先手番大山先生の手を考えます。
第1問
桂取りを受けたいのですが。
A 79飛 B 78銀 C 61角
第2問
駒損になるのですが攻めます。
A 74角 B 45桂 C 68飛
第3問
どこから攻めますか?
A 45歩 B 26桂 C 75角
第4問
王手か詰めろを続けたいのです。
A 52同と B 42と C 22金
先手番大山先生の手を考えます。
第1問
桂取りを受けたいのですが。
A 79飛 B 78銀 C 61角
第2問
駒損になるのですが攻めます。
A 74角 B 45桂 C 68飛
第3問
どこから攻めますか?
A 45歩 B 26桂 C 75角
第4問
王手か詰めろを続けたいのです。
A 52同と B 42と C 22金
今日の棋譜20191106
昭和45年6月、山田道美先生と第16期棋聖戦です。
大山先生の先手三間飛車です。
後手番で急戦は難しいのですが
山田先生は65歩急戦をあきらめて棒銀にしました。
これが振り飛車の一番シンプルで強い対抗策です。多分この将棋が初めてなのだと思います。大山先生は定跡を指しませんから。大山先生が考案した急戦対策の定跡もいくつかあるのですが、うまくいっているものを含めて2回は指しません。何度も指すのは誰も真似をしない玉頭の袖飛車くらいです。
山田先生は角を交換して98角ですが、これが疑問手です。初見では仕方ないでしょう。65歩75歩62飛というのが後に定跡とされています。
大山先生は61角の割打ちから金を手に入れて
88金。角は死んでいます。89角成しかないので
桂金交換で、左桂が使えた形は大きいのです。
山田先生としては6筋を攻めて何とかするしかないです。68角に期待しました。78金77角成同金79飛というような変化を期待しています。
78飛には67歩成。68飛同と が普通の形ですが
大山先生は63歩同飛74角。
角飛交換で飛を取られていますから角損の取引です。68角は死んでいるし
王手銀桂取りがあって
全部取り切ってしまえば歩切れですが銀得です。
駒得なので端を攻められても謝ります。
68竜に86角はおかしな感じで
79竜に68銀もあまり得ではないです。山田先生は竜を逃げずに84歩ですが、
竜の取り合いは79.84の位置の違いから後手が損をしているのでしょう。
77角に44角も後手を引いているのです。
大山先生は77飛などを避けて67銀。もう終盤ですが玉のほうに銀を寄せていくのが大山流です。
26桂は受けてもらえば利かしです。駒損の山田先生は持ち駒を使いたくないので
69角の攻め、大山先生は78角で欲張った受けです。
角を切られて77金~67金があります。38銀57桂、38金57金、など受けても嫌味が残ります。
大山先生は受けずに34桂~73歩成~63歩。52金には72飛62歩71飛成51桂、手は続くけれどまだ難しそうですが
山田先生は手抜いて銀角を取りました。
大山先生は52飛42銀打63と 寄せ合いです。53と は詰めろになるでしょう。
山田先生は寄せ合い負けなので銀を埋めますが
53と52銀に22金。どうやっても詰めろは続きそうです。
33玉31金も詰めろ。
山田先生は受けにくいので58竜同金17銀で王手ラッシュですが一目は詰まないです。
清算して香を打ってもかわされて
18飛75角まで決めて金を取って詰めろ。
でも後手玉は簡単に詰んでいました。
棒銀対策もいろいろありますが、振り飛車党ならば、特に三間飛車とか先手四間飛車とかならば本譜のような65歩が一番シンプルな対抗策です。とりあえずはこれだけ覚えておけばよいです。そのあとのさばきが難しいのですが、居飛車も攻めるだけとはいきませんから。
大山先生は駒得になり、そのまま寄せ合い勝ちにもっていきました。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.41 棋譜ファイル ----
開始日時:1970/06/06
手合割:平手
先手:大山名人
後手:山田道美8段
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 6六歩(67)
4 8四歩(83)
5 7八飛(28)
6 8五歩(84)
7 7七角(88)
8 6二銀(71)
