お店も、学校も山向こうにあるので
お使いを頼まれると、僕は山を越える。
山を越える少し手前には、川が流れていて
そこには、『かわらそ』と呼ばれる人が住んでいた。
お母さんやお父さん、友達のお母さんも
「怖い人だから、近付いては駄目よ」と口を揃えて言う。
だけど、僕はその『かわらそ』に会った事は一度もなかった。
小学校も夏休みに入ったある日、
お使いを頼まれたので僕は山を越えた。
買い物を済ませた帰り道
川沿いを歩いていると、後ろから足音がする。
僕は、怖くなって走り出した。
ダッダッダッ ダッダッダッ
すると、後ろの足音も走り出した。
ダッダッダッ ダッダッダッ
夏の太陽は暑く、走っているから息もきれぎれだ。
ハァハァハァ ハァハァハァ
汗だくになった僕が
大きな木に隠れて息を整えようとしていた時、
黒い影が目の前に大きく立ちはだかったのだ。
それは、『かわらそ』だった。
☆★_つづく_★☆
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その昔、戦時中に徴兵制を拒否し村を追われ、
戦後も山中や川沿いでひっそりと暮らしていた人達が居ました。
彼らは川の傍に住んでいたことから『かわらそ』と呼ばれていたそうです。
祖父の昔話と、最近川沿いで見掛けるダンボールハウスの住人達と
少しダブって見えたので、ちょっと書いてみました。
フィクションですので、実在の人物や団体・写真等とは一切関係ございません。