長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

輝かしい銀幕デビュー!の、はずが ~ぬらりひょんサーガ 百鬼徒然袋ノ下~

2011年10月20日 23時23分26秒 | ゲゲゲの鬼太郎その愛
《前回までのあらすじ》
 1980年代にバブル期を象徴する悪役として復活した妖怪ぬらりひょん!
 しかし、初回の登場はあくまでも原作マンガの焼き直しであり、やっぱりぬらりひょんは過去の世界に追放されてしまった……しかも、原作より2千倍も昔。
 本当の「妖怪総大将への道」は、まさしくこの敗北から幕を開けるのであった。おぬォれ鬼太るゥオ!!


 今でこそ、「宿敵はぬらりひょん!」というイメージが定着しているアニメ第3期なのですが、フタを開けてみると、実はぬらりひょんは全115話の最初っから最後まで出ずっぱり、というわけではありませんでした。
 前回にもふれたように、早くも第4話に登場したぬらりひょんと若手ホープの朱の盤だったのものの、キレた鬼太郎少年によって白亜紀末期に流されたあとはしばらくのあいだ、シリーズ本編には現れていません。
 けっこうインパクトのある悪役っぷりだったのに、やっぱり原作通りにフェイドアウトなのかな……といい加減に視聴者も忘れようかと思いだしたころ。

 秋に始まったアニメ第3期もたちまち大人気となり、年もあらたまった1986の1月。第16話『妖怪のっぺらぼう』の回に奇跡は起こりました。
 なんと、約2ヶ月ぶりにぬらりひょんと朱の盤のコンビがブラウン管に戻ってくる(表現が古い……)こととなったのです。なぜ?

 『妖怪のっぺらぼう』は、読んで字のごとくのっぺらぼうが外見に似合わない凶悪ぶりを発揮して人間の魂を喰いまくり、意外な強さで鬼太郎との死闘を繰り広げるというエピソードで、そのもととなった1968年5月発表の原作マンガには、ぬらりひょんがかかわる要素はいっさいありませんでした。
 そんなお話にぬらりひょん一味がどうかんでくるのかと言いますと、「のっぺらぼうを影であやつって鬼太郎にけしかけた黒幕」としての再登場となったんですねェ~。

 これ、これ! 「その回のゲスト妖怪をあやつっていた黒幕」というポジショニングはほんっとに便利!! だって、この手を使ったら原作マンガの全話にぬらりひょんがかかわることが可能になるんだぜ!?
 いったい誰が考えついたのか……ともあれ、勧善懲悪のヒーローアニメに欠かせない「悪のラスボスぬらりひょん」が、正義も悪もあったもんじゃない鬼太郎ワールドに出現することとなったのであります。


 もっとも、だからといってぬらりひょん一味が第16話以降ず~っとアニメ第3期に登場していたというわけではなく、私の調べたかぎりでは彼らが出てきたエピソードは、

第4(蛇骨婆)・16(のっぺらぼう)・45(タヌキ妖怪あしまがり)・51(世界妖怪ラリー)・58(目目連)・60(ダイダラボッチ)・86(再生妖怪軍団)・91(ヒ一族)・104(妖怪狩りツアー)・105(めんこ天狗)・108(本所七不思議)・112~115(地獄編の後半)話

 の15話でした。
 そうなんです。全115話中の15話なんですから、全体の13%くらいしかぬらりひょんは出てきていないわけなんですよ。意外と少ないと思いません?

 ただし、実質の最終話にあたる第108話と連続ショートシリーズ『鬼太郎地獄編』(第109~115話)にもしっかり悪役として出演しているので、ちゃんとラスボスとしての筋は通しているんですねぇ。

 ここで確認しておきますが、このアニメ第3期でのぬらりひょんの立ち位置は「妖怪総大将」ではありません。
 「妖怪総大将をめざしている姑息な悪役」ってところが正しい実状かと。つまり、それぞれのエピソードに出てくるゲスト妖怪をだますのが精一杯で、とてもじゃないですが多くの妖怪たちの上に立つふところの広さは持ち合わせていない卑劣なキャラクターとなっているのです。第91話のヒ一族にいたっては、交渉決裂で殺されかけて鬼太郎に助けてもらってますからね。結局は手下は朱の盤ひとりという哀しさがあります。

