獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

いつもお経をあげていた母、樹木希林(1)

2023-04-01 01:16:36 | 信仰・宗教

正木伸城さんのインタビュー記事や菊池真理子さんの対談記事が載っていた雑誌に、伊藤比呂美さんと内田也哉子さんの対談記事がありました。

週刊文春WOMAN Vol.16 2023創刊4周年記念号(2023年1月12日発行)
大特集:宗教は毒か?救いか?


BLANK PAGE Vol.16 enchanted by the buddhist sutras
  伊藤比呂美  ×  内田也哉子


母、樹木希林はなぜ
いつもお経をあげていたのか

内田 伊藤さんは現代詩の旗手として長くご活躍ですが、お経を現代語で読み解くということもやっていて、何冊も本を著していらっしゃいます。なかでも私にとって運命的な出会いだったのが『いつか死ぬ、それまで生きる わたしのお経』(朝日新聞出版)なんです。
伊藤 まあ! すっごくうれしいです! 
内田 拝読して、母にまつわる謎がいろいろ解ける気がします。母は2回結婚していまして、私は2人目の夫との間に生まれた子です。私が知らない最初の結婚について、なぜ離婚したのかたずねたら、母は「あまりにも幸せで、これ以上何を求めて生きていけばいいのかわからなくなったから」と答えたんです。当時の精神状態をブラックホールにたとえていましたけど、虚無感にさいなまれ、息をするのも苦しかったって。それで自分から別れを申し出て、5年間の結婚生活に終止符を打っています。ブラックホールを何とかしようと哲学書や宗教書を読み漁り、母がこれだと思ったのが法華経だったんです。
伊藤 お経は法華経が一番おもしろいもの。私も大好きですよ。お母様が興味を持たれたのは法華経のどの辺りですか。
内田 それが、わからないんですよ。ちゃんと聞いておけばよかったと後悔しているんですが、ただ、阿弥陀経のように極楽浄土の美しさを朗々と説いたものより、お釈迦様がこれから悪世末法の時代になっていくというときに人間の苦しみをわかって、その苦しみをどう乗り越えるかということを説いた法華経が一番わかりやすかったと言っていたのは覚えています。
伊藤 也哉子さんも読みました?
内田 読もうにも、まったく意味がわからなくて。
伊藤 私が初めてお経というものを読んでみようと思ったのは大学生のときで、意味なんてわからなくてもいいのかなと思いながら読んでいたんですよ。
内田 母も「意味なんて、ずっと唱えているうちに時々ポロッとわかればいいの。最初からわかったらつまらないのよ」なんて言ってました。
伊藤 お母様は也哉子さんにもお経を唱えるようにとは勧めなかったんですか。
内田 「読んだらおもしろいよ」くらいは。ただ、私が行き詰まっているときなどに「南無妙法蓮華経って言ってみたら呼吸も整うよ」って言うことはありました。いわば、おまじないですね。
伊藤 「南無妙法蓮華経」は法華経のお題目で、「南無」はお任せしますという呼びかけ、 「妙」は「素晴らしい」、つまり「素晴らしい法華経にお任せしますー」って言ってるんで すよ。
内田 そうなんですか。母の勝手な解釈だと思いますけど、母は「この宇宙の法則に則って私は生きていきたいということだ」と言っていました。
伊藤 ああ、すごくいい解釈です、それは。
内田 母は日常にお経を取り入れていたんですね。私の両親は最後まで離婚はしなかったものの私が生まれたときには既に別居していて、うちは事実上シングルマザーだったんです。母は私を1歳半でインターナショナルスクールに入れたので、私は英語は身につけることができたものの日本語がちょっと怪しかった。そこでインターナショナルスクールが6月で終了すると、7月から半年間、地元の区立小学校に転入しました。
その小学校の校長先生が退職されるので、全校生徒が手紙を送ることになったのですが、何を書いたらいいのかわからない。困り果てた私に母がくれたヒントが「雨はどんな木にも等しく降り注ぎ、木々はそれぞれの花を咲かせたり実を実らせたりする。校長先生もいろいろな子どもに教育を注いで、子どもたちがそれぞれの伸び方をしたんでしょうね」というものだったんです。
伊藤 素晴らしいアドバイス!
内田 よくわかんないけどそのまま書いたら、校長先生がいたく感動して卒業式で読み上げ たんですよ。そんな思い出があるものだから、伊藤さんの本に書かれている法華経の「薬草喩品(やくそうゆほん)」の訳を読んでびっくりしたんです。ああ、母のアドバイスの出典はこれだったんだと。


(つづく)


解説
2018年9月15日に亡くなられた樹木希林さんですが、その個性的な生き方は多くの人に愛されました。
私もファンでした。
その樹木希林さんが法華経を愛読し、題目を唱えていたと知って、驚くとともに、うれしく思いました。

獅子風蓮