ウクライナ侵略を利用
国連・9条への攻撃はどこに行き着くのか
戦後国際秩序の否定
ロシアによるウクライナに対する侵略は、ウクライナ市民の平和と命を踏みにじると同時に、国連憲章に基づく世界の平和秩序を根底から脅かしています。この危機のもとで、一部メディアや日米同盟強化論者から「9条で国は守れるのか」「国連は無力」などとする攻撃が強まっています。(中祖寅一)
「力の論理」の信奉プーチンと安倍氏
これに対し日本共産党の志位和夫委員長は「この危機にあって、憲法9条を攻撃し、国連は無力と言いつのる議論の行き着く先はどこか。『力の論理』をひたすら信奉することだ。それをいま、最もひどい形で実践しているのは誰か。(ロシアの)プーチン大統領だ」と指摘。「『力の論理』に『力の論理』で応えることを否定したのが、国連憲章であり、憲法9条ではないか」(ツイッター)と批判しています。
ウクライナ侵略の事実を前に、紛争の平和解決、武力行使の禁止という根本原則を嘲笑し「力には力を」といって「力の論理」にひたすら陥ってしまえば、プーチン大統領と同じ立場に身を置くことになります。それは、紛争の平和的解決を定めた戦後の国際秩序の根本的否定に行き着きます。
そうした姿を体現しているのが安倍晋三元首相です。安倍氏は27日放送の民放番組で、米国の核兵器を自国領土内に配備して共同運用する「核共有」について議論すべきと主張するとともに、プーチン大統領について「(NATOへの)基本的な不信感のなかで、領土的野心でなくロシアの防衛安全の確保という観点から行動を起こしているのだろう」と語りました。むき出しの領土拡張主義=覇権主義の行動を前にして、「領土的野心でなく」とプーチン氏を擁護する安倍元首相。両者は「力の論理」の信奉という点で、固い友情に結ばれているようです。
平和のルールの再構築こそ必要
いま問われているのは、深刻な危機と逆流に際し、いかにして平和のルールを実効的にし、再構築するかではないでしょうか。ロシア国内を含め世界の人々が「戦争をやめろ」とプーチン・ロシアによる侵略に糾弾の声をあげています。この声を広げ団結させ、侵略をやめさせるとともに、より平和な世界への動きをつくりだすことが求められています。事態を9条攻撃に利用するのは、全くの逆行です。
憲法9条には、(1)何よりも日本が再び侵略国家にならないという決意とともに(2)自ら戦争を放棄し戦力保持を禁止することで世界平和の先駆となろうという決意が込められています。
いま中国や北朝鮮の覇権主義的なふるまいを前に、「力には力」として日本が軍事力を強化する動きが強まっています。軍事対軍事の対立をエスカレートさせれば、再び侵略国家になる危険さえ憂慮すべき事態です。
侵略国家になるのか
とりわけ「敵基地攻撃能力」の保有は、文字通り相手国領域内での一連の軍事行動を可能にするものです。「撃たれる前に撃つ」という事の性質から言っても、国連憲章に違反した先制攻撃との区別はつきません。岸信夫防衛相は、敵基地攻撃で相手国領域まで行っての「空爆」を「排除しない」と国会で明言しました。安倍晋三元首相は、「敵基地攻撃能力」の本質は“相手国をせん滅する打撃力である”と公言しています。
日本がそうした打撃力を独自に持ち、「台湾有事は日米同盟有事」などとあおって、米軍と肩を並べて攻撃参加する―これが9条に全面的に違反するとともに、国連憲章に違反する他国への侵略となりうることは明白です。
志位氏がロシアのウクライナ侵略を受けて、「プーチン氏のようなリーダーが選ばれても、他国への侵略ができないようにするための条項が、憲法9条なのです」といち早く発信したのも、日本自身が再び侵略国家になる危険が現実にあることを踏まえての警告です。
一部の政治家の“恥ずべき言動”
