長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

分身宇宙人ガッツ星人 への遠い道のり せまる円盤……迎え撃て、パラボラ兵器!

2011年02月08日 22時13分25秒 | 特撮あたり
《前回までのあらすじ》
 世界が第2次世界大戦の傷をいやしつつあった1950年代。実に半世紀ぶりに地球人の前に姿をあらわすことになった宇宙人は、人類に核戦争の危険性をうったえる友好的な人々だった。
 しかし、彼らが模索した地球人との共存の道は、間もなく出現した無数の「侵略者」たちによって踏みにじられることになる。
 はたして地球人は、無数のあらたなる敵を相手にして母なる星を守ることができるのだろうか!? 地球はこの未曽有の危機を前にしてひとつになることができるのか!?
 きたきた~! ノッてきたぞ~。


3、世界VSお皿数百枚
1956年7月 『世紀の謎 空飛ぶ円盤地球を襲撃す』(レイ=ハリーハウゼン 特殊技術)

 「1956年」という年の幕開けは、前回に紹介した「パイラ星人」事件で始まりました。
 もともとはアジアの果ての小国で発生した「ヒトデのお化け騒動」程度だったこの一件も、最終的にはすわ天体衝突ドッカ~ンかという危機を回避する地球規模の奇跡にまでみごと発展したのです。
 いや~、こいつは年明けから縁起がいいや。いってぇ今年はどんな年になるんだねぇ?と、世界各国の人々が幸せに満ちた会話をしていたことは想像にかたくありません。
 きっとこれからは、地球人と宇宙人とが手に手を取りあって平和に繁栄していく時代が到来するだろう。まさに、地球全体が希望にあふれる春を送ったわけだったのですが……

 ど~も、様子がおかしいんだなぁ。
 世界各国の上空で、まるで「銀色のお皿」のような物体がふよふよと飛び回るのを目撃したという報告が頻繁になされるようになったのです。世界各国でなんですから、今までのケースとはちょっと規模がちがいます。
 そしてそのころ、世界初の人工衛星打ち上げ計画を進めていたアメリカは、ロケット実験が次々と原因不明の事故に見まわれる事態におちいっていました。まさか、あの「空飛ぶ円盤」が関係しているだろうのか……?

 そして春が終わり、夏。
 世界は驚愕と悲鳴の阿鼻叫喚地獄におちてしまった!!

 なんと、さんざんうわさされていた例のヤツ、直径30メートルの高速で回転する銀色の「空飛ぶ円盤」が突如としてアメリカのロケット発射基地を攻撃し、宇宙開発基地を一瞬にして占拠するという大事件が発生してしまったのです。
 円盤はまさに「Flying Saucer」。お皿としかいいようのないシンプルな形状で、静かに空をすべるように飛ぶさまがかなりシュールで不気味です。皿としてはちょっと深さのある、冷やし中華用ぐらいの形状でしょうか。
 空飛ぶ円盤の持つ武器は、下部からニュッと出るパラボラアンテナから発する強力な熱光線! その攻撃力は、一撃で軍艦を爆破、撃沈させてしまうほどだ。しかも、宇宙服を着ているらしい地球人体型の宇宙人も、地上に降り立って両腕から同じ光線を発射し、応戦する軍人さんたちをジュワッと蒸発させてしまうという恐ろしさ。て、てぇへんだ、こりゃもう今度こそ、半世紀ぶりの「侵略宇宙人」のおでましよ!

 しかし、今回の円盤に関して特筆すべきなのは、その攻撃力よりもむしろ防御力の方なんですね。
 機関銃、艦砲射撃、対空砲、対空ミサイル……世界の軍隊のありとあらゆる兵器が、なーんにも通用しない! なんなんだ、あの皿は。いっぱいあるのに1枚も割れやしねぇ。
 かといって、「核兵器」に踏み切るには敵が低空飛行すぎるし。今回の円盤は、火星人の戦闘ロボットとは比較にならない強敵だ!
 ということは、あの一連の世界各国での円盤目撃談は、この日のための偵察活動だったのか。無念です。

 最初のロケット基地攻撃はどう見ても奇襲としか思えない展開だったのですが、円盤側はいちおう、「人類に宇宙進出について話したいことがあると、前々から連絡はしていたゾ。」と弁明しています。でも、肝心のメッセージの発声スピードが速すぎてこっちが解読できなかったんだからしょうがない。
 円盤を多数動員して地球に襲来した宇宙人は、地球側へのメッセンジャーとして選んだ宇宙科学者・マーヴィン博士(新婚)に、「地球が核兵器をもって宇宙に進出することを警戒したから忠告しに来たのよ。」と、月並みな理由をならべたててはいたのですが、初戦で当時の軍事力の最先端をいっていたアメリカ軍基地を制圧できたことに自信をつけてしまったのか、なしくずしに方針を転換して、かなり強硬な「地球人の全面降伏」を要求してきます。う~ん、ひっじょーに、キビシーっ!

