店主敬白(悪魔の囁き)

栄進大飯店の店主さがみやがおくる日々の悪魔の囁き。競馬予想や文学・音楽・仕事のグチやちくりまでいろいろ。

その日④家から脱出する

2018-10-20 08:17:58 | 熊本地震
 玄関のそばの窓に近寄ると、人の声がした。
 若い男性が何か叫んでいる。

 地元の消防団の人たちだった。
 各家を回って無事かどうかを確認し、避難誘導しているらしい。
 もう、ここまできては避難をしなくてはいけないレベルのことが起こったのだ。
 
 では、とにかく家から出ようにも・・・
 玄関は、作り付けだったでかい下駄箱が倒れて、いた。
 ドアは半分しか開かない。
「●●(おいらの苗字)です!家から出られません!助けてください」

 ここは田舎の町だけれど畑の中に家があるというより、住宅地の中に畑が点在するような場所なので、町内の同じ班には10軒以上の家があり、道路を挟んで別の班がいくつかある。
 消防団の方々がそこを順番に回って、中の人を救助しているようだ。
 救助には高齢者も多いから、時間がかかるし大変なのだろう。
 しばらくして、二人の男性が玄関先までやってきた。
「火傷をしています。なんとか外に出してください」
 いちおうそう現状を報告すると、外から男性が手をさしのべてくれた。

 下駄箱の隙間からやっと、外に出ることができた。
 歩いて数十メートル先にある、葬儀屋さんの駐車場に誘導された。
(このときはまだ、道路の被害があまりなく、道路を歩いて避難できた)
 四月の夜は寒いのに、長袖シャツに半ズボン、そして足元はスリッパのままだ。
 防災用品?
そんなのどこ行ったかわからない。
 きっと吹き飛んでるだろう。靴さえないし、玄関先に置いてあった蝋燭、ランタン、懐中電灯もない。
 持ち出そうにも、探しているうちに(地震のちきに油を使っていたから)出火したら・・・。

その日③で、どうするよ?

2018-10-20 07:44:17 | 熊本地震
起き上がって家の中を確認しようにも、お尻が痛くてなかなか起き上がれない。
 火は?ネコは?
今家は、どうなってんのか?

手探りで周囲を確認すると、体は、ちょうど家具のすきまにすっぽり入っているらしい。
 足の上にモノが落ちてきたり、頭の上が何かで覆われているわけではなさそうだ。
 (リビングは、食器棚2台とキャビネット、テレビ台、ダイニングテーブルセットがあった)
 目の前になんの家具が倒れているのかわからないけれど、どかせようと思ってもかなり重く、ビクともしなかった。
 このままではまずいので、立ち上がらなくては。
 そうだっ!!!

 こんちくしょー!!!

めいっぱい腹に力を入れ、大きな声でそう叫びながら、私は立ち上がった。
 腹に力を入れたせいか、スッと立ち上がることができた。
 でも、あたりは真っ暗で何も見えない。

 左足が熱い。
 太ももの部分とおなかの一部が、焼けるように痛い。
 そういえば、揺れたときに鍋が飛んできて、全部ではないけれど、バシャッと油がかかったような気がする。
 カツを揚げていたときの煮立った鍋の油だ。
 火傷をしているらしいけれど、それをどうにかすることはできなかった。
 とりあえず手探りでガスの栓を閉め、水で冷やすために風呂場に行こうとしたが、風呂の入り口の戸は、少ししか開かない。
 どうやら脱衣場にあるタオルストッカーが倒れて、戸を塞いでいるらしい。
 しかたないので、なんとかタオル一本だけ持ち出して、外の様子をうかがった。