(皆様へのお願い…あの番組の歌を思い浮かべつつ読んでください)
2007年2月某日。
桜雪家では、引越しまであとひと月を切っていた…。
週末、いつもマイペースな夫が、協力的な姿勢を見せた。
二人で街へ出かけ、夫の友人へのお祝いの品を選んだ。
荷造りに必要な段ボール箱を大量に集めたりもした。
切羽詰っていた桜雪、大いに助かった…。
家にいる時間は荷造りに取り掛かった。
夫は必死に自分の本を梱包していた。
しまってもしまっても、きりがない大量の書籍…。
作業は二日に亘って行われたが、すべての本棚を空にすることはできなかった。
一世帯とは思えない荷物の山だった。
「なんとかなるよ」と楽天的な夫は言ったが、桜雪にはそうは思えなかった。
夫はあまりに多忙で、次週もおそらく外泊や深夜帰宅が多く、
私的な約束も抱えていて、家で引越し準備をする時間など、
ろくにないと悟っていたからだった…。
それでも桜雪は、頼まれていた結婚式のスピーチを練習をするよう、夫に勧めた。
自信にあふれた夫は、3度ほど声に出して練習すると、作業に戻った。
「もっと練習して…」と桜雪は懇願したが、聞き入れられなかった。
「大丈夫、大丈夫。俺は桜雪ちゃんとは違うから、そんなに何度も練習しなくても
その場でどうにかできる。もっと夫を信じなさい」と、言葉を返された。
当日夫の手伝いで初めてプロジェクターを使う桜雪、
タイミングを逃しがちな自分のために何度も共同の練習をしてほしかったが、
そこまで断言されると、もう何も言えなかった…。
自分の荷造りを中断して、スピーチ用に編集したCD作りに精を出した。
そのめでたい日も、刻一刻と近づいていた…。
※ ※ ※
対照的な二人の意見は度々食い違った。
桜雪は義母の助言もあり、
引越し一週間前に近所へ挨拶回りをするよう計画を立てていたが、
今になって夫、
「その頃はちょうど引越し準備のピークだよ。
出かける余裕なんてないよ。引越し後でもいいんじゃないの…」と言い出した。
同意を得た事項を覆されそうになった桜雪、
苛立って言い返した。
「引越し前だというのに個人的に旅行に出かけようという人間が、
おまけに個人的に飲みの約束もしてきた人間が、
余裕がないなんて言う資格はない!」と。
様々な雑用を妻に任せて悠長に構えているくせに、
気分次第で予定に口を出す夫が、許せなかった…。
その生き様は歌の『マイウェイ』そのままだと指摘すると、
歌いだした夫が、笑い出した…。
桜雪も思わず、笑った。
<たぶん、つづく>
注:物事の前後関係、会話の内容などに多少の脚色はありますが、
ほとんど事実です。
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