でぃぐだんだんでぃぐだんだん。どうもこんにちは、そうだいでございます~。
いやはや、千葉は朝からとんでもない雨ですよ! これ一日中!? まいったねぇコリャ。
先日、東京に出かけた時に生まれてはじめての「2人カラオケ」に行ってまいりました。2時間だけでしたけど。
いや、ほんと! 1人カラオケ、もしくは3~5人で飲み会のついでになだれこむといったことはしょっちゅうあったんですけども、「2人」という組み合わせだけはポッカリぬけてしまっていたんですなぁ。それのお初にやっとしゃれこんだということだったんですよ。
やっぱ....楽しかったねぇ~!!
当たり前なんですが、1人カラオケだと私としては2時間でいい感じ、3時間でけっこう疲れるというくらいなんですけれど、歌う曲数が2人で分担になるので、そーなると2時間はあっという間でしたねぇ~。楽しかったけど。
ありがたいことに、そ~と~懇意にさせていただいている方との気心の知れた選曲で疾走することができたからこその2人カラオケだったんでね。よかったなぁ~。
今年はどうせ、ほっといても定期的に1人カラオケはやるでしょうから、いつか5人前後かそれ以上でフリータイム、いきたいですねぇ!
その日、気が向いたときにいつでも会えるというわけではないので、その方とはたまりにたまっていたいろんな話をぶちまけて何時間もしゃべくりあっていたのですが、まぁ近況とかそれぞれ打ちこんでいることあたりのつれづれも語りつつ、流れでこんな方のお名前がふいっと出てきました。
「川本真琴さんは、よかったね....」
無論のこと、シンガーソングライターの川本真琴さんのことでありまして、彼女は当然ながら今現在も歌手としての活動をやってらっしゃいますので「よかった」と過去形で語るのははなはだ失礼な話なのですが、私たち2人の話題の中心になったのが「1990年代後半にデビューした時期の川本さん」のことだったので、そのあたりはご勘弁いただきたく。
あっ、もちのろん、川本さんの歌はカラオケでは唄いませんでしたよ!?
っていうか、「唄えない」んだなぁ~、川本さんの歌は。むずかしい。
むずかしいというのは技術上のことも言うまでもなくあるんですけど、もちっと違う理由もあって唄えないような気がするんですよねぇ~。
川本真琴。屋上でやきそばパンをかじりながら地上を見おろす背徳の堕天使。
時あたかも1996年。
ソニーミュージックのオーディションで見いだされた彼女は5月にリリースした1st シングル『愛の才能』でデビューしたのですが、かなり独特で不可思議な雰囲気を持ったこの曲は大いに注目を集めました。のっけからすんごく自分の世界を確立している新人さんだなぁ、と。
その後も、あのアニメ『るろうに剣心』の2代目オープニング曲でもあった1997年3月発表の3rd シングル『1/2 』がセールス80万枚を記録するけっこうなヒットとなり、その3ヵ月後に満を持してリリースされた1st アルバム『川本真琴』にいたっては売り上げ枚数100万枚超えのミリオンヒットとなりました。まぁとんでもないもんです。
以降は自身の作曲ペースにあわせて寡作な状態が続いていたのですが、音楽活動は継続するものの、2001年から約10年間「川本真琴」名義の使用を休止するなど独自の道を歩んでおられたようです。最近は2010年に「川本真琴」を復活させて3rd アルバム『音楽の世界にようこそ』と自身初のベストアルバムを連続リリース、2011年には11st シングル『フェアリーチューンズ』を世に出すなど、ふたたび新曲の制作を意欲的におこなうようになってきておられるようです。今年2012年はどう出ますか!?
そんな川本さんの1st アルバム『川本真琴』。今のところ私が持っている彼女の楽曲CD はこれだけなんですが、特別ファンというわけでもない私でも、なかなかそう簡単に手ばなす気になれない大好きなアルバムです。
なんかですね、アルバムにつまっている内容の濃度がこいいこいい!! 全10曲という常識的な収録曲数の中に圧縮されている情報が非常識的に濃密なんですなぁ。凡百のCD アルバムに比べたら、小学生が夏休みの最終日にうろおぼえでみつくろった30日ぶんの絵日記と最新デジカメいっぱいに撮った関ヶ原合戦くらいの差があるんです。いや....関ヶ原だと途中から火縄銃の煙硝でなんにも写らなくなっちゃうな。じゃあ、壇ノ浦で!!
