長岡京エイリアン

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真の侵略者、黙して語らず ~宇宙忍者バルタン星人の歴史メモ~

2022年06月04日 14時28分52秒 | 特撮あたり
バルタン星人とは……

 バルタン星人は、円谷プロダクションが日本で制作した特撮テレビ番組シリーズ「ウルトラシリーズ」に登場する架空の宇宙人。別名は宇宙忍者。『ウルトラマン』第2話『侵略者を撃て』(1966年7月放送)にて初登場。
 セミに似た顔、ザリガニのような大きいハサミ状の両手を持ち、高度な知能を備えた直立二足歩行の異星人である。両手は厚さ20センチメートルの鉄板を切断できるという。マッハ5での飛行能力のほか、瞬間移動能力も有しており、分身するかのように移動できる。眼は5,000個の眼細胞から構成される複眼となっており、1万メートル先の小さな物体も視認できる。その反面、歴代のどの個体も接近戦が苦手な描写が存在する。一般に「フォッフォッフォッフォッフォッ」と表記される独特の音声(1963年製作の東宝映画『マタンゴ』に登場するマタンゴの声を流用)を発するが、『ウルトラマン』第2話の監督・脚本を担当した飯島敏宏によれば、その際に腕を上げて手を揺らすのは、スーツアクターが「腕を下げていると爪(ハサミのこと)が重くて大変だったから、休むために生まれたシーン。腕を上にあげて立てていると楽だった。」そうである。
 『ウルトラマン』第16話への再登場以降、数多くのウルトラシリーズに登場し、ウルトラ戦士の最大のライバルとして幅広い層から認知され、人気を博している。シリーズ本編以外にもマンガやゲーム、ライブステージなど映像以外の作品にもたびたび登場するうえ、バラエティ番組へのゲスト出演など、ウルトラシリーズ以外のメディアでも活躍している。故郷の星を失った宇宙の放浪者という設定であり、後続シリーズ『ウルトラマンコスモス』や『ウルトラマンマックス』では、人類に友好的に接する個体(チャイルドやタイニーなど)も登場している。
 飯島は、バルタン星人は今よりも科学や経済が発達した人類の未来の姿を映した反面教師と位置づけており、悪役として描かれた後発のバルタン星人(4~9代目を指すか)については認めていないと発言している。

 バルタン星人の命名は飯島による。名称はバルカン半島に由来するという説と、設定当時の人気歌手シルヴィ=ヴァルタンから取ったという説があるが、飯島の著作によれば正しいのは前者であり、「母星が兵器開発競争によって滅んだため、移住先を求めて地球にやってきた」という設定を、ヨーロッパの火薬庫といわれて紛争の絶えなかったバルカン半島に重ねているとされる。しかし、宣伝部の提案でヴァルタンから名付けたことに決めたので、両説とも間違いではないと述べている。

 デザインは成田亨、着ぐるみ造型は佐藤保が担当した(初代バルタン星人の造形担当は佐々木明とされていたが、佐々木自身がこれを否定している)。撮影に使用された着ぐるみは、『ウルトラQ』第16話『ガラモンの逆襲』(1966年4月放送)に登場した宇宙怪人セミ人間を改造したもの(飯島は、セミ人間の頭部とケムール人のスーツの改造と証言している)。セミ人間は回転しながら発光する両眼が印象的だったが、バルタン星人では発光する両眼を回転させ、さらに左右に動かせるよう機電担当の倉方茂雄が改良を施した。
 しかし、造形を担当した佐藤保は2013年のインタビューで「セミ人間を改造した記憶はない」と述べている。
 「セミ人間に角とハサミをつけてくれ」という飯島の注文で、成田亨によってデザイン画が描かれた。鎧兜の意匠をセミ人間に追加し、有機的にハサミを抽象化している。額にある Vの字状のものは、デザイン画ではもっと細く鋭く尖った形状であった。
 『侵略者を撃て』で特技監督を務めた的場徹は、「バルタン星人をセミ人間に似せてつくったのも私のアイディアです。あのセミとハサミをくっつけるというのは自分でもなかなかよかったと思っています」と述べている。
 飯島はデザインコンセプトについて、当時は宇宙に生物がいるかどうか不明であったためにとりあえず昆虫型とし、ハサミは当時、川で大量に繁殖していたアメリカザリガニからイメージしたものとしている。

