店主敬白(悪魔の囁き)

栄進大飯店の店主さがみやがおくる日々の悪魔の囁き。競馬予想や文学・音楽・仕事のグチやちくりまでいろいろ。

まだ読んでいた「シルヴィア」

2005-05-26 01:29:09 | 小説・読んだ本
 前に詩人・シルヴィア・プラスのことをここに書いたが、この人の死の直前の月日を書いた小説「シルヴィア」(ケイド・モーゼス)を読んだ。
 もう全編、ものすごく重い。
 えんえんと続くシルヴィアの子育て悪戦苦闘の様子と、その中で詩を書かねばならないジレンマ。
 夫は別の女とよろしくやってて別居中だし、子育てでどんどんシルヴィアの自由になる創作時間は奪われていく。
 夫は育児に協力するどころか、妻が詩人として評価されるのを意図的に妨害するために家庭を放棄しているようだし、思いどうりにならない小さなこと(電話がなかなか敷設できないとか、子供が言うことをきかないとか)の積み重ねが、どんどんシルヴィアを追い詰めていくようすが、えんえんと綴られている。
 実際のシルヴィアはこの小説の終わるすぐ後に自殺しているので、作品が重いし、あと味が悪いのはしかたないことなのだが、
「いいかげんになんとかしてやれよ」
 と他の登場人物(特にろくでなしのクセに名士になりたがりの亭主)に言いたくなるほど、シルヴィアばかりがひどい目にあわされていく。
 読んでいると、どんどんおいらまでもこの苦しく長い戦いにまきこまれ、重苦しい気分になってくる。
 でも、女性の自立とか、家庭と仕事ということを考えたら、決してシルヴィアのいたここから目をそらせてはいけないのだろう。
 未だにすぐれた才能を持ちながらも、シルヴィアと同じようなひどい目にあっている人がいる限り、この小説とシルヴィアは輝き続ける。
 重く、暗い輝きだけど。

 

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