 ところが、マーヴィン博士とアメリカ軍は屈しなかった。
 なんとかして無敵の円盤の秘密を解明しようとした博士は、宇宙人が「特殊な磁気フィールドを利用して円盤を操縦している。」と口をすべらせていたことを思い出し、円盤が帯びている電磁波をかくらんする特殊電波を発信するパラボラアンテナ装置を完成させたのです。パラボラにはパラボラ!
 はたして降伏期限が切れた運命のXデイ。
 ワシントンDCで予定通り破壊活動を開始した無数の円盤たち。しかし、博士の装置をのせた軍用ジープから発せられた妨害電波を受けた円盤は効果テキメン! ことごとくスピードを失速させ、地上に落下して爆発していきました。
 博士の読みはあたった! 要するに空飛ぶ円盤は、飛行力も防御力もすべてを強力な磁気フィールドにたよっている兵器だったのです。磁気によるバリアのなくなった円盤は、かなりもろかった。形勢は一気に逆転しました。死なばもろともとばかりに、アメリカ国会議事堂や高さ約180メートルのワシントンモニュメントなどを派手に巻きぞえに破壊してドンガラガッシャンと散ってゆく円盤。なんか、円盤が破壊する予定だった物は結局全部破壊されちゃったんですけど……ま、いいか! 勝ったんだし。
 ともあれ、マーヴィン博士の電波装置によって首都ワシントンDCの攻防戦は人類の逆転勝利に終わり、その後は世界も順次、電波装置を量産化して空飛ぶ円盤の撃退に成功していったようです。
 人類の勝利だ! マーヴィン博士は心晴れやかに、すったもんだのために延び延びになっていた自分の新婚旅行へと出かけるのでした。アメリカねぇ~。奥さんのお父様、今回の戦闘でけっこう無惨に死んでるんだけど……

 今回の世界規模での宇宙人襲来は、パターンとしてはあの火星人のロンドン襲来とほぼ同じものだったのですが、「地球上での戦争にもちいる通常兵器のいっさい通用しない兵器」が登場したという点で、人類にとっては非常に苦しい戦いになりました。マーヴィン博士が宇宙人の失言を聞いていなかったら、1956年にそうそうに地球は宇宙人のものになっていたのかもしれない……ちなみに、通常兵器の通用しない「怪獣」のはしりは1954年の『ゴジラ』でしょうね。
 しかし、ちょっとしたところで共通点もあり、今回の宇宙人も、生身では地球では生活できないようなかなりの虚弱体質でした。
 宇宙人は、地球人の前に姿を現すときには常につるっぺたな宇宙服を着ていたのですが、磁気フィールドの防御がなければライフル射撃でじゅうぶんに仕留めることのできるくらいの強度で、中身の宇宙人はしわくちゃの干物のようでした。
 どうやら今回も、彼らは科学力の点では圧倒的に人類を優越してはいたものの、体力の面ではかなり劣っていたようです。

 いろいろと見所の多い事件だったのですが、何よりも特筆すべきなのは、史上初の「対宇宙戦用パラボナ兵器」が開発されたこと! きたきた~。
 とは言っても、今回にマーヴィン博士が完成させたのは、ジープの荷台に乗っけられるような直径1メートルのアンテナ装置なんですが、この第一歩は忘れてはいけません。
 まさかこの一歩が、早くも翌1957年にあの超兵器につながっていくとは……いや、パラボラつながりってだけで、あとは全然別物なんですけどね。

 余談ですが、この「空飛ぶ円盤地球襲撃」事件へのかぎりないリスペクトをこめて1996年に公開されたのが(日本公開は1997年)、あのティム=バートン監督の『マーズ・アタック!』です。
 私、『マーズ・アタック!』大っ好きなんですよねぇ~。バートン監督の作品では2番目に好きです。1番好きなのは……ほら、私、クラシックホラー映画に目がないから。
 CG全盛の1990年代後期にあえてああいったチープさかおる空飛ぶ円盤軍団を描いたのは、まさにこの事件への愛があったからなんですね。

