《前回までのあらすじじゃありません》
いんや~、この前の土曜日は台風みでぇなとんでもねぇ天気の日だったんだげどよぉ。
そっだらながでも無理して東京に行って人に会ったんだげんとよ、まぁ~いい時間すごせだずね。
そうとう久しぶりに会ったんだよぉ。それもきっかけがこの『長岡京エイリアン』なごんだがらありがでぇこったよぉ。
つ~ぐづぐ続げでよがったもんだなやぁど思ってよぉ~、まんず。
そしたらそっだらごどでひとづ、よっこらせ~のせっどおっぱずめでみっべがね~。すぎな人はよってみでけらっしゃい。
21世紀に入ってしばらくたち、我らがぬらりひょん先生もゲーム、映画、マンガとあらかたのメディアでの活躍を果たしたのですが、「妖怪ぬらりひょん」という存在の変わらぬ知名度を確認することはできたものの、いまひとつ新世紀のあらたなるヴィジョンを打ち出すことができないという物足りなさにさいなまれていました。逆に言えば、それほどに前世紀、特に太平洋戦争終了後の文化の中で成長・拡大してきたイメージには強固なものがあったのです。
「うむむ……時代は情報過多社会。早く21世紀ヴァージョンのわしを提示せねば、あっという間に『昔ブイブイ言わせていた古くさい妖怪』ということでボデコンスーツなみにお払い箱になってしまうわい。そんなことでは妖怪総大将どころか、打倒鬼太郎もままならぬことに……そんなこっちゃいかぁ~ん!!」
悩むぬらりひょん先生でしたが、ついにその問いに答えを出すこととなった場こそが! 「アニメ版『鬼太郎』シリーズ10年周期説」にのっとって始動することとなった、
アニメ第5期『ゲゲゲの鬼太郎』(2007年4月~09年3月 全100話)
だったのであります。萌え萌え猫娘~!!
2011年現在の時点では最新シリーズとなっているこのアニメ第5期をご記憶の方も多いかと思うので、説明は簡単なものにとどめておきたいのですが、「水木しげるの原作マンガへの回帰(と言いつつも紆余曲折あったことはもう触れましたね!)」を標榜した1990年代のアニメ第4期(主演・松岡洋子)の次に世に出ることとなったこの第5期は、またその第4期からの反動ででもあるかのように、随所であのバブリー第3期を想起させるような「悪の妖怪たちとの激しいバトルアクション」を展開させる、かなりハデハデなシリーズとなりました。
これはもう、そのまんま水木ワールドからの自由な飛翔を良しとする作風を意味しており、さらに、第5期のシリーズ構成をつとめたのが『週刊少年ジャンプ』で連載されていた『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』の原作者として有名な三条陸(42歳)と、「平成ウルトラシリーズ」の諸作であの膨大な情報量のウルトラシリーズの集約を試みた脚本家の長谷川圭一(45歳)だったことからも予想がつくように(放送3クール目の第27話からは三条の単独)、過去のアニメ版『鬼太郎』で採用されていた先行作品のリメイクだけではおさまらないような、未だかつてない嵐の予感をさせるものでもあったのです。
同時期にリアルタイムで連載されていた原作マンガをストレートにアニメ化していた第1・2期はさておきまして、それからある程度の歳月が経ってからの制作となった第3・4期は基本的に、「それぞれの時代での物語」として過去の原作を作りかえるというアップデート作業をおこなっていたということはこれまで何度となく言ってきました。第3期はバブルニッポンのかかえていた問題をうまくエピソードに組み込んでいましたし、第4期も不景気ニッポンの「フハッ……」なため息が聞こえてくるような名作エピソードの数々を生んでいたのです。
つまり第3・4期は、パッケージのアレンジ具合に大きな差はあるとは言え、どちらも「偉大なる水木ワールドの骨子をいただく」という姿勢では同じだったと言えるんですね。
