3月7日から11日まで、中国広東省を旅した。
広東省の省都である広州にはこれまでにも何度か行ったことはあるが、いつも貴州や湖南に行く途中に立ち寄っただけで、空き時間に簡単な観光をした程度だった。今回は中青旅広州国際旅行社の友人伍海珠(ウ・ハイチュ)に相談し、広州近辺の開平→肇慶→佛山というコースを計画してもらいガイドもしてもらった。
古くから「食は広州に在り」と言われて、広東料理(粤菜ユエツアイ)は有名である。『中国美味礼賛』(鈴木博訳 青土社)の共著者の一人である洪燭は「広東人の食べ物」という一文の初めに
広東人は食べるのが大好きである―飲食は広東人にとっては生理的な要求であるばかりか、嗜好でもある。広東人は飲食のなかで生活の滋味ないし本質を体得するのである。広東が沿海に位置するので、広東人は内陸の人々よりも口福に恵まれており、粤菜も新鮮な魚介類で有名である。水中を泳ぐものだけでなく、天上を飛ぶものも、地中を走るものも―広東人にはまるで食べられないものがないようであり、その生まれながらにして優れている胃は大きな関心をもってさまざまな食べ物に対処する。中国の古代に最初に蛇を食べたのは広東人であり、(以下略)
と書いているように、広東人の食に対する執念は並外れていて、俗に空を飛ぶものは飛行機以外、脚のあるものは机以外、水の中のものは潜水艦以外は何でも食べると言われるほどで、最高級のものから日本人からすればゲテモノのようなものまでさまざまな食材がある。今回の旅では懐の具合もあるので、本格的な広東料理を食べるということはなかったが、それでも食べたものは簡単な小喫(軽食)でもなかなかおいしかった。せっかくの機会だから、珍しいものにも挑戦してみた。
①広州で
最後の夜に「僑美食家」という店で食事をした。
この店に入るとまるで水族館のように生きているさまざまな食材が、ガラスやコンクリートの水槽に陳列されていて、客はその中から気に入ったものを注文して、調理してもらうようになっている。私もその中の興味があるものを選んだ。
沙虫(シャアチョン)
ホシムシ(星虫)という海産動物。ミミズのような形態である。
大根と一緒にスープ(湯タン)にして出された。特に味のあるものではないが弾力性のある食感で旨かった。
ゲンゴロウ
龍虱(ロンシィ)という。虱はシラミで、大きいシラミということか。池の中で泳いでいるもので、以前はよく見られた。水槽にたくさん泳いでいたが、自然のものを採ってくるのか、養殖なのか。
空揚げにしたものを食べたが、まず黒光りしている硬い翅をむしり取ってから腹の中の白い身を食べるが、量はごく僅かだから食べ残した殻の方が多い。特有の臭いがあり、それほど旨いものとは思われなかった。どうしてこんなものを食べるようになったのか。
蚕蛹(ツアンヨン)。
カイコのサナギである。箱の中に大量の蛹がうようよと蠢いているようすは、大方の日本人には気味悪く思われるものだろう。
炒め物にして出されたが、噛むとねっとりした濃厚な中身が出て旨いものだった。高蛋白で栄養価は高いそうだ。
ドリアンの菓子
中国語で榴蓮果(リュイリエンゴウ)というドリアンは果物の女王と言われるが、強烈な悪臭があり、ホテルや機内への持ち込みは禁止ということで有名だ。まだ食べたことがないので注文した。パイに挟んであったが、特に臭いとも思われず、とても甘いということだがそれほどには感じなかった。運転手の梁さんは口に入れた途端、くさいと言って慌てて吐き出した。
②開平で
出発前にインタネットで、開平ではよく犬の肉(狗肉ゴウロウ)を食するということを読んでいたので、昼食のときに注文した。
中国料理によくある紅焼(ホンシャオ)という、肝臓や腸などと一緒にぶつ切りにした肉を炒めて醤油で味付けした料理で、まずまずの味・・・と言うのは、やはり食べ慣れている牛肉や豚肉とは違い、犬と言うとどうしてもペットという意識が働いているようで、舌鼓を打つほどのことはなかった。これが猫なら、我が家のミーシャを連想して多分敬遠したことだろう。広東料理では猫はスープにすると聞いたことがある。
田鰻飯
海珠が鰻ご飯はどうですかと言ったので注文した。食べ慣れている鰻と違って田鰻(鱔シアン)を炊き込んだもので、鰻飯のような香りはない。
中国人はこの田鰻をよく食べるようで、上海の施路敏の家でも紅焼にしたものを食べたことがあった。
