美容液を変えて……

この三月、誕生日を迎えた母に、ちょっぴりゴージャスな
美容液をプレゼントしました。

値段がゴージャスなだけではなく、肌に少しでもいいもの
をと考えて、できるだけ低刺激のものを選んだのです。

それが気に入った母は、それまで使っていた美容液をやめ、
私がプレゼントしたものを使うようになりました。

ところが、最近になって、それを使い切ってしまい、一時
しのぎに元の美容液を久しぶりにつけてみたところ……

「なんだか肌がピリピリする」

そう感じたのだそうです。

元の美容液の成分表示を見てみると……やっぱり、刺激
の強そうな成分がたくさん入っていました。

なるほど、ピリピリするわけですね。

でも……

以前に使っていたときは、そんなピリピリ感は感じなかっ
たというのです。

おそらく、刺激のあまりないものを使っている間に、肌の
感受性が上がったのでしょう。

自分の感覚の領域の枠は、きっとこんなふうに外されて
いくものなんですね。

もちろん、肌だけではなくて、食べ物や、匂いや、音に対
する感覚のボーダーを超えるときも、私たちはきっとこの
ようなプロセスを体験するのでしょう。

だとしたら……

あの、ピリピリする刺激成分いっぱいの美容液も、この宇
宙の一画に、それならではの立ち位置がちゃんとある、と
言わなければならないのかもしれません。

宇宙にとっては、これら二つの美容液の価値はひょっとし
たら、同じなのかも。

……でもやっぱり自分が使うなら……

できればピリピリは御免蒙りたいなあ。