ところが! アニメ第5期はど~うもそのパターンにのっとっていないようなエピソードの目白押しだったんですなぁ~。要するに、どこにも「水木テイスト」が残っていないオリジナル脚本ストーリーの分量がハンパなく多いんです。
もちろん、オリジナル脚本のエピソードは以前のシリーズにもあるにはあったのですが(第4期の『ラクシャサ』『言霊使い』『三匹の刺客』など)、あくまでもファン向けの感謝サービスか時間つなぎといった役割の少数にとどまっていたはずです。
でもねぇ。アニメ第5期はのっけの第1話から原作マンガの存在しないエピソードなんですよ。
記念すべき21世紀最初のアニメ『鬼太郎』第1話『妖怪の棲む街』(2007年4月)は、登場するゲスト妖怪「水虎」こそ、原作マンガ(1966年1月発表)で非常に印象的な水と氷の舞い散る名対決を鬼太郎と演じたり、そうかと思えばケロッとカムバックし、中国代表として「世界妖怪ラリー」に参戦したりした経歴のあるおなじみのキャラクターなのですが、ストーリーもデザインもまったく違うオリジナルなものとなっています。
そんなことだったので、ちょっと気になって自分の記憶と確認できるかぎりの資料をひっくり返して調べてみたところ、アニメ第5期は「原作ありエピソード」と「オリジナルエピソード」との配分に、過去シリーズにはついぞなかった驚くべき変化が発生していたのです。
どうしても判断が私そうだい個人のものとなってしまうので、絶対的にこのパーセンテージが正しいとも言い切れないのですが、おおよそはこんな感じ。
アニメ第5期全100話中、
1、水木しげるの原作マンガを比較的忠実にアニメ化したエピソード
……『ゆうれい電車』『牛鬼』『釜鳴り』『地獄流し』など「13話(13%)」
2、水木しげるの原作マンガのゲスト妖怪だけを抽出して内容はほぼオリジナルになっているエピソード
……『水虎』『夜叉』『海座頭』『のびあがり』など「30話(30%)」
3、水木しげるの原作マンガに脇役として登場していた妖怪をメインゲストにすえたオリジナルエピソード
……『がしゃどくろ』『雪女』2話 『グレムリン』など「7話(7%)」
4、水木しげるの原作マンガにまったく登場したことのない妖怪がメインゲストとなった完全オリジナルエピソード
……『沼御前』『しょうけら』『鵺(ぬえ)』『七人ミサキ』など「50話(50%)」
これに驚愕しない『ゲゲゲの鬼太郎』ファンがいるかって話なんでございます。8割以上オリジナルかよ!!
要するに、アニメ第5期『ゲゲゲの鬼太郎』は、それまでの「原作リメイク路線」のアニメシリーズとはまったく趣向の違う「オリジナル続編路線」だったのでございますね。ただただキャラクターのデザインが萌え~になっただけ、とかいう表層だけの変化ではなかったのです。
さぁ、これをもってアニメ第5期の評価をどうするか。
なかなか難しいところですし、原作マンガが大好きなわたくしも申し上げたいことは多々あるんですがァ! この企画はアニメ版『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズの検証じゃなくてあくまでも「ぬらりひょんサーガ」ですので、こういった第5期の果敢な挑戦がどういう結果をもたらしたのかは、それぞれ作品をご覧になったみなさまの判断にお任せしたいと思います。
あの、私は特にイヤだとは思っておりません。ひじょ~に楽しませていただきましたよ! 『ゲゲゲ』ファンとか関係なくてもおもしろい回、けっこうありましたしね。
実際、「原作リメイク」路線に舵をとったとしても、すでにアニメ第3期と4期という大きすぎる先例があったわけでして、「昔の方がよかったなぁ~。」とか言われて大事なところを観てもらえなくなるのではなかろうか、という制作スタッフ陣の考慮もあっての第5期だったんじゃないかとも思えるんです。