宇宙忍者バルタン星人初代
 身長ミクロ~50m、体重0~1万5千t。
 『ウルトラマン』第2話『侵略者を撃て』(1966年7月放送)に登場。
 故郷のバルタン星を狂った科学者が行った核実験により失い、たまたま宇宙旅行中だったことから難を逃れた20億3千万人の同胞と共に、宇宙船で放浪していた異星人。「宇宙忍者」という異名どおり、多彩かつ特異な能力を持っている種族である。火星にある架空の物質「スペシウム」を弱点としている。宇宙船内部ではほとんどの乗員がミクロ化されて地球のバクテリアサイズで眠っており、科特隊と接触することになる1名のみが、人間大のサイズで活動している。地球には宇宙船の修理と欠乏した予備パーツのダイオードの調達のために偶然立ち寄っただけであるが、自分たちの居住できる環境と判明したため、移住を強行しようとする。
 武器は両手のハサミから出す赤色凍結光線と白色破壊光弾。足の内部には、物体を腐らせる毒液が入った袋が存在する(設定のみ)。また、防御能力として数多の分身を作ることが可能。その他、地球人に乗り移り、その脳髄を借りて会話するという能力も持つ。
 手始めに科学センターに侵入し、完全に生物の活動を停止させる赤色凍結光線で職員を仮死状態にして占拠する。この時点では地球の言語を理解できなかったため、同じく仮死状態にしたアラシの身体に乗り移ってイデやハヤタと会話し、自分たちの事情を説明した後に地球への移住について交渉した。前述のように最初の攻撃では人間を殺害しておらず、ハヤタから「地球の法律や文化を守るなら移住も不可能ではない」と言われた際には、即座に丁寧語で話すなど、当初は地球人を尊重し共存する姿勢も見せていたが、バルタン星人の人口の多さを聞いたイデが難色を示した上に、スペシウムが存在する火星への移住をハヤタから提案されたことで交渉を一方的に打ち切り、移住の強行を宣言。正体を現して巨大化し、侵略破壊活動に移行した。防衛軍の核ミサイル「はげたか」により倒れるも、すぐにセミが脱皮するかのように新しい肉体を得て復活する。その後、石油コンビナートを破壊しながらウルトラマンと空中戦を繰り広げる。
 戦闘中に左のハサミをウルトラマンにへし折られる展開は、撮影現場で本当にハサミが破損したため、割れるシーンをフォローとして追加撮影したためである。造型を担当した佐藤保は、当初のハサミはカポックの削り出しを FRPでコーティングしたものであったが、以後は FRPのみで造り直したと証言している。
 本エピソードでは、深夜に無人のビルの闇に潜む怪物という怪奇色の強い扱いだった(前作『ウルトラQ』の影響が強い)。また、「生命」の意味を理解できないなど人類とは根本的に異質な存在であることが徐々に明かされ、クライマックスでは「街中で撃たれた核ミサイル2発を受けてもたやすく復活する」といった、地球人の力ではどうにもできない存在であることが明示される。
 のちに本エピソードなどが再編集された映画『ウルトラマン 怪獣大決戦』(1979年)では、ウルトラマンとの空中戦の途中で、東京都新宿区の明治神宮外苑・聖徳記念絵画館前に降り立って地上戦を繰り広げる新撮シーンが追加されているが、初代の着ぐるみはこの時点で現存していなかったため、形状の異なるスーツが分身体を含めて2体、新規に造型されている。これは後に『ウルトラマン80』の5代目や6代目に改造された。また、スペシャルドラマ『ウルトラセブン 太陽エネルギー作戦』(1994年3月放送)では、ウルトラ警備隊の過去のデータファイルとしてこの新撮シーンのバルタン星人がモニターに写るシーンがある。
 幻冬舎の書籍『21世紀ウルトラマン宣言』では、セミに近い昆虫から進化した知的生命体とされている。「バルタンの木」という植物を食べて生活していたが、肉食を覚えると残虐で好戦的な種族に変化し、腕もより確実に獲物を狩れるよう、現在のハサミ状へ進化した。また、アリやハチのようにフェロモンを用いる社会となっており、個体の感情がないはずなのに持つことになるウルトラマンへの復讐心も、そのためだとされている。
 円盤は『ウルトラQ』のセミ人間の宇宙船を流用したもの。その後、悪質宇宙人メフィラス星人の円盤(第33話)に再度流用された。

