日経CNBC「トップに聞く」に出演した住友電工の井上社長(10日、東京・大手町)
住友電気工業は再生可能エネルギー向け電力ケーブルやデータセンター向け光モジュール製品などの増産に取り組んでいる。
井上治社長は10日、日経グループのマーケット・経済専門チャンネル「日経CNBC」に出演し、積極投資を続ける考えを示した。番組での主な発言をまとめた。
「欧州で電力用ケーブルの大型受注が続いている。高圧ケーブルを手掛けられるのは当社を含めて世界で5社だけで、5社の生産能力を合計しても需要に足りない」
洋上風力発電所と陸上の送配電設備をつなぐ電力用ケーブルでは、送配電会社がサプライヤーを囲い込む動きがある。
住友電工も英国の送配電会社から受注した大型案件に対応するため、スコットランドで新工場の建設を始めた。投資は700億円規模の見通しだ。海外で敷設されるケーブルは日本から輸出していたが、現地生産に切り替える。ドイツでもケーブルメーカーを買収した。
「データセンター向けではケーブルや通信機器向けの光モジュール、コネクターなどの製品をそろえており、顧客にソリューションを提供できる。需要に生産が追い付いておらず、増産する」
生成AI(人工知能)サービスの普及を背景にデータセンターの建設が進み、光モジュール製品の受注が大幅に伸びている。NTTグループの次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」向けに省エネ型のデバイスを開発している。
「自動車用ワイヤハーネス(組み電線)は24年4〜9月期の販売量が計画を3%ほど下回ったが、値上げなどで売り上げは減らなかった。下半期は北米は好調だが、中国と欧州が減っている」
世界シェアでトップを争うワイヤハーネスは世界約30カ国で生産し、売り上げ全体の約6割を占める主力製品だ。
中国と欧州では電気自動車(EV)の生産縮小を受けて不調だが、北米向けは堅調だ。
ただ、米国のトランプ次期大統領はメキシコからの輸入品に25%の関税を課すことを表明しており、メキシコに大規模工場を持つ住友電工にとっては波乱要因になりそうだ。
「レドックスフロー電池は北海道電力などに納めており、海外では再エネ投資が盛んな米カリフォルニア州などで引き合いが強い。どう安くつくるかが課題だ」
独自開発した大型蓄電池のレドックスフロー電池は20年ほど使える高い耐久性が売りものだ。タンクにためたレアメタル(希少金属)のバナジウムの液体を循環させ、電極とバナジウムで電子をやりとりして充放電する。
電極を化学変化させるリチウムイオン電池よりも電極が劣化しにくいが、コスト競争もあり、黒字化できていない。離島などでの需要掘り起こしが欠かせない。
(杉本晶子、上阪欣史)
日経CNBCの番組「トップに聞く」に登場した地域発世界企業の経営者インタビューを随時掲載します
日経記事2024.12.10より引用