この『川本真琴』に収録されている楽曲は、10曲すべての作詞と『愛の才能』をのぞいた9曲の作曲を川本さんが担当しています。アルバムの歌詞カードでは『愛の才能』の作曲も川本さんによるとされているのですが、現在の公式資料ではそうとはなっていないようですね。
まずはとにかく川本さんの歌詞世界の「カメラワーク」のよさに目を見張ってしまいます。
「ボンネットで キスなんかしてるカップル
すれちがって 昼間の明かり抜け出したら
キスしよう」 (『LOVE & LUNA 』より)
「ジェットコースター ベルトしないで
死んじゃうかもしんない あの感覚で
10分後には キスしてるかもしんない」 (『10分前』より)
「そばにいたいよ 君の彼女で
明日変わるね あたし変わるよ
だからきっと さよならできる
でもベランダではかない あたしはいったい?」 (『タイムマシーン』より)
「ひとりぼっちで屋上 やきそばパンを食べたい」 (『やきそばパン』より)
決してわかりやすくはないんですけど、な~んか惹きつける食材がちりばめられているって感じといいますか。聴けば聴くほど、読めば読むほどに味わい深いんですねー。
小説なんじゃないかってくらいに、その世界に取り囲まれた主人公の心のうつろいが、極限までに省略されてはいるけれども、たしかに丁寧につづられているんですね。テンポの速い曲調や早口な唄い方から難解な印象を持つ方もいるかもしれないのですが、歌詞をいろどっている単語自体は非常にストレートでわかりやすいものばかり! ただし、聴く人によって解釈がちがってきそうな文章のあいまいさはひとすじ縄ではいきません。
「私はこう思いました~。」という簡単な文章には逃げずに、うま~く含みを持たせたセリフや行動で主人公の心情をうかがわせるそのテクニック!
あとはもう、なんといっても全体に流れるその「うしろめたさ」!!
別に犯罪をおかしているってわけでもない、ただ普通に生きているだけなのに、なんとな~く周囲の視線が気になるっていう、その繊細な背徳感ね。
「あの子にばれずに 彼にもばれずにキスしようよ
あしたの1限までには 何度もキスしようよ」 (『愛の才能』より)
思春期かって!! そう、『川本真琴』はEVERYDAY 思春期のグラフィティなんです。
川本さんの『川本真琴』はほんとに「きみ、大丈夫?」ってくらいに「なんとなく自分は間違った生き方をしている」といった考え方が全曲に共通してチラリホラリしています。
もうなんか毎日、道を1歩1歩あるくたんびに「生まれてすみません!」「生まれてすみません!」って小さく叫んでいるていですね。
「この呪いとく呪文が 見つかんない
いつのまにか 僕の中から黒いシッポ育ってく」 (『STONE 』より)
「あたし目が覚めたら またあたしだった」 (『やきそばパン』より)
「唇と唇 目と目と 手と手
神様は なにも禁止なんかしてない
愛してる」 (『1/2 』より)
思春期ですね~。春ですね~。
朝、目が覚めるたびになにかガッカリしてしまう、そのめんどくささ!
こういった背徳感が、たいていの人の中で決定的に自分自身の人生を否定するきっかけにつながらないのは当たり前で、現に他ならぬ私そうだいも、恥ずかしい中高生時代には、「オレはなんという変態なんだ....果たしてちゃんとした大人になれるんだろうか?」という、実に他愛もない悩みにもならない悩みに日々、悶々としていました。でも、こうやって今も生きているんですね。
今でこそ笑いとばせる「それ普通!」な精神・肉体の変化ではあったのですが、当時の少年少女にとっては脳みその90% 以上を占める大問題だった、ってこと、思春期にはいっぱいあったじゃないですか。
そういったあたりの「全身ヒリヒリやけど」みたいな繊細な時代の心情を『川本真琴』は克明にカメラにおさめていると思うんです。
当然ながらほとんどの人は、人類の持つ最大の必殺技「慣れるか忘れる。」を発動させてそういった悩ましい時期を通過していき、一人前の大人になっていくのでしょうが、問題の大きさが実際にどのくらいなのかは別にしても、その時に味わった切迫感や息苦しさは多くの人の記憶に残っているはずなのです。
そのあたりの敏感な部分を非常にサディスティックに、かつチャーミングに掘り起こしたのが『川本真琴』というアルバムなんじゃないかと思うんだぁ。
きれいにつくろわれた「青春」じゃなくて、それなりのベタつき感やダサさのある「思春期」の世界なんですね。
その上、あろうことか川本さんは、みずからがあたかも「思春期の使い」ででもあるかのようなそぶりで、歌詞の世界へ聴く者を引き入れようと手まねきをしてくるのです。
「『成長しない』って約束じゃん」
「いつか遠くで 知らない大人になる
そんなアリガチ やだよ」 (『愛の才能』より)
「明日起こること みんな
ふたりじゃいらんない それぞれさ
バス停が見つかんないといいなって ちょっとだけ思っていた」 (『DNA 』より)
「10代のすみっこ 君といっしょにタイムマシーン
ずっと引っかかっていたいと思ってた」 (『タイムマシーン』より)
「未来はいつも難しい
どうして走り続けたら なにか忘れてくの」 (『ひまわり』より)
怖いですね~。そんなのムリなんですけど!?
