【1楽章】Adagio−Allegro molto
【2楽章】Largo
【3楽章】Scherzo∶Molto vivace
【4楽章】Allegro con fuoco
『モルト』→非常に
『スケルツォ』→おどけた感じの曲から発達した、速い三拍子で、活発なリズムや技巧的な強弱変化を特徴とする器楽曲
『ヴィヴァーチェ』→活発に、速く
『コン フォーコ』→熱烈に、火のように
【速度一覧】
(遅い) Lentoレント
Largoラルゴ
Adagioアダージョ
→1分間に60打くらいの速度
Andanteアンダンテ
Andantinoアンダンティーノ
→1分間に90打くらいの速度
Moderatoモデラート
Allegrettoアレグレット
→1分間に120打くらいの速度
Allegroアレグロ
Vivaceヴィヴァーチェ
→1分間に160打くらいの速度
(速い) Prestoプレスト
【演奏所要時間全曲40分(S.Aronowdky『管弦楽曲演奏所要時間表』による)】
【オーケストラ編成】(Wiki)
持ち替えは一部で存在するものの、全体としては伝統的な2管編成に近い。
楽器の用いられ方についてしばしば議論される箇所があるほか、逸話も多数存在する。
フルート 2(ピッコロ持ち替え 1)
オーボエ2
イングリッシュホルン1
クラリネット2
ファゴット2
ホルン4
トランペット2
トロンボーン3
チューバ1
ティンパニ
トライアングル
シンバル
弦五部(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)
✿編成に関する特記事項
『フルート、ピッコロ』
第1楽章に4小節間だけ用いられているピッコロについて、自筆総譜ではフルート第1奏者が持ち替えて演奏するよう指定されている。
一方、初演の際に用いられた手書きパート譜やそれ以降の出版譜は、オーケストラの一般的な慣習に従い、第2奏者が持ち替えて演奏するように編集されている。
第1楽章の再現部では、第1奏者を休みとして第2奏者が(ピッコロではなくフルートで)ソロを演奏するように指定されているが、理由は不明である。
『イングリッシュホルン』
イングリッシュホルンは第2楽章にのみ用いられ、有名な長いソロを含めて3回登場するが、このパートをどのように(2名のオーボエ奏者のうちどちらかが持ち替えて、または別の奏者を用意して3名体制で)演奏するべきかについては複数の見解がある。
自筆総譜では、楽章冒頭の楽器一覧にはイングリッシュホルンが挙げられておらず、実際の音符はオーボエの段に書かれている。
そこに奏者の指定などがないことから、この点についてのドヴォルザークの意図は不明とされる。
初版パート譜では、オーケストラの一般的な慣習に従い、オーボエ第2奏者が持ち替えて演奏するようになっている。
しかし、楽器の持ち替えのための休みが1小節未満ときわめて短い箇所があることから、イングリッシュホルンを(持ち替えではなく)独立したパートとして扱う楽譜も存在する。
実際、初演の際に用いられた手書きパート譜ではイングリッシュホルンが独立しているほか、チェコスロバキア国立文学音楽美術出版社によるドヴォルザーク全集版(オタカル・ショウレク校訂、1955年)をはじめとする後出の批判校訂版は総じてイングリッシュホルンのパートを独立させている。
『チューバ』
チューバの使用箇所は第2楽章のコラール部分のみ、合計10小節にも満たない。
しかもバス・トロンボーン(第3トロンボーン)と全く同じ音(ユニゾン)である。
これについては、初演時のオーケストラで第3トロンボーン奏者がバス・トロンボーンを用いていなかった(代わりにテナー・トロンボーンを用いた)ための代替措置に起因するという説がある。
『シンバル』
この曲の中で、シンバルは全曲を通して第4楽章の一打ちだけであることがよく話題となるが、奏者についてはトライアングル(第3楽章のみ)の奏者が兼ねることが可能である。
この一打ちが弱音であるためか、「寝過ごした」「楽器を落として舞台上を転がした」などのエピソードが存在する(倉本聰はかつてフランキー堺主演で、この一打を受け持つ奏者の心理を描いた短編TVドラマを書いている。
実際クラシック初心者にとってシンバルの音はなくても気付かない、あるいはどこで鳴ったのかわからない等と言われることもある。
