料とされる。ヒレはフカヒレに加工され、アオザメのフカヒレは通常出回っているヨシキリザメの物よりも高級とされて高値で取引されている。脊椎骨やアゴ骨、皮、肝油なども利用される。
 地中海周辺地域ではステーキなどにして食べられ、美味とされている。

危険性
 気性が荒く、人間に対しては危険な種とされているが、アオザメが起こした事故はあまり報告されていない。生息域が外洋であることから、人と接触することがあまりないためであるとされる。

アオザメを扱ったフィクション作品
 アメリカの小説家アーネスト=ヘミングウェイの代表作『老人と海』(1952年)に、アオザメの群れが登場する。
 1999年7月公開のサメパニック映画『ディープ・ブルー』に登場する遺伝子改造ザメは本種である。しかし、映画では「体長8メートル」と、実物よりも巨大に設定されている。


バケアオザメ(化青鮫) Isurus paucus
ネズミザメ科アオザメ属
英名 …… Longfin Mako Shark (ロングフィン・マコ・シャーク)
体長 …… 2~4メートル

体型
 外見はアオザメに酷似しているが、英名が示す通り、アオザメよりもずっと大きな胸ビレを持っているのが特徴である。
 捕獲されることが稀で、ほとんど調査されていないサメであり、詳しい生態はまだ分かっていない。学名の「 paucus 」はラテン語で「わずかな」といった意味で、バケアオザメの出現率が低いことに由来している。

 最大で全長4.2メートルに達し、成熟サイズはオスで全長2.0~2.3メートル、メスで全長2.5メートル。平均的には全長2.2メートル、体重70キログラム程度である。
 身体は紡錘型で、頭部は尖る。目はアオザメに比べてやや大きい。第2背ビレと尻ビレは小さく、尾の付け根の隆起線はよく発達する。尾ビレはほぼ三日月型。アオザメは胸ビレの長さは頭長よりも短いのに対し、バケアオザメは胸ビレの長さが頭長と同じかそれよりも長い。また胸ビレの先端は尖らず、丸みを帯びている。この形状から、バケアオザメはアオザメに比べて活発でなく遊泳速度も遅いと考えられている。

 上下のアゴの歯は同形。歯の形状は細長い三角形で縁は滑らかであり、前歯は特に強大である。これらの形状は獲物の肉を切り裂くのに適している。食性に関してはあまり分かっていないが、外洋性の硬骨魚類や頭足類(イカ、タコ)などを捕食すると考えられている。

 他のネズミザメ科やオナガザメ科のサメにも見られる、毛細血管の熱交換システムである「奇網」を持つ。これによって体温を周囲の海水よりも高く保つことができる。

体色
 アオザメに比べて背中の色は黒に近く、青色から紺色で腹部は白い。
 アオザメでは口の周囲は腹側と同じ白色であるが、バケアオザメでは背側と同じ暗い青色をしているという違いがある。

分布
 世界中の外洋の熱帯から温帯にかけた海域の、表層よりもやや深い水深110~220メートルに広く分布していると推測されるが、生息圏はほんの一部分しか知られておらず、生息が確認されたのは、北と西の大西洋、バハマ、キューバ、マダガスカル島周辺、太平洋においてはハワイ諸島周辺のみとなっている。

生態
 他のネズミザメ科のサメと同様に卵胎生で、子宮内の幼体は、同じ胎内の卵巣から排卵される栄養分を豊富に含んだ未受精卵を食べて育ち、90~120センチメートルに成長してから産まれる。メスは2つある子宮にそれぞれ1尾の胎児を有する。

人との関わり
 バケアオザメによる人身事故は報告されていない。これは、外洋を生息域としており、かつ稀な種であることから、人との接触自体がほとんどないためであると考えられる。しかし、バケアオザメの大きさと歯の形状から判断すれば、おそらく人間にとっては充分に危険な種類のサメである。

 バケアオザメは主に、マグロ類やカジキ類などを対象にした延縄漁で混獲される。ヒレはフカヒレとして利用価値が高く、フィニング(捕獲したサメのヒレだけを切り取って海中に投棄する行為。ヒレを切り取られたサメは遊泳できなくなり死亡する)が行われていることが、資源保護や動物愛護の観点から問題になっている。
 肉も食用になるが 、アオザメよりも水分が多く、味も食感もかなり落ちるとされる。