成長しない、忘れないままでは生きていけないのが人間なのよねェ。
つまり、『川本真琴』は「大人になる」、「忘れる」、「慣れる」、「いなす」、「かしこくなる」などといった道をたどった人たちを、それぞれの過去から告発するという恐るべきコンセプトのアルバムになっているのです。こえぇ~。
いったい誰が告発するというのか?
それは主体は言うまでもなく歌手の川本さんなのでしょうが、100% 彼女自身なのではなく彼女の声を借りた、おそらくは聴く人が遠い過去に置き去りにしてきてしまった、成長していない当時の姿のままの「彼女」であり「彼氏」であり「ともだち」なのではないでしょうか。
過去から呼ぶ声!! な、なんてうしろめたいアルバムなんだ....スティーヴン=キングの小説みたい。
まぁ、とにかくすごいのは、それを22歳でデビューする時点まで忘れずにあたため続けられていた川本さんの驚くべき繊細さですよね。そりゃまぁ、見事な再現性です。
最初にも言ったように、不勉強なことに私は『川本真琴』の川本さんしか知らないので、そこで圧倒的な反響を獲得した「その後」の彼女が、いったいどういった音楽性に進んでいったのかは残念ながら存じあげません。
しかし、おそらくはこの『川本真琴』のために自身を取り巻く環境が大きく変わってしまった以上、彼女自身も『川本真琴』の世界にはいられなくなってしまったんじゃないかと思うんですな。いつまでも「不思議な堕天使」ではいられないわけで。
『川本真琴』もいいんですけど、ちょっとその次の楽曲も聴いてみたいなぁ!
ところで、この『川本真琴』に収録された数々の名曲の中でも、特に有名なものに『愛の才能』があるのですが、この曲だけは他の曲とは一味違った、さらに不思議な魅力があるんです。
なにが不思議って、川本さんのハイテンションな歌詞のまくしたてと、最初っから最後まで冷徹にかき鳴らされ続けるギターとの距離感がものすごく絶妙にはなれてるんだ。
まさしくここには、「キスしよう! なんでもいいからキスしよう!!」と鼻息あらげに大人げないことを連呼する娘ッコを、
「若いねベイベェ。」
と冷静に見つめてわらっているオトナの男のシルエットが明瞭に見えているのです。
むろんのこと、『愛の才能』のギターをつとめていたのは、川本さんのデビュー曲でもあった『愛の才能』だけを作曲プロデュースしていた「天才」岡村靖幸さんであります。
岡村さんだ~!! 芸ィの~ためなァら~法をもおかすゥ~♪
私そうだい自身は、それほど岡村さんのことが好きなのではないのですが、それは「ファンになるとしんどそうだから。」です。
とにかく、ここでの岡村さんのギターは、川本さんの楽曲を圧倒的なテクニックと存在感でいろどりつつも、いずれその世界からも去らざるを得なくなる彼女の未来を非常にシニカルに予言している味わいを持っているのです。スナフキンのごときそのただずまい。
やっぱり岡村さんは天才だ。デビューの時点で川本さんの世界観を100% 見通していたとは。アンタは榎木津礼二郎か!?