宇宙忍者バルタン星人2代目
 身長ミクロ~50m、体重0~1万5千t。
 『ウルトラマン』第16話『科特隊宇宙へ』(1966年10月放送)に登場。
 先にウルトラマンによって壊滅的な被害を受けたが、何とか生き延びた一部のバルタン星人たちは、太陽系に存在する R惑星に漂着していた。新たな仮の住まいを見つけたものの、地球侵略とウルトラマンや全人類への復讐の機会をうかがっていた者たちは、地球で毛利博士による人類初の有人金星探査が行われようとしていることを知ると、ロケットで旅立った彼を移動用の宇宙船である発光する青い球体で強制ドッキングして捕らえ、ボス格が憑依する。バルタン星人たちは科特隊とウルトラマンをおびき寄せた隙に大挙して地球を制圧しようと襲いかかる。
 本エピソードにおいても、特徴として複数の人間大のミニバルタンに分身することが可能であることが描写されている。また、胸部にスペルゲン反射光(書籍『ウルトラ怪獣大全集』ではスペルゲン反射鏡と記述している。書籍『ウルトラマン大辞典』では、スペルゲン反射光を反射板で跳ね返されたスペシウム光線を指す語としている)を装備し、弱点のスペシウム光線を跳ね返すことが可能になった。さらには光波バリヤーを全身に張り巡らせることが可能になり、これによって八つ裂き光輪を防ぐ。武器はハサミから発せられる重力嵐。その他、分身が手から破壊光弾を発射する。
 R惑星におけるウルトラマンとの1回目の対戦では、飛行中に放たれたスペシウム光線をスペルゲン反射光で反射して浴びせ、墜落させる。そこに重力嵐を浴びせ、動きを止めたウルトラマンに襲いかかろうと飛翔したところに八つ裂き光輪を受け、縦真っ二つにされる。地球では等身大の14体の分身が群れを成して襲いかかるが、迎撃に出たイデが小型ビートルのフロントグラス越しにマルス133で狙撃し、多数が撃墜される。R惑星からテレポーテーションで地球の羽田空港に戻ったウルトラマンに対し、分身状態から合体して巨大化した2回目の対戦では、光波バリヤーにより一度は八つ裂き光輪を防いだ。
 初代の着ぐるみが劣化により撮影に使用できなくなったため、佐々木明によって新たに着ぐるみが作られた。頭部やハサミの形状が鋭角的になり、初代よりも成田亨のデザイン画に近くなった。色彩は全体的に茶色で、顔の T字ラインとハサミが銀色。目玉の回転が初代と逆である。
 バルタン群のミニチュアは、当時市販されていたマルサン商店製のソフビ人形に塗装したもの。
 金城哲夫による小説『怪獣絵物語ウルトラマン』(1967年)では、本エピソードの前日譚として作戦決行前に悪質宇宙人メフィラス星人や他の宇宙人たちとともにウルトラマンを倒すための作戦会議に参加しており、その中での第2作戦として地球とウルトラマンへの攻撃を担当したことになっている。

宇宙忍者バルタン星人3代目
 身長50m、体重1万5千t。
 『ウルトラマン』第33話『禁じられた言葉』(1967年2月放送)に登場。
 地球人に対し自分の力を誇示せんとしたメフィラス星人の手により、威嚇の目的で東京・丸の内に出現した。特に暴れ回ることはなく、すぐに消え去っている。資料によっては、実態のない投影像であった可能性も示唆されている。2008年に出版された書籍『ウルトラ怪獣列伝』( PHP研究所)では、巨大フジ隊員が姿を消した直後に出現したことから、巨大フジ隊員はバルタン星人の変身であったのではないかと推測されている。
 着ぐるみは2代目のリペイント。体色は黒と銀を基調に、頬に青い模様があり、頭部が金色になっている。また、目から口吻が白くなっている。
 未映像化に終わったエピソード『ジャイアント作戦』にも登場が予定されていた。

『ウルトラファイト』に登場するバルタン
 身長40m、体重2万t。
 特撮テレビ番組『ウルトラファイト』(1970~71年放送)の新撮部分に登場。本作では宇宙人も怪獣扱いするため「バルタン」と呼ばれている。
 戦闘の際には初代同様、分身術などのバルタン忍法で相手を幻惑するうえ、飛行能力も持っている。相手を待ち構えて背後から攻撃したり、味方と思わせて不意打ちを喰らわせるなど、卑怯な戦法を好む性質だが、体力がないため返り討ちに遭うことが多い。しかし弱いわけではなく、第75話ではウルトラセブンを相手に引き分け、第103話ではイカルスに勝利するなど、確かな実力も兼ね備えている。一度はセブンの「地獄の三角斬り」で両腕と頭を切断されて敗れ去るが、その後は何事もなかったかのように再登場している。
 第195話「激闘!三里の浜」では、ハサミ状ではなく人間と同じ形状の手で角材を持っているバルタンが、エレキング、キーラー、イカルス、ウーとともにセブンに挑むが、返り討ちに遭う。
 第196話「怪獣死体置場」では、円谷プロの着ぐるみ倉庫に頭部が逆さに吊られているのが確認できる。
 着ぐるみはアトラクションショー用であり、丸みを帯びたハサミが特徴。従来のバルタン星人と違って目が回転せず、点灯のみのアクションとなっている。

