卒業生の I君の店で話していたとき、話題が最近あるプロ野球球団の監督になった人物のことになると、I君は「あれはいちびりですよ」と言った。聞き慣れない言葉だったので、どういう意味かと問うと、彼は「ちょっと説明しにくいのですが」と、しばらく考えてから「軽いと言うことですかね」と言った。私もその人物については現役選手時代の印象からそのように感じていたので、何となく分かったような気がした。
しかし家に帰ってから、もう少しはっきりさせたいと思って、Googleで調べてみると次のようになっていた。
「近畿方言の名詞である。ふざけてはしゃぎまわること、あるいはふざけてはしゃぎまわる人(お調子者、目立ちたがり屋)。「調子に乗る」を意味する動詞いちびる(調子に乗る)が名詞化したものである。市場のような活気あるやかましい様子の言葉-いちびることから、目立ちたがり屋やお調子者を揶揄する時に使われることが多い。また人と違う変わったことをしている人を良い意味で褒める場合にも使われる」(wikipedia)。
文例として、
「いちびってんと、ちゃんとせえよ」 (ふざけて調子に乗っていないで、ち
ゃんとしろよ)
「お前はほんまにいちびりやな」(お前は本当にお調子者だな)
「あの人はなかなかのいちびりやで」(あの人はなかなか人と違う工夫ができ
る人だよ)
次の日に I君に会ったときに「お調子者、目立ちたがり屋ということのようだ」と言うと、「お調子者とはちょっと感じが違いますね。周囲から浮いていて自分だけで騒いでいるという感じです。お調子者と目立ちたがり屋と混ぜ合わせたようなものかな」と言ったので、いっそうよく分かったような気がして、方言を標準語で解釈するのは難しいなということになった。
関西に住み着いて長くなるが、「いちびり」ということばに出会った記憶はないし、これからも私には使いこなせないような気がする。