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野村元社員の強殺未遂、若手「お願い営業」脱却の矢先に  金融人、犯罪頻発のなぜ㊥

2024-12-21 13:04:44 | 日本の企業・世界の企業、ビジネスマン、技術者


元社員の強盗殺人未遂事件について謝罪する野村証券の奥田社長(左)ら(3日、東京都千代田区)

「何か不安がある社員がいたら自然に早くつかんであげようということも含め、予兆検知に一番の思いを込めた」。

元社員が強盗殺人未遂と現住建造物等放火の罪で起訴されたことを受けて野村証券が開いた3日の記者会見。奥田健太郎社長は対応策について重々しく話した。

 

 

金融機関の社員、「常にお金の誘惑にさらされている」

起訴状によると、広島支店に所属していた元社員は顧客である80代夫婦宅を日曜日の7月28日に訪れた。妻に睡眠作用のある薬物を飲ませて昏睡(こんすい)状態にし、現金およそ1787万円を盗み、放火して殺害しようとしたという。

金融不正に詳しい弁護士は「金融機関は性善説でも性悪説でもなく、性『弱』説に立った対策を講じなければならない」と話す。

 

「金融機関の社員は常にお金の誘惑にさらされ、不正できる条件がそろえば誰でも悪事を起こしかねない」との考え方だ。

肝になるのは個々人のプライベートにまで踏み込んだ対応だ。元社員の場合、為替相場の変動を予想し投資する「バイナリーオプション」取引で生じた自身の損失を穴埋めするために現金を奪ったとされる。

 

ただ線引きは難しい。前出の弁護士は「飲みの場に誘って悩みを聞く昭和スタイルは若い人に使えない。業務の範囲内で聞き出し察知する技術が求められる」と語る。

「外回りに行ったのに報告がない」「上司との同行を嫌がる」。こうしたサインを察知し、悩みを聞くといった手法だ。

 

「銀行と異なり伝統的に腕が立つ営業マンの一匹オオカミ的なやり方に頼ってきた証券会社の考え方を改める必要がある」と指摘する。

「もうこんなことは二度と起こしたくない」――。10月末の元社員の逮捕以降、野村証券で個人営業を統括する杉山剛・専務執行役員が営業担当の部店長と面談して聞こえてきたのはこんな声だ。

 

面談結果を踏まえ、再発防止に向けて公表した11の対策の中には予兆検知に向け、部店長による営業担当の全営業員への1対1の面談を盛り込んだ。

パーソル総合研究所の小林祐児氏は「面談が双方向の対話であることを踏まえて、非管理職にも意義を納得してもらうことが実効性担保の生命線になる」と指摘する。

 

共通認識ができあがらないままに単に面談の場だけを増やしても「上司が言っていること」「上司が推進するもの」といった分断だけが広がってしまう。

小林氏は部下の側にも面談実施の理解を広げるための研修や資料配布を企業に提案している。「上司と部下を同じ土俵に上げなければ対話は骨抜きの対策になる」と唱える。

 

 

ウェルスへの組織変更、営業マンをプロ人材に

証券業界ではかつて金融商品の頻繁な売買を顧客に促し、手数料で稼ぐ回転売買のビジネスモデルが一般的だった。若手は「孫のようにかわいがってもらって商品を買ってもらう」という「お願い営業」になりがちな構図だった。

杉山氏は「お願い営業は価値がなく、一番の愚策だ」との思いを抱き続けてきた。13年ごろから売買頻度ではなく残高に重点を置く資産管理型に転換してきた。

 

 

 

業績上も改革の成果が表れ始めたところで起きたのが今回の事案だった。起訴された元社員も入社7年目で年齢は20代後半、被害者夫婦は80代だった。

さらなる改革のヒントは4月の組織変更にある。野村証券は個人営業の部門名を「リテール」から「ウェルス・マネジメント」に変えた。富裕層に特化し、プライベートアセット(未公開資産)も含めて長期目線で顧客の資産づくりを支える業務にシフトする。

 

かつての「営業マン」のイメージから、コンプライアンスも含めて高度な知識や判断力を持つプロ人材への育成に切り替える。これが組織変更の裏テーマともいえる。

「証券会社最強」といわれる営業力を支えてきたのは若手だ。野村の営業力は人数にも表れ、金融商品の販売・勧誘に必要な証券外務員の資格取得者は3月時点で1万3000人弱と、5000〜8000人程度の他の大手を圧倒する。法人担当や経営管理部門の社員も持つ資格だが、営業力の基盤の差は明白だ。

 

業界最大手の力の源泉の営業力を維持しながら、プロ人材へとどう育てるか。今回の事案を「元社員」という個人に起因する問題にとどめず、組織全体の改革につなげられるかにかかっている。

 

 

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小平龍四郎
日本経済新聞社 編集委員/上級論説委員

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分析・考察野村証券という会社は定期的に不祥事を起こします。古くは1990年代の損失補塡と総会屋への利益供与。2012年の増資インサイダー。そして今回の強盗殺人未遂です。

そのたびに野村は出直しを近い、元凶と思われる営業姿勢の改革を打ち出してきました。「資産管理型営業」への転換です。

同じ言葉が今回もくり返されており、古くからの野村ウオッチャーは「またか……」の思いを禁じえません。

強盗殺人未遂というのは、バブル期のデタラメ営業を知る者としてもちょっと記憶にありません。

起訴されているのですから、これは「事件」。記事の「事案」という言葉づかいもおおいに気になります。野村がこう言っているのでしょうか。


2024年12月21日 12:36
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日経記事2024.12.21より引用

 

 



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