奇遇
行きは上海浦東空港で西安行きの国内線の乗り継ぎをした。4時間もあるのでターミナルビルのオープンなレストランに入ってコーヒーを飲んだ。適当に時間が過ぎたのでウェイトレスを呼んで支払いを済ませたが、なかなか釣銭を持ってこない。遅いななどと言いながら待っていると、入り口のほうに目を遣ったHr君が「唐さんみたいな人だなあ」と言った。唐さん、唐怡荷(タン・イフ)は私が上海に行ったときに世話になって親しくなった女性で、彼らもここ何年か上海近郊に行くたびに世話になっていた。
前の方の席に女性が座っていたが、後姿なのでよく分からなかったし、まさかという気もしたので、あまり気に留めなかったが、席を立って入り口に向かう途中で目を遣るとまさしく唐怡荷だったので驚いた。もちろん彼女もびっくりした様子で立ち上がった。その後はひとしきり話をして別れたが、お互いに信じられないような雰囲気だった。
まったく珍しい偶然があったものだ。ターミナルにはレストランは2店ある。もしどちらかが別の店に入っていたら出会うことはない。釣銭を早く持ってきたら彼女が店に入る前に私たちは出てしまっていただろう。もしHr君が入り口のほうに目を遣らなかったら気がつくことはなかった。彼女は伯父が北京から来るのを迎えに来ていた。少し時間があるので時間つぶしをしたようだ。そういうことがなければもちろん会うことはなかった。上海市民は1200万人。その中の1人の彼女とこうして思いがけないところで会うとは奇遇としか言いようがなかった。
Hg君の「奇跡」
Hg君が西安の観光の途中で財布を落とした。食事にしようとある店に入ったが、そこは中国風のファーストフード(小喫)の店で、注文すると代金は前払いだったそうだ。それでいつもズボンの尻のポケットに財布を入れているので、手をやったらないのに気がついた。慌てて通訳の張さんと一緒に探しに店を出た。車の中かと思ったがない。店の前に戻って車が停車したあたりを探していると、若い女性の2人連れが拾ってくれていた。彼女達は店に入った客だろうと見当をつけて待っていてくれたらしい。夜ホテルで見せてくれたが、財布は2つ折のもので、中には人民元ばかりかなり入っていたし、各種のカード類なども入っていて、かなり膨らんだものだった。これを落としたとは、私も体が冷たくなる思いがした。
人ごみの中でこのように膨らんだ財布を落としたら、先ず返ってくることはないだろう。正直な女性が拾い、しかも待っていてくれたことは、奇跡だと私は言った。普通の後払いの店には入ったのだったら、そうそうは待ってくれてはいなかっただろう。まったく幸運だった。お礼しようとしたが固辞されたので、張さんの勧めで「記念写真」を撮った。これがその女性達である。学生らしい。
それにしても財布をズボンの尻のポケットに入れるのは危ないことだと言われている。まして中国の人ごみの中には掏りが多いそうだ。掏られないのが不思議なくらいだ。前からそうで、いくら言っても聴かないとHg君の奥さんはこぼしていた。Hg君はこれに懲りて止めるだろうか。さすがにその後の西安滞在中はバッグに入れていたらしいが、長年の習慣だったそうだから案外、「喉もと過ぎれば」で止めないかもしれない。過信は禁物だ。思いやられる。
行きは上海浦東空港で西安行きの国内線の乗り継ぎをした。4時間もあるのでターミナルビルのオープンなレストランに入ってコーヒーを飲んだ。適当に時間が過ぎたのでウェイトレスを呼んで支払いを済ませたが、なかなか釣銭を持ってこない。遅いななどと言いながら待っていると、入り口のほうに目を遣ったHr君が「唐さんみたいな人だなあ」と言った。唐さん、唐怡荷(タン・イフ)は私が上海に行ったときに世話になって親しくなった女性で、彼らもここ何年か上海近郊に行くたびに世話になっていた。
前の方の席に女性が座っていたが、後姿なのでよく分からなかったし、まさかという気もしたので、あまり気に留めなかったが、席を立って入り口に向かう途中で目を遣るとまさしく唐怡荷だったので驚いた。もちろん彼女もびっくりした様子で立ち上がった。その後はひとしきり話をして別れたが、お互いに信じられないような雰囲気だった。
まったく珍しい偶然があったものだ。ターミナルにはレストランは2店ある。もしどちらかが別の店に入っていたら出会うことはない。釣銭を早く持ってきたら彼女が店に入る前に私たちは出てしまっていただろう。もしHr君が入り口のほうに目を遣らなかったら気がつくことはなかった。彼女は伯父が北京から来るのを迎えに来ていた。少し時間があるので時間つぶしをしたようだ。そういうことがなければもちろん会うことはなかった。上海市民は1200万人。その中の1人の彼女とこうして思いがけないところで会うとは奇遇としか言いようがなかった。
Hg君の「奇跡」
Hg君が西安の観光の途中で財布を落とした。食事にしようとある店に入ったが、そこは中国風のファーストフード(小喫)の店で、注文すると代金は前払いだったそうだ。それでいつもズボンの尻のポケットに財布を入れているので、手をやったらないのに気がついた。慌てて通訳の張さんと一緒に探しに店を出た。車の中かと思ったがない。店の前に戻って車が停車したあたりを探していると、若い女性の2人連れが拾ってくれていた。彼女達は店に入った客だろうと見当をつけて待っていてくれたらしい。夜ホテルで見せてくれたが、財布は2つ折のもので、中には人民元ばかりかなり入っていたし、各種のカード類なども入っていて、かなり膨らんだものだった。これを落としたとは、私も体が冷たくなる思いがした。
人ごみの中でこのように膨らんだ財布を落としたら、先ず返ってくることはないだろう。正直な女性が拾い、しかも待っていてくれたことは、奇跡だと私は言った。普通の後払いの店には入ったのだったら、そうそうは待ってくれてはいなかっただろう。まったく幸運だった。お礼しようとしたが固辞されたので、張さんの勧めで「記念写真」を撮った。これがその女性達である。学生らしい。
それにしても財布をズボンの尻のポケットに入れるのは危ないことだと言われている。まして中国の人ごみの中には掏りが多いそうだ。掏られないのが不思議なくらいだ。前からそうで、いくら言っても聴かないとHg君の奥さんはこぼしていた。Hg君はこれに懲りて止めるだろうか。さすがにその後の西安滞在中はバッグに入れていたらしいが、長年の習慣だったそうだから案外、「喉もと過ぎれば」で止めないかもしれない。過信は禁物だ。思いやられる。