 でもねぇ……第16話以降のアニメ第3期すべての登場エピソードを担当し、のちには2007~09年の第5期でも再登板を果たすこととなった3代目ぬらりひょん声優・青野武(49歳)のイメージは強かった。

「久しぶりだな鬼太るゥオ。今度こそ死ぬェエイ!!」

 ドスのきいた巻き舌ぎみのわる~い声には心底惚れてしまいました。壮年のエネルギッシュなパワーがみなぎる、悪役としては最高の時期での当たり役となったのではないでしょうか。
 「お~い、まるこぉ~。」なんて言ってる場合じゃねぇ! さくらともぞうとは180°真逆の魅力に満ちていました。

 このように、経歴だけを見ればつまらない小悪党としか言いようのないアニメ第3期でのぬらりひょんだったわけですが、ひとえにそんな彼が現在にいたるまでの人気を保てているのも、この時の3代目青野ぬらりひょんの功績のたまものであるということは申すまでもないでしょう。

 ただし、ぬらりひょんにとって最も必要なのは、完全無欠の悪役になりきれない「おっちょこちょいさ」!
 欠点がなければぬらりひょんは鬼太郎に勝利してしまうので、ツメの甘さは毎回毎回必ず露呈して敗北する流れとなるのですが、そこで出てくる、あわてふためいた局面でのコミカルな演技こそが青野ぬらりひょんの真骨頂とも言えます。ここがちゃんとおもしろい!
 さすがは、かつてイギリスの伝説的コント番組『モンティ・パイソン』で常識と狂気、ツッコミとボケの両面をこなしたマイケル=ペイリンの日本語吹き替えを一手に引き受けた青野さんだけのことはある。

 実際、ちょうどアニメ第3期『ゲゲゲの鬼太郎』と同じころ、言わずと知れた国民的大ヒットアニメ『ドラゴンボール』(Zじゃない)で、血も涙もない正真正銘の大悪役「ピッコロ大魔王」(ジュニアじゃない)も演じきった青野さんですが、そこにちゃんとコメディの要素も入っていた「ぬらりひょん」のほうが私は大好きでした。

 青野さん、MY LOVE。
 第5期『鬼太郎』では、さすがに70代ということで落ち着いた老いの味わいもありましたが、『ドラゴンボール』の収録で絶叫しすぎて身体をぶっこわしたというエピソードも有名な青野さんなので、まずは仕事のことは考えずにゆっくりと静養していただきたいと願うばかりです。叫んじゃダメ~!


 さてさてそんな青野ぬらりひょんだったのですが、実は! 世間の前にお披露目した「ほんとうの最初の登場」は、最初にあげたアニメ第3期・第16話ではなかったんです。
 でも、青野ぬらりひょんが「ブラウン管に現れた」最初が『妖怪のっぺらぼう』の回だったことは間違いないんです。ウソじゃないの。

 つまり、ななんとな~んと、約7千万年前に流されたぬらりひょんと朱の盤の2人が(蛇骨婆はいない……)帰ってきたのは、第16話のわずか1ヶ月前、1985年12月に堂々劇場公開された『ゲゲゲの鬼太郎』史上初のオリジナル劇場版でのことだったのです!! 銀幕での復活だ~。

 アニメ化されるたびに人気のあった『ゲゲゲの鬼太郎』は、アニメ第1・2期それぞれでTV放映された回をブローアップしたものを劇場公開したことはあったのですが、映画館でしか観られないオリジナルエピソードが制作されたのは、この1985年12月の劇場版『ゲゲゲの鬼太郎』(公開当時は特にサブタイトルはつけられていなかった)が初めてでした。
 とはいえ、この作品は子供向けのアニメ映画オムニバス企画「東映まんがまつり」の1作として上映されたため、本編時間は24分と、通常のTV放映エピソードとさほど違いのないボリュームとなっています。
 この時の同時上映は、『キャプテン翼』と『キン肉マン』。なつかしいねぇ~! 私ももちろん映画館に観に行きました。『キャプテン翼』はサッカーのルールがわかんなかったのでぼんやりしてました。

