路地猫~rojineko~

路地で出会った猫と人。気付かなければ出会う事のない風景がある。カメラで紡いだ、小さな小さな物語。

かわらそ (前編)

2008-04-15 | ★アトリエ

お店も、学校も山向こうにあるので

お使いを頼まれると、僕は山を越える。

山を越える少し手前には、川が流れていて

そこには、『かわらそ』と呼ばれる人が住んでいた。

お母さんやお父さん、友達のお母さんも

「怖い人だから、近付いては駄目よ」と口を揃えて言う。

だけど、僕はその『かわらそ』に会った事は一度もなかった。







小学校も夏休みに入ったある日、

お使いを頼まれたので僕は山を越えた。

買い物を済ませた帰り道

川沿いを歩いていると、後ろから足音がする。

僕は、怖くなって走り出した。



ダッダッダッ ダッダッダッ



   すると、後ろの足音も走り出した。



ダッダッダッ ダッダッダッ



   夏の太陽は暑く、走っているから息もきれぎれだ。



ハァハァハァ ハァハァハァ




汗だくになった僕が

大きな木に隠れて息を整えようとしていた時、

黒い影が目の前に大きく立ちはだかったのだ。

それは、『かわらそ』だった。




        ☆★_つづく_★☆





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その昔、戦時中に徴兵制を拒否し村を追われ、
戦後も山中や川沿いでひっそりと暮らしていた人達が居ました。
彼らは川の傍に住んでいたことから『かわらそ』と呼ばれていたそうです。


祖父の昔話と、最近川沿いで見掛けるダンボールハウスの住人達
少しダブって見えたので、ちょっと書いてみました。


フィクションですので、実在の人物や団体・写真等とは一切関係ございません。












コメント (2)
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