【アントニオ・ドボルザークについて】
1841-1904
・国民楽派に属する
・代表作には、ある一貫した民族的特徴の個性的な表現がある。
・チェコスロバキア、当時はボヘミアと呼ばれていた中部ヨーロッパのネラホツェヴェス(ドイツ名ミュールハウゼン)宿屋兼肉屋の子として生まれた。
・旅音楽家のヴァイオリンに惹かれヴァイオリンを習い覚えた。
・ジャネット・サーバー夫人の懇請に応じサーバー夫人が設立したニューヨークの国民音楽院院長を引き受け、1892年から3年間務めた。
・『新世界より』という名称は、ドボルザーク自身がつけた。
【作品の経過】
・着任した1892年年末から翌年にかけ、ドボルザークはインディアンや南方プランテーションの黒人の歌に興味を抱き丹念にスケッチした。
・そのスケッチをもとに交響曲にまとめることになる。
・3人の協力者、サーバー夫人、評論家ジェイムズ.G.ハネカー、黒人学生H.T.バーレーは、黒人霊歌、インディアン民謡、を採譜した資料をたくさんドボルザークに提供した。
・バーレーから聞いた黒人霊歌「Swing low Sweet chariot」を第1楽章フルートト長調の旋律に採用した。
・この交響曲のためのスケッチは3冊
・最初のスケッチに1892年12月19日とある。
・次のスケッチは1893年1月10日から。
・終曲は1893年5月25日に書き上げた。
【初演】
1893年12月15日
アントン・ザイドル指揮
ニューヨークフィルハーモニー
ドボルザークも出席。
【当時の反響】
・欧米音楽論壇の反響は大きく、意見は2つに分かれた。
・一つはドイツの解説者クレッチュマール「アメリカ黒人とインディアン民謡から得た動機によるラプソディの一種」
・他の一派「ボヘミア民謡の脈絡から来ているもの、所々にアメリカ民族音楽の余響を聞かせているに過ぎない」
【初演に先立つドボルザークの声明】
「将来のアメリカ音楽が真にその名に値しようとするためには、黒人旋律の精神の基礎のうえに立たざるを得ないであろう。これこそアメリカの民族歌謡である。したがって貴国の作曲家たる者はこれに向かうべきである。私はアメリカの黒旋律のなかに、音楽の高貴なる一大楽派を生むに必要なるすべてのものを見出す」
【構成】
・4楽章よりなるオーソドックスの連曲形式
・各楽章はそれぞれ序奏をもって開始される
✿第1楽章
・序奏アダージョはホ短調4/8拍子。
・楽章本部はアレグロ、ソナタ形式。
・序奏は楽章本部と有機的に結合し、全曲を一貫する精神的なものを準備する任務を与えられている。
・フルートにより提示されヴァイオリンに受け継がれる第2主題が「Swing low Sweet chariot」に親近性を持つ調べを奏でる。
✿第2楽章
・ラルゴ、変ニ長調、4/4拍子。
・ロンド形式
・主要主題はイングリッシュ・ホルンにより提示される
・エピソードに入るとチェロが奏でるオルガン・ポイントの上に、新しい主題が嬰ハ短調で現れる。→ドボルザーグ曰く「アメリカ大草原の動物たちの朝早い目覚めを暗示する」
✿第3楽章
・スケルツォ、モルト・ヴィヴァーチェ、ホ短調3/4拍子。
・スケルツォ・トリオ形式
・トリオが2つある。
・ひとつはホ長調
・もうひとつはハ長調
✿第4楽章
・終曲、アレグロ・コン・ブリオ、ホ短調、4/4拍子
・ソナタ形式
・9小節の序奏の次に全管楽器がフォルティッシモで奏する和音に対して、ホルンとトランペットが第1主題を提示して始まる。
・第2主題は弦のトレモロを背景として、クラリネットにより提示される。
・既に演奏された各楽章の特徴を成す主題が次々と姿を現わし、楽想的な模様を織りなす。
・コーダのなかで力強い頂点を築いて終結する。
【ドボルザークの交響曲】
・全9曲
・1番「ズロニスの鐘」ハ短調
・もとの作品3→2番変ロ長調
・もとの作品4→3番変ホ長調
・もとの作品10→4番ニ短調
・もとの作品13→5番へ長調
・もとの作品24 (出版されたとき第3番作品76)→6番ニ長調
・作品60 (出版のとき第1番となった)→7番ニ長調
・作品70(出版のとき第2番)→8番ト長調
・作品88(出版のとき第4番)→9番ホ短調
・作品95「新世界より」(出版のとき第5番)
【解説】牛山充氏