はあちゃんは、5歳
ひいちゃんは、2歳
ふたりはなかよし姉妹
今日も二人でおままごと
はあちゃんはお母さん役
ひいちゃんは赤ちゃん役
「はーい、あかちゃん、ごはんですよー」
はあちゃんは、先ほど生垣のところで取ってきた小さい赤い実を5粒、プラスチックの黄緑色の小皿に載せた。
ひいちゃんは、お皿の上の赤い実を全部いっしょに右手でつかんだ。
「あっ、ひいちゃん、それは本当には食べちゃダメだよ」
はあちゃんが言うと、ひいちゃんはゆっくり右手を広げて、赤い実をぽろぽろと下に落とした。
「あ~、あかちゃん、ごはんをこぼしちゃったですねー。じゃあ、もういっかい、あげますね~」
はあちゃんは、ひいちゃんが落した赤い実を一粒ずつ拾って、もう一度黄緑色の小皿に載せた。
ひいちゃんは、はあちゃんが赤い実を載せた小皿を両手で受け取ると、にっこりとした。
「あかちゃん、おいしいですか~。」
はあちゃんは、一粒をつまんで、ひいちゃんに食べさせるまねをした。
ふと、はあちゃんは、ひいちゃんの横に、ころんと横たわっていた、くまのぬいぐるみをつかむと、ひいちゃんの横に座らせた。
この、くまのぬいぐるみは、プクロー、と言った。
「プクロー、今日からおねえちゃんのいうことを聞くのよ」
はあちゃんは、プクローをさとすように言った。
プクローは無言のまま、大きなたれ目を見開いていた。
「ひいちゃん、なんかさ、おとうとほしいね」
ひいちゃんは赤い実をいじっていた。
「あとさ、おやつもらいに行こうよ」
ひいちゃんは勢いよく立ち上がると、鉄砲玉みたいにお母さんのことろへ飛んで行った。
はあちゃんは、慌ててひいちゃんの後を追って、お母さんのところへ行った。
あとには、プクローが無表情なまま転がっていた。
お母さんは冷蔵庫からよく冷えたプリンを2個取り出すと、ふたを取って、きれいなブルーのガラスの入れ物に移してくれた。
「お母さん、なんかね、おとうとほしくなった。ひいちゃんもいってたよ。」
はあちゃんは、プリンをほおばりながらそう言った。
ひいちゃんは、ただただ夢中でプリンと格闘していた。
お母さんは、にこにこした。
「はあちゃんもそう思う?ママもそう思うのよ」
お母さんは言った。
はあちゃんは、とってもうれしくなって、プリンがとてもおいしくなった、と思った。
はあちゃんは、おとうとはどんなものかわからなかったけど、いつかおとうとに会ったら、なんて言うか考えた。
よく考えて、よく考えて、きめた。
「ひいちゃん、おとうとにあったらね、いうこと決めたんだよ」
ひんちゃんは、プクローをごねごねこねていた。
「うんとね、いうよ」
「おとうと、こんにちは」
ひいちゃんは、プクローをたたいた。
キッチンでフライパンを動かしながら聞いていたお母さんが、はあちゃんに言った。
「はあちゃん、おとうと、こんにちは、いいね」
はあちゃんはうれしくなって、ひいちゃんといっしょにプクローをたたいた。
ずっとずっと、たたいていた。
《おわり》
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