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アメリカを正しく認識する 建国までの歴史概略-27 南・東ヨーロッパからの新移民 大西洋越え

2024-04-07 13:02:58 | ヨーロッパ・ロシア・中東・アメリカ全般、歴史・文化・食文化・芸術・建築

アメリカを正しく認識する 建国までの歴史概略-26 アイルランド気質https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/570dbd290f6fb02fd4d4279a6f9571b0
からの続き

 

 

大西洋越え

膨大な人々の移動を可能にしたのが、19世紀の運輸革命でした。 植民地時代には、ヨーロッパの貧民が大西洋を越える費用など自分で支払えるなど思いもよりませんでした。

年季契約奉公人は、渡航費用を前借りする代償として4~7年間も隷属労働に服さねばならなかったのです。

 

しかし、国際貿易の発展が革命的変化をもたらします。 帆船時代には大部分の移民にとって旅客船での渡航は贅沢過ぎたから、彼らは貨物船を利用しました。

アメリカは農産物をヨーロッパに輸出し、ヨーロッパから工業製品を輸入しました。 

農産物は工業製品に比べてひどくかさばったので、アメリカに向かう船にはたっぷりと余裕があり、船会社は船客として移民を歓迎し、競争は激化し、船賃は下がりました。

さらに、前払い渡航制度、すなわち先にアメリカに来ている者が親族や友人に切符を買って故郷に送る制度が移住をさらに容易にしました。

 

それでも渡航は厳しい試練でした。 帆船による渡航は最低6週間を擁しました。 それも風と天候次第です。

逆風の場合はその2倍の期間がかかることもありました。 

船は元来貨物船であり、旅客の運輸に適していなかったので、移民たちは暗くて風通しの悪い不衛生な大部屋に何百人と詰め込まれ、長い渡航で体は衰弱し、疫病が流行ることもしばしばでした。

 

しかし、蒸気船の出現で事態は大幅に改善されます。 1850年代に蒸気船が大西洋航路に登場すると、事態は大きく変わります。

 

大英帝国の繁栄とプレートテクニクスhttps://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/285caf17b19e27612c1d00df5871c377

 

1856年に移民の96%は帆船出来ましたが、1867年にはイギリスの港からアメリカ合衆国に到着した旅客の90%以上は蒸気船で来ています。

蒸気船での渡航日数は1870年代には、リバプールからニューヨークまで早くて10日間、ナポリからは14日間となり、渡航費用も大幅に下がっていきました。

1860~1870年年代には、三等運賃で平均30ドルでしたが、1890年代(明治初期)には15ドルで渡航できることもありました。

 

ハンガリーのある出稼ぎ労働者が支払った運賃は、文献によれば、ハンブルグ~ニューヨーク間で往復40ドルだったそうです。

彼はアメリカで炭鉱労働者として働きましたが、炭鉱では坑内作業で1日2ドル、郊外作業で1日に
1.3ドルほど稼げたので、大西洋を幾度も往復する出稼ぎが可能となったのです。

 

 

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半導体株、終わらない宴 生成AIにプロもなお強気

2024-04-07 10:08:24 | エレクトロニクス・自動車・通信・半導体・電子部品・素材産業

3月中旬、米西部カリフォルニア州サンノゼは熱気に満ちていた。

米半導体大手のエヌビディアが開発者向けの大規模なイベントで、データ処理能力を従来品の数十倍に高めた高性能半導体の新商品を発表。

 

登壇したジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)が「世界中の産業が集まっている。驚くべきことだ」と宣言するほど、会場は盛り上がりを見せていた。

半導体市場が巻き込む世界の熱狂の渦が止まりそうにない。

 

業界団体のSEMIによると、世界市場は2030年までに1兆ドル(約151兆円)と22年の5860億ドルから倍近くに拡大する。呼応するように米株式市場でダウ工業株30種平均は3月28日、3万9807ドルと史上最高値を付けた。

けん引するのがエヌビディアだ。生成AI(人工知能)を稼働させるために必要な、高性能の半導体で世界シェアの8割を握るとされる半導体界の巨人だ。

 

旺盛な半導体需要を反映し、24年1月期の営業利益は約330億ドルと前の期比で大幅に拡大し、株価も1年で3倍超にまで上昇した。

 

