花にまつわる幾つもの話

子供時代の花にまつわる思い出や、他さまざまな興味のあることについて書いていきたいと思ってます。

第二十四章 薔薇(シュネーヴィッチェン~白雪姫~)

2010年05月24日 | 花エッセイ
 花の中で薔薇ほど品種名の多い植物はないだろう。

 その中でもここ数年、私のお気に入りは「アイスバーグ」と呼ばれる薔薇である。

花の中心部分がほんのりと薄紅色に染まる純白のフロリバンダ系の薔薇で、

まるで可憐な少女が頬を染めているみたいに愛らしいこの花のドイツ名を

シュネーヴィッチェン――「白雪姫」という。

 白雪姫で思い浮かぶのが、かのディズニーの名作「白雪姫」。

なんでもこのアニメのお姫様の肌は、

女性用ファンデーションを使って着色したのだというから凄い。

だからあれほど柔らかくふんわりとした質感が出せたのだろうか。

 ちなみにこのシュネーヴィッチェン、三年に一度開かれる世界薔薇会議において、

1958年に殿堂入りしている。

日本大手食器メーカーノリタケからは世界で最も愛されている薔薇シリーズとして

カップ&ソーサーも出ているほどだ。

 そして薔薇と言えば、もう一つ忘れてはいけないのが、

世界中の薔薇好事家達を夢中にさせている青薔薇の存在だろう。

 以前、青い芥子の章でも触れたが、西欧人にとって青は特別な色。

 数年前、静岡で開かれた花万博において、

それこそ最大の注目を集めた青い薔薇「ヘブンリーブルー」と「青龍」は、

残念なことにメディアの宣伝ほどには青くなく、実際には白や薄紫に近い色合いだった。

 もっともつい最近、どこだかの酒造メーカーがドイツの研究所と提携して

青薔薇作りに成功したという記事を新聞で見かけたので、

あるいは私が知らないだけなのかもしれない。

後日、その薔薇の現物を見る機会があったが、

スカイブルーというよりはむしろ紫がかった青で、

何でもパンジーから採取した青色の遺伝子を使って作られたという話であった。

 ところで、黄色い花が咲く植物に青色はないという法則をご存知だろうか。

これを知ったきっかけは、中井英夫氏が書いた「虚無への供物」というミステリー小説だった。

 私が知る限りだが、確かにそのとおりだと思う。

朝顔には青色はあるが黄色はない。

チューリップには黄色はあるが青色はない。

 この法則からすると、青い薔薇はまさに夢の産物。

しかも薔薇には本来、青の色素がないとさえ言われている。

 幻の青い薔薇――ヒマラヤに咲くあの青い芥子と同様、澄んだ青空の色を持つ薔薇。

青は天空の色だ。それは最も神に近い色なのかもしれない。
コメント
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