80歳に向けて・「新風来記」・・・今これから

風来居士、そのうち80歳、再出発です。

「短編小説」のつもり ― ユウコちゃん (その 5 = お終い)

2018年04月13日 06時07分03秒 | 創作
ユウコちゃん (その 5 )

ユウコちゃん、未だに私は君を見上げている。

もしかすると君は、あの日の母のように、どこかで私を見おろして
いてくれているのかも知れない。

いや、これは、君が私を軽蔑して、上から目線でいるという意味では
決してない。

優しくと言うか、女性は常に男性を見おろしているものらしい。
人からそんな事を聞いたことがある。

確かに、女性とはそういうものなのかも知れない。
いつの頃か、私もそんな風に思うようになった。

古墳の町で電車を乗り換えた時、すでに時間はかなり午後に食い込ん
でいた。
電車は、ゆっくり一駅、二駅と止まり、三番目の駅が目的の町だった。

この時点で、まだ彼女がどこにいるのかも、私は全く把握していない。

駅のホームに立って、ふと思う。
私は今回、ユウコちゃんに会うことが出来るだろうか?

たまたまにしろ、彼女に会えたら、その時、私は一体どうするのか?
その後どうするのか?
( )

思えば、肝心なことを何一つ考えてこなかったのに気がついた。

今さらだが、何だか不安になってきた。
このまま黙って、東京に引き返すのが正解なのかも知れない。

私の生き方ときたら、今までずうっとこんな調子だった。
現在、すでに70歳、何と進歩のない人生なのだろうか。

いずれにしても、もう時間が無い。

ともかく開いているお店に入って、ユウコちゃんの消息を尋ねてみる。

ひょっとしたら・・・、
もしかして、もしかしたら・・・。


ユッコ、君に会いたい!!

でも今すぐ、このまま君と会うのは、ちょっと怖くもあり・・・。

期待と怖れ・・・、複雑な気持ちで、私は店のドアに手をかけた。
(お終い)