日本市場にも恩恵

日本市場も恩恵を受ける。日経平均株価は3月22日に終値で4万888円と史上最高値を更新した。

半導体の製造工程に欠かせない製造装置でトップシェアのメーカーを数多く抱え、東京証券取引所に上場する主要な半導体関連銘柄で構成する「日経半導体株指数」の昨年末からの上昇率は日経平均を約9ポイント上回る。

 

半導体素材の表面を加工する前工程の「エッチング」関連の製造装置で世界で高いシェアを持つ東京エレクトロンの株価は昨年末から4日までに5割強上昇。

24年3月期の連結純利益は減少を見込むが「在庫調整も進み、生成AIブームを受け、今後の業績回復が進む」(モルガン・スタンレーMUFG証券の和田木哲哉氏)。

 

後工程である半導体素材の研磨やカッティングで世界トップシェアを持つディスコ株も昨年末から約6割上昇。

半導体デバイスが正常に動くかをテストする検査装置大手のアドバンテストも約3割高い。「いずれも海外の半導体メーカーを主要な顧客に持ち、生成AI市場の拡大とともに業績拡大が見込める」(楽天証券経済研究所の今中能夫氏)

 

「日本の『7人の侍』は」――。ゴールドマン・サックス証券がリポートで米マイクロソフトや米アップルなどの総称である「マグニフィセント7」の日本版として、トヨタ自動車SUBARUなど自動車銘柄と並び、東エレク、ディスコ、アドテストを挙げるなど海外勢の半導体銘柄への関心も高い。

国内には半導体の製造工程で使う研磨材や放熱性に優れた基板など、ニッチな製品を手掛ける企業も多い。「世界でトップシェアを持つ企業でも株価に割安感がある企業が存在する。

 

市場が拡大する中で投資妙味がある」(三井住友トラスト・アセットマネジメントの佐相兼呂ファンドマネジャー)

 


過熱感の指摘も

宴(うたげ)は続くのか。QUICKコンセンサスによると、東エレク株が4日の3万9480円より上昇すると予想するアナリストは7割以上。先行きを楽観視する向きは多い。

ただし過熱感を指摘する声も出てきた。ある国内証券のアナリストは「エヌビディアと比較して、国内の半導体銘柄の株価上昇はさすがに行き過ぎに映る」と指摘する。

 

エヌビディアの営業利益は2倍以上に伸びる一方「東エレクやディスコは業績が堅調とはいえ同じ勢いはない」。

23年は在庫調整の影響で停滞したPCやスマートフォン向けの出荷の回復への期待が「すでに織り込まれているはずだが、材料視されてしまっている」(三井住友DSアセットマネジメントの金子将大シニアファンドマネージャー)と、実力以上に半導体銘柄の株価が上昇している可能性を指摘する声もある。

 

半導体銘柄は今後、どうなるか。運用担当者やアナリストに論戦形式で語ってもらった。

 

一段の上値余地」との見方多く

日経平均株価の最高値更新をけん引する半導体関連銘柄。東京エレクトロンやディスコなど代表銘柄の昨年末からの株価上昇率は5割以上に達する。
 
市場拡大期待から「一段の上値余地がある」との見方が多い一方で、さらなる利益成長に死角はないか。業界に詳しい識者に聞いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
和田木氏「製造装置メーカーの目標株価引き上げ」



モルガン・スタンレーMUFG証券アナリストの和田木哲哉氏
 
 

半導体製造装置株は急ピッチで上昇しているが、過熱感は乏しい。

3月に東エレクやディスコなど主要な製造装置メーカーの目標株価を引き上げた。上昇余地はまだあると考えている。

 

生成人工知能(AI)の登場で半導体市場は新しい成長ステージに入った。市場は急速に拡大する見通しだ。

電子情報技術産業協会(JEITA)によると、世界の生成AI市場は2023年の106億ドル(約1兆6000億円)から、30年には2110億ドルと約20倍に拡大する見込みだ。生成AI向けの半導体市場も並行して拡大する見込みで、その恩恵を製造装置メーカーも受けるだろう。

 

