花にまつわる幾つもの話

子供時代の花にまつわる思い出や、他さまざまな興味のあることについて書いていきたいと思ってます。

第二十章 路地の枝垂れ桜

2010年05月14日 | 花エッセイ
 小学校の通学路途中に、少々小ぶりだがそれは見事な枝垂れ桜があった。

 この桜、毎年入学シーズンになると、新入生の親子連れでにぎわう。

皆、この枝垂れ桜の前で記念写真を撮るからである。

 この枝垂れ桜を植えているお宅はこじんまりとした平屋で、

どうやら庭木が好きな一家らしく、

他にも染井吉野や真っ赤な木瓜が昔ながらの木造門を飾っていた。

 そして毎年毎年、華やかなピンク色の花がこの狭い路地を彩るのである。

 ある年、私達一家も記念にこの桜の前で写真を撮ろうということになったのだが、

いざカメラを持って出かけてみると、順番待ちをしている親子の数に驚かされた。

 真新しいランドセルを背負った子供が正装した若い母親と並んで写真におさまっていく。

撮るのは大抵父親か偶然通りかかった通行人である。

私も時折、桜の季節にこの前を通りかかると写真を頼まれることがあった。

 それにしてもこの枝垂れ桜、まさに桜冥利につきるとはこのことではないだろうか。

決して有名な花の名所でもなく、たった一本しか咲かないにもかかわらず、

多くの人々から愛されて、毎年元気な新入生達と写真におさまっているのだから。
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