 『ゲゲゲの鬼太郎』史上初の劇場オリジナルとなるこの作品は、原作マンガの名エピソード『妖怪軍団』(1968年4月発表 前後編)をもとにした物語。

 原作は、沖縄や東南アジアといった南方から「妖怪軍団」が金銀ギラギラの巨大軍船に乗ってやってくるという興奮の内容だったのですが、実際に登場したのは軍団の尖兵として日本に上陸してきた沖縄妖怪「アカマタ」と水木しげるの創作妖怪「やし落とし」だけで、その2匹が鬼太郎に倒されるのを観た妖怪軍団本隊はそのまま撤退してチャンチャン、となっています。妖怪軍団、鬼太郎双方ともに「今日はこのぐらいにしといたるわ。」という感じにおさまるラスト……実に水木しげるらしい玉虫色のエンディングです。

 もちろん、熱血バトルアニメの第3期がそれでおさまるはずもなく、劇場版ではアカマタとやし落としに合わせてキジムナーと巨大妖怪・蛟龍(こうりゅう)、そして妖怪軍団を統率する首領として、世界妖怪史上でも屈指のインパクトを誇るおそるべき南方妖怪「チンポ」といった面々が鬼太郎ファミリーとの激闘を展開していました。ち、チン……彼は、一見ふつうの南国の浅黒い肌の現地人にしか見えない姿をしているのですが、ズバリ言うと陰茎が3本ありまして、そこからジェット水流のように水分を噴射してホバークラフトのように空中を高速飛行する前代未聞の特殊能力を持った強豪妖怪です。もちのろん、水木しげる神先生のオリジナルキャラ。
 もともとは原作の『妖怪軍団』には影も形も出てこなかった蛟龍とチン×なのですが、蛟龍は八百八狸軍団が大暴れした『妖怪獣』に、チン×は鬼太郎サーガ第4のシリーズとなる『鬼太郎の世界お化け旅行』(1976年 双葉社『隔週刊少年アクション』で連載)に重要なキーマンとして登場しています。


 で、さぁ。こういった南方妖怪軍団を影であやつっていたのが、あのぬらりひょんと朱の盤だったという衝撃の展開……となるはずだったのですが。
 子ども、特に男子がギュウギュウにつまった「東映まんがまつり」に妖怪チン×登場。ここまできたらもうみなさんおわかりでしょう。

「ぎゃはははは!! ちんぽー! ちんぽみっつ~!!」

 おそらく、私が生まれて初めて「劇場が揺れるレベルの熱狂」を体感したのは、この時ではなかったかと記憶しております。

 残念ながら、7千万年の時を超えて復活した2人、わけても青野ぬらりひょんの初登場に興奮するお客さんは誰もいなかった!! もうその前に下ネタで大興奮してたから。
 そういえば私も、この作品でぬらりひょんを見た記憶がいっさいねぇ! 頭に残っているのは、スクリーンいっぱいに映し出されていた衝撃の「3連チン×噴射」シーンだけ。

 なんという不運。銀幕での復活を果たしたぬらりひょんは、あまりにもインパクトの大きすぎる出オチキャラによって画面の片隅に追いやられてしまっていた!
 ドンマイドンマイ、誰も勝てねぇから。

 ちなみに、そんなアニメ初登場の南方妖怪チン×の初代声優をつとめたのは、『ヤッターマン』のドクロベー様や『ぶらり途中下車の旅』のナレーションで不世出の名演をみせていた、今年8月のご逝去が惜しまれる滝口順平さんでした。
 問題のチンチン妖怪を演じた当時は54歳だったわけですが、そんな外見とはうらはらに意外や意外、冷静沈着で底の知れない悪役っぷりを見せつけてくれていました。
 声に低音の貫禄があり、悪役をやらせたら思いのほか怖い滝口さんなのですが、実はのちに、不思議な場でぬらりひょんそのものの役も演じています。おぼえといてね!

 さぁさぁ次回は、そんなぬらりひょんと朱の盤がどうやって現代に復活してきたのか? その謎を解き明かすストレートすぎる真相にせまりま~っす。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« あら~、秋 | トップ | はやく総大将になりたい!!... »

コメントを投稿

ゲゲゲの鬼太郎その愛」カテゴリの最新記事