宇宙忍者バルタン星人Jr.(通算4代目)…… 阪 脩(声の出演 41歳)
 身長ミクロ~45m、体重0~3万t。
 『帰ってきたウルトラマン』第41話『バルタン星人Jrの復讐』(1972年1月放送)に登場。
 初代ウルトラマンに倒された初代バルタン星人の息子で、父の復讐のためにバルタン星から地球に飛来する。地球に飛来したバルタン族としては4代目に当たる。色彩は黒を基調に、所々に金や銀が散りばめられている。若い個体ゆえに腕は太くてやや短く、またハサミも先代に比べて小さく、上半分と下半分にそれぞれ黒いライン模様が見られる。笑い声も「フォッフォッフォッ」という鳴き声は発さず、普通の地球人に近い高笑いとなっている。
 建設中のマンションを改造したロボット怪獣ビルガモを操り、MAT隊員たちをビルガモの体内に監禁して人質にとる。ビルガモが倒されると巨大化してウルトラマンの目の前に現れ、「勝負はまだ一回の表だ。」と復讐を示唆する捨てゼリフを残して飛び去るが、背後からスペシウム光線を浴びせられ、白い十字光を発して消滅する。生死は不明。
 ウルトラマンとは直接戦闘しないが、設定では300以上の超能力を身につけているとされ、ハサミからマイナス140度の冷凍弾、反重力光線、ミサイル弾を発射できる。
 デザインは井口昭彦が担当。造形では複眼と頭部の溝部分が赤くなっており、口吻周辺が金色になっている。
 内山まもるによるコミカライズ版では本エピソードの後日談が語られており、消滅後も暗躍している。郷秀樹が少年を自動車で撥ねたように見せかけて罪を擦りつけるという、テレビ本編における宇宙参謀ズール星人(第46話に登場)の役割を担う。

『レッドマン』に登場するバルタン星人
 特撮テレビ番組『レッドマン』第13話、第16話(1972年5月放送)に、どちらもエリ巻恐竜ジラースと共に登場。声は発しない。
 第13話では最初はジラースと戦うが、レッドマンが現れたのを見て停戦し、ジラースとともにレッドマンと戦う。挟み撃ちにして追い詰めるも、体当たりを仕掛けたところをレッドマンに避けられ、ジラースと同士討ちとなって敗れる。
 第16話では最初からジラースと協力して再びレッドマンと戦うが、ジラースになんらかの合図と思われる行動を行った後、戦闘中にジラースを放置して逃亡する。ジラースが倒された後、レッドマンが再びバルタン星人を追跡するというシーンで登場シーンが終わり、その後に登場することはなかった。戦闘ではレッドマンの攻撃で倒れたジラースを助け起こすなど、優しさを見せている。
 レッドマンと戦う怪獣・宇宙人の中で死亡が確認されなかったのは、バルタン星人だけである。
 着ぐるみは『ウルトラファイト』で使用されたものと同一。

宇宙忍者バルタン星人5代目 …… 水鳥 鉄夫(声の出演 42歳)
 身長ミクロ~50m、体重0~1万5千t。
 『ウルトラマン80』第37話『怖れていたバルタン星人の動物園作戦』(1980年12月放送)に登場。
 体色はグレーで、口吻の形状が豚の鼻のような独特なものとなっている。
 圧倒的な科学力と技術力を誇り、自分たちを優秀な種族だと思っている。そのため、異星人や宇宙生物を自分たちより劣ると見なして吸引光線で葉巻型の宇宙船に収容しては、下等生物としてバルタン星の宇宙動物園へ送り込んでいる。恨み重なるウルトラ戦士の一人であるウルトラマン80のことも、下等動物としてバルタン星の動物園に収容するべく作戦を開始する。UGMの一日体験豆記者に落選した少年・森田政夫に変身して UGM基地に潜入し、戦闘機シルバーガル内で矢的隊員と2人きりになったところで正体を現して捕らえようとするが矢的に脱出されたため、彼のパラシュートのベルトを切断して墜落死させようとする。しかし、80に変身されて自らも巨大化する。戦闘力は高く、ハサミからの火炎弾や格闘、瞬間移動、透明化、さらに宇宙船との連携攻撃などを駆使して地上や空中で激しい戦いを繰り広げる。
 着ぐるみは映画『ウルトラマン 怪獣大決戦』(1979年)の新撮シーンに登場したものの改造である。
 新たなバルタン星の設定は、銀河系に新たなバルタン星を建造したとする書籍がある一方で、「 R惑星の通称がこの頃にはバルタン星になっていたのではないだろうか」という考察もある。