いや~、アルバム『川本真琴』はすばらしい名盤ですよ。写真や映像でもなかなか記録におさめることのできない空気を見事に採集しているおどろくべきタイムカプセルです。
でも、聴くたんびに思うんですけど、
思春期はほんとに、めんどくさいね~。
いやはや、千葉は朝からとんでもない雨ですよ! これ一日中!? まいったねぇコリャ。
先日、東京に出かけた時に生まれてはじめての「2人カラオケ」に行ってまいりました。2時間だけでしたけど。
いや、ほんと! 1人カラオケ、もしくは3~5人で飲み会のついでになだれこむといったことはしょっちゅうあったんですけども、「2人」という組み合わせだけはポッカリぬけてしまっていたんですなぁ。それのお初にやっとしゃれこんだということだったんですよ。
やっぱ....楽しかったねぇ~!!
当たり前なんですが、1人カラオケだと私としては2時間でいい感じ、3時間でけっこう疲れるというくらいなんですけれど、歌う曲数が2人で分担になるので、そーなると2時間はあっという間でしたねぇ~。楽しかったけど。
ありがたいことに、そ~と~懇意にさせていただいている方との気心の知れた選曲で疾走することができたからこその2人カラオケだったんでね。よかったなぁ~。
今年はどうせ、ほっといても定期的に1人カラオケはやるでしょうから、いつか5人前後かそれ以上でフリータイム、いきたいですねぇ!
その日、気が向いたときにいつでも会えるというわけではないので、その方とはたまりにたまっていたいろんな話をぶちまけて何時間もしゃべくりあっていたのですが、まぁ近況とかそれぞれ打ちこんでいることあたりのつれづれも語りつつ、流れでこんな方のお名前がふいっと出てきました。
「川本真琴さんは、よかったね....」
無論のこと、シンガーソングライターの川本真琴さんのことでありまして、彼女は当然ながら今現在も歌手としての活動をやってらっしゃいますので「よかった」と過去形で語るのははなはだ失礼な話なのですが、私たち2人の話題の中心になったのが「1990年代後半にデビューした時期の川本さん」のことだったので、そのあたりはご勘弁いただきたく。
あっ、もちのろん、川本さんの歌はカラオケでは唄いませんでしたよ!?
っていうか、「唄えない」んだなぁ~、川本さんの歌は。むずかしい。
むずかしいというのは技術上のことも言うまでもなくあるんですけど、もちっと違う理由もあって唄えないような気がするんですよねぇ~。
川本真琴。屋上でやきそばパンをかじりながら地上を見おろす背徳の堕天使。
時あたかも1996年。
ソニーミュージックのオーディションで見いだされた彼女は5月にリリースした1st シングル『愛の才能』でデビューしたのですが、かなり独特で不可思議な雰囲気を持ったこの曲は大いに注目を集めました。のっけからすんごく自分の世界を確立している新人さんだなぁ、と。
その後も、あのアニメ『るろうに剣心』の2代目オープニング曲でもあった1997年3月発表の3rd シングル『1/2 』がセールス80万枚を記録するけっこうなヒットとなり、その3ヵ月後に満を持してリリースされた1st アルバム『川本真琴』にいたっては売り上げ枚数100万枚超えのミリオンヒットとなりました。まぁとんでもないもんです。
以降は自身の作曲ペースにあわせて寡作な状態が続いていたのですが、音楽活動は継続するものの、2001年から約10年間「川本真琴」名義の使用を休止するなど独自の道を歩んでおられたようです。最近は2010年に「川本真琴」を復活させて3rd アルバム『音楽の世界にようこそ』と自身初のベストアルバムを連続リリース、2011年には11st シングル『フェアリーチューンズ』を世に出すなど、ふたたび新曲の制作を意欲的におこなうようになってきておられるようです。今年2012年はどう出ますか!?
そんな川本さんの1st アルバム『川本真琴』。今のところ私が持っている彼女の楽曲CD はこれだけなんですが、特別ファンというわけでもない私でも、なかなかそう簡単に手ばなす気になれない大好きなアルバムです。
なんかですね、アルバムにつまっている内容の濃度がこいいこいい!! 全10曲という常識的な収録曲数の中に圧縮されている情報が非常識的に濃密なんですなぁ。凡百のCD アルバムに比べたら、小学生が夏休みの最終日にうろおぼえでみつくろった30日ぶんの絵日記と最新デジカメいっぱいに撮った関ヶ原合戦くらいの差があるんです。いや....関ヶ原だと途中から火縄銃の煙硝でなんにも写らなくなっちゃうな。じゃあ、壇ノ浦で!!