これに対して自民党や日本維新の会の一部の政治家から「9条を持っていれば日本の平和が守れるといっていたではないか」などと、事実をねじ曲げた的外れな攻撃の言葉が発せられていますが、これは、志位氏の警告が正鵠(せいこく)を射ていることの証明です。
志位氏は、ツイッターに次の投稿を行いました。
「憲法9条を学ぼうとも、理解しようともせず、ウクライナへの侵略を止めるために声をあげることもなく、ウクライナ問題を利用して憲法9条をおとしめる。一部の人々の言動は、恥ずかしいことです」
◆3月末渡航予定も展覧会も中止
◆変わっていった「日本から遠い国」
◆米同時テロも目撃…「人類の調和はいつ」
世界がロシア包囲
80カ国「侵略非難」決議案
国連安保理 ロシア拒否権で否決
ウクライナへの侵略を強行したロシアの暴挙に抗議が広がり、世界が包囲する形となっています。国連安全保障理事会ではロシアの孤立が際立ち、各地で抗議の輪が広がりました。欧州では、観光名所がウクライナ国旗の色でライトアップされ、連帯を示しました。ロシアでは、約2000人の科学者らが公開書簡で、侵略に「断固反対」を表明。米国の「核政策法律家委員会」は、プーチン大統領の核兵器使用の威嚇は「国際法違反」との声明を発表しました。
51カ国批判「権限乱用」
【ワシントン=島田峰隆】国連安全保障理事会は25日、ウクライナ情勢に関する会合を開き、米国などがロシアによるウクライナ侵略を非難する決議案を共同提案しました。米国は安保理理事国以外にも共同提案国を募り、報道によると日本を含む約80カ国が名を連ねました。ロシアの拒否権で否決されましたが、米欧など11カ国が賛成しました。中国、インド、アラブ首長国連邦(UAE)の3カ国が棄権しました。
決議案は、ロシアによるウクライナ侵略を非難し、ロシア軍の完全かつ無条件の即時撤退を要求。ウクライナ東部の親ロ派支配地域の独立承認の撤回を求めていました。
米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は、採決後、ロシアの拒否権行使を厳しく批判する51カ国による共同声明を読み上げました。
声明は「安保理常任理事国のロシアによって行われているからこそ、私たちにはこの国連憲章のじゅうりんに立ち向かう特別の責任がある」と主張。ロシアによる拒否権行使は常任理事国の「権限乱用」だが、ウクライナ国民や街頭で戦争に抗議している自国民、そして国連憲章に対して「ロシアは拒否権を行使できない」と述べています。
英国も「ロシアは孤立し、ウクライナ侵略への支持をまったく得ていない」と強調しました。
共同提案国のアルバニアは、「われわれは侵略を非難し続ける。自由を葬り去ることはできないというのが歴史の教訓だ」、中立国のアイルランドは、「拒否権を行使してもロシアによる侵略という事実は決して消すことはできない」と批判が相次ぎました。
一方、欧米などの対ロ制裁への反対を表明している中国は、「あらゆる行動は危機の火に油を注ぐのではなく、和らげることにつながるべきだ」と主張。「安全保障を求めるロシアの合法的な願いは留意され、適切に対処されるべきだ」などと述べました。
ロシア科学者ら「侵攻反対」
公開書簡2千人署名
ロシアの科学者と科学ジャーナリストが、ロシアによるウクライナ侵攻に「断固として反対を表明する」とした公開書簡を24日付で発表しました。25日までに約2000人が署名しています。
ロシアの科学紙のウェブサイトに掲載。ロシア科学アカデミーの会員などが名を連ねています。
侵攻が「甚大な人的犠牲」をもたらすと強調し、ウクライナに向けたあらゆる軍事行動の即刻停止、ウクライナ国家の主権と領土保全の尊重を要求しています。
書簡は「ウクライナがわが国の安全保障に脅威ではないことは明白だ」とし、今回の戦争は「不公正で、はっきり言って無意味だ」「欧州で新たな戦争を引き起こした責任は、ひとえにロシアにある」と批判しています。
ウクライナとロシアが「ナチズムに対抗して共にたたかった」歴史に触れ、プーチン政権が「地政学的野望のために戦争を始めることは、父祖の記憶を裏切るものだ」と指摘しています。
ウクライナを「独立国家として尊重する」とともに、両国間の「関係における問題は平和的に解決できると確信する」と表明。「戦争を起こすことで、ロシアは国際的に孤立し、ならず者国家の状態に自らを追い込んだ」と指摘しました。
書簡は、戦争の結果、科学者として「普通に仕事ができなくなる」と指摘。「ロシアが世界から孤立してしまえば、わが国は文化的にも技術的にもいっそう衰退する」と懸念を示しました。
- 〈スクープ〉/権限ないのに工事して陥没/東京外環道事業は違法/事故現場、東日本高速が発注/実際は中日本の事業範囲
- 不寛容な社会でいいのか/無名塾公演「左の腕」/過去に罪犯し、底辺で生きる主人公/俳優 仲代達矢さん
- メディア注目のリーフ/共産党への「?」にこたえる/ごまかさず、わかりやすい/ライター 小川たまかさん/よくある「誤解」も解ける/元公明党副委員長 二見伸明さん
- ジェンダー平等が個人の幸せに/世界一男女格差少ない国アイスランド/立命館大学政策科学部教授 大塚陽子さんに聞きました
- 〈ひと〉/最新作『ぼくのお父さん』/芸人、漫画家 矢部太郎さん
- オミクロン株 死者最多/陽性率4割 検査の拡充を/昭和大学客員教授 二木芳人さん
- 救急医療ひっ迫 崩壊の危機/政府は「危機」発信し対策の全体像示せ/志位委員長が会見
- ロシアはウクライナ東部地域の「独立」承認と派兵指令を撤回せよ/志位委員長が声明
- 衆院本会議予算案通過/参院で論戦発展さらに/志位委員長が会見で表明
- 〈お役立ちトク報〉/コロナ禍 困窮/生活保護で助かった/茨城/大企業で派遣切りに/千葉/3歳の子を持つシングルマザー/東京/家電配送トラック運転手
- 〈スポーツ〉/プラス思考で常に集中/華麗にノーミス 銅/北京五輪フィギュア/坂本花織選手
- 〈Uスタ Youth Stadium〉/声あげてこそ変えられる/NEC子会社から不当解雇/撤回ついに勝ち取った/電機・情報ユニオン 伊草貴大さん
- 〈少年少女〉/ラップを手作り!?/“みつろう”と布で/繰り返し使えていいね
- だらしないくらいで、ちょうどいい/コロナ禍 自分の心いたわって/精神科医 香山リカさんがアドバイス
- 〈すくすく子どもたち〉/子育て 子どもたちとみそ造り 関山隆一さん/健 康 もしかしたら喘息かも 小堀勝充さん
- 〈読書のページ〉/荒牧重雄著『噴火した!』/土屋敦著『「戦争孤児」を生きる ライフストーリー/沈黙/語りの歴史社会学』/〈話題の本〉ソン・ウォンピョン著 矢島暁子訳『アーモンド』
- 〈映 画〉/金継ぎのように過去も美しく/ジョージア映画「金の糸」/ソ連の検閲と闘った自身の経験投影/ラナ・ゴゴベリゼ監督
- 〈映 画〉/コンゴ紛争で40万人以上がレイプ被害/ドキュメンタリー映画「ムクウェゲ『女性にとって世界最悪の場所』で闘う医師」/監督 立山芽以子さん
- 26日から第11回江古田映画祭/福島やヒロシマなどテーマに17作品
- 〈世界.net〉/若者の選択がカギ/韓国大統領選「政権交代望む」が53%/住宅問題、ジェンダーに関心/北朝鮮とは対話重視を期待
- 〈健康らいふ〉/オミクロン流行下の花粉症対策/症状似ていて見分けが困難/名古屋・北医療生協北病院院長 近藤知己さん
- 〈経済これって何?〉大阪カジノ計画/約束破り巨額税金の投入底なしに/阪南大学教授・桜田照雄さん
- 〈たび〉/大久保利通暗殺の地や勝海舟邸跡へ/ぶらりぶらりと幕末散歩/東京 千代田区&港区
- 子ネコの世界/岩合光昭/ビアパブにて