宇宙忍者バルタン星人6代目 …… 西村 知道(声の出演 34歳)
 身長ミクロ~50m、体重0~1万5千t。
 『ウルトラマン80』第45話『バルタン星人の限りなきチャレンジ魂』(1981年2月放送)に登場。
 宇宙に造り上げた新バルタン星から、またしても地球征服にやってきた限りなきチャレンジ魂の持ち主。姿形は5代目のものとまったく同じであるが、破壊による制圧を目指した歴代の個体とは異なり、謀略による地球人の自滅を目指す侵略手法を採用した。
 初代や2代目など初期作品の個体は地球上の言語や価値観をまったく理解していなかったが、この個体は饒舌さに磨きがかかっており、「お釈迦様でもご存知あるめえ!」や「手裏剣、シュシュ」など、現代の日本人ですら日常話さないような江戸時代の町人言葉までよく話すようになっている。
 計画実行のために自分の顔を模した小型飛行艇に乗って子供たちの前に飛来し、ハサミから出した白い光線状の袋で捕らえた際に矢的隊員のライザーガンの銃撃で飛行艇を破壊され、彼の前で子供を光線に包んで人質に取り、巨大化してあらかた破壊活動を行った末、矢的が変身したウルトラマン80との直接対決となる。戦闘力は高く5代目と同様に瞬間移動や格闘術に長けており、さらにハサミから80の必殺技サクシウム光線と互角の泡状光線や、5代目も使用した火炎弾を放つなど、もっぱら武力による攻撃に転じて80を苦戦させる。
 着ぐるみは5代目と同様に『ウルトラマン怪獣大決戦』の物の改造だが、体色がやや異なり初代同様に目玉などが動く物が等身大時、5代目を流用した物を巨大化時にと2体が使い分けられている。

メカバルタン(通算7代目が改造された姿)
 身長50m、体重2万2500t。
 雑誌グラビア作品『ウルトラ超伝説』(1981年4月~86年2月連載)と特撮テレビ番組『アンドロメロス』(1983年2~4月放送)に登場。
 身体の一部をサイボーグ改造されてファイティング・ベムとなったバルタン星人。グア星のグア軍団の一員として登場。改造された左腕のハサミと右腕の機械式のメカ爪が武器で、主に相手を締めつけたり斬りつける攻撃で戦う。バルタン星人特有の両腕を上げて笑う仕草は見せるが、改造されてグア軍団の支配下に置かれているのか言葉は一切話さず、「ビョゥンビョゥン」という機械的な音声を発する。
 グア軍団侵略軍団長ジュダの部下となっており、一度やられてもジュダの魔力で即座に再生することができる。その際には、以前の同じ攻撃は通じなくなる。
 雑誌『ウルトラマンAGE』ではウルトラマンに倒された初代バルタン星人を、『ウルトラマンオフィシャルデータファイル』第106号では、地球で初代アンドロメロスに倒された個体のバルタン星人(これが通算7代目に当たるか)を改造して蘇らせたとされている。
 グラビア版の『ウルトラ超伝説』では、『てれびくん』1981年8月号、1982年2月号、3月号で登場。
 1981年8月号では、生身のバルタン星人(容姿は80登場時のもの)が軍団を編成して東京を襲撃するが、アンドロメロスに次々と倒され全滅した。
 1982年2月号では、侵略軍団長ジュダが復活した改造怪獣を率いてきた際、ボス格のみが復活してメカ改造された姿となって登場した。全員でメロスとウルフを取り囲んで高速旋回しながら炎の渦を発生させる火炎車戦法を仕掛ける。

