フォルカー・シュタンツェル 駐日ドイツ大使 2013.9.27
公開日: 2013/09/29
Volker Stanzel, Ambassador to Japan , Germany
4年の任期を終え、11月に帰国するシュタンツェル大使が、さよなら会見を行った。
帰国後退官する予定の大使は、30年を超える外交官としての経験からこんごの外交について、中規模国(ミドルパワー)のゆるやかな連携が重要になってくるとした。
民主主義、自由主義経済など同じ価値観をもつドイツや日本などの国々が、テーマごとに協力し、グローバルリスクを回避していくべきだ、と。
司会 日本記者クラブ企画委員 樫山幸夫(産経新聞)
通訳 田口絵美(ドイツ大使館)
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年10月号に掲載)
ミドルパワー連携の勧め
ほぼ1カ月後に日本離任と外交官退官を控え、万感の思いを吐露されるのかと思いきや、刺激に満ちた、積極的な外交提言がテーマだった。
米国は指導的立場を務めるのは難しくなった。国連など既存の国際機関は解体のプロセスにある。新興国は新たな秩序造りの試みを始めたばかり――「どの秩序も当てにならなくなった無極化」というのが大使の世界認識だ。
日本もドイツも同じミドルパワー(中規模国家)として、グローバル化に伴うさまざまな、共通のリスクに直面している。国際金融危機、大量破壊兵器拡散、地球温暖化、移民問題などだ。「無極化」世界の中で、リスクに対処するため、中規模国家が戦略的調整をもっと密接にできないか。中規模国家とは、価値観を共有する英、仏、伊、メキシコ、カナダ、韓国、オーストラリア。連携国は課題ごとに柔軟に組み合わせる、という。
果たしてこの提言は現実的か。それはさておき、国連が「当てにならない」とするならば、日独が中心となり進めてきた国連改革努力は無意味、ということにならないか。
そんな質問に対する大使の回答は、「現実には、国際組織はそれほど役に立っていない。それを直すのに協力しなければならない」であった。大使は別に、国連無用論といった極論を唱えているわけではなさそうだ。
ただ、中規模国家連携論は、米国との同盟関係を、もはや死活的とは見なさないなど、統一後23年のドイツの心理を反映しているように思える。東アジアの厳しい安全保障状況を考えるとき、日本にとって重きを置く外交方針にはなり得ないだろう。
退官後は米国の大学で国際関係論の教べんを執るが、どんな日本観、アジア観を教授するのだろう。講義を1度聞いてみたいと思う。
読売新聞編集委員
三好 範英