自然観察している弟が、自分の観察記録のサイトを持っていることは前に紹介した。その5月26日の記録に「群れるイモリ」というのがあった。
この弟の記録写真には、中央あたりに3匹のオスがかたまっていて、はじめはその中にいたが抜け出して移動しているメスが左下に見える。自分を取り合いするオスどもの争いはごめんというところか。オスは顎が張っていて、尾は扁平である。写真でははっきりしないが尾には鮮やかな色(繁殖時期に見られる婚姻色)が出ている。メスの頭部はなだらかで、尾は剣のように細長く尖っている。
イモリは私の大好きな動物で、また想い出もある。私は学生や院生の頃には両生類の研究をしている教授についていた。よく知られているように両生類は魚類と爬虫類の中間に位置する動物で、水中に生活する有尾類(イモリの仲間)と、陸上でも生活できる無尾類(カエルの仲間)とがある。私は学生の頃はカエルを実験材料にしていたが、卒業して就職すると教授からイモリで研究するようにと言われた。就職してからしばらくは張り切って毎日イモリを相手にしていたが、日々の授業の準備とクラブの顧問としての指導に追われ、何よりも私の才能のなさもあって、腰砕けになってしまった。しかしそれ以来イモリはカエルに劣らない好きな動物になった。
繁殖期になると婚姻色が鮮やかになったオスは、メスに近づく。そしてメスの左側に寄り添う場合は、右の前足をメスの首のあたりに置き、尾をぐっと曲げてメスの目の前に持っていき、ひらひらと波動させる。自分の婚姻色を誇示するディスプレイと言う行動だ。短い前足をメスの首に置くオスの様子は何とも愛らしいものだ。
しばらくするとオスはメスから離れて何事もなかったように歩き出す。もしその後をメスがついていくとめでたく合意成立である。やがてオスは水中にぽとりと白い精子の入った袋(精子嚢)を落とす。メスはその上に来ると総排泄腔に精子嚢を吸い込む。この間オスは一度もメスのほうを振り返ったり、待つようなこともしない、まことに呆気なくそっけない婚姻だ。メスも精子嚢を探したりしないで通過するだけなのに、どうやってうまくそれを体内に取り込めるのだろう。そのあたりの仕組みは知らない。
メスは精子を体内に蓄えておき、産卵のたびに受精させる。イモリはカエルのように一度に大量の卵を産むことはしないで、卵を1個ずつ水草の葉に柏餅のように包む。
イモリはよくヤモリと混同されるがイモリは両生類、ヤモリは爬虫類だ。よく生徒に、水の中にいるから井守、家に住むから屋守などと教えたものだ。
日本のイモリは腹部が赤く「アカハラ」と言う。日本には奄美や沖縄のシリケンイモリやイボイモリを除きアカハラ1種だけだ。だから人為的には違う地域のイモリ同士でも受精は可能だが、自然界では住む地域によってディスプレイのタイプが違っていて、交配が成立しないこともあるようだ。先輩の1人がそんなことを研究していて、毎日のようにコンクリートの水槽に放した各地の雌雄のイモリの婚姻行動と睨めっこしていたので、イモリの仲人などと冷やかしたりした。
この弟の記録写真には、中央あたりに3匹のオスがかたまっていて、はじめはその中にいたが抜け出して移動しているメスが左下に見える。自分を取り合いするオスどもの争いはごめんというところか。オスは顎が張っていて、尾は扁平である。写真でははっきりしないが尾には鮮やかな色(繁殖時期に見られる婚姻色)が出ている。メスの頭部はなだらかで、尾は剣のように細長く尖っている。
イモリは私の大好きな動物で、また想い出もある。私は学生や院生の頃には両生類の研究をしている教授についていた。よく知られているように両生類は魚類と爬虫類の中間に位置する動物で、水中に生活する有尾類(イモリの仲間)と、陸上でも生活できる無尾類(カエルの仲間)とがある。私は学生の頃はカエルを実験材料にしていたが、卒業して就職すると教授からイモリで研究するようにと言われた。就職してからしばらくは張り切って毎日イモリを相手にしていたが、日々の授業の準備とクラブの顧問としての指導に追われ、何よりも私の才能のなさもあって、腰砕けになってしまった。しかしそれ以来イモリはカエルに劣らない好きな動物になった。
繁殖期になると婚姻色が鮮やかになったオスは、メスに近づく。そしてメスの左側に寄り添う場合は、右の前足をメスの首のあたりに置き、尾をぐっと曲げてメスの目の前に持っていき、ひらひらと波動させる。自分の婚姻色を誇示するディスプレイと言う行動だ。短い前足をメスの首に置くオスの様子は何とも愛らしいものだ。
しばらくするとオスはメスから離れて何事もなかったように歩き出す。もしその後をメスがついていくとめでたく合意成立である。やがてオスは水中にぽとりと白い精子の入った袋(精子嚢)を落とす。メスはその上に来ると総排泄腔に精子嚢を吸い込む。この間オスは一度もメスのほうを振り返ったり、待つようなこともしない、まことに呆気なくそっけない婚姻だ。メスも精子嚢を探したりしないで通過するだけなのに、どうやってうまくそれを体内に取り込めるのだろう。そのあたりの仕組みは知らない。
メスは精子を体内に蓄えておき、産卵のたびに受精させる。イモリはカエルのように一度に大量の卵を産むことはしないで、卵を1個ずつ水草の葉に柏餅のように包む。
イモリはよくヤモリと混同されるがイモリは両生類、ヤモリは爬虫類だ。よく生徒に、水の中にいるから井守、家に住むから屋守などと教えたものだ。
日本のイモリは腹部が赤く「アカハラ」と言う。日本には奄美や沖縄のシリケンイモリやイボイモリを除きアカハラ1種だけだ。だから人為的には違う地域のイモリ同士でも受精は可能だが、自然界では住む地域によってディスプレイのタイプが違っていて、交配が成立しないこともあるようだ。先輩の1人がそんなことを研究していて、毎日のようにコンクリートの水槽に放した各地の雌雄のイモリの婚姻行動と睨めっこしていたので、イモリの仲人などと冷やかしたりした。