宇宙忍者パワードバルタン星人(通算8代目)
 身長ミクロ~65m、体重0~2万3千t。飛行速度マッハ27(地球大気圏内にて)。
 『ウルトラマンパワード』第1話『銀色の追跡者』(1993年12月リリース)、第13話『さらば!ウルトラマン』(1994年8月リリース)に登場。
 これまでに多くの惑星を滅ぼしてきたバルタン星の凶悪な宇宙生物で、ウルトラマンパワードに追われて地球の衛星軌道上に全長8キロメートルの大型母艦で飛来。地球へは先遣隊として3体が降り立ち、その後、繭から誕生するとロサンゼルスの倉庫街で侵略の準備を行う。デザインが鋭角的なものに変更されている。体色は青。W.I.N.R.のエドランド隊長たちの攻撃により、バズーカ砲で倒されたかに見えたが、その後すぐに復活。変幻分身能力によって空中に自身の幻影を投影して撹乱を行う。設定では、周囲の時間波を遅くすることで超高速移動を可能とする。パワードとの戦闘時に背中の羽を伸ばして飛行し、空中戦を展開。クチバシ状の口から毒ガスを噴射するなどして苦しめる。ハサミから空間を圧縮する反重力波や赤色破壊光線を発射し猛攻をかける。
 最終第13話では、同族の個体がサイコバルタン星人の護衛のため、共に宇宙船でアメリカ大陸に飛来した。
 デザインは前田真宏。デザインにあたっては2代目バルタン星人や成田亨の作品「メバ」を意識している。前田は一番気に入っている怪獣に挙げているが、初代をデザインした成田からは怒られたという。結晶化した外骨格のイメージで描かれ、昆虫としての側面を強調したデザインとなった。

宇宙忍者サイコバルタン星人(通算9代目)
 身長ミクロ~75m、体重0~2万6千t。
 『ウルトラマンパワード』第13話『さらば!ウルトラマン』(1994年8月リリース)に登場。
 バルタン星のバルタン一族の支配者。通常のバルタン星人と比べて頭脳が異常発達しており、頭骨から露出している。巨大な頭は通常のバルタン星人より念動力が強いと言われており、ここから放つ精神波によって部下のバルタン星人や宇宙怪獣たちを操っている。先遣隊がパワードに敗れたのち一時撤退するが、密かに情報収集を続け、最後に宇宙怪獣パワードドラコを派遣。ウルトラマンパワードの戦闘データと光線の情報を宇宙恐竜パワードゼットンに与え、地球へ送りこんだ。パワードがゼットンと相撃ちになって倒れた後、全長1.6キロメートルに達する巨大な宇宙船で地球に飛来。W.I.N.R.のスカイハンターと対決するが、パワードの仲間と思われる2体の赤い玉(M78星雲人)がスカイハンターに加勢、ビームで攻撃されて宇宙船ごと爆破された。
 劇中では常に宇宙船内にて策を巡らせるが、NGシーンでは部下と思われる他のバルタン星人と共に地球へ降り立ちパワードの死亡を確認するシーンや、スカイハンターの前に立ちはだかるカットが存在していた。
 着ぐるみはパワードバルタン星人の改造。

宇宙忍者バルタン星人ベーシカルバージョン(通算10代目)
 身長50m、体重3万5千t。
 映画『ウルトラマンコスモス THE FIRST CONTACT』(2001年)に登場。
 環境破壊によって故郷バルタン星が滅び、地球へ移住しようと来襲した宇宙生命体。この来襲が、ウルトラマンコスモスが地球圏を訪れるきっかけとなる。武器は冷凍光線や敵の光線攻撃を無効化するエクスプラウドなど、ハサミから発射する様々な光線。ほかにも背中から羽が生え、脚の形状も変化させての飛翔や、分身や脱皮など多彩な能力を持つ。
 世界各国が発した宇宙へのコンタクトを地球への招待だと解釈し、地球を子供たちのために安住の地にしようと考える。荒廃した母星の一部を切り取って居住できるように改造して内部には刃物状の罠も仕掛けた宇宙船・廃月で地球へ飛来し、コスモスとの空中戦を繰り広げた後、遺跡公園に眠っていた怪獣呑龍(ドンロン)を復活させる。呑龍がシャークスの攻撃を受けて倒れた際に呑龍の体内から飛び出し、シャークスの戦闘機を撃墜する。その後は廃月へ戻るが、シャークスの襲撃を受けて部隊を全滅させると、都市上空に飛来する。SRCの作戦による子守唄で眠るが、その隙に再度シャークスが攻撃を仕掛けたことに怒って地球の占領を決意し、コスモスと激闘になる。
 戦闘時にはネオバルタンに変身する。
 『THE FIRST CONTACT』の監督は、『ウルトラマン』第2話を手がけた飯島敏宏が務めており、プロデューサーの鈴木清からの要望により、バルタン星人が登場することとなった。
 デザインは丸山浩による。原典のモチーフはセミだが、本作ではクワガタがモチーフとなったため、角の内側に突起がある。背面はバルタン星人の円盤デザインをアレンジしている。飛行形態は、足を尖らせることで昆虫的なイメージをより強調している。