成長市場では収益機会もあるが、企業同士の競争も激しくなるとの見方もある。しかし、日本の製造装置メーカーは技術的な優位性から、競争が激しい業界でもさらに市場シェアを拡大するとみている。

例えば、半導体の前工程で使う製造装置で世界的なシェアを持つ東エレクだ。

 

データを長期保存できる、3次元NAND型フラッシュメモリーの性能を高めるうえで重要な「エッチング」工程における新技術を開発。同工程向け装置のシェア拡大が期待できる。

我々の推計によると、同社のエッチング装置の世界シェアは2割強だ。シェアは35年までに35%に拡大する可能性がある。

 

23年3月期の東エレクのエッチング装置の売上構成比は3割強。同装置のシェアが11年間で35%に伸びれば、売上成長率を年平均1.5%押し上げる効果があるとみている。

市場はシェア拡大については株価に織り込んでおらず、一段の株価押し上げ要因となるだろう。

 

半導体の後工程にあたる半導体ウエハーの削りや磨き、切断分野の装置に強みを持つディスコにも期待したい。

パワー半導体などに用いる炭化ケイ素(SiC)を材料にする装置への引き合いが非常に強い。同社によると、この分野でのシェア100%も可能だが生産が追いつかないという。

 

生成AI向けの半導体は微細化が進み、工程はますます複雑になっている。

日本の半導体製造装置メーカーは、この分野で数十年にわたる技術の蓄積があり、大手の半導体メーカーからの信頼も厚い。市場が拡大する中で、技術力と信頼で確実にシェアを伸ばすだろう。

 
 
佐相氏「基板のMARUWAに投資妙味」
 
 
三井住友トラスト・アセットマネジメントファンドマネジャーの佐相兼呂氏
 

半導体市場の拡大は一過性のものではない。生成人工知能(AI)の登場により、今後も市場拡大は続くとみる。

一方、日経平均株価の主要な構成銘柄である半導体製造装置の株価は、米エヌビディアの好決算を受けて、年初から急ピッチで上昇してきた。少なくとも割安感が薄れていることは否めない。

 

半導体製造に不可欠な素材や部材などの製造販売を手掛ける銘柄に注目している。例えば素材や部材は、半導体の基板材料を製造する企業だったり、半導体の製造過程で素材を研磨する際に使用する「研磨剤」のメーカーだったりする。

世界的に高いシェアを持っているにもかかわらず、日経平均に比べても株価の上昇率が鈍く、製造装置と比べ明らかに「出遅れ感」がある。

 

例えば、半導体の研磨工程で用いる研磨材大手のフジミインコーポレーテッド。昨年末からの株価上昇率は約1割にとどまり、投資妙味がある。

同社の研磨剤には、世界中にコアなユーザーがおり業界では圧倒的な存在感だ。一部商品は世界シェアは9割近くを誇る。

 

同社は大規模な投資も計画している。

日本と米国、台湾で半導体デバイスの製造工程で使う研磨剤の工場やラインを新設する。同社が強みを持つ半導体部材のウエハーに回路を形成する過程で発生した凹凸を平たんにする研磨剤「CMPスラリー」を増産する予定だ。

 

電子部品などに使う放熱性に優れた基板で高いシェアを持つMARUWAも魅力的だ。昨年末からの株価上昇率は約2割だ。

昨年末には愛知県瀬戸市で生成AI向け基板の生産工場を新規稼働するなど、収益拡大が見込まれる。

 

国内の主要な化学メーカーも半導体素材を手掛けている。

例えば、レゾナック・ホールディングスは半導体チップのパッケージング時に使用される様々な材料において世界トップクラスのシェアを有する。信越化学工業も半導体の基盤となるシリコンウエハーを製造。いずれも半導体以外に化学品事業を持っており、収益の安定性が期待できる。

 

半導体の部素材メーカーは製造装置以上に黒子のイメージが強く、ニッチな業界だ。市場の拡大とともにこの分野にも注目が集まる可能性は高いとみている。

 
 
 
斎藤氏「スマホ需要、中国・欧州にリスク」
 


岩井コスモ証券シニアアナリストの斎藤和嘉氏
 
 