ネズミザメ(鼠鮫) Lamna ditropis
ネズミザメ科ネズミザメ属
別名 …… モウカザメ、カドザメ、サケザメ、ラクダザメ、ゴウシカ
英名 …… Salmon shark (サーモン・シャーク)
体長 …… 1.6~3.0メートル

学名
 「 Lamna 」はラテン語で「凶暴な魚」。「 ditropis 」は、「2本の隆起線」という意味で、本種の尾ビレと尾の付け根にある2本の隆起線に由来している。

和名
 標準的な和名はネズミザメであるが、いくつかの別名がある。
 モウカザメ(毛鹿鮫)は東北地方でよく使われる名称で、「マフカザメ(真鱶鮫)」が訛ったものだといわれる。魚名に「マ(真)」がつくものは「代表種」の意味合いを持っており、東北地方で捕獲できる代表的なフカ(サメ)であることからマフカの名が付けられたのであろう。現在も、東北はネズミザメの水揚量が多い。
 カドザメ(カトザメ、カトウザメ)の由来にはいくつかの説がある。地方で「カド」と呼ばれるニシンやカツオを捕食するからという説と、これとは別に、ネズミザメ漁を日本で初めて行った江戸時代の漁師・加藤音吉の名から来ているという説もある。一部の地方では「カドザメ」がアオザメを表す場合もある。
 サケザメ(鮭鮫)は、英語でも「 Salmon shark 」と呼ばれるように、サケを捕食することに由来する。漁業ではサケを食害するサメということで、漁師には歓迎されない。
 他に、「ラクダザメ」や「ゴウシカ」という別名もある。

体型
 最大で全長3メートル、体重175キログラム。ホホジロザメ、アオザメなどのネズミザメ科のサメの特徴を全て備えている大型の捕食者である。がっしりして引き締まった体、尖った頭部を持ち、第1背ビレが大きい。尾ビレはほぼ三日月型をしている。
 身体は紡錘型で水の抵抗を受けにくい。尾の付け根に明瞭な隆起線があり、さらに尾ビレの中央よりやや下にも隆起線が見られる。外見は小型のホホジロザメのようにも見えるが、隆起線の数が2本であることで見分けられる。

体色
 背中は青みを帯びた灰色もしくは黒色をしており、腹は白く、灰色の斑点が散らばっている。背ビレの先端は特に黒っぽい。ニシネズミザメに似ているが、ニシネズミザメは背ビレの先端がはっきりと白くなっている。

分布
 北太平洋の亜寒帯海域を中心に分布し、ベーリング海やアラスカ湾などを主な生息地とする。日本近海では日本海やオホーツク海に現れる。寒冷な環境を好むが、回遊によってかなり南の海域まで進出することがあり、ハワイ沖にまで南下した例が報告されている。他に、カリフォルニア州沿岸でも生息が確認されており、さらに南のメキシコ沿岸まで進出している可能性もある。
 沿岸域・外洋域の両方に出現する。普段は海表面近くを遊泳するが、水深700メートル程度まで潜ることもある。また、亜熱帯海域では温度躍層(サーモクライン 水温が急激に変化する層)を避けて、水深300~500メートル程度を遊泳することが多いようである。

生態
 ほとんどの種が変温動物である魚類の中にあって、ネズミザメは外部の温度にかかわらず体温をある程度一定に保つことができる「内温性」を備えている。内温性魚類には、同じネズミザメ科のアオザメやホホジロザメ、硬骨魚ではマグロやカツオ、カジキといった種類がある。これらはみな高速遊泳を行うという点で共通している。
 ネズミザメの赤筋(遅筋、血合い肉)の分布位置は他の魚と異なり、体の中央深部、脊椎骨の周囲に集中している。持続的遊泳に使われる赤筋を外界から遠ざけることで代謝熱を保持し、周囲にある白筋(速筋)へ効率良く伝導させる。さらに筋肉には奇網が発達し、保温能力を高めている。奇網では体内からの温かい血液と体表からの冷たい血液が対向流交換系をなし、熱の伝導が行われている。
 この内温性により、ネズミザメは大抵のサメ類が寄り付かない亜寒帯海域という地理的なニッチを獲得し、最高次捕食者の地位を占めている。
 サケを常食としており、そのため英名ではサーモン・シャークと呼ばれる。季節回遊を行うことでも知られている。

