獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

友岡雅弥さんの「地の塩」その3)「水平社宣言」は人類共通の財産

2024-05-02 01:35:34 | 友岡雅弥

友岡雅弥さんは、執筆者プロフィールにも書いてあるように、音楽は、ロック、hip-hop、民族音楽など、J-Pop以外は何でも聴かれるとのこと。
上方落語や沖縄民謡にも詳しいようです。
SALT OF THE EARTH というカテゴリーでは、それらの興味深い蘊蓄が語られています。
いくつかかいつまんで、紹介させていただきます。

 


カテゴリー: SALT OF THE EARTH

「地の塩」という意味で、マタイによる福音書の第5章13節にでてきます。
(中略)
このタイトルのもとに書くエセーは、歴史のなかで、また社会のなかで、多くの人々の記憶に刻まれずにいる、「片隅」の出来事、エピソー ド、人物を紹介しようという、小さな試みです。


Salt8 - 人類共通の財産

 2018年3月5日 投稿
友岡雅弥
             

大阪の堺に住んでいます。

とくに「我が町・堺」が世界に誇る場所の近くに住んでいます。仁徳天皇陵・履中天皇陵(と呼ばれる古墳)があったり、千利休や与謝野晶子ゆかりの地でもあるのですが、僕としては、もっと意義深いところがあるのです。しかも、自転車で7、8分のところ。

舳松(へのまつ)です。詳しく言えば、南舳松。町名は変わっているので、現在は南舳松という番地はありません。

ここは、天才棋士、坂田三吉の出身地ですが、全国で最も水平社活動(部落解放運動)の盛んだったところ。水平社運動のリーダー、西光万吉が活動の拠点としていたところであり、また同じく米田富も、奈良と南舳松を拠点としていました。

舳松での水平社運動に参加した卒田正直さんの著書『少年の日の水平社』には、当時の舳松について、「1920年代の舳松は全国水平社創立時から反権力の気風のみなぎった部落解放運動の中心地で全国から解放運動の来訪者が絶えることはなかった」と語られています。

舳松の中心者は、泉野利喜蔵(1902~1944)で、地域の生活改善や、同じように差別の淵に沈んでいた在日朝鮮人の生活改善にも取り組みました。また、最年少の堺市会議員ともなり、具体的な行政の取り組みへも、挑戦しています。

私のここ数年来の親友で、ケニアのスラムで貧しいストリートチルドレンのための学校を開いている人がいます。日本に来るたびに、釜ヶ崎と部落解放運動ゆかりの地を訪ねています。

そのかたは、ケニアの子どもたちに「世界人権宣言」とともに、人類が誇るべき遺産として、「水平社宣言」を教えてあげています。

「(ケニアに住んでいる)あなたたちの財産だ」と。

国境を越えた、人類共通の財産だ、ということです。人間がこんな偉大な宣言をしたのだということです。

そこの学校の卒業生が来日したとき、日本中をツアーで回ったのですが、釜ヶ崎を自分たちの「第二の故郷」であると語り、「日本で一番ほっとする場所」「はやく釜ヶ崎に行きたい」と言い続けていました。

とともに、「水平社宣言」と「部落解放運動」を、「世界の誇り」「私たちの目標」と語っていたのが、とても印象に残っています。

アメリカでは「奴隷解放宣言」を誇るべき歴史としてるのに、日本では、さらにそれに加えて「当事者が宣言した」と言う、画期的な意義を持つ「水平社宣言」を自国の誇るべき歴史としないのでしょうかね?

長くなりますが、「水平社宣言」を引きます。

人の世に熱あれ、人間に光りあれ!

【水平社宣言】

全國に散在する吾が特殊部落民よ團結せよ。
長い間虐められて来た兄弟よ、過去半世紀間に種々なる方法と、多くの人々によってなされた吾らの爲の運動が、何等の有難い効果を齎(もた)らさなかった事實は、夫等のすべてが吾々によって、又他の人々によって毎に人間を冒涜されてゐた罰であったのだ。 そしてこれ等の人間を剿(かすめと)るかの如き運動は、かえって多くの兄弟を堕落させた事を想へば、此際吾等の中より人間を尊敬する事によって自ら解放せんとする者の集團運動を起せるは、寧ろ必然である。
兄弟よ、吾々の祖先は自由、平等の渇迎者であり、行者であった。陋劣なる階級政策の犠牲者であり、男らしき産業的殉教者であったのだ。ケモノの皮を剥ぐ報酬として、生々しき人間の皮を剥ぎ取られ、ケモノの心臓を裂く代償として、暖かい人間の心臓を引裂かれ、そこへ下らない嘲笑の唾まで吐きかけられた呪はれの夜の惡夢のうちにも、なほ誇り得る人間の血は、涸れずにあった。そうだ、そして吾々は、この血を享けて人間が神にかわらうとする時代にあうたのだ。犠牲者がその烙印を投げ返す時が来たのだ。殉教者が、その荊冠を祝福される時が来たのだ。
吾々がエタである事を誇り得る時が来たのだ。
吾々は、かならず卑屈なる言葉と怯懦なる行爲によって、祖先を辱しめ、人間を冒涜してはならなぬ。そうして人の世の冷たさが、何んなに冷たいか、人間を剿る事が何であるかをよく知ってゐる吾々は、心から人生の熱と光を願求禮讃するものである。
水平社は、かくして生れた。
人の世に熱あれ、人間に光りあれ。

綱領
一、特殊部落民は部落民自身の行動によって絶対の解放を期す
一、吾々特殊部落民は絶対に経済の自由と職業の自由を社会に要求し以て獲得を期す
一、吾等は人間性の原理に覚醒し人類最高の完成に向って突進す

大正十一年三月三日

 

このような日本になっていかんとあきませんね。

 

 


解説
此際吾等の中より人間を尊敬する事によって自ら解放せんとする者の集團運動を起せるは、寧ろ必然である。

なんだか、法華経の不軽菩薩を思い浮かべます。


人の世に熱あれ、人間に光りあれ。

「水平社宣言」は、被差別者から差別者への告発・闘争の宣言ではなく、人類すべての中に仏性を見る法華経の精神に似た、平等思想の宣言なのですね。


「部落問題」について詳しくはありませんが、だいぶ前に住井すゑの小説『橋のない川』を読んで感銘を受けました。

機会があれば、また読み返したいと思います。

 

友岡雅弥さんのエッセイが読める「すたぽ」はお勧めです。

 


獅子風蓮



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。