80歳に向けて・「新風来記」・・・今これから

風来居士、そのうち80歳、再出発です。

「短編小説」のつもり ― ユウコちゃん (1)

2018年04月10日 16時03分40秒 | 創作
新浦 縞太郎が「短編」を書いてみたと言う。
本人曰く、これはあくまで「短編小説」のつもりだとか。


ユウコちゃん (その1)
まともな社会人ならば、誰もがそれなりの考えで生きている。
しかし、現状の考え方で、判断、行動していっても、つまる
ところは、このままの人生が続いていくだけだ。
ほんの少しだけでもいい、生き方を変えてみたいと思う。
夢のある生活・・・。

*月*日(土) 曇り、風すこぶる強し。
私は部屋で、ただ一人ウィスキーを飲んでいる。

今ではもう決して戻ってくるはずのない過去の長い時間と日々。
さらには、ひょっとしたら、もっと良い別の生き方があったの
かも知れないという後悔の時間、そして日々。

しばらくは職安に通っていた。
職員曰く、
「う~ん・・・、70歳ですか? 再就職と仰ってもねぇ・・・。
この所、景気が落ち込んできて、新卒の若い人でもなかなか思う
ような就職先が見つからないのですよ。」

総てを見失って、私は東京のアパートで一人暮らしを続けている。
わずかばかりの年金が唯一の収入。
在職中にわずかずつ貯めていた預金も、そろそろ底をつく。

滅多に鳴ったことのない電話が鳴った。
夜間高校時代の友人からの、本当に久し振りの電話だった。

同郷の彼と話しているうちに、私は故郷のことを思い出した。
すでに遠い夢のような過去だ。
しかし、それは確かな現実でもある。

彼と話しているうちに、ふと故郷に戻ってみたいと思った。

何故か、ふいに昔を思い出した。
それは小学校の入学式。
偶然、隣り合ったかわいい女の子。
確か・・・、そう、その子は「ユウコちゃん」といった。

思い出したら、気になってくる。
この歳になって、今さら好きも嫌いもないが、心の奥底に強く印象
に残っている女の子だ。

小学1年の終わりに、私の家族は隣町に転居した。
新しい町で、私は小学校、中学校を卒業、そして高校に入学した。

高校2年の夏、家族が父の故郷、三重に引っ越すが、お前はどう
する?と問われた。

学業が中途半端だった。
考えた末、私は独立して、一人、東京で暮らしていくことを選んだ。
一旦退学、就職して、翌年夜学に通う道を選んだ。
その後、職場は二度変わったが、夜間高校だけは一応卒業した。
(続く)