東日本大震災の被災に対しては,世界各国から義援金や激励が寄せられた。少し前のことになるが、中国ではインターネット動画サイト「優酷(ヨウク)」などに、東日本大震災の被災者への応援ソング「日本不悲傷(日本よ悲しまないで)」が投稿されていて話題を集めているという記事をある新聞の電子版で見た。
「涙を流さないで。愛が全ての災難を止める」と女性が中国語で歌い、「にほんよ、にほんよ」と日本語混じりで呼びかける部分もあるそうだ。作者とみられる中国人はサイトで「われわれの隣人を愛し、幸せを祈ろう」とコメントし、同サイトには「加油チャアヨウ(がんばれ)日本!」「(被災地の)立派な日本人に敬服した」など、応援ソングを後押しする中国国内からの書き込みが寄せられたという。
中国にもこのように心優しい支援者がいるのかと思うと心が和むが、それでも他方ではこの歌の作者に対して「おまえには愛国教育が足らない」とか「実は日本人が作ったんじゃないか」などと、反日感情をむき出しにした心無いコメンとも多数あったと言う。一部の中国人の反日感情にはどうしようもないものがあるが、そういう人間は日本が不幸になれば喜び、被災者に対する同情の気持ちや、死者に対する哀悼の念など微塵もないようだ。しかし、日本人の中にも、あの中国の四川大地震に対して、ある女性が「罰が当たったのだ」と言い捨てたのを聞いたことがある。その国が嫌い、憎いとなると人間としての感情も荒れたものになるのだろう。
ところで、「おまえには愛国教育が足らない」という、その「愛国教育」だが、1993年に中国国家主席となった江沢民は一貫して反日強硬路線を採り、1994年には「愛国主義教育実施要綱」を制定、1995年からは徹底した反日教育を推進した。愛国主義教育は必ずしも反日教育ではないとも言われるが、実際には反日教育が中心になっていたようだ。だからこの教育を受けた世代は非常に強い反日感情を持っていると言われている。江沢民自身はきわめて強硬な反日主義者だとも言われているが、そのような一個人の考えが国家の方針となり、多数の国民に洗脳的影響を与えるところが、中国が独裁国家などと言われるのだろう。
ある評論家は、「学校の教科書はすべて書き換えられ、日中戦争の日本軍の残虐行為をあげつらうものになった。相変わらず小学校の教師は、授業で日本軍の残虐行為を語るときに、感極まって泣き崩れる。壮絶な話に興奮した生徒たちは泣き叫び、教科書を黒板に叩きつけ、机をひっくり返し、集団ヒステリー状態に陥る。しかし、それが収まった後には、教室の中に恍惚とした一体感と日本に対する激しい憎悪が生まれるのだという」と書いている。
この評論家は中国生まれで、日本に帰化した反中愛日者として、日本の右派言論陣で大いにもてはやされている人物であるから、その現体制の中国に対する批判は一貫しているが、この愛国主義教育の実態は為にする創作ではあるまい。このような常軌を逸したような授業がすべての学校で行われていたとは思われないが、日本を憎む心情が植えつけられる教育がかなり行われたのは事実だろう。「おまえには愛国教育が足りない」というのは、要するに「日本を憎む気持ちが乏しい。愛国教育を不十分にしか受けていない」という誹謗だろうし、このコメントをした者は、骨の髄まで反日に染まっているのだろう。
国を愛することは大切なことだし、自分の信条から自分の国のあり方に批判を持ち、それを変えようとすることも「愛国」の形と言える。しかし過去の日本にもあったし、今でも存在する偏狭で過激な「愛国主義者」は、自国のみを正しいとして他国を侮る独善的な思考にとらわれている。このような「愛国者」達が国のあり方に影響を持つようになれば、その国はやがては孤立し、世界の鼻つまみ者になるだろう。