広東省の省都である広州にはこれまでにも何度か行ったことはあるが、いつも貴州や湖南に行く途中に立ち寄っただけで、空き時間に簡単な観光をした程度だった。今回は中青旅広州国際旅行社の友人伍海珠(ウ・ハイチュ)に相談し、広州近辺の開平→肇慶→佛山というコースを計画してもらいガイドもしてもらった。
古くから「食は広州に在り」と言われて、広東料理(粤菜ユエツアイ)は有名である。『中国美味礼賛』(鈴木博訳 青土社)の共著者の一人である洪燭は「広東人の食べ物」という一文の初めに
広東人は食べるのが大好きである―飲食は広東人にとっては生理的な要求であるばかりか、嗜好でもある。広東人は飲食のなかで生活の滋味ないし本質を体得するのである。広東が沿海に位置するので、広東人は内陸の人々よりも口福に恵まれており、粤菜も新鮮な魚介類で有名である。水中を泳ぐものだけでなく、天上を飛ぶものも、地中を走るものも―広東人にはまるで食べられないものがないようであり、その生まれながらにして優れている胃は大きな関心をもってさまざまな食べ物に対処する。中国の古代に最初に蛇を食べたのは広東人であり、(以下略)
と書いているように、広東人の食に対する執念は並外れていて、俗に空を飛ぶものは飛行機以外、脚のあるものは机以外、水の中のものは潜水艦以外は何でも食べると言われるほどで、最高級のものから日本人からすればゲテモノのようなものまでさまざまな食材がある。今回の旅では懐の具合もあるので、本格的な広東料理を食べるということはなかったが、それでも食べたものは簡単な小喫(軽食)でもなかなかおいしかった。せっかくの機会だから、珍しいものにも挑戦してみた。
①広州で
最後の夜に「僑美食家」という店で食事をした。
この店に入るとまるで水族館のように生きているさまざまな食材が、ガラスやコンクリートの水槽に陳列されていて、客はその中から気に入ったものを注文して、調理してもらうようになっている。私もその中の興味があるものを選んだ。
沙虫(シャアチョン)
ホシムシ(星虫)という海産動物。ミミズのような形態である。
大根と一緒にスープ(湯タン)にして出された。特に味のあるものではないが弾力性のある食感で旨かった。
ゲンゴロウ
龍虱(ロンシィ)という。虱はシラミで、大きいシラミということか。池の中で泳いでいるもので、以前はよく見られた。水槽にたくさん泳いでいたが、自然のものを採ってくるのか、養殖なのか。
空揚げにしたものを食べたが、まず黒光りしている硬い翅をむしり取ってから腹の中の白い身を食べるが、量はごく僅かだから食べ残した殻の方が多い。特有の臭いがあり、それほど旨いものとは思われなかった。どうしてこんなものを食べるようになったのか。
蚕蛹(ツアンヨン)。
カイコのサナギである。箱の中に大量の蛹がうようよと蠢いているようすは、大方の日本人には気味悪く思われるものだろう。
炒め物にして出されたが、噛むとねっとりした濃厚な中身が出て旨いものだった。高蛋白で栄養価は高いそうだ。
ドリアンの菓子
中国語で榴蓮果(リュイリエンゴウ)というドリアンは果物の女王と言われるが、強烈な悪臭があり、ホテルや機内への持ち込みは禁止ということで有名だ。まだ食べたことがないので注文した。パイに挟んであったが、特に臭いとも思われず、とても甘いということだがそれほどには感じなかった。運転手の梁さんは口に入れた途端、くさいと言って慌てて吐き出した。
②開平で
出発前にインタネットで、開平ではよく犬の肉(狗肉ゴウロウ)を食するということを読んでいたので、昼食のときに注文した。
中国料理によくある紅焼(ホンシャオ)という、肝臓や腸などと一緒にぶつ切りにした肉を炒めて醤油で味付けした料理で、まずまずの味・・・と言うのは、やはり食べ慣れている牛肉や豚肉とは違い、犬と言うとどうしてもペットという意識が働いているようで、舌鼓を打つほどのことはなかった。これが猫なら、我が家のミーシャを連想して多分敬遠したことだろう。広東料理では猫はスープにすると聞いたことがある。
田鰻飯
海珠が鰻ご飯はどうですかと言ったので注文した。食べ慣れている鰻と違って田鰻(鱔シアン)を炊き込んだもので、鰻飯のような香りはない。
中国人はこの田鰻をよく食べるようで、上海の施路敏の家でも紅焼にしたものを食べたことがあった。