赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま (15)
(15)ミイシャの憂鬱
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/5c/69bf5502c19d6e809332ebeeb27375d9.jpg)
「どうした。いつもの笑顔がないぜ?」
いつもの時間。いつものように置屋の2階へやって来たミイシャに
いつもの笑顔がない。顔がこわばったままだ。
『どうしたんだよ。おまえさんらしくないぜ』たまの問いかけに、ミイシャが小さくうなだれる。
伏し目のミイシャの目線の先に、ピンクのカーテンがぴたりと閉ざされた
少女の部屋が見える。
「具合が悪いのか。ひよっとして、入院したのか?」
「長くなりそうですって。今回は。
女の子のお母さんが、オロオロしながら、あちこちに電話をかけているもの」
「そうか。大変だなぁ。心臓の病気というやつは・・・・」
「100人にひとり。
生まれたときから、心臓に何らかの異常のある人が居るそうです。
中には、自然に治ってしまう軽度の人もいます。
でもね。たいていは手術をしなければ治らないそうです。
弱い心臓に余計な負担をかけないよう、日常生活も制限するんだって。
あの子のように」
「そう言われてみれば、そうだ。
おいらがここへ来た頃から、あの子は、毎日ベッドに寝たきりだったなぁ」
「心臓病は、症状が出なければ、見た目は普通の人変わりません。
でもあの子は、お外で遊ぶことも、登校することも自由にできないの。
身体だけじゃないの。心にも痛みを感じながら、必死に生きているの。
心臓病って身体にもきついだけど、心にも、とっても辛い病気なの」
「それならおいらも、おんなじさ。
君を愛するようになってから、君なしでは生きられなくなってきた。
会えないときは、胸がうずく。
チクチクと一晩中痛んで、寝られないもの」
「嘘つき。うずくのは、あなたのやんちゃな下半身でしょう。
顔さえ見れば、すぐにやりたがるんだもの。
あのねぇ・・・・女の子の身体は、とてもデリケートにできているの。
受け入れる準備が出来た時だけ、応えてあげることができるの。
人間なら毎日でも出来るけど、わたしたちはそうはいかないの。
いつでも発情しているのは、この広い猫の世界を見回してみても、
きっと、あんた一匹だけだわよ」
朝から不謹慎な会話を交わしているたまとミイシャを尻目に、
清子が階下と2階を忙しく、ドタバタと往復している。
「ねぇ。なんで朝からドタバタと動き回っているの、清子は。
どう見ても、無駄な動きばかりしているわ」
「実はな。姉さん巡りの泊まり込みの旅が、今日からはじまるのさ。
朝までに荷物をまとめておけと言われたのに、清子は根っからの呑気者だ。
朝になって、準備が出来ていないことにやっと気が付いた。
だからああして、はた迷惑なほど動き回っているんだ」
「一緒に行くはずの、お母さんはどうしたの?」
「お母さんは、放任主義者だ。
姐さん巡りの旅は、毎度のことだから悠然と構えている。
慌てなくてもいいから、忘れ物をしないように自分で用意をしなさいと、
下で涼しい顔をしている。たぶんね。
今ごろは、悠然とお茶を飲んでるはずさ」
「カバンに、同じものを、入れたり出したりしてるだけじゃないの。
出かける準備なんか、まったく進んでいませんねぇ。
段取りも悪いけど、要領も悪いのねぇ、清子って子は」
「珍しくなんかないさ。
心に準備が出来ていない時、何かを突然言われると、
それだけでパニック状態になるんだぜ。清子という女の子は」
「今朝の少女のお母さんと、まるっきり同じじゃないの。
落ち着いていて、いつも沈着冷静な少女のお母さんが今朝にかぎり、
ドタバタ、取り乱していたわ。
家の中にも、なんだか、いつもと違う気配が漂っていました。
あたし、心配だわ・・・・」
「ということは、いよいよ、緊急を要する事態なのかな?。
いいのかよ。君はこんなところで、おいらと、のんびり愛を語っていても」
「何度言わせるの。愛なんか語っていません。
ねぇぇ。そんなことより大丈夫かしら。清子のほうは。
さっきから、全然準備が進んでいません。
少女の様子も気にかかるけど、清子の様子はもっと深刻です。
あのままじゃ、いつまでたっても出発できません。
ねぇ、あんた。
清子のために、猫の手を貸してあげたら?」
「御免だね。
浴衣とパンツを、何度も出し入れしている女を手伝ってどうすんだ。
だいいち、あいつ。
俺があいつのパンツをかぶって遊んでいると、烈火のごとく鬼のように怒るんだぜ。
そんな日頃の恨みもある。
ここはじっくりお手並み拝見といこうぜ。高みの見物さ。面白いぞ」
「清子にも問題あるけど、あんたにも相当、問題が山積しているわねぇ。
いったいどうなっているのさ、この家の中は・・・・」
(16)へ、つづく
落合順平 作品館はこちら
(15)ミイシャの憂鬱
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/5c/69bf5502c19d6e809332ebeeb27375d9.jpg)
「どうした。いつもの笑顔がないぜ?」
いつもの時間。いつものように置屋の2階へやって来たミイシャに
いつもの笑顔がない。顔がこわばったままだ。
