主張
憲法施行76年
9条の力で「戦争国家」阻もう
日本国憲法が1947年5月3日に施行されて、きょうで76年です。今年の憲法記念日は、戦争と平和をめぐって戦後最大の岐路の中で迎えています。岸田文雄政権が推進する敵基地攻撃能力の保有と空前の大軍拡は、日本を「戦争国家」につくりかえる道であり、国の在り方を根底から覆す暴挙です。岸田首相は9条自体の改憲にも固執しています。78年前、侵略戦争に敗れた日本は二度と戦争をしないと誓いました。その原点を否定し、日本を「新たな戦前」に引き戻す企てを許さないために、今こそ力を合わせましょう。
戦後の原点否定許されぬ
岸田首相は4月25日の自民党改憲実現本部の会合で、来年9月までの党総裁任期中に改憲を実現すると改めて表明しました。9条への自衛隊明記案などは緊急課題とし、「早期に国民に選択してもらう機会をつくる努力をする」と強調しました。改憲発議に向けて衆参の憲法審査会の議論促進を迫ったものです。同審査会では自民、公明、日本維新の会、国民民主などが具体的な改憲項目のすり合わせの議論を加速させています。
岸田政権は、歴代政権が掲げてきた「専守防衛」を完全に投げ捨てて敵基地攻撃能力の保有に踏み出し、周辺国に軍事的な脅威を与えようとしています。戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認を定めた9条とは到底相いれず、憲法違反の極致という他ありません。
このような乱暴なやり方で9条の実質的な空洞化を進めるのと同時に、9条の条文そのものを改変する明文改憲に本格的に踏み込もうという動きは極めて重大です。
日本の始めた侵略戦争は、2000万人を超えるアジア諸国民と310万人以上の日本人の命を奪いました。戦争の過ちを再び犯さないと世界に宣言したのが憲法です。確固とした決意は「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにする」と憲法前文に刻まれています。
3月に死去した作家の大江健三郎さんは1994年、ストックホルムでのノーベル文学賞受賞記念講演で「日本は、再出発のための憲法の核心に、不戦の誓いをおく必要があった…日本人は新生へのモラルの基本として、不戦の原理を選んだ」「この不戦の誓いを日本国の憲法から取り外せば…アジアと広島、長崎の犠牲者たちを裏切ることになる」と力説しました。
大江さんは2004年に結成された「九条の会」の呼びかけ人の一人となり、講演などに尽力しました。そこでは9条の「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」の「希求」に着目し、敗戦直後の日本人がこの言葉を選んだ意味を問いかけました。憲法が危機にある今、戦後の出発点を想起しなければなりません。
軍事優先の社会にしない
9条は平和問題だけでなく、自由や人権を守る土台でもあります。国民生活のあらゆる分野が戦争に総動員された国の仕組みは敗戦で解体されました。青井未帆・学習院大学大学院教授は、軍事を否定した9条の意義について「自由が現実に侵害される一歩手前でこれを防ぐ、いわば『防火壁』のような役割を果たす」(『世界』5月号)と指摘します。岸田政権がさまざまな分野で戦争準備体制づくりを狙う中、9条を生かす政治の実現が重要となっています。
オスプレイ用地売らぬ
地権者有志の会が採決批判
佐賀
佐賀空港(佐賀市)への自衛隊オスプレイなどの配備を巡り、防衛省が「駐屯地」建設を狙う土地の地権者でつくる管理運営協議会の臨時総会が1日に土地の売却を決めたことを受け、「地権者有志の会」は2日、佐賀県庁で記者会見を行いました。協議会に土地売却の権限がないことなどを指摘したにもかかわらず採決を行ったと批判しました。
古賀初次代表は、土地は民法上の共有となっており地権者全員の合意が必要であることや、土地の売却は協議会の規約にも記載されていないなどの意見書を提出していたことを紹介。しかし総会で県有明漁協南川副支所の執行部から回答はなく、「あいまいな部分が残ったまま、採決に移った」と総会のあり方に疑問を呈しました。
「日米地位協定のもと米軍の良いように利用される」という総会での地権者の指摘にも執行部は「県も市も常駐計画はないと言っているので信じるしかない」と回答したことなどを報告しました。
古賀代表は「賛成の人のなかにはノリ漁をやめて高齢で暮らしている人もいる。さまざまな立場の人がいる。分断につながるようなことだけにはならないでほしい」と述べ、「49人もの反対があったのは希望だ。私は絶対に土地は売らないと改めて断言します。私は法的手段も選ぶ時が来ると思っています」と力を込めました。
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