http://www.chunichi.co.jp/article/gifu/20160728/CK2016072802000029.html
藤井市長、無罪を確信 美濃加茂事件、控訴審結審
プール水浄化設備の導入をめぐる事前収賄などの罪に問われ、一審で無罪となった美濃加茂市長藤井浩人被告(32)の控訴審第四回公判が二十七日、名古屋高裁であり、検察、弁護両側の最終弁論で結審した。藤井市長は閉廷後の会見で、あらためて無罪を強調した。
「私の無実が第一審以上に証明された。市民には長い間お待たせしたが、良い報告ができると確信した」
地裁近くの会館で開かれた記者会見。藤井市長はトレードマークの緑色のネクタイを締め、無罪を確信している様子で語った。「自分が知り得ない事実を知る機会になった」と公判を振り返った。
二審でも、市長に計三十万円を渡したとされる浄化設備業者の中林正善受刑者(46)の供述の信用性が争点となり、中林受刑者や愛知県警捜査員の尋問が行われた。
市長の職務をこなしながら公判に出続けるという事態について、藤井市長は本紙の取材に「市民や市議会が理解してくれたので、市政への影響はなかったと思う。逮捕、起訴された市長として美濃加茂市の名前が広がり、市外への影響が不安だったが、気持ちが晴れそうだ」と話した。
判決は十一月二十八日午後一時半に言い渡される予定。
(鈴木凜平、督あかり)
◆最終弁論要旨
<検察側>
【中林受刑者の供述の信用性】
中林受刑者は二〇一三年四月上旬に被告に十万円を渡し、同月二十五日ごろにも二十万円を渡したことを一審で改めて証言した。
弁護人は賄賂が虚構だとするが、受刑者と被告人との面会の設定に近接して現金が準備されていることから、現金は被告人に供与を意図して準備されたと推認される。受刑者や捜査員の証言などで、受刑者の供述は自発的だと裏付けられ、より信用性は高まった。
【間接事実】
受刑者と被告が会った一三年四月ごろにメールのやりとりが増えたなどの証拠は、二人の癒着関係の深まりを示している。自治体へのプール水浄化設備の売り込みに苦慮していた受刑者にとって、便宜な取り計らいをしてくれた被告に感謝の気持ちや期待が大きく、その見返りとして賄賂を渡したと言える。
【結論】
一審や二審での取り調べで、被告に無罪を言い渡した原判決の誤りが明らかになっており、原判決を破棄して適正な判決が言い渡されることを求める。
<弁護側>
【検察官の主張について】
本件は中林受刑者の贈賄証言の信用性が最大の争点とされるのに、検察官は控訴審で、中林証言の信用性を判断するまでもなく、それ以外の証拠・間接事実から現金授受を証明できるとした。検察官のこのような主張は、多くの「ごまかし」「すり替え」を行っており、争点整理という面でも不合理である。
【自白の経緯】
尋問で受刑者は「子どもの話になった時、涙を流しながら自白した」と受刑者も捜査員も証言した。だが「同じように自白したことは他にもあったか」と質問されると、肯定してから否定し、さらに自白の理由は「わからない」と答えた。受刑者が正直に証言しているとは思えない。
(一審の)原判決は受刑者が自分の融資詐欺の処分を軽くしようと、捜査機関の関心を他の重大な事件に向けさせた疑いを指摘した。受刑者の自白は、自分の虚偽供述に信用性を持たせようとした可能性も考えられる。
【結論】
収賄などの事実はすべて虚構で、被告が無実であることに疑いの余地はまったくない。