創作:『スカボロフェア第2話 〈ミント〉』を書いたのは、2年前の7月1日のようです。
今日は外伝として、妖精メンタのそののちを書いてみます。
これは、たまたまいつも行っているマッサージやさんで、ミントの香りがしたことから、ミントの伝説を話してあげてました。
そして、施術中に想像してみました。
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《ミント外伝》
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暁は進軍を続ける傷ついた兵士たちを慰めていた。
澄んだ空気は新しい時代を感じさせた。
ペルシア軍歩兵第8連隊がアスト岬に到着したのは、本日明け方のことだった。
8万とも10万とも言われたその連隊は、岬に到着するなり、空腹を満たすべく食料を分け合った。
士官アルドトスは美しい男だった。
勇者であり、頑強な肉体を持っていた。
精神もまた然り、どうような誘惑にも負けぬ鋼の強さがあった。
アルドトスはライ麦のパンを口に放り込むと、乾いた喉を潤すべく、林の奥に見える小川へと向かった。
小川はピリオン山の方から流れているのか、七色に光り、美しいせせらぎは天使の会話のような音を立てていた。
アルドトスはその逞しい手で水をすくうと、とてもおいしそうに飲んだ。
自然の恵みが身体を駆け巡り、ここ8ヶ月と続いていた戦いの疲れを癒す。
ふと、ときめく香りが風に乗り、彼の鼻をかすめた。
香りの方に目をやると、柔らかなグリーンの色をしたミントだった。
6センチぐらいのものだったが、その香りは四方に広がり、アルドトスの肩についた深い傷にも入り込んできた。
ミントの香りはアルドトスの肉体を征服した。
彼はそのミントを大事そうに摘むと、懐へそっと入れた。
隊に戻るべく、もと来た道を進むと、暗い森の中に白亜の宮殿が現れた。
その壮観な建物はプロピュライア宮殿のようでもあった。
美しく荘厳な彫刻はアルドトスを威嚇し、また魅了した。
アルドトスは吸い込まれるように、その宮殿の入り口の階段をあがっていった。
目の前に美しく整備された中庭が開けた。
女神のように神々しい女が水浴びをしていた。
長い黄金の髪が、透けるように白い身体にまとわりついていた。
女はアルドトスに気づくことなく水浴びを楽しんでいた。
アルドトスは自分の中に起きる衝動を把握することができなかった。
彼はその女に近づき、突然、永遠の愛を誓った。
女はあまりの急な出来事に驚いたが、アルドトスの美貌に魅せられ、その愛に即答した。
わかりました、と。
女の名前は、ペルセポネ、と言った。
ふたりは、その後、3日3晩、抱き合っていた。
4日目の朝も、ふたりは深く見つめあいながら目覚めた。
冥界の王、ハーデスの妻でありながら、ペルセポネには目の前の男がすべてになっていた。
まるで熱病に罹患したかのようだった。
突然、えもいわれぬ悪寒がし、アルドトスは嘔吐した。
手は震え、近くにあった刀を取ると、間髪いれずペルセポネを突き刺した。
ペルセポネは抗う隙もなく、息絶えた。
アルドトスは正気に戻ると、自分のしたことがよくわからなかった。
目の前には血だらけのペルセポネが白目を剥いて横たわっていた。
すると、背後で、鈴のような可愛らしい笑い声がしていた。
振り返ると、妖精メンタだった。
メンタの復讐は叶った。
メンタを草に変えた憎きペルセポネは、自分の手を汚さずにこの世から消えた。
メンタは細い腰をくねらせながら、妖艶なあどけない顔で、アルドトスを祝杯の宴に誘った。
アルドトスは崩壊し、その場で命を絶った。
メンタは大笑いし、その場を後にした。
ペルセポネとアルドトスが血にまみれて倒れるその部屋には、清清しいミントの香りが漂っていた…
【おわり】
今日は外伝として、妖精メンタのそののちを書いてみます。
これは、たまたまいつも行っているマッサージやさんで、ミントの香りがしたことから、ミントの伝説を話してあげてました。
そして、施術中に想像してみました。
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《ミント外伝》

暁は進軍を続ける傷ついた兵士たちを慰めていた。
澄んだ空気は新しい時代を感じさせた。
ペルシア軍歩兵第8連隊がアスト岬に到着したのは、本日明け方のことだった。
8万とも10万とも言われたその連隊は、岬に到着するなり、空腹を満たすべく食料を分け合った。
士官アルドトスは美しい男だった。
勇者であり、頑強な肉体を持っていた。
精神もまた然り、どうような誘惑にも負けぬ鋼の強さがあった。
アルドトスはライ麦のパンを口に放り込むと、乾いた喉を潤すべく、林の奥に見える小川へと向かった。
小川はピリオン山の方から流れているのか、七色に光り、美しいせせらぎは天使の会話のような音を立てていた。
アルドトスはその逞しい手で水をすくうと、とてもおいしそうに飲んだ。
自然の恵みが身体を駆け巡り、ここ8ヶ月と続いていた戦いの疲れを癒す。
ふと、ときめく香りが風に乗り、彼の鼻をかすめた。
香りの方に目をやると、柔らかなグリーンの色をしたミントだった。
6センチぐらいのものだったが、その香りは四方に広がり、アルドトスの肩についた深い傷にも入り込んできた。
ミントの香りはアルドトスの肉体を征服した。
彼はそのミントを大事そうに摘むと、懐へそっと入れた。
隊に戻るべく、もと来た道を進むと、暗い森の中に白亜の宮殿が現れた。
その壮観な建物はプロピュライア宮殿のようでもあった。
美しく荘厳な彫刻はアルドトスを威嚇し、また魅了した。
アルドトスは吸い込まれるように、その宮殿の入り口の階段をあがっていった。
目の前に美しく整備された中庭が開けた。
女神のように神々しい女が水浴びをしていた。
長い黄金の髪が、透けるように白い身体にまとわりついていた。
女はアルドトスに気づくことなく水浴びを楽しんでいた。
アルドトスは自分の中に起きる衝動を把握することができなかった。
彼はその女に近づき、突然、永遠の愛を誓った。
女はあまりの急な出来事に驚いたが、アルドトスの美貌に魅せられ、その愛に即答した。
わかりました、と。
女の名前は、ペルセポネ、と言った。
ふたりは、その後、3日3晩、抱き合っていた。
4日目の朝も、ふたりは深く見つめあいながら目覚めた。
冥界の王、ハーデスの妻でありながら、ペルセポネには目の前の男がすべてになっていた。
まるで熱病に罹患したかのようだった。
突然、えもいわれぬ悪寒がし、アルドトスは嘔吐した。
手は震え、近くにあった刀を取ると、間髪いれずペルセポネを突き刺した。
ペルセポネは抗う隙もなく、息絶えた。
アルドトスは正気に戻ると、自分のしたことがよくわからなかった。
目の前には血だらけのペルセポネが白目を剥いて横たわっていた。
すると、背後で、鈴のような可愛らしい笑い声がしていた。
振り返ると、妖精メンタだった。
メンタの復讐は叶った。
メンタを草に変えた憎きペルセポネは、自分の手を汚さずにこの世から消えた。
メンタは細い腰をくねらせながら、妖艶なあどけない顔で、アルドトスを祝杯の宴に誘った。
アルドトスは崩壊し、その場で命を絶った。
メンタは大笑いし、その場を後にした。
ペルセポネとアルドトスが血にまみれて倒れるその部屋には、清清しいミントの香りが漂っていた…
【おわり】
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