国の二〇二〇年度の税収が過去最高を記録した。コロナ禍で経済成長が大きく落ち込む中、税収だけが伸びるという異例の事態だ。背景には深刻な所得差の広がりがあり、予算の配分を通じた格差対策が急務だ。
財務省によると二〇年度の国の一般会計税収は六十兆八千二百六十一億円と史上最も多かった。国内総生産(GDP)成長率は前年度比4・6%のマイナスで、経済の常識から逸脱した成長なき税収増となった形だ。
税収のうち法人税が同省の二〇年十二月時点の予測より一・四倍程度膨れ上がり、税収増に最も大きく貢献した。これは巣ごもりやリモート関連の需要の追い風を受けた企業の好決算が相次いだ結果だ。
所得税も伸びた。高収益を上げた企業の経営者や幹部、好調な株価を背景にもうけた個人投資家ら富裕層が増えたことを裏付けている。同時にコロナ禍直前に税率を引き上げた消費税収も増えた。
各項目を見渡すと、企業、個人いずれも格差が拡大していることが税収を通じて鮮明に映し出されている。多額の税を納める企業が続出する一方、観光関連や航空、鉄道、飲食などの多くは納税どころか存亡の機に直面している。消費税増税が低所得者により大きな負担を課している実態も強く認識せねばならない。
企業でも個人でも、コロナ禍での所得増は公平な競争における努力の結果とは言い切れない。政府は今後、予算編成を通じて格差是正に取り組むべきだ。税収増を格差対策に充てるのは税の持つ所得の再配分機能から考えてむしろ当然である。集めた税を生活苦に直面している人々や、苦境に立つ業界にスムーズに流す政策を実行する必要があるはずだ。財務当局は二一年度予算の査定にあたり暮らしを守るための配分を手厚くするのはもちろん、企業支援についても的を絞った効果的な予算を策定してほしい。政府全体にも社会の分断を防ぐ高い視座からの政策を重ねて期待したい。
*私は、ベーシックインカムの導入が急務と考える。