シリーズ構成を手がけた三条・長谷川両氏の構築した第5期の「世界観」も、これまでのアニメシリーズにはない、非常に野心的でアグレッシブなものがありました。
今回、この「ぬらりひょんサーガ」に重要なかかわりがあると私が判断した第5期初のこころみは「2つ」あります。
それは、「過去のシリーズの『歴史化』」と、「正義と悪の『集団戦化』」。字ヅラほどこむずかしいもんじゃありません。
まず最初の「過去のシリーズの『歴史化』」というのは、21世紀にリアルタイムの日本で展開されているアニメ第5期の世界から見て、戦後間もない1950年代から始まった「鬼太郎サーガ」の過去の諸作品が同じ歴史上にあったことになっている、ということなんです。
これは、基本的にそれ以前の話がまったく語られず、過去の原作マンガの世界が「ない」ものとしてリセットされていたアニメ第3・4期それぞれの姿勢とはまったくおもむきの異なるものとなっていますよね。
簡単に言うと、1980年代にオカリナムチをビュンビュン振り回して若さゆえのジャスティスを炸裂させていた戸田鬼太郎に、1950年代に誕生した墓場の鬼太郎としての過去はなく、1990年代に口を「3」の字にして昼間っからグーグー寝ていた松岡鬼太郎に、原作やら野沢鬼太郎やら戸田鬼太郎時代の記憶はまったくないという設定になっていたのですが、アニメ第5期に活躍した高山みなみ鬼太郎はどうもそうじゃなかったらしいんだなぁ。
エピソードとしてこのあたりがはっきりと言及されていたのは、第42話『オベベ沼の妖怪かわうそ!』(2008年1月放送)で、それともうひとつ、第32話『上陸!脅威の西洋妖怪』(2007年11月放送)以降、最終回付近にいたるまで鬼太郎ファミリーをおびやかす存在となり続けていた「西洋妖怪軍団」のキャラクター設定にも見逃せないものがありました。
ざっくり説明しますと、アニメ第5期ですっかり番組のレギュラーメンバーとなった妖怪かわうそとの最初の出会いとして、鬼太郎が原作マンガ『オベベ沼の妖怪』(1968年6月発表)の内容を回想しており、第5期の世界で大活躍する西洋妖怪軍団の中核メンバーは、かつて原作マンガ『妖怪大戦争』(1966年4~5月発表)で日本の鬼界ヶ島に殴り込みをかけた西洋妖怪軍団の「子か孫」ということになっているのです(ただし、バックベアードは現役でフランケンシュタインの人造人間も改造された本人)!
そう考えてみると、原作の印象に比べてだいぶ人間なれしてファッショナブルになった猫娘のソフィスティケイトっぷりも、もしかしたらそれだけの社会経験をつみかさねたからってことだったのかも知れませんね。原作じゃあ小学校低学年くらいだった体格も中学生くらいになってたし。半妖怪である猫娘は人間に比べて成長がゆっくりらしいんですが、40年生きてやっと身長が10cm アップって、うれしいんだかうれしくないんだか……
さらには他ならぬ主人公・鬼太郎も、おりに触れては「だいぶ昔から、おそらくは原作マンガどおりの1960年代から活動している」ニュアンスの発言を重ねているのです。
原作では鬼太郎は「1954年生まれ」ですからね。「見た目は子ども、中身は大人」。う~ん、さすがは高山鬼太郎だ!!
さて、もうひとつの「正義と悪の『集団戦化』」のほうがどうなのかと言いますと、これはもう読んで字のごとく、正義チームも悪者チームも、どっちもかなり大人数の徒党を組むようになったっちゅうことなんですな。
これはもう実際に1話だけでもアニメ第5期のエピソードを観ていただければわかるかと思うのですが、まず最初の設定として、鬼太郎ファミリーの人数が増えている!