この『川本真琴』に収録されている楽曲は、10曲すべての作詞と『愛の才能』をのぞいた9曲の作曲を川本さんが担当しています。アルバムの歌詞カードでは『愛の才能』の作曲も川本さんによるとされているのですが、現在の公式資料ではそうとはなっていないようですね。
まずはとにかく川本さんの歌詞世界の「カメラワーク」のよさに目を見張ってしまいます。
「ボンネットで キスなんかしてるカップル
すれちがって 昼間の明かり抜け出したら
キスしよう」 (『LOVE & LUNA 』より)
「ジェットコースター ベルトしないで
死んじゃうかもしんない あの感覚で
10分後には キスしてるかもしんない」 (『10分前』より)
「そばにいたいよ 君の彼女で
明日変わるね あたし変わるよ
だからきっと さよならできる
でもベランダではかない あたしはいったい?」 (『タイムマシーン』より)
「ひとりぼっちで屋上 やきそばパンを食べたい」 (『やきそばパン』より)
決してわかりやすくはないんですけど、な~んか惹きつける食材がちりばめられているって感じといいますか。聴けば聴くほど、読めば読むほどに味わい深いんですねー。
小説なんじゃないかってくらいに、その世界に取り囲まれた主人公の心のうつろいが、極限までに省略されてはいるけれども、たしかに丁寧につづられているんですね。テンポの速い曲調や早口な唄い方から難解な印象を持つ方もいるかもしれないのですが、歌詞をいろどっている単語自体は非常にストレートでわかりやすいものばかり! ただし、聴く人によって解釈がちがってきそうな文章のあいまいさはひとすじ縄ではいきません。
「私はこう思いました~。」という簡単な文章には逃げずに、うま~く含みを持たせたセリフや行動で主人公の心情をうかがわせるそのテクニック!
あとはもう、なんといっても全体に流れるその「うしろめたさ」!!
別に犯罪をおかしているってわけでもない、ただ普通に生きているだけなのに、なんとな~く周囲の視線が気になるっていう、その繊細な背徳感ね。
「あの子にばれずに 彼にもばれずにキスしようよ
あしたの1限までには 何度もキスしようよ」 (『愛の才能』より)
思春期かって!! そう、『川本真琴』はEVERYDAY 思春期のグラフィティなんです。
川本さんの『川本真琴』はほんとに「きみ、大丈夫?」ってくらいに「なんとなく自分は間違った生き方をしている」といった考え方が全曲に共通してチラリホラリしています。
もうなんか毎日、道を1歩1歩あるくたんびに「生まれてすみません!」「生まれてすみません!」って小さく叫んでいるていですね。
「この呪いとく呪文が 見つかんない
いつのまにか 僕の中から黒いシッポ育ってく」 (『STONE 』より)
「あたし目が覚めたら またあたしだった」 (『やきそばパン』より)
「唇と唇 目と目と 手と手
神様は なにも禁止なんかしてない
愛してる」 (『1/2 』より)
思春期ですね~。春ですね~。
朝、目が覚めるたびになにかガッカリしてしまう、そのめんどくささ!
こういった背徳感が、たいていの人の中で決定的に自分自身の人生を否定するきっかけにつながらないのは当たり前で、現に他ならぬ私そうだいも、恥ずかしい中高生時代には、「オレはなんという変態なんだ....果たしてちゃんとした大人になれるんだろうか?」という、実に他愛もない悩みにもならない悩みに日々、悶々としていました。でも、こうやって今も生きているんですね。
今でこそ笑いとばせる「それ普通!」な精神・肉体の変化ではあったのですが、当時の少年少女にとっては脳みその90% 以上を占める大問題だった、ってこと、思春期にはいっぱいあったじゃないですか。
そういったあたりの「全身ヒリヒリやけど」みたいな繊細な時代の心情を『川本真琴』は克明にカメラにおさめていると思うんです。
当然ながらほとんどの人は、人類の持つ最大の必殺技「慣れるか忘れる。」を発動させてそういった悩ましい時期を通過していき、一人前の大人になっていくのでしょうが、問題の大きさが実際にどのくらいなのかは別にしても、その時に味わった切迫感や息苦しさは多くの人の記憶に残っているはずなのです。
そのあたりの敏感な部分を非常にサディスティックに、かつチャーミングに掘り起こしたのが『川本真琴』というアルバムなんじゃないかと思うんだぁ。
きれいにつくろわれた「青春」じゃなくて、それなりのベタつき感やダサさのある「思春期」の世界なんですね。
その上、あろうことか川本さんは、みずからがあたかも「思春期の使い」ででもあるかのようなそぶりで、歌詞の世界へ聴く者を引き入れようと手まねきをしてくるのです。
「『成長しない』って約束じゃん」
「いつか遠くで 知らない大人になる
そんなアリガチ やだよ」 (『愛の才能』より)
「明日起こること みんな
ふたりじゃいらんない それぞれさ
バス停が見つかんないといいなって ちょっとだけ思っていた」 (『DNA 』より)
「10代のすみっこ 君といっしょにタイムマシーン
ずっと引っかかっていたいと思ってた」 (『タイムマシーン』より)
「未来はいつも難しい
どうして走り続けたら なにか忘れてくの」 (『ひまわり』より)
怖いですね~。そんなのムリなんですけど!?