半導体製造装置の先行きを見る上で人工知能(AI)サーバーなどに加えてスマートフォンやパソコン(PC)の需要動向も重要だ。

世界のスマホ出荷は23年10〜12月に前年同期比プラスに転じ、上向く兆しはある。

 

PCではAIを搭載した製品による需要喚起に加え、25年にかけて米マイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ10」のサポート終了に伴う買い替え需要が出てくるだろう。

中国と欧州の景気が弱いのはリスクだ。4月から5月にかけて各社の決算で発表される中華スマホの24年1〜3月の出荷動向には注目している。

 

3月発表の米メモリー大手マイクロン・テクノロジーの業績をみてもスマホ向けは伸びていることから、スマホメーカーは製品のつくり込みをしているはずだ。

仮に消費者の需要が伸びずに在庫がたまれば、スマホメーカーも生産計画を引き下げ、半導体メーカーにも打撃となる。過去にも起こったことだ。

 

24年の半導体装置市場への影響も大きいメモリー大手は、設備投資に慎重だ。

それでもマイクロンや韓国SKハイニックスなどの売上高に対する設備投資の比率は歴史的な低水準にあり、時期は読みづらいが、投資拡大への条件は整いつつある。

 

AI関連以外のデータセンター向け半導体は勢いを欠くが、底入れの兆しがある。足元で弱含む自動車や産業機器向け半導体も、日本の半導体装置大手への影響は大きくない。

日米欧など各国の政府支援のもとで続く半導体工場建設ラッシュについては、全くリスクがないとは言えない。

 

建物は大方は計画通りに建設されるとみられる一方、製造装置を入れるタイミングは最終需要などの動向に影響されそうだ。

ただ半導体サプライチェーン(供給網)見直しの流れは変わらないため、時期が後にずれることはあっても計画そのものがキャンセルされることはないだろう。

 

銘柄選定では、シェア変動の可能性など個別要因も重要だ。

例えば東京エレクトロンは、3次元NAND型フラッシュメモリー向けの垂直方向の穴を掘る工程で画期的な新技術を開発。これまで米ラムリサーチが独占してきた工程で、シェアを奪えれば業績貢献は大きい。

 

KOKUSAI ELECTRICが手掛ける、多数のウエハーに高品質な薄膜を形成するバッチ式ALD装置にも注目だ。

新しいトランジスタ構造「ゲートオールアラウンド」(GAA)が主流になれば、同装置の成長機会はさらに大きくなるとみている。

 

 

金子氏「生成AI、最終製品見えず」



三井住友DSアセットマネジメントシニアファンドマネージャーの金子将大氏

 

半導体銘柄に関して慎重な姿勢だ。特に半導体製造装置の年初からの急騰は、生成人工知能(AI)向け半導体への需要増への期待からだが、あまりにも急ピッチに見える。

一方、バリュエーションに関しては行くときはどこまでも行ってしまう。

 

半導体銘柄に関してポジションは「消極的なニュートラル」だ。高値警戒感があり、できれば避けたいものの、組み入れなければ指数に追いつけないというジレンマを抱えている。

国内の半導体製造装置メーカーの業績を占ううえで参考になる、米エヌビディアなどの決算は毎回、驚きの連続だ。

 

前回決算でもアナリスト予想を大きく上回る成績で、収益が数倍の勢いで伸びている。国内の半導体製造装置メーカーの需要拡大が期待できるのは事実だ。

一方、生成AIを使った製品はどのくらい社会を変えたのだろうか。周りを見てほしい。一般の生活の中で、どれほどのものが生成AIを使った技術で変わっただろう。

 

私は中小型の銘柄のポートフォリオマネージャーとして、企業を直接、綿密に調査した上で投資先を決めるスタイルをとる。調査先の企業の多くが試験的に導入してはいるものの、全社のシステムを変えるほどに導入している事例は限られている。

もちろん、一部では生成AIの活用が劇的に業務に影響を与えた事例はある。例えば、私が調査した人材系サービスの事例は興味深い。サイトを運営する会社に話を聞いたところ、ChatGPTの登場で2つの職種が「激減した」という。翻訳とイラストレーターの仕事だ。

 

