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「恋はなんだろう」と無効化される二択:マーメイドメロディーぴちぴちピッチ感想

2022年02月14日 | マーメイドメロディー ぴちぴちピッチ
フル☆アニメTV様で「ぴちぴちピッチ」および「ピュア」の無料配信が始まりました。2022年5月9日まで。素晴らしい。ありがたい。

これまで配信サービスと縁がなく、レンタルや購入も困難と「どうやって視聴すればいいんだ」と新規参入者を拒んできた「ぴっち」が、遂に世間の目に晒されることに。この機会に多くの人に見てもらい、第三期アニメ化に弾みをつけて欲しいところ。

新章「aqua」の連載、コラボカフェやグッズの数々、新イメージソングの決定(推してた「なないろメモリー」が最優秀賞に!おめでとうございます!)と、「ぴっち」熱が盛り上がりまくっているので、改めて感想を書いてみる。

(以下、最終話までのネタバレを含みます)

■「恋はなんだろう」

初戦闘は第5話「冷たいキス」。「聴いて胸の はじけてとびちる なんだろう」というスプラッタな歌詞と、直撃をくらったイズールが胸を押さえて悶えるので有名なお歌。歌詞に「人魚」が入っている数少ないお歌の一つだったりもする。
リアルタイム当時はサントラに収録。ボーナストラック枠の特殊ソングです。

第5話で「一般人の前に平気で人魚姿をさらし、そのまま変身、お歌」をやったおかげで、ここから先の「何でもあり」具合に制限がなくなったように思えます。普通なら躊躇するハードルを、あっさりと乗り越えてきた。この時モブが発した「アイドルのコンサートだったのか!」は「ぴっち」を象徴する台詞の一つですね。今後何か変な描写があったとしても「アイドルのコンサートだったのか」で解決。

と、ネタに振り切ってはいるのですが、このシーンは意外に重要な要素もはらんでいます。

るちあさん達はマーメイドです。人間がマーメイドに変身しているのではなく、マーメイドが人間に化けている。
彼女たちの視点では人間・七海るちあこそが仮初の変身姿で、本来の自分はマーメイドです。そのため、マーメイド姿(および地続きのアイドル態)で何かをするのに、彼女たちは抵抗を持っていません。

彼女らの主観は「マーメイド」にある。

視聴者の我々はヒトなので、これが随所でミスリードになっています。
最大のものはおなじみの「初恋の男の子は海斗だったの!」「言いたいけど言えない」の前説。るちあさんは人魚なので、わざわざ人間・七海るちあで恋仲になる必要がありません。実は全く無意味な葛藤だったりする。

肝心のるちあさん自身が混乱しているという酷い誘導っぷりなので紛らわしいのですが、「ぴっち」の基本構成かのようなモドカシイ恋愛ネタは、そもそも成立していません。
「人魚姫」の定番の二択も、このせいで踏み越えられてしまっています。

アンデルセンの「人魚姫」は、「声か足か」「王子を殺すか自分が泡になるか」の二択を迫られました。
「ぴっち」もセオリー通りに二択は出てきます。「地上に残るか海に戻るか」「人魚るちあと人間るちあのどちらを選ぶか」などなど。

しかしながらこの二択、「本性は人魚であり、陸や人間全般には興味がない」という身も蓋もない形で潰されます。
アンデルセンの「人魚姫」でいうなら、「なぜ声を差し出して足を貰わねばならないのか。尾びれで会いに行けばいい」「なぜ王子と陸上生活にこだわるのか。海に連れて行こう」のような感じでしょうか。

二択が成立するのは、我々がヒトの主観で見ているから。マーメイドの視点で見れば、結論は明白です。

人間るちあか人魚るちあかの二択は「本性は人魚なんだから人魚。区別する意味もない」で解決。
地上か海かの二択は「迷いはするものの早々に結論を出して海へ」「海斗くんはパンタラッサなので海で生活して問題ない(るちあの本性は人魚、と同様の身も蓋もない解決)」。
波音やリナも「地上に残り続ける(海を捨てる)」選択肢は持っていません。

太郎ちゃんと沙羅の悲劇は、太郎ちゃんが人間の価値観で勝手に二択だと思い込んでしまったからとも言えます。
沙羅が最終的に「地上に戻る太郎」ではなく「海底に沈んでいくガイト」を選んだのも、テーマ的には「アイデンティが海だから」の面もあったのかもしれない。

「海」はすべての生き物の源流ですから、「海」を基準にする方が自然です。少なくともマメプリたちはそう認識している。私たちの遺伝子には「海」が流れている。

そしてその遺伝子レベルの記憶の問題が、「ぴっち」では二択問題より重要視されているように思えます。
海斗くんは「人間るちあと人魚るちあ」の迷いは断ち切れた。なぜなら、るちあは人魚だから。
では、なぜ人魚のるちあに惹かれたのか。それは彼がパンタラッサだったから。

ガイト様が突き付けた「恋と感じているものは、パンタラッサの血のなせることだ」は、「ピュア」のみかるを狂わさせた直接の原因です。
人魚-パンタラッサに限らず、私らの「愛」も突き詰めれば本能や遺伝子によるもの。では「愛」に意味はないのか。
男女間の恋愛に限らず、「光を求める」や「孤独が辛い」等も同様です。

胸の中から「はじけてとびちる」何だかよく分からない本能的な何かをめぐる物語、それが「ぴっち」だと思ってみる。

また、上記の事情は新章「aqua」では覆ってるのにも注目したい。
母・るちあは自分をマーメイドだと思っていますが、娘・るきあは自分をヒトだと認識している。故に「地上か海か」「マーメイドか七海るきあか」の二択が成立します。これに関連してか、るきあさんは「変身後の姿(つまりは人間態)」を敵に知られてもいます。

表面的には前作「ぴっち」をなぞっているかのように見える「aqua」ですが、根底の認識が全く異なり、この違いがどう作用するかは今後とても楽しみです。

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