『どうしたんだよ。おまえさんらしくないぜ』たまの問いかけに、ミイシャが小さくうなだれる。
伏し目のミイシャの目線の先に、ピンクのカーテンがぴたりと閉ざされた
少女の部屋が見える。
「具合が悪いのか。ひよっとして、入院したのか?」
「長くなりそうですって。今回は。
女の子のお母さんが、オロオロしながら、あちこちに電話をかけているもの」
「そうか。大変だなぁ。心臓の病気というやつは・・・・」
「100人にひとり。
生まれたときから、心臓に何らかの異常のある人が居るそうです。
中には、自然に治ってしまう軽度の人もいます。
でもね。たいていは手術をしなければ治らないそうです。
弱い心臓に余計な負担をかけないよう、日常生活も制限するんだって。
あの子のように」
「そう言われてみれば、そうだ。
おいらがここへ来た頃から、あの子は、毎日ベッドに寝たきりだったなぁ」
「心臓病は、症状が出なければ、見た目は普通の人変わりません。
でもあの子は、お外で遊ぶことも、登校することも自由にできないの。
身体だけじゃないの。心にも痛みを感じながら、必死に生きているの。
心臓病って身体にもきついだけど、心にも、とっても辛い病気なの」
「それならおいらも、おんなじさ。
君を愛するようになってから、君なしでは生きられなくなってきた。
会えないときは、胸がうずく。
チクチクと一晩中痛んで、寝られないもの」
「嘘つき。うずくのは、あなたのやんちゃな下半身でしょう。
顔さえ見れば、すぐにやりたがるんだもの。
あのねぇ・・・・女の子の身体は、とてもデリケートにできているの。
受け入れる準備が出来た時だけ、応えてあげることができるの。
人間なら毎日でも出来るけど、わたしたちはそうはいかないの。
いつでも発情しているのは、この広い猫の世界を見回してみても、
きっと、あんた一匹だけだわよ」
朝から不謹慎な会話を交わしているたまとミイシャを尻目に、
清子が階下と2階を忙しく、ドタバタと往復している。
「ねぇ。なんで朝からドタバタと動き回っているの、清子は。
どう見ても、無駄な動きばかりしているわ」
「実はな。姉さん巡りの泊まり込みの旅が、今日からはじまるのさ。
朝までに荷物をまとめておけと言われたのに、清子は根っからの呑気者だ。
朝になって、準備が出来ていないことにやっと気が付いた。
だからああして、はた迷惑なほど動き回っているんだ」
「一緒に行くはずの、お母さんはどうしたの?」
「お母さんは、放任主義者だ。
姐さん巡りの旅は、毎度のことだから悠然と構えている。
慌てなくてもいいから、忘れ物をしないように自分で用意をしなさいと、
下で涼しい顔をしている。たぶんね。
今ごろは、悠然とお茶を飲んでるはずさ」
「カバンに、同じものを、入れたり出したりしてるだけじゃないの。
出かける準備なんか、まったく進んでいませんねぇ。
段取りも悪いけど、要領も悪いのねぇ、清子って子は」
「珍しくなんかないさ。
心に準備が出来ていない時、何かを突然言われると、
それだけでパニック状態になるんだぜ。清子という女の子は」
「今朝の少女のお母さんと、まるっきり同じじゃないの。
落ち着いていて、いつも沈着冷静な少女のお母さんが今朝にかぎり、
ドタバタ、取り乱していたわ。
家の中にも、なんだか、いつもと違う気配が漂っていました。
あたし、心配だわ・・・・」
「ということは、いよいよ、緊急を要する事態なのかな?。
いいのかよ。君はこんなところで、おいらと、のんびり愛を語っていても」
「何度言わせるの。愛なんか語っていません。
ねぇぇ。そんなことより大丈夫かしら。清子のほうは。
さっきから、全然準備が進んでいません。
少女の様子も気にかかるけど、清子の様子はもっと深刻です。
あのままじゃ、いつまでたっても出発できません。
ねぇ、あんた。
清子のために、猫の手を貸してあげたら?」
「御免だね。
浴衣とパンツを、何度も出し入れしている女を手伝ってどうすんだ。
だいいち、あいつ。
俺があいつのパンツをかぶって遊んでいると、烈火のごとく鬼のように怒るんだぜ。
そんな日頃の恨みもある。
ここはじっくりお手並み拝見といこうぜ。高みの見物さ。面白いぞ」
「清子にも問題あるけど、あんたにも相当、問題が山積しているわねぇ。
いったいどうなっているのさ、この家の中は・・・・」
(16)へ、つづく
落合順平 作品館はこちら
何度も体験して経験して・・最低の必需品
が判ってきます、そして今回の旅の情景を
想像してまた入れ替わります。
それが数時間で出来るようになるには
何度も失敗しないと・・その積み重ね
ですね
ネギは、この辺でも取れますが今は
玉ねぎが軒先にぶる下がっていて
白ねぎは畑の室に埋まっています
今年中くらいのものは物置の隅っこに
我が家のは20本か30本くらいで楽勝です
意外と重いんですね 腰は大事です
ゴルフのスコアーを思い浮かべながら
農作業してくださいね、痛めると
奥さんに負けますよ (^o^)/
種類によっては昨日の時点で、出荷が停止しています。
ここ一週間。育ってきたホウレンソウに追われ、
朝から晩までの出荷に追われました。
いったい誰が、こんな大量にホウレンソウを
食べるのでしょうか・・・(笑)
ともあれ、本日より農業はやすみです。
仕事はじめは、来年の5日から。
ひさしぶりにパソコンへ向かい、執筆を
再開いたしました。