ただ、逆に言えば、影響を受けた職種は2つのみとのことだ。税理士やマーケッターなど専門性の高い仕事はいずれも仲介が活発でAIの影響は軽微だった。

AIは局所的には使われているが、全体で俯瞰(ふかん)してみてみるとまだまだ社会に浸透しているとは言えない。

 

鍵を握るのは米マイクロソフトや米アップルなどに代表される、生成AIを使った最終製品の開発に注力している企業の動向だろう。

これらの企業が社会全体を変えるようなAIを用いた最終製品を開発できるか。そして、それが社会に浸透するのかどうかが重要だ。

 

繰り返しになるが、まだそういった製品やサービスは誕生しておらず、期待だけが先行しているように見える。

 

 

西口氏「米中対立、供給網に不確実性」

 


みずほ銀行台北支店ビジネスソリューション課課長の西田剛正氏

 

2024年の世界半導体市場は当行予測で前年比15.8%増の6570億ドル(約100兆円)になる見通しだ。

3年ぶりに2ケタ成長し、過去最高を更新する。(主要な半導体メーカーでつくる)世界半導体市場統計(WSTS)などと比べ強めに予測している。

 

主に生成AI(人工知能)向けの画像処理半導体(GPU)や、半導体メモリーの単価上昇が貢献するとみている。

24年後半以降は単価の伸びが緩やかになるものの、スマートフォンなどの買い替え需要で、出荷数量が増えるとみている。

 

世界半導体市場は「30年に1兆ドルになる」とよく言及される。達成に必要な年平均成長率は8.4%で、24年は順調なスタートとなりそうだ。

その先は生成AIの応用がどこまで広がるか次第だ。生成AIに関する各国・地域の法規制の動向を注視している。

 

台湾の半導体産業をみても、24年は生成AI向けの先端半導体をけん引役に大幅な成長が見込まれる。

ただ台湾に展開する半導体材料メーカーなど、日系サプライヤーの景況感は半導体メーカーに比べ回復が遅れている印象だ。

 

最終製品の市場回復が思ったほど進んでいないことが背景にある。

スマホやパソコンの需要は「コロナ特需」の反動減が一巡し、回復軌道に入ったものの、成長力はまだ弱い。市場規模は21年のピークを下回る水準で推移しそうだ。

 

電気自動車(EV)向けなどのパワー半導体にも不安がある。

23年に多くのメーカーが増産計画を発表したが、EVは初期的な普及が一巡し、成長率の低下が見込まれる。このままのペースで投資を続けると供給過剰になる恐れがある。

 

今後のリスクとして米中対立が挙げられる。中国政府は(自国メーカーに対し)中国企業製半導体の採用義務化に動いている。

中国は世界の半導体需要の35%を占めており、中国以外の半導体メーカーの売り上げ減につながる可能性がある。

 

一方、米商務省は1月、(対中規制の対象となってこなかった)非先端の中国製半導体に関する調査に乗り出した。

(日本企業の強い)前工程の半導体製造装置は3割ほどが中国向けで、対中規制が強化されれば影響は避けられない。

 

11月の米大統領選にトランプ前大統領が当選した場合、半導体サプライチェーン(供給網)の不確実性が高まるとみている。

対中規制の強化だけではなく、(自国企業を優先して)海外企業に対する補助金支給を制限するシナリオが指摘されている。

(飯島圭太郎、学頭貴子、堤健太郎、台北=龍元秀明が担当した。グラフィックスは田口寿一)

[日経ヴェリタス2024年4月7日号より抜粋]

 

【関連記事】

 

 

日経記事2024.04.07より引用

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半導体業界の市場(半導体・製造設備・素材)の全体感が理解できる秀逸な記事でした。
も本経済新聞社さんに感謝。

この記事の内容は、私のBlogにも保存しておきますので、関係者の方、金融業・コンサル業関係者の方々は、是非参考にしてください。

 

 

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【インバウンド需要】世界の女性が注目する日本の人気スポットは?/ “タマゴサンド”が海外で絶賛!/ おもちゃ“爆買い”や甲冑&日本刀のサムライ体験に大興奮!意外な場所に殺到も

2024-04-07 00:15:29 | 観光・旅行・外食・ショッピング

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