第5期の鬼太郎ファミリーは、ただ鬼太郎の住んでいる「ゲゲゲの森」にちょいちょい顔を出すツレ何人か、という規模ではなく、さらにその森に隣接している「妖怪横丁」に居住している無数の妖怪たちをも含むようになっているのです。
「妖怪横丁」とは、人間が容易に立ち入ることのできない人間界と地獄とのはざまにある第5期オリジナルの異次元空間なのですが、そこには人間社会にきわめて似たかたちの妖怪の社会があり、妖怪にとっての人間界からの避難スペースであったり交流場所だったりするのです。ちなみに、横丁の実質的なリーダーはそこにある「妖怪長屋」の大家である砂かけ婆のようです。
ともあれ、ここにいる「かわうそ」や「ろくろ首」、「夜行さん」といった妖怪は第5期のレギュラーメンバーとして鬼太郎をサポートしており、特に第26話『妖怪アイドル!?アマビエ』(2007年9月放送)以来この横丁に住み着くこととなった九州出身の予言妖怪アマビエは、原作マンガに1回も登場したことがなかったのにも関わらず、持ち前の押しの強さで第5期屈指の名キャラクターになりおおせることができました。う~ん、「鬼太郎サーガ」のYAZAWA と呼ばせていただきたい。
これに加えて、日本全国47都道府県の代表妖怪たちが一堂に会して鬼太郎を助けるという「妖怪四十七士」なる構想までもが後半に持ち上がってきてしまったため、鬼太郎ファミリーはふくらみにふくらむ一方。おまけに地獄の閻魔大王までもが地獄官庁全職員をあげて鬼太郎を応援するという安心のバックアップ体制なんだからと~んでもねぇ。
ただ、鬼太郎がそうするのならこっちだって! と一斉蜂起したのが悪者妖怪勢のみなさんで、さきほどにも触れたバックベアード率いる新生西洋妖怪軍団に「九尾の狐の弟」ことチー率いる中国妖怪軍団に沖縄妖怪アカマタ率いる南方妖怪軍団とよりどりみどりの天湖森夜。
そしてそして、今回やっと名前が出てくるのですが、そんな悪者妖怪チームの中でも特にクールで硬派な雰囲気をはなっていたのが、我らが総大将の「ぬらりひょん一味」だったというわけ!!
はぁ、はぁ……やっとここまできたと思ったら、もうこんな文量っすか!?
ということで、ついに新たなる歴史の奔流に身を投じることとなったぬらりひょん一味の新たなる全容につきましては、また次回ということで。
忘れちゃいけない第5期キーワードは、「過去の歴史のつみかさね」と「ファミリーの巨大化」ね~!!
じぇんじぇんぬらりひょん先生について語ってねぇよ! ま、真の妖怪総大将への覇道は、あせらずゆっくり~ん。
いんや~、この前の土曜日は台風みでぇなとんでもねぇ天気の日だったんだげどよぉ。
そっだらながでも無理して東京に行って人に会ったんだげんとよ、まぁ~いい時間すごせだずね。
そうとう久しぶりに会ったんだよぉ。それもきっかけがこの『長岡京エイリアン』なごんだがらありがでぇこったよぉ。
つ~ぐづぐ続げでよがったもんだなやぁど思ってよぉ~、まんず。
そしたらそっだらごどでひとづ、よっこらせ~のせっどおっぱずめでみっべがね~。すぎな人はよってみでけらっしゃい。
21世紀に入ってしばらくたち、我らがぬらりひょん先生もゲーム、映画、マンガとあらかたのメディアでの活躍を果たしたのですが、「妖怪ぬらりひょん」という存在の変わらぬ知名度を確認することはできたものの、いまひとつ新世紀のあらたなるヴィジョンを打ち出すことができないという物足りなさにさいなまれていました。逆に言えば、それほどに前世紀、特に太平洋戦争終了後の文化の中で成長・拡大してきたイメージには強固なものがあったのです。
「うむむ……時代は情報過多社会。早く21世紀ヴァージョンのわしを提示せねば、あっという間に『昔ブイブイ言わせていた古くさい妖怪』ということでボデコンスーツなみにお払い箱になってしまうわい。そんなことでは妖怪総大将どころか、打倒鬼太郎もままならぬことに……そんなこっちゃいかぁ~ん!!」
悩むぬらりひょん先生でしたが、ついにその問いに答えを出すこととなった場こそが! 「アニメ版『鬼太郎』シリーズ10年周期説」にのっとって始動することとなった、
アニメ第5期『ゲゲゲの鬼太郎』(2007年4月~09年3月 全100話)
だったのであります。萌え萌え猫娘~!!