宇宙忍者ネオバルタン
 身長51m、体重4万5千t。
 バルタン星人ベーシカルバージョンの超戦闘モード。甲冑をまとった黒騎士のような禍々しい姿となり、両手にはバルタン星人に共通する巨大なハサミを持たず、サーベルや鋼槍、鉤爪や光線砲などを装備する。この両手から剣型の光線や光のムチなどを放つほか、肩の突起を無数のトゲに変えて放つ技も持つ。変身前と同様に分身術も可能であり、これらの能力を駆使してコスモスと互角の戦いを繰り広げる。
 デザインは丸山浩による。より凶暴にするため体色を黒くしているが、光沢があるとグリーンバックに映り込むため、ツヤ消しにしている。

チャイルドバルタン(通算11代目)
 身長120cm、体重15kg。
 バルタン星人ベーシカルバージョンの子供である。武力による地球侵略や争いを快く思っていない。このうち、シルビィという名の個体が平和的な解決を模索する中で春野ムサシの友達であるマリと同化した。シルビィはのちにマリとメル友になり、続く劇場版2作品にも登場している。
 デザインは丸山浩による。造形物は制作されず、CGのみで表現された。常にフワフワしているイメージでベーシカルをデフォルメしている。

超科学星人ダークバルタン(通算12代目)…… 尾崎 右宗(33歳)
 身長ミクロ~357m、体重0.1g~27万3千t。
 『ウルトラマンマックス』第33話『ようこそ!地球へ バルタン星の科学』、第34話『ようこそ!地球へ さらば!バルタン星人』(2006年2月放送) に登場。
 地球人を「地球を汚し尽くしたら次は月や火星を我が物にしようとする宇宙の侵略者」として敵視する銀河系外惑星バルタン星の過激派で、初代バルタン星人とほぼ同じ姿をしている。
 反重力による攻撃を得意とし、ハサミからの熱線や反重力砲を始めとして、超巨大化能力やクローンによる無数の分身体の発生、クローン技術によって四散した身体の再生などウルトラマンマックスを上回る能力を発揮。マックスの必殺技マクシウムカノンすら胸部の展開したスペルゲン反射鏡で弾き返し、超巨大化能力を使ってマックスを何度も踏み潰す。本人曰く、「バルタンの科学はウルトラの星の科学を超える」とのこと。バルタン星人は、元々は地球人と同じ姿をしていたが、度重なる核戦争によって今の姿に進化したと言われている。バルタン星の科学には相当なまでの自信を持っているようで、自分の能力を自慢する。
 一度は超巨大化でエネルギーを消耗した上、拘束光線で身動きの執れなくなったマックスを倒し、復活したマックスとの戦いでも終始優勢を保つが、同族のタイニーバルタンがバルタン星から持ち帰った古代バルタンの銅鐸状の古代遺物の音色を聴いて戦意を喪失。平和を愛する心を取り戻し、ダテ博士が開発した新兵器メタモルフォーザーによって人間と同じ姿に戻された後、タイニーと共にバルタン星へ帰還した。
 頭部の電飾は初代のスーツのものを再現している。分身したバルタン星人が空を埋め尽くす光景は、脚本を担当した飯島敏宏が40年間温めていたイメージであり、当初制作された CG映像ではバルタン星人は10体程度であったが、飯島の指示により大幅に増やされた。
 ウルトラシリーズ史上初めてウルトラ戦士に勝利したバルタン星人であり、その数々の超能力も合わせて最強のバルタン星人として紹介されることもある。

超科学星人タイニーバルタン(通算13代目)…… 半田 杏(14歳)
 身長ミクロ~1.5m、体重0.1g~55kg。
 ダークバルタンによる地球侵略計画を伝えるためにやって来たバルタン星の穏健派。一人称は「僕」であるが、バルタン星では女の子ということになっており、人間の少女に変身し、両手でVサインをして「マルルー」と呪文を唱えることで自由自在に重力を操り、ホウキにまたがって空を飛ぶなど、バルタンの超科学力による様々な、ほとんど魔法にしか見えない不思議な現象を引き起こすことができる。地球人のツトム少年の協力を得てダークバルタンの地球侵略を止めるべく奮闘。最終的にダークを改心させることに成功し、共にバルタン星へと方舟アークで帰った。
 デザインは丸山浩が担当。背中の白い模様は、イノシシの幼獣ウリ坊をイメージしている。

映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説』(2009年)に登場するバルタン星人
 かつてウルトラ戦士に倒されたバルタン星人が、ウルトラマンベリアルのギガバトルナイザーの力で怪獣墓場から蘇ったもの。外見は初代ウルトラマンと戦った初代バルタン星人とほぼ同一。ベリアルが操る怪獣軍団の一体としてウルトラ戦士やレイモンの怪獣たちと戦う。ゼットンやアントラー、キングゲスラなどと共に初代ウルトラマンと激突する。
 過去シーンでも、「ベリアルの乱」においてベリアルが操る怪獣軍団の一体として登場し、他の怪獣と共に光の国を襲っていた。
 また、百体怪獣ベリュドラの左角を構成する怪獣の一体として初代バルタン星人、右腕を構成する怪獣の一体として2代目バルタン星人の姿がある。

