大阪市が全職員を対象に実施した政治・組合活動に関するアンケートは、労働組合法が禁止する不当労働行為に当たるとして、大阪府労働委員会(府労委)はこのほど、今後はしないとの誓約文を組合側に渡すよう市に命令しました。
このアンケートは昨年2月、市特別顧問らで作る第三者チームが実施し、組合加入の有無や選挙活動への関与など22項目を尋ね、橋下市長が「業務命令」として回答を義務付け、応じないものは懲戒するとも言っていました。これに対して組合が救済を申し立て、府労委は「支配介入に該当する恐れがある」として、中断を勧告し市は4月、収集したアンケートを廃棄していました。
今回の府労委の命令に対して橋下市長は午前中記者団に「大変申し訳ない。法に基づいた行政運営をしていく」と謝罪し、不服申し立てをしない意向を表明しました。これまでも橋下市長はほとんど謝罪することはなく、責任を問われても他に責任転嫁していましたから、このような「素直な」態度に私は驚きました。
しかし市長は、午後には一転して謝罪を撤回し、中央労働委員会への再審査申し立てや、取り消しを求める提訴などを検討するとしました。府労委の命令後、府労連を支援する弁護士が「市長はルールを守れというが、(自らが)労働のルールを守っていないと府労委は断じた」と強く批判したことに市長は激怒したからと伝えられています。何とも感情的な反応で、前から彼は組合嫌いですが、このように私的な感情がすぐに公的な言動に現われるのは権力の乱用だと思います。どうせお得意のツイッターで悪口雑言を言ったのでしょう。責任を問われ態度を一転させた理由について橋下市長は、命令直後に職員労組が開いた記者会見に触れ、「職員厚遇問題などを棚に上げている。世間の常識からずれている。正義面されたら、市民代表として『違うだろ』と言わなければならない」と語ったそうです。「君子豹変す」と言いますが、君子でもない人物が豹変するのは当たり前なのかも知れません。
東京新聞のコラム「筆洗」で「謝る時の潔さもこの人の魅力なのかもしれない、と書こうと思っていたら、夜になったら前言を撤回していた。まさに朝令暮改。なんとも感情的に流れる人である。(中略)潔く謝ったのは演技だったのだろう。批判されて乱れるような安っぽい演技なら、しないほうがよかった」と言っています。このような感情的言動の人物が権力を持つことの怖さ、危うさをつくづく思います。