9 6八銀(79)
10 4二玉(51)
11 4八玉(59)
12 3二玉(42)
13 3八玉(48)
14 7四歩(73)
15 2八玉(38)
16 5四歩(53)
17 3八銀(39)
18 5二金(61)
19 5八金(69)
20 4二銀(31)
21 5六歩(57)
22 1四歩(13)
23 1六歩(17)
24 9四歩(93)
25 4六歩(47)
26 6四歩(63)
27 3六歩(37)
28 5三銀(42)
29 4七金(58)
30 4二金(41)
31 9六歩(97)
32 7三銀(62)
33 9七香(99)
34 8四銀(73)
35 6七銀(68)
36 7二飛(82)
37 3七桂(29)
38 7五歩(74)
39 6五歩(66)
40 7七角成(22)
41 同 飛(78)
42 9八角打
43 6一角打
44 6二飛(72)
45 5二角成(61)
46 同 金(42)
47 8八金打
48 8九角成(98)
49 同 金(88)
50 6五歩(64)
51 7五歩(76)
52 6六歩(65)
53 7六銀(67)
54 6八角打
55 7八飛(77)
56 6七歩成(66)
57 6三歩打
58 同 飛(62)
59 7四角打
60 7八と(67)
61 6三角成(74)
62 同 金(52)
63 7八金(89)
64 6九飛打
65 8二飛打
66 6二金(63)
67 6八金(78)
68 同 飛成(69)
69 6三歩打
70 同 龍(68)
71 8一飛成(82)
72 6一歩打
73 8四龍(81)
74 1五歩(14)
75 8五龍(84)
76 1六歩(15)
77 1八歩打
78 6八龍(63)
79 8六角打
80 7九龍(68)
81 6八銀打
82 8四歩打
83 7九銀(68)
84 8五歩(84)
85 7七角(86)
86 4四角打
87 同 角(77)
88 同 歩(43)
89 6七銀(76)
90 9八飛打
91 7四歩(75)
92 7二歩打
93 2六桂打
94 6九角打
95 7八角打
96 4七角成(69)
97 同 銀(38)
98 7七金打
99 3四桂(26)
100 3一金打
101 7三歩成(74)
102 同 歩(72)
103 6三歩打
104 6七金(77)
105 6二歩成(63)
106 7八金(67)
107 5二飛打
108 4二銀打
109 6三と(62)
110 7九金(78)
111 5八銀(47)
112 4三銀打
113 5三と(63)
114 5二銀(43)
115 2二金打
116 3三玉(32)
117 3一金(22)
118 5八飛成(98)
119 同 金(49)
120 1七銀打
121 同 歩(18)
122 同 歩成(16)
123 同 香(19)
124 同 香成(11)
125 同 玉(28)
126 1一香打
127 1六歩打
128 同 香(11)
129 2八玉(17)
130 1八飛打
131 3九玉(28)
132 7五角打
133 5七香打
134 3一銀(42)
135 2二銀打
136 同 銀(31)
137 5一角打
138 投了
まで137手で先手の勝ち
20191106今日の一手
10月12日の名南将棋大会から、SさんとSさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。
一昨日の一手の回答
☆ 形勢判断をします。
駒の損得はありません。
玉の堅さは先手のほうが堅いです。
先手の攻め駒は88角1枚。後手の攻め駒は42角1枚。
総合すれば互角か先手もちか。
☆ 大局観として
先手Kさんの米長玉からの銀冠は、右四間飛車の時の定番です。ここでは57銀型で桂を跳ねて45歩が有効かどうか。後手玉よりも堅い形なので、攻めが続けば有利になりやすいです。でも8,9筋を攻められたときにもろいので、終盤での単純な横からの攻め合いに持ち込めるかどうかで優劣が決まりそうです。
後手に33角を42角と引かれたところです。どこかで64角や85歩が見えるので嫌な手ですし、35歩から桂頭を攻められるのも嫌です。だけど12香を指していないので大丈夫でしょうか?
☆ 簡単なまとめ
一目は45歩です。
これで悪くなるなら仕方ないくらいですが、その前に24歩を突き捨てるかどうか。結論的には45歩が先ですが、24同角の変化は厄介なのです。それを避けられるのならば避けたい。24歩同角の形では、57銀左の舟囲いのほうが優ります。
× 実戦は26飛でした。
桂頭を受けた穏当な手です。35歩同歩同飛36歩34飛
後手の飛の働きが良くなりました。攻め駒になりましたし、受けにも働きます。24歩同歩45歩64角
37角成が飛取りにもなりますね。受けは48銀しかありません。85歩
後手に持ち歩があると85同歩86歩で銀が死にます。これが先手の囲いの急所です。75歩の受けも同角
銀取りになっています。これだけ利かされるとかなり苦しいです。
△ 攻めるならば24歩から考えます。
戦いは歩の突き捨てから。(そういえば私はこの歩を突き捨て忘れることが多かったのですが、この頃はありません。訓練で変わるのでしょう。)24同歩に45歩とすれば、85歩にも44歩
43銀43歩成同銀11角成86歩同銀同角87香
この図はうまくいきすぎですが、後手の11香を取れると大きいのです。
後手は45歩を無視できず33角
44歩同銀45歩53銀33角成同飛22角
これも11香の形をとがめています。後手玉が堅くなった(53銀が守りに働いた)のでまだ難しいですが。
45歩ではなく25歩
継ぎ歩攻めもあります。25同歩は同桂22飛26歩
これは2筋で飛を使えないけれど駒得になります。
後手は25歩が重いと53銀
軽くさばく方が良いものなのですが、33角成同桂24歩38角
23歩成が負担なので飛をいじめるのが最善です。39飛27角成23歩成42飛46歩28馬33と41飛79飛37馬
というのが進行例です。桂を取り合って飛の働きを抑え合ってという応酬ですが、33と を使える先手の攻め駒のほう指しやすいです。
さて24歩同歩は先手の指せる変化が多かったです。24同角は
45歩42飛44歩同銀
42角が移動したので42飛の受けも可能になりました。舟囲い57銀左からの45歩急戦を思い出して比較してください。22歩13桂21歩成46歩
47歩成を受けにくいので後手よしです。これは舟囲いのほうが良いわけです。
22歩ではなく45歩を打つのが普通ですが、
33銀35歩同歩25桂22銀44歩33桂
やはり4筋の薄さが目につきます。
43歩も常用の手筋で
43同飛24飛同歩32角
先手玉が堅いので飛を切りやすいです。角を打てば駒得になるのですが、42飛21角成41飛打
33桂で馬を助けても歩切れです。9筋で歩を手に入れる筋もないです。思い切って11馬同飛44角同飛45香
41飛同香成同飛
角歩歩と銀桂の交換ですから少し駒得です。しかし歩切れで49飛成を防ぐのに苦労しますし、長くなれば19香37桂を取られるので駒得とは言えません。後手有利なのでしょう。
○ 単に45歩だと
64角にも24歩
29飛の位置ですから37角成を恐れなくてもよいです。
であれば後手は33角しかなさそうですが、そこで24歩
24同角は1手パスなので44歩で先手よし。24同歩に限定できます。それならば前にやった変化で先手が有利になりやすいというわけです。
△ 49飛ならば
45歩がより厳しくなっているので35歩は怖くありません。33角には45歩同歩66歩
ちょっと複雑に攻めるのでしょう。66同歩同銀46歩同飛42飛
こんな攻防で互角です。
× 77角と待てば
85歩の筋に備えています。35歩24歩同歩45歩
1手遅れましたが4筋を攻めるしかないです。36歩44歩52銀43歩成同銀11角成37歩成
これは互角くらい。
後手は8筋に備えられたところですが85歩
85同歩35歩45歩
36歩44歩52銀
同じように進みますが、ここで43歩成同銀11角成では86歩を打たれます。49飛48歩同飛37歩成43歩成
48と32と53角
後手に先に桂を取られていますし、47と もあり、11角成は86歩があるという状態は後手有利です。
× 8筋を受けるだけならば97桂
これは先手玉が薄くなります。33角と戻されて作戦負けの気配です。
△か× 75歩を突けば
75同歩でしょうから、8筋は一応大丈夫です。45歩33角24歩同歩44歩同銀25歩
攻めていけば指せないことはないですが、桂を渡して76桂とか74桂~85歩とか、傷ができて先手玉が薄くなっているので悪くなりそうです。
☆ まとめ
この98玉型の銀冠(米長先生は序盤からの98玉は米長玉ではないと言っていましたが)は、銀冠ではあるのに手厚くないです。8,9筋を攻められるともろくて、88角もいない方がまだ耐久力があります。そういう囲いの特性を理解することが第一。
8筋と3筋は同時に守ることができない形ですから、「攻撃は最大の防御」、「攻めるは守るなり」、で45歩から攻めるのが正しく、それで悪くなっても仕方ないくらいです。左美濃(銀冠)を選ぶ場合は振り飛車の美濃囲いと同等に近い堅さですから、中盤の読みが勝敗を分けます。だから級位者には難しい戦型ですが、愛好者は多いのですよね。難しいと感じたら、急戦の定跡を勉強することを勧めます。