 最後にやっぱりぶっちゃけちゃうのですが、この作品でのキモとなる円盤などの特殊効果撮影を担当したのが、アメリカの「特撮の父」と呼ばれるレイ=ハリーハウゼンです。おお、神よ!! 特撮好きならば、レイといえば断然「ハリーハウゼン」です。「綾波」は2番目!
 ほんとのことを言うと、この『世紀の謎……』は、ハリーハウゼンのキャリアの中ではいまひとつ目立っていません。でもその理由が「駄作だから」とかいう小さなことでないことは、この作品を観た人ならば誰でも認めるでしょう。他のハリーハウゼン作品がアドレナリン出まくりの大傑作ばっかだからなんすよ!
 『アルゴ探検隊の大冒険』、『シンドバット』シリーズ、『水爆と深海の怪物』、『原子怪獣現る』(『ゴジラ』の元ネタ)……
 ハリーハウゼン特撮の魅力は、なんといっても「ストップモーション撮影」。
 最近はNHKの「どーもくん」シリーズくらいでしか見られなくなった、人形をちょっと動かしてカメラを止めちょっと動かしてカメラを止めを繰り返し、それをつなげて人形があたかも自分で動いているように見せる「パラパラマンガ」の発展系の撮影技法、それが「ストップモーション」です。
 この技法のおもしろさは、まずはその動きを見ていただかなくては始まりません。カクカクとした独特のリズム、観る者の常識をなんなく超越する予想不能のアクション! 着ぐるみ形式だとどうしても「中の人」の体格を考えたデザインやアクションに制約されてしまいますからね。
 その点、「不気味にスーッと飛んできてフワッと着陸するだけ」という抑えた演技をしいられてしまった円盤はインパクトの点でいかにも不利でした。だって、他のハリーハウゼン作品での登場モンスターたちは「酔っ払ってんのか?」「プライベートでそうとういいことがあったんだろうなぁ。」と思わず想像してしまうほどのハイテンション&サービス満点の動きを見せてくれるんですから。セーブ演技はいっさいなし! カーリー神の剣さばきなんかもう芸術です。ぜひともドニー=イェンと闘ってほしいねぇ。
 数ある名作の中でもいちばん私が好きなのは、なんといっても『タイタンの戦い』です。もう、主人公の英雄ペルセウスと魔女メデューサの決戦は最高よ。メデューサこわすぎ!! 子どものころ、その恐ろしさに画面を正視することのできない私だったのですが、それでもおもしろすぎてストーリーの展開から目が離せない! 人生初のジレンマにさいなまれた当時小学校低学年の私は、『タイタンの戦い』の流れているTV画面がうつりこんでいる戸棚のガラス窓を観てペルセウスの勝利を見届けました。見届けてねぇ! メデューサに対して、ペルセウスも私も背中を向けているという前代未聞の視聴体勢。これ、恐い部分がいい感じにボヤ~っとしてくれていいんだよなぁ。この方式を私は、『あなたの知らない世界』の鑑賞にも導入していました。新倉イワオ~!


3.5、日本VSお皿何枚か
1956年11月 『空飛ぶ円盤恐怖の襲撃』(関沢新一 監督)

 アメリカで『世紀の謎……』のような激闘が展開されていたころ、他の主要国ではいったいどんな戦闘が繰り広げられていたのか?
 まだまだ当時の資料映像が満足に発見されていないため、しかと説明できないのがもどかしいのですが、どうやら日本にも、例の円盤軍団は襲来していたらしい!
 それを記録した映画こそが『空飛ぶ円盤恐怖の襲撃』、の、はずなのですが……
 残念ながらこの映画は、製作した独立系映画会社も配給元の会社も倒産してしまったためにフィルムがながらく紛失してしまっている状態にあったのです。
 そのため、ソフト商品化はもちろんのこと、TV放映もされない伝説の作品と化していたのですが……
 どうやら、最近になってフィルムが発見されたのだとかなんとか。やったね!
 高島忠夫や天知茂が出演しているそうなので、できれば1回は観てみたい作品なのですがねぇ。

 とにかく観たことがないのでなんとも言えないのですが、アメリカとほぼ同じ経緯でやって来た同じような円盤軍団に対して日本側がとった秘策は、日本の宇宙科学の権威・保科博士の設計図をもとに対円盤有人飛行ロケット・R1号を開発すること! R1号の必殺技は、円盤を破壊できるただひとつの兵器「XQ陽子破壊砲」だ~。うん、うさんくさい!!
 しかし、日本ではこの兵器を使って円盤を見事に撃退できたわけですし、それが事実ならばR1号は、1963年の『海底軍艦』やのちの『宇宙戦艦ヤマト』につながる史上初の「有人型超兵器」ということになるんですから、これは見逃せません。

 こっちもぶっちゃけちゃうんですが、監督の関沢さん自身は生前にこの映画をだいぶ低く評価しておられていたようで、「観なくていいヨ。」とおっしゃられていたとか。
 あと、のちに昭和『ゴジラ』シリーズで、多くの名作の脚本を手がけることになる関沢さんの名誉のために付け加えておきますが、『空飛ぶ円盤恐怖の襲撃』は確かに、設定などの点で数ヶ月前に公開されたアメリカの『世紀の謎……』に酷似しています。でも、日本版の製作はアメリカ版の公開前にすでに開始されていたため、監督・脚本を担当した関沢さんがアメリカ版を「パクッた」という可能性は低いようです。
 まぁ、それだけ空飛ぶ円盤が流行ってたってことなのね、1950年代は!


《次回予告》
 空飛ぶ円盤はからくもしりぞけたものの、次に宇宙からやって来たのはなんと、身長50メートルの巨大侵略ロボット!
 どうする地球!? さぁ今こそ、人類がひとつになって闘うときだ。
 発足せよ、地球防衛軍!! ドォン、ミスィッ。

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