2011年現在の時点では最新シリーズとなっているこのアニメ第5期をご記憶の方も多いかと思うので、説明は簡単なものにとどめておきたいのですが、「水木しげるの原作マンガへの回帰(と言いつつも紆余曲折あったことはもう触れましたね!)」を標榜した1990年代のアニメ第4期(主演・松岡洋子)の次に世に出ることとなったこの第5期は、またその第4期からの反動ででもあるかのように、随所であのバブリー第3期を想起させるような「悪の妖怪たちとの激しいバトルアクション」を展開させる、かなりハデハデなシリーズとなりました。
これはもう、そのまんま水木ワールドからの自由な飛翔を良しとする作風を意味しており、さらに、第5期のシリーズ構成をつとめたのが『週刊少年ジャンプ』で連載されていた『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』の原作者として有名な三条陸(42歳)と、「平成ウルトラシリーズ」の諸作であの膨大な情報量のウルトラシリーズの集約を試みた脚本家の長谷川圭一(45歳)だったことからも予想がつくように(放送3クール目の第27話からは三条の単独)、過去のアニメ版『鬼太郎』で採用されていた先行作品のリメイクだけではおさまらないような、未だかつてない嵐の予感をさせるものでもあったのです。
同時期にリアルタイムで連載されていた原作マンガをストレートにアニメ化していた第1・2期はさておきまして、それからある程度の歳月が経ってからの制作となった第3・4期は基本的に、「それぞれの時代での物語」として過去の原作を作りかえるというアップデート作業をおこなっていたということはこれまで何度となく言ってきました。第3期はバブルニッポンのかかえていた問題をうまくエピソードに組み込んでいましたし、第4期も不景気ニッポンの「フハッ……」なため息が聞こえてくるような名作エピソードの数々を生んでいたのです。
つまり第3・4期は、パッケージのアレンジ具合に大きな差はあるとは言え、どちらも「偉大なる水木ワールドの骨子をいただく」という姿勢では同じだったと言えるんですね。
ところが! アニメ第5期はど~うもそのパターンにのっとっていないようなエピソードの目白押しだったんですなぁ~。要するに、どこにも「水木テイスト」が残っていないオリジナル脚本ストーリーの分量がハンパなく多いんです。
もちろん、オリジナル脚本のエピソードは以前のシリーズにもあるにはあったのですが(第4期の『ラクシャサ』『言霊使い』『三匹の刺客』など)、あくまでもファン向けの感謝サービスか時間つなぎといった役割の少数にとどまっていたはずです。
でもねぇ。アニメ第5期はのっけの第1話から原作マンガの存在しないエピソードなんですよ。
記念すべき21世紀最初のアニメ『鬼太郎』第1話『妖怪の棲む街』(2007年4月)は、登場するゲスト妖怪「水虎」こそ、原作マンガ(1966年1月発表)で非常に印象的な水と氷の舞い散る名対決を鬼太郎と演じたり、そうかと思えばケロッとカムバックし、中国代表として「世界妖怪ラリー」に参戦したりした経歴のあるおなじみのキャラクターなのですが、ストーリーもデザインもまったく違うオリジナルなものとなっています。
そんなことだったので、ちょっと気になって自分の記憶と確認できるかぎりの資料をひっくり返して調べてみたところ、アニメ第5期は「原作ありエピソード」と「オリジナルエピソード」との配分に、過去シリーズにはついぞなかった驚くべき変化が発生していたのです。
どうしても判断が私そうだい個人のものとなってしまうので、絶対的にこのパーセンテージが正しいとも言い切れないのですが、おおよそはこんな感じ。
アニメ第5期全100話中、
1、水木しげるの原作マンガを比較的忠実にアニメ化したエピソード
……『ゆうれい電車』『牛鬼』『釜鳴り』『地獄流し』など「13話(13%)」
2、水木しげるの原作マンガのゲスト妖怪だけを抽出して内容はほぼオリジナルになっているエピソード
……『水虎』『夜叉』『海座頭』『のびあがり』など「30話(30%)」
3、水木しげるの原作マンガに脇役として登場していた妖怪をメインゲストにすえたオリジナルエピソード
……『がしゃどくろ』『雪女』2話 『グレムリン』など「7話(7%)」
4、水木しげるの原作マンガにまったく登場したことのない妖怪がメインゲストとなった完全オリジナルエピソード
……『沼御前』『しょうけら』『鵺(ぬえ)』『七人ミサキ』など「50話(50%)」
これに驚愕しない『ゲゲゲの鬼太郎』ファンがいるかって話なんでございます。8割以上オリジナルかよ!!