成長しない、忘れないままでは生きていけないのが人間なのよねェ。
つまり、『川本真琴』は「大人になる」、「忘れる」、「慣れる」、「いなす」、「かしこくなる」などといった道をたどった人たちを、それぞれの過去から告発するという恐るべきコンセプトのアルバムになっているのです。こえぇ~。
いったい誰が告発するというのか?
それは主体は言うまでもなく歌手の川本さんなのでしょうが、100% 彼女自身なのではなく彼女の声を借りた、おそらくは聴く人が遠い過去に置き去りにしてきてしまった、成長していない当時の姿のままの「彼女」であり「彼氏」であり「ともだち」なのではないでしょうか。
過去から呼ぶ声!! な、なんてうしろめたいアルバムなんだ....スティーヴン=キングの小説みたい。
まぁ、とにかくすごいのは、それを22歳でデビューする時点まで忘れずにあたため続けられていた川本さんの驚くべき繊細さですよね。そりゃまぁ、見事な再現性です。
最初にも言ったように、不勉強なことに私は『川本真琴』の川本さんしか知らないので、そこで圧倒的な反響を獲得した「その後」の彼女が、いったいどういった音楽性に進んでいったのかは残念ながら存じあげません。
しかし、おそらくはこの『川本真琴』のために自身を取り巻く環境が大きく変わってしまった以上、彼女自身も『川本真琴』の世界にはいられなくなってしまったんじゃないかと思うんですな。いつまでも「不思議な堕天使」ではいられないわけで。
『川本真琴』もいいんですけど、ちょっとその次の楽曲も聴いてみたいなぁ!
ところで、この『川本真琴』に収録された数々の名曲の中でも、特に有名なものに『愛の才能』があるのですが、この曲だけは他の曲とは一味違った、さらに不思議な魅力があるんです。
なにが不思議って、川本さんのハイテンションな歌詞のまくしたてと、最初っから最後まで冷徹にかき鳴らされ続けるギターとの距離感がものすごく絶妙にはなれてるんだ。
まさしくここには、「キスしよう! なんでもいいからキスしよう!!」と鼻息あらげに大人げないことを連呼する娘ッコを、
「若いねベイベェ。」
と冷静に見つめてわらっているオトナの男のシルエットが明瞭に見えているのです。
むろんのこと、『愛の才能』のギターをつとめていたのは、川本さんのデビュー曲でもあった『愛の才能』だけを作曲プロデュースしていた「天才」岡村靖幸さんであります。
岡村さんだ~!! 芸ィの~ためなァら~法をもおかすゥ~♪
私そうだい自身は、それほど岡村さんのことが好きなのではないのですが、それは「ファンになるとしんどそうだから。」です。
とにかく、ここでの岡村さんのギターは、川本さんの楽曲を圧倒的なテクニックと存在感でいろどりつつも、いずれその世界からも去らざるを得なくなる彼女の未来を非常にシニカルに予言している味わいを持っているのです。スナフキンのごときそのただずまい。
やっぱり岡村さんは天才だ。デビューの時点で川本さんの世界観を100% 見通していたとは。アンタは榎木津礼二郎か!?
いや~、アルバム『川本真琴』はすばらしい名盤ですよ。写真や映像でもなかなか記録におさめることのできない空気を見事に採集しているおどろくべきタイムカプセルです。
でも、聴くたんびに思うんですけど、
思春期はほんとに、めんどくさいね~。
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