繁殖
 太平洋北東部の個体の方が、北西部の個体よりも早く成熟する傾向がある。太平洋北西部ではオスは全長約1.8~1.9メートル、メスは2.0~2.2メートルで成熟し、成熟年齢はオス5歳、メス8~10歳である。太平洋北東部ではオスが1.6メートルの3~5歳、メスが2.0メートルの6~9歳で成熟する。
 胎卵生で、胎児と母体を直接つなぐ胎盤のような器官は持たない。子宮の中で卵黄の栄養を使ってある程度の大きさになった胎児は、卵巣から排卵される栄養の豊富な未受精卵を食べて育つ。これがネズミザメ目全体に見られる「卵食型」である。妊娠期間は約9ヶ月、1回で産む個体数は2~6尾と少なく、幼体は84~96センチメートルの体長で産まれてくる。

人との関わり
 寒い海域に生息するので、人が襲われた記録はないものの、大型で獰猛なサメに入るので、危険な種である。
 サケ類を捕食するので、水産上の重要害魚として駆除されることもあったが、最近の報告では、サケ漁に影響を与えるほどサケを食べてはいないことが明らかになっている。
 一方で、ネズミザメは食用魚としての利用のために漁獲されている。漁には延縄や流し網が用いられる。日本国内においてはそのほとんどが気仙沼港に水揚げされ、気仙沼での水揚げ量はヨシキリザメに次いで多い。サメ類の中では比較的アンモニア臭が少なく食用向きとされ、肉が切り身や魚肉練り製品の原料として消費されるほか、心臓は「モウカの星」とよばれ刺身や酢味噌和えにされる。またフカヒレも採取される。
 栃木県では切り身を「もろ」と称して販売することが一般的で、スーパーマーケットや鮮魚店の店頭にもよく並ぶ。比較的安価で調理しやすい食材として人気が高く、主に、煮付けやフライなどにして食べる。内陸の栃木県で特に消費されるのは、産地の気仙沼周辺から比較的近く、かつ、時間が経つとアンモニアを発生させるために腐りにくい鮮魚として、鮮魚輸送技術の未発達な時代から運んで売られていたのが根付いたという説がある。


ニシネズミザメ(西鼠鮫) Lamna nasus
ネズミザメ科ネズミザメ属
英名 …… Porbeagle(ポービーグル)
体長 …… 1.5~3.6メートル

名称
 英名「 Porbeagle」の由来はさまざまな説があり、「 Porpoise(イルカに似た流線形の体)」と「 Beagle(ビーグル犬のように狩りをする姿)」の複合語などと考えられている。

形態
 最大で全長3.6メートル、体重230キログラム。成熟サイズはオスが全長1.5~2.0メートル、メスが全長2.0~2.5メートル。身体は紡錘型。尾の付け根の隆起線は顕著で、尾ビレにもう1本の隆起線がある。尾ビレは三日月型。背側の体色は濃青色から灰色、腹側は白色である。第1背ビレは大きい。また、第1背ビレの内側には白色の斑点があり、同属のネズミザメと見分けられる。上下のアゴの歯はほぼ同形。

分布
 北半球では大西洋北部と地中海、南半球では南緯30~60度帯で広くみられる。季節回遊を行うが、大西洋の東部と西部の個体群には交流がない。また北半球と南半球の個体群間でも移動はない。外洋に多いが、沿岸域にも現れる。水深700メートル以下に生息している。
 北太平洋に分布する同属のネズミザメと非常に近縁であるが、両者の決定的な違いは分布域であり、ネズミザメは主に太平洋の北部にしか分布しない。

生態
 餌を選り好みしない機会選択的な捕食者である。餌生物としては硬骨魚類が主であり、イカなどの頭足類がそれに続く。
 卵食型の胎卵生で、胎児は未受精卵を食べて成長する。妊娠期間は8~9ヶ月で、1回で産む個体数は1~6尾。しかし、通常は1つの子宮に2尾が育つため4尾になる。産まれてくる幼体のサイズは68~80センチメートル。寿命は最大約30年と見積もられている。

人との関わり
 国や地域によって漁獲対象種あるいは混獲種になる。またスポーツ・フィッシングの対象になる。過剰漁獲により減少していることが、近年問題になっている。
 人を襲う危険性があり、ニシネズミザメによるダイバーへの攻撃例もわずかに報告されている。ただし、人に対して常に攻撃的とは限らず、警戒して去っていったり興味を示すだけのこともある。
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