要するに、アニメ第5期『ゲゲゲの鬼太郎』は、それまでの「原作リメイク路線」のアニメシリーズとはまったく趣向の違う「オリジナル続編路線」だったのでございますね。ただただキャラクターのデザインが萌え~になっただけ、とかいう表層だけの変化ではなかったのです。
さぁ、これをもってアニメ第5期の評価をどうするか。
なかなか難しいところですし、原作マンガが大好きなわたくしも申し上げたいことは多々あるんですがァ! この企画はアニメ版『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズの検証じゃなくてあくまでも「ぬらりひょんサーガ」ですので、こういった第5期の果敢な挑戦がどういう結果をもたらしたのかは、それぞれ作品をご覧になったみなさまの判断にお任せしたいと思います。
あの、私は特にイヤだとは思っておりません。ひじょ~に楽しませていただきましたよ! 『ゲゲゲ』ファンとか関係なくてもおもしろい回、けっこうありましたしね。
実際、「原作リメイク」路線に舵をとったとしても、すでにアニメ第3期と4期という大きすぎる先例があったわけでして、「昔の方がよかったなぁ~。」とか言われて大事なところを観てもらえなくなるのではなかろうか、という制作スタッフ陣の考慮もあっての第5期だったんじゃないかとも思えるんです。
シリーズ構成を手がけた三条・長谷川両氏の構築した第5期の「世界観」も、これまでのアニメシリーズにはない、非常に野心的でアグレッシブなものがありました。
今回、この「ぬらりひょんサーガ」に重要なかかわりがあると私が判断した第5期初のこころみは「2つ」あります。
それは、「過去のシリーズの『歴史化』」と、「正義と悪の『集団戦化』」。字ヅラほどこむずかしいもんじゃありません。
まず最初の「過去のシリーズの『歴史化』」というのは、21世紀にリアルタイムの日本で展開されているアニメ第5期の世界から見て、戦後間もない1950年代から始まった「鬼太郎サーガ」の過去の諸作品が同じ歴史上にあったことになっている、ということなんです。
これは、基本的にそれ以前の話がまったく語られず、過去の原作マンガの世界が「ない」ものとしてリセットされていたアニメ第3・4期それぞれの姿勢とはまったくおもむきの異なるものとなっていますよね。
簡単に言うと、1980年代にオカリナムチをビュンビュン振り回して若さゆえのジャスティスを炸裂させていた戸田鬼太郎に、1950年代に誕生した墓場の鬼太郎としての過去はなく、1990年代に口を「3」の字にして昼間っからグーグー寝ていた松岡鬼太郎に、原作やら野沢鬼太郎やら戸田鬼太郎時代の記憶はまったくないという設定になっていたのですが、アニメ第5期に活躍した高山みなみ鬼太郎はどうもそうじゃなかったらしいんだなぁ。
エピソードとしてこのあたりがはっきりと言及されていたのは、第42話『オベベ沼の妖怪かわうそ!』(2008年1月放送)で、それともうひとつ、第32話『上陸!脅威の西洋妖怪』(2007年11月放送)以降、最終回付近にいたるまで鬼太郎ファミリーをおびやかす存在となり続けていた「西洋妖怪軍団」のキャラクター設定にも見逃せないものがありました。
ざっくり説明しますと、アニメ第5期ですっかり番組のレギュラーメンバーとなった妖怪かわうそとの最初の出会いとして、鬼太郎が原作マンガ『オベベ沼の妖怪』(1968年6月発表)の内容を回想しており、第5期の世界で大活躍する西洋妖怪軍団の中核メンバーは、かつて原作マンガ『妖怪大戦争』(1966年4~5月発表)で日本の鬼界ヶ島に殴り込みをかけた西洋妖怪軍団の「子か孫」ということになっているのです(ただし、バックベアードは現役でフランケンシュタインの人造人間も改造された本人)!