映画『ウルトラマンギンガ ウルトラ怪獣☆ヒーロー大乱戦!』(2014年)に登場するバルタン星人
 渡会健太がウルトライブシミュレーション内でライブしたもの。容姿がほぼ同一である初代と同様に分身術や赤色凍結光線、白色破壊光弾などの技を使う。久野千草がライブしたテレスドンや石動美鈴がライブしたモチロンと戦う。テレスドンに対しては豊富な能力で圧勝したが、モチロンには腕がハサミである点を突かれ、ジャンケンで敗北した。

映画『ウルトラマンX きたぞ!われらのウルトラマン』(2016年)に登場するバルタン星人
 ファントン星人グルマンの記憶に眠る、はじまりの巨人・ウルトラマンの伝説を語る際の過去イメージシーンに登場。得意の分身能力などを駆使してウルトラマンと激戦を繰り広げた。容姿は初代のものとほぼ同一。
 使用されたスーツは2体のみで、1体はアトラクション用の物の流用であるが、合成技術で多数登場しているように見せている。

メバ
 1967年に成田亨が「バルタン星人をメカニックなイメージで」という発想のもとにデザインしたキャラクター。名前は「メカニック・バルタン」の略称で、昆虫的要素は薄く金属質のシャープなボディのデザインで、両手はハサミ状ではない独自の形状のものであった。映像作品に登場する機会はなかった。

未発表作品でのバルタン星人
 『ウルトラセブン』の未発表エピソード『宇宙人15+怪獣35』では、他の宇宙人と手を組んで宇宙連合軍を結成し、セブンを襲いダンに絶対安静の重傷を負わせ、怪獣を東京に出現させるシナリオが予定されていた。これ以前に『セブン』企画時の初期段階でもバルタン星人の登場は検討されていた。
 1993年に『ウルトラマン』の25年後を舞台とした映画『ウルトラマン バルタン星人大逆襲』の製作が予定されていたが、中止されている。千束北男(飯島敏宏)により執筆された脚本は飯島敏宏著『バルタンの星のもとに』(風塵社)に収録されている。内容の一部は映画『ウルトラマンコスモス THE FIRST CONTACT』や『ウルトラマンマックス』第33話・34話に反映された。

類似キャラクター
・『ウルトラマンタロウ』第33・34話(1973年11月放送)に登場した極悪宇宙人テンペラー星人は、それまでの敵宇宙人の要素を組み合わせたデザインだったが、頭部や口吻の形状、ハサミ型の手など特にバルタン星人を意識した部分が多い。映画『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』(2006年)以降ではスマートにリファインされたデザインのテンペラー星人が登場するが、デザインを担当した酉澤安施は、「バルタン星人がモチーフと聞いたので少しバルタンに戻していった。」と語っている。
・『ウルトラマンレオ』第15話(1974年7月放送)に登場した分身宇宙人フリップ星人はバルタン星人と酷似した笑い声を発するが、これはバルタン星人の鳴き声をアレンジ、早回ししたためである。青白い光学合成による分身やテレポーテーションを得意としている点も共通しており、ビデオソフト『ウルトラ怪獣大百科』では親戚関係も噂されている。


 あの~、これ、完全にメモ! 私的備忘録なので、特にこれに対する本文とかはございません。
 最近、ガシャポンであの豚っ鼻5&6代目がフィギュア化されたからふっと思い立っただけです。いいセレクトセンス、さすがは三条陸先生!

 でも、こうやってまとめるだに、バルタン星人の物語は『コスモス』と『マックス』で完結しているんですよね。確かに、今さら『シン・ウルトラマン』などで蒸し返すべきものではないのだな。飯島敏宏さんも M78星雲に旅立たれていることだし。
 リアルタイムで『マックス』を観た時の衝撃はものすごかったなぁ。他にも実相寺監督回もあったし、あの時期の土曜日の朝、ほんとうに毎週ワクワクしていましたよ。『メビウス』みたいに設定がかっちり決まっているんじゃなくて、わりと毎回毎回行き当たりばったりな作風が、いかにも「空想特撮シリーズ」って感じで大好きでした。平成ウルトラシリーズの中で一番好きですね。
 エリーちゃんももう、生身の人間どころか、立派な大女優さんにあいなりもうした……嗚呼、時の流れよ!!

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