院長のひとりごと

私、竹村院長が食べ物から健康まで基本的にノンジャンルでかきつづります。

「怒りへの合気道。」

2012年06月08日 13時06分13秒 | ノンジャンル
先週だったか、患者さんが朝から怒ってタケコツに入ってきました。

どうやら不愉快なことがあったようです。

わけを聞くと、いつも乗っているバス停の近くで工事をしていて、そのそばを

大型のトラックが良く通っていたため、そのバス停から数メートル離れた安全な

スペースでバスを待っていたのだそうです。


バスが来たので乗ると、運転手は「きちんとバス停で待ってないとわかんないでしょ!」と

きつい口調で言ってきたそうです。

そのおばさんは、その時は反論せずに「はぁ」と言ったそうですが、自分が

バス停から少し離れたところにいたのは理由があり、注意をされるいわれはない、と

あとからどんどんイライラが募り、運転手の名前をメモしてきたと早口で

まくし立てていました。


院長はその運転手の名前をメモしてどうするのですか?と聞くと案の定

あとで営業所に苦情の電話を入れると言いました。


なるほど、なるほど。

例えば営業所に苦情を言うと、まずその営業担当者からそのドライバーに注意勧告が

行くでしょう。

「~という停留所で乗ったお客さんに失礼な口のききかたをしただろう」と

注意がいくかもしれません。

運転手は「あーあのオバサンだな・・」と思い、「反省しよう!」となるかもしれませんし

「うっぜーなー、ったくよー」と思うかもしれません。

後者の可能性が高いように思います。


その患者さんは不愉快な思いをしたので、その思いに怒りを乗っけて相手に向けました。

自分はいかに正しく、非の全ては相手にあるという正義を添えて。

そういう場合、たいていの相手はその怒りに対し、自分の身を守るべく怒りで武装します。

「いや、確かにお客さんへの対応としては良くなかったかもしれないけど、あんたも

 あんな紛らわしいとこに立ってなければさ・・」となるもんです。


この両者がお互いの正義を振りかざし、思いをぶつけ合ったところで、何にも

いいことはないです。

口の立つ方、声の大きいほう、立場が強い方の正義がまかり通るケースが多いですが

その場合、言いくるめられた方が自分の非を認めることはあんまりなく、憎き相手に

屈服した・・という思いが残ることがほとんどでしょう。


友達でも恋人でも家族でも会社の同僚、上司、部下でもどんな人間関係でも、この

つまらない正義がつねに幸せを邪魔します。

本人たちは自分の言い分がつまらない正義とは思ってないですけど。


まぁ、そんなことを要約して「営業所に名指しでクレームを入れるのはおすすめしませんよ」

と言いましたら「じゃあ、どうすれば?」と聞かれたので、

「もし今度その運転手のバスに当たったら、笑顔でおはようございますと言ったら

 どうですか?」と提案しました。


「えー嫌よ」というので「ま、自由ですけど、人は自分に向けられた悪意や嫌悪には悪意や

嫌悪で返すし、好意には好意で返すものじゃないですか?」と加えました。


昨日、その患者さんは再びあの憎きドライバーのバスに当たり(笑)笑顔で

「おはようございます」と言ってみたそうです。

その患者さんがバスから降りるときにその運転手は「こないだは失礼しました」と

頭を下げたそうです。


本当に憎たらしい人なんて世の中にそうはいないんじゃないですかねぇ