そう考えてみると、原作の印象に比べてだいぶ人間なれしてファッショナブルになった猫娘のソフィスティケイトっぷりも、もしかしたらそれだけの社会経験をつみかさねたからってことだったのかも知れませんね。原作じゃあ小学校低学年くらいだった体格も中学生くらいになってたし。半妖怪である猫娘は人間に比べて成長がゆっくりらしいんですが、40年生きてやっと身長が10cm アップって、うれしいんだかうれしくないんだか……
さらには他ならぬ主人公・鬼太郎も、おりに触れては「だいぶ昔から、おそらくは原作マンガどおりの1960年代から活動している」ニュアンスの発言を重ねているのです。
原作では鬼太郎は「1954年生まれ」ですからね。「見た目は子ども、中身は大人」。う~ん、さすがは高山鬼太郎だ!!
さて、もうひとつの「正義と悪の『集団戦化』」のほうがどうなのかと言いますと、これはもう読んで字のごとく、正義チームも悪者チームも、どっちもかなり大人数の徒党を組むようになったっちゅうことなんですな。
これはもう実際に1話だけでもアニメ第5期のエピソードを観ていただければわかるかと思うのですが、まず最初の設定として、鬼太郎ファミリーの人数が増えている!
第5期の鬼太郎ファミリーは、ただ鬼太郎の住んでいる「ゲゲゲの森」にちょいちょい顔を出すツレ何人か、という規模ではなく、さらにその森に隣接している「妖怪横丁」に居住している無数の妖怪たちをも含むようになっているのです。
「妖怪横丁」とは、人間が容易に立ち入ることのできない人間界と地獄とのはざまにある第5期オリジナルの異次元空間なのですが、そこには人間社会にきわめて似たかたちの妖怪の社会があり、妖怪にとっての人間界からの避難スペースであったり交流場所だったりするのです。ちなみに、横丁の実質的なリーダーはそこにある「妖怪長屋」の大家である砂かけ婆のようです。
ともあれ、ここにいる「かわうそ」や「ろくろ首」、「夜行さん」といった妖怪は第5期のレギュラーメンバーとして鬼太郎をサポートしており、特に第26話『妖怪アイドル!?アマビエ』(2007年9月放送)以来この横丁に住み着くこととなった九州出身の予言妖怪アマビエは、原作マンガに1回も登場したことがなかったのにも関わらず、持ち前の押しの強さで第5期屈指の名キャラクターになりおおせることができました。う~ん、「鬼太郎サーガ」のYAZAWA と呼ばせていただきたい。
これに加えて、日本全国47都道府県の代表妖怪たちが一堂に会して鬼太郎を助けるという「妖怪四十七士」なる構想までもが後半に持ち上がってきてしまったため、鬼太郎ファミリーはふくらみにふくらむ一方。おまけに地獄の閻魔大王までもが地獄官庁全職員をあげて鬼太郎を応援するという安心のバックアップ体制なんだからと~んでもねぇ。
ただ、鬼太郎がそうするのならこっちだって! と一斉蜂起したのが悪者妖怪勢のみなさんで、さきほどにも触れたバックベアード率いる新生西洋妖怪軍団に「九尾の狐の弟」ことチー率いる中国妖怪軍団に沖縄妖怪アカマタ率いる南方妖怪軍団とよりどりみどりの天湖森夜。
そしてそして、今回やっと名前が出てくるのですが、そんな悪者妖怪チームの中でも特にクールで硬派な雰囲気をはなっていたのが、我らが総大将の「ぬらりひょん一味」だったというわけ!!
はぁ、はぁ……やっとここまできたと思ったら、もうこんな文量っすか!?
ということで、ついに新たなる歴史の奔流に身を投じることとなったぬらりひょん一味の新たなる全容につきましては、また次回ということで。
忘れちゃいけない第5期キーワードは、「過去の歴史のつみかさね」と「ファミリーの巨大化」ね~!!
じぇんじぇんぬらりひょん先生について語ってねぇよ! ま、真の妖怪総大将への覇道は、あせらずゆっくり~ん。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます