2020年4月30日─フォーブスの2020年版「日本長者番付」では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる影響は比較的小さく、番付入りした富豪50人の資産総額は前年比わずか5%減の1680億ドル(約18兆円)となった。
安倍晋三首相は4月上旬、新型コロナウイルスによる経済損失緩和のため総額108兆円の経済対策を発表したが、景気後退は避けられない見通しだ。緊急事態宣言の発令と東京五輪の来年への延期が経済に打撃を与えるのは確実とみられる。ただ、前回の長者番付作成時の2019年3月と比べ、円は対ドルでわずかに上昇。一方、日経平均株価は11%以上下落した。
今年は、上位50人の半数以上に当たる28人が前年から資産総額を減らした。そのうちの一人がファーストリテイリングの柳井正会長兼社長で、保有資産額は26億ドル減の223億ドルとなったものの、2年連続で日本一の富豪の座を保持した。柳井が率いるファーストリテイリングは新型ウイルス流行を受け、中国、米国、欧州の店舗を閉鎖。ただ中国では、現在までに大半の店舗が業務を再開している。
ソフトバンク創業者の孫正義は、ドル建ての資産で最も大きな損失を被った。孫の保有資産額は、ソフトバンクが大株主となっているウィーワークの上場中止などにより35億ドル減少し、205億ドルとなった。孫は番付で昨年に引き続き2位に入っており、「Forbes Asia」5/6月号の表紙も飾っている。
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保有資産を増やした富豪は17人。3位に入ったキーエンス創業者、滝崎武光の保有資産は12億ドル増の198億ドルとなった。キーエンスは利益率の高いファクトリー・オートメーション(工場の自動化)製品を展開しているほか、保有する現金が多いことから売上高減少への耐性が強い。4位はサントリーホールディングスの佐治信忠。佐治は保有資産を一族と共有しており、その額は前年比14億ドル減の94億ドルとなった。
5位はユニ・チャームの高原豪久社長。製造するマスクや除菌ウェットティッシュの需要急増により同社株は昨年から11%以上上昇。高原の保有資産も13%増の59億ドルとなった。
同じく保有資産を大きく増やしたのが、オービック創業者の野田順弘(16位)だ。同社株は昨年から32%上昇し、野田の保有資産も約3割増の31億4000万ドルとなった。
一方、保有資産の減少率が最も高かったのはユニバーサルエンターテインメント創業者の岡田和生(34位)で、保有資産額は42%減の11億9000万ドル。保有資産が10億ドルを超えた富豪は昨年から7人減り、岡田を含む38人となった。
今年初めて番付入りを果たしたのは土屋哲雄(12位、33億ドル)、和田成史(31位、12億5000万ドル)、和佐見勝(43位、9億4000万ドル)の3人。土屋の上場アパレル企業ワークマンは、工場や建設現場の作業服などを製造・販売している。和田は、オービックが出資するビジネスソリューションソフトウエア提供企業、オービックビジネスコンサルタントの共同創業者。和佐見は丸和運輸機関の創業者で、同社の顧客にはアマゾンが含まれる。
今年番付に復帰したのはスギホールディングス創業者の杉浦広一(45位、9億1000万ドル)とダイナムジャパンホールディングスの佐藤洋治(50位、8億1000万ドル)の2人。大塚商会の大塚実・裕司親子(17位、31億3000万ドル)の資産は昨年まで2人の共同資産として扱っていたが、大塚実が昨年9月に死去したことを受け、現在は息子裕司の単独資産として扱っている。
昨年番付入りしたものの今年姿を消したのは5人で、ディスカウント衣料品チェーンを展開するしまむらの創業者、島村恒俊が含まれる。番付入りに必要な保有資産額の最低ラインは昨年の9億ドルから今年は8億1000万ドルへと減少した。
以下は、今年の日本長者番付トップ10の顔ぶれ。
1位 柳井 正(ファーストリテイリング) 223億ドル
2位 孫 正義(ソフトバンク) 205億ドル
3位 滝崎武光(キーエンス) 198億ドル
4位 佐治信忠(サントリー) 94億ドル
5位 高原豪久(ユニ・チャーム) 59億ドル
6位 三木谷浩史(楽天) 54億ドル
7位 重田康光(光通信) 47億ドル
8位 毒島秀行(SANKYO) 41億ドル
9位 似鳥昭雄(ニトリ) 40億ドル
10位 森 章(森トラスト) 39億ドル
ランキングは本人や証券取引所、アナリストら、企業の財務諸表などからの情報を基に作成している。非公開会社の価値は、類似した公開会社の財務比率などを比較し推計した。各氏の保有資産は家族の資産を含む場合がある。また、2020年4月10日の株式取引終了時の株価の終値と為替レートに基づき算出したため、2020年3月18日時点の株価に基づいた世界長者番付とは異なる場合がある。