石川県金沢市の23歳になる若い夫婦が海水浴場の浜辺に掘った落とし穴に落ちて2人とも死亡した。この落とし穴はその日の午後に妻が友人達と掘ったものだった。夫婦はこの4月に結婚したばかりで、妻が誕生日を迎える夫を驚かそうとして友人達と掘ったのだそうだ。
落とし穴は2.4メートル四方、深さ2.5メートルの大きなもので、よくもこのような大きな穴を掘ったものだと思うが、穴の底にはマットレスが敷かれ、上にはブルーシートをかけて砂で覆ってあったという。午後10時過ぎに2人は連れ立って海岸の砂丘に入り落とし穴に落ちた。2人とも上半身が砂に埋まっていて、およそ1時間後に消防署員に救出されたが意識がなく、搬送された病院で死亡が確認された。胸部圧迫による窒息死だった。おそらく頭から落ちてその上に砂が崩れ落ちたのではないか。ブルーシートを支えるために周囲に相当量の砂が積んであったらしい。
石川県の河川課によると、海岸法の規定で、海岸の土地で深さ1・5メートルを超える穴を掘る場合には県知事の強化が必要なのだそうだが、妻や友人達からは許可申請は出ていなかったし、仮に申請されても落とし穴を掘る目的では許可は出さないということだが、当然だろう。
どうも理解できない事故だ。妻は穴を掘った後で家に戻り、夫を連れ出したが、暗いので誤って一緒に落ちたようだ。それにしても深さが2.5メートルもある穴に落ちたら周囲の砂が崩れ落ちることがあることには、妻も友人達も考えが及ばなかったのだろうか。十数人の友人達はクラッカーなどを持ってその辺りにいて様子を見守っていたらしいが、穴が深かったために救出が遅れたのだろう。まさに墓穴を掘ったようなものだ。妻は誕生日に夫を驚かそうとしたと言うが、落とし穴に落ちれば誰でもびっくりする。それがどうして誕生日のプレゼント(と考えたのだろうが)になるのか。プレゼントなら何かを砂浜に埋めておいて、それを夫に掘り出させて驚かせたほうがよかっただろうにと思う。そのあたりは今時の若い人と感覚が違うのか。それに一緒に掘った友人達も何人いたかは分からないが、ふざけ心なのだろうが、若い人達の考えることには理解できないものがある。
気の毒としか言いようがない夫は、何が起こったのか分からないままに死んだのだろうが、まさか自分まで落ちるとは思わなかっただろう妻は、どんな思いで死んだのか。かわいそうだが、23歳にもなれば、その年齢相応の思慮、分別もあってもよいのに、本当に愚かしく浅はかなことだと思う。そのようなことを思いついたこと自体が、落とし穴に嵌ったようなものだろう。