発表会の会場で展示されたイーハンのeVTOL(同社のSNSから)
【広州=田辺静】
中国国有自動車大手の重慶長安汽車は21日、「空飛ぶクルマ」と呼ばれる電動垂直離着陸機(eVTOL)などに今後5年間で200億元(約4300億円)超を投じると発表した。
中国ドローンメーカーの億航智能(イーハン)と提携し、eVTOLの研究開発や販売で協力するとも明らかにした。
長安汽車は11月に広東省広州市で開かれた「広州国際汽車展覧会(広州モーターショー)」で、eVTOLに参入し2026年までに市場投入を目指すと発表していた。
イーハンとの協業を通して、研究開発のスピードを加速させる。イーハンとは共同出資会社の設立も検討する。
イーハンは2人乗りのeVTOL「EH216-S」で23年10月に商業運航に必要な型式証明(TC)を取得、24年4月に量産許可を取得したと発表した。
21日に開いた発表会で、イーハンの胡華智最高経営責任者(CEO)は「国内の成熟した自動車メーカーとの協業によって、顧客の要求に応えるeVTOL製品を増やしていきたい」と述べた。
eVTOLは、サプライチェーン(供給網)を活用できるとして自動車メーカーや傘下企業が開発するケースが多い。
民営自動車大手の浙江吉利控股集団や電気自動車(EV)新興の小鵬汽車(シャオペン)は傘下企業がeVTOLを手掛けるほか、国有自動車大手の広州汽車集団も自社で研究開発をしている。
長安汽車が本拠地を置く重慶市は9月、eVTOLやドローンなどの「低空経済」の発展を促す計画を発表し、自動車産業と低空経済の融合を支援するとした。イーハンと長安汽車は重慶市でeVTOLの商業利用などを検討していくとみられる。
長安汽車はeVTOLのほかヒト型ロボットの開発なども合わせて今後10年で計1000億元の開発費を投入するとも明らかにした。長安汽車の朱華栄董事長は「(自動車やeVTOLなど)陸海空の立体的な交通手段の開発に取り組んでいく」と話した。