私のこの年齢になったことで、この本が面白くて時に胸に迫り、興味を持って読めることを知りました。
詩と詩論・詩に関するエッセイ・文学談義というか座談の模様などが載っている本です。和田元震は、生業としては医師として働きましたが、詩人として生きていきたいとも思っていました。詩的感覚を磨き、いつも詩作ノートと鉛筆は注射器も入っていた鞄の片隅に、入っていたように記憶しています。
これから度々これらの作品をご紹介しようかな…と思います。
元猿 和田元震
戌年生まれの私は
たまにすばしこく立ち廻ると
元犬なんて言われるのですが
この頃は 招き猫のようにおとなしくなって
今猫なんて言われています
人間は元猿ですが
猿のように四つんばいで暮らしていたら
文化の進歩は無かったでしょうけど
老年に腰が痛くもならなかったでしょうに
神様が四つんばいにお造りになった体を
重い上体を支えて 永年立って歩いたから
腰椎間が狭まって 年をとると腰痛や
歩行困難症が出たのです
老化現象が早く出るのです
人間はやっぱり 猿のように
尻っぽを高く挙げながら
はい廻っていた方がよかったのじゃないですか
ナルコチカ
諸君、ナルコチカは一生離せんぞ
卒業記念アルバムの 宮下の言葉だ
あの時はみんな若かった
行く手に 人生は無限の拡がりだった
酒精(アルコホール)
女性(フィメイル)
音楽
文学
事実 ナルコチカと共に人生を生きてきた
そして 今もナルコチカに取りついて 生きている
今では宮下も ボクも 悔いなく力を出し尽くしたが
宮下よ
久しぶりに話し合おうか
君のナルコチカを汲み交わしながら
やって来いよ 若い心で
君の人生を すっかり
包みなく聞かせてくれ
そして両人(ふたり)でもう一度
無限だった人生の拡がりを 遠く眺め直そう
*ナルコチカ(Narkotika)は